日英同盟召喚   作:東海鯰

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蝙蝠国家の末路

グラ・バルカス帝国 レイフォル領 外務省レイフォル仮出張所

 

「・・・・と、言う訳で我が国はグラ・バルカス帝国、帝王グラ・ルークス陛下に忠誠を誓おうと思います。どうか・・・どうか、国民の命、そして衣食住だけは・・・確約して頂きたい」

 

特殊な民族衣装に身を包んだもの達が、グラ・バルカス帝国外交官、ダラスに深々と頭を下げる。小国がグラ・バルカス帝国に降った瞬間だった。いつものように冷酷な目で眺めながら、ダラスは対応する。

 

「帝王グラ・ルークス陛下は偉大であり、そのお言葉は絶対だ!! お前らのような文明レベルの低い現地人であっても、理由なく命を奪うような事はするなとおっしゃられた。そこは安心するがよい」

 

彼は続ける。

 

「それでは、さっそく征統府(グラ・バルカス帝国が他国を統治するために作られた機構員)を派遣する。受け入れ準備を整えよ。きちんともてなせよ」

 

第2文明圏の小国、ヒノマワリ王国の使者は、国としての形、プライドを捨て、国民の命を守ることが出来た。彼らは安堵の顔をして退室した。

 

「やはり「力」を見せるという事は、実に仕事がやりやすくなるな・・・・」

 

神聖ミリシアル帝国を柱とした連合軍と、グラ・バルカス帝国の戦い。帝国の誇る歴史上最大にして最強の戦艦、グレードアトラスターは、その主砲をもって、敵が絶大な信頼を置いていた空中戦艦を粉砕した。世界最強と言われた国が、秘密兵器を使用したにも関わらず、敗走した。この事実、帝国に勝てる国は、世界に存在しないと各国は分析したのだろう。

 

「まあそのとおりだがな・・・・」

 

とりわけ、現在帝国の勢力圏に近い国が次々と降伏してくる。国に戦火を及ぼす前に振る。賢い選択だ。ダラスは仕事の整理に入る。ドアがノックされ、ダラスの上司であるシエリアが入室してきた。

 

「ヒノマワリ王国は何と?」

「降りました。詳細条件はこれからですが・・・」

「そうか」

「・・・シエリア様、何か御用で?」

「いや、一週間後は日本国並びにグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の大使が来る予定があっただろう? 私も参加しようと思ってな」

「!? シエリア様が参加するほどの国ではないと考えますが、私でも十分かと」

「まあ、通常の国ならば私は出まい。ただ、彼らも転移国家であり、勢力圏の遥か外側にある国の申し出、何を言ってくるのか、少し気になる」

「解りました・・・・席をもう一つご用意させます。私はムー国と日本国の通商破壊作戦、更にはシーン暗殺部隊による日本国の首都に対する特別作戦にて被害を受け、帝国の力を実感するに至った。遠いため、無条件では降らぬでしょうが、属国程度の措置で何とかならぬかと交渉しに来たと考えますけどね」

 

ダラスは日本国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国との会合に向け、準備を行うのだった。

 

 

第二文明圏列強ムー港湾都市マイカル

マイカル空軍基地日英加豪新合同司令部

 

「間も無くオーストラリア空軍のF35Cがアプローチに入ります。4機続けて着陸します」

「うむ。着陸後は昨日完成したステルス戦闘機用エリアに誘導し、整備を行え」

「かしこまりました」

 

日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの空軍部隊が駐留するマイカル空軍基地。この日、オラパ諸島ロコール島またはリペリュー島、神聖ミリシアル帝国カルトアルパス国際空港を経由して飛来した戦闘機部隊の先発隊が続々と到着しつつあった。また、先のグラ・バルカス帝国による通商破壊の際、ムー軍の初動対応が完全に遅れていた。ムー政府は、今回の戦争は自国の手には負えず、また存立危機事態であるとして、緊急閣議を開催。皇帝の承認の下、日英両国に戦時統帥権を与えることに決定した。また、周辺国も同様に日英の傘に入るべく、戦時統帥権を日英両国に付与した。これは第二文明圏の主要国が日英の軍門に降ることを意味しており、同時に神聖ミリシアル帝国による国際秩序の崩壊を意味していた。神聖ミリシアル帝国は各国に対して、戦時統帥権の付与を見合わせるよう勧告したものの、バルチスタ沖海戦の結果やイギリスによるグラ・バルカス帝国本土への核報復、日本の核武装等、神聖ミリシアル帝国より日英の方が頼りになるとして、勧告を無視していた。

 

「しかし、ムーもよく戦時統帥権の放棄を飲みましたね」

「自国だけではどうあがいても勝てない。それを実感してしまったからな。背に腹はかえられぬのだ」

 

やがてオーストラリア空軍のF35Cが着陸する。ムー政府は日英軍の駐留経費を全額負担しており、その中にはステルス戦闘機運用に関する予算もあった。この他、航空自衛隊、イギリス空軍、カナダ空軍のユーロファイタータイフーン、海上自衛隊、ニュージーランド空軍のP1哨戒機が続々と到着。ムーの防衛力は強化されつつあった。

 

「お? 輸送機からイギリス陸軍が到着したのか。さてはグラ・バルカス帝国に臣従した国への侵攻作戦だな?」

 

イギリス政府は第二文明圏各国に対して、グラ・バルカス帝国への臣従はイギリスに対する宣戦布告と見なすと通告していた。力で脅せば簡単に降伏する国々は、将来的に確実に起きる古の魔法帝国復活の際、自国に対して簡単に反旗を翻すと判断。その後、イギリス政府はグラ・バルカス帝国傘下のヒノマワリ王国に対して、通告通り宣戦布告。日本とニュージーランドの部隊を留守居とし、イギリス、カナダ、オーストラリア、ムーの部隊でヒノマワリ王国へと侵攻。グラ・バルカス帝国が進駐するよりも先に占領した。戦後ヒノマワリ王国は、他のグラ・バルカス帝国従属国と同様、既存の王制は廃止の上で、イギリス国王を国家元首とする立憲君主制国家として再編されることになる。

 

「でも、こんなことやって恨まれないのか?」

「まあ、そこはブリカスですから・・・グラ・バルカス帝国とイギリスの実力を見誤り、グ帝に臣従した王族が悪いと責任転嫁するでしょうし、近代化政策で飴を与えるのでしょうね」

「そういえば、グラ・バルカス帝国人捕虜で編成された部隊はニューアークに派遣されるらしいな。斬首作戦でもするのか?」

「その辺は不明ですね。ブリカスですから、予想もしない行動に出そうですが・・・」

 

この日は輸送機でイギリス陸軍第442グラ・バルカス帝国人部隊が到着。彼らは陸路でムーとレイフォルの国境へ向かい、ニューアークに向けて移動することになる。

 

 

イギリス陸軍第442グラ・バルカス帝国人部隊

 

「俺たちはニューアークに送られるらしいな」

「ニューアークって、皇帝陛下の四男、グラ・ガルマ様の領地か」

「ガルマ様を射つことになるんか?」

「ワカンネエヨ、ソンナコト!!」

「でも、話によれば国境線ではニューアーク守備隊が密かに迎えに来ているらしいぞ?」

「迎えに? どういうわけだ?」

 

彼らは無事国境線を越え、ニューアーク守備隊の誘導でニューアークに到着。その日まで密かに待機することになる。

 

 

あれから一週間後

グラ・バルカス帝国 レイフォル領 外務省レイフォル出張所

 

「やれやれ、空気が汚いな。マスクをしていて正解だな」

 

嫌みを言いながらレイフォル出張所の廊下を歩くハルト大使。やがて日英の外交官らは会議室に到着する。

 

「はあ・・・これから彼らは酷い目に遭うでしょうねえ」

「ま、自業自得だけどな」

 

会議室の扉が開き、アキコ、シン、ハルトは中へと入っていく。

 

「・・・・相変わらず間抜け面だな、ダラスとやらよ」

 

早速挑発していくハルト。ダラスは怒りに震えるが、シエリアが彼を出迎える。日英側はアキコ、シン、ハルトの3名が、グラ・バルカス帝国側の席には、シエリア、ダラス他4名が出席していた。

 

「さて、まずは簡単な自己紹介をさせて頂きますかね?」

 

絵に描いたような英国紳士の格好とユニオンジャック柄のマスクを身につけたハルトが先人を切る。

 

「僕は偉大なる大英帝国国王の代理として参った外務・英連邦・開発省のハルト・スカーレット・ハミルトン伯爵である。出身は偉大なる大英帝国の構成国スコットランド!!」

 

これ見よがしにユニオンジャックを振り回すハルト。まるでイギリスがEUを離脱した時みたいな光景になる。

 

「・・・・私は日本国外務省、駐神聖ミリシアル帝国カルトアルパス領事館で領事を拝命している根布昭子だ。此方は補佐役の根布真だ。短い付き合いになるが覚えておいて貰おう」

 

日本人から見れば喪服姿にしか見えない格好に黒マスクで参加するアキコとシン。そして意味深な発言。この時から日英の策略は始まっていたのだが、無論彼らは知らない。

 

「紹介にあった真だ。まあ、せいぜい楽しませてくれよ」

 

自己紹介が終わり、ダラスが話を始める。

 

「良くいらした、日本国並びにグレートブリテン及び北アイルランド連合王国のみなさん。今、先の海戦が原因で、我が国に降る国が多すぎてね・・・・外務省は多忙を極めている。要件を、手短に話してもらえると助かる」

 

アキコはゆっくりと話始めた。

 

「先のバルチスタ沖海戦で、貴国と世界連合が、痛み分けで終わった事は聞いています。貴国は当初、世界会議で全世界に向けて・・・我が国並びに同盟国イギリス、カナダを含めて宣戦布告を行った。しかし・・・・我が国や同盟国カナダ、そして第3文明圏、南方世界が参加していない連合軍と衝突し、かなりの損失を出している。もう世界征服なんて、大それたことを成し遂げるのは無理だと気付いているのではないですか?」

「それに、お前は気付いていないだろうが、あの海戦にはイギリス海軍が参加していた。ハルト大使がそれを証明してくれるだろう」

 

少しだけ挑発するアキコとシン。ダラスの表情が変わった。

 

「フン! お前たちは海戦の詳細を知らないようだな!! 我が国が苦戦したのは空中戦艦のみだ、それも軍部ではすでに対策を考えているぞ。神聖ミリシアル帝国以外の国は、いくら数が増えようとものの数ではないわ!!!」

 

空中戦艦対策など、未だ何も出てきていない。それに実際はムーの新型艦上戦闘機紫電改2にコテンパンにやられ、ハリネズミと化したムー海軍の艦艇にバタバタ撃ち落とされ、複葉機のフェアリーソードフィッシュ2に雷撃や爆撃さえされた。更にはムーの戦艦やフリゲート艦から発射されたミサイルでグレードアトラスターは大破。現在レイフォリアの造船所で大規模修繕中であり、機関がやられ、本国もイギリスによる核攻撃を受けており、修繕用の部品が満足に届かず、少なくとも1年は復帰出来ない。

 

「なんだろな? 対策も何も出来ていないのに虚勢を張るの止めてもらって良いすか? みっともないんすよね」

 

ハルトがお得意の煽りを始める。

 

「僕の学友でもあるアキコとシンが言ってたんですけど、バルチスタ沖海戦には、我が大英帝国海軍の潜水艦が参戦しているんすよ。魚雷攻撃で貴女方の空母を8隻を漁礁にしたんですけど、ちゃんと被害情報収集出来てますか? 何なら、貴女方御自慢の巨大戦艦、レイフォリアでスクラップになってませんか? 衛星画像から丸見えなんですよね」

 

ダラスは黙る。事実、グラ・バルカス帝国の空母8隻は沈められており、軍部からは状況的に第三国の潜水艦による雷撃しかない。そう結論づけられていた。そして消去法で雷撃したと思われる国は日本とイギリスしかない。しかし、ダラスは外交上の発言として、アキコらを揺さぶろうとする。

 

「・・・・世迷言を抜かすな!! 確かに我が軍の空母は沈んだ。だが、それは技術的トラブルが原因だ。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の潜水艦? ありもしないものを・・・」

「ありますよ?」

 

ハルトは雷撃を実施した潜水艦の写真を差し出す。そこには、誇らしげにユニオンジャックを掲げながらマイカル海軍基地に入港する、イギリス海軍の原子力潜水艦ヴィクトリアスの姿があった。ダラスらはあまりにも洗練されたイギリス海軍の原子力潜水艦の姿や非常に鮮明な写真に驚愕する。

 

「ついでに、此方が貴女方御自慢の巨大戦艦の成れの果てです」

 

続いてハルトは、日本の偵察衛星が撮影した戦艦グレードアトラスターの写真を見せる。レイフォリアの乾ドックで修繕中の様子が空から写し出されていた。ダラスは絶句し、シエリアは眼を丸くする。

 

「何故グレードアトラスターの機密を貴様ら蛮族が握っている!?」

「我が大英帝国の親友、日本国は異世界一のロケット技術を有する国でしてね、宇宙空間に・・・空の遥か彼方に偵察衛星を浮かべ、この星を周回させているのですよ」

「そ、そんなバカなことがあるか!! もし本当なら、貴様らは我が帝国より遥かに優れた・・・」

「機械文明国家ですが、何か?」

 

マスク越しからでもニヤケ顔のハルト。

 

「ちなみに、偉大なる国王陛下を国家元首とするカナダ、オーストラリア、ニュージーランドも貴国より遥かに優れ、豊かな国ですよ」

 

挑発に挑発を重ねるハルト。アキコが、そろそろ良いだろうと手で遮る。

 

「ああ、時間切れか。まあ、仕方ないかな」

「やれやれ・・・・貴国は転移後、軍事技術格差を生かして無敵を誇った。貴国が強く、外交的に決して舐められぬ事は証明出来ているはず。もう良いでしょう? 貴国の目指すべき所は何なのですか?」

 

アキコはダラスに問い、ダラスは不気味に微笑み、話始めた。

 

「お前らには解るまい・・・すべては帝王グラ・ルークス陛下の御意志のままなのだ。グラ・ルークス陛下の書にはこうある。いさかいが起こるのは、国家単位で意識が細分化し、それぞれが国益のみに囚われて行動するからであると。真の平和を望むなら、圧倒的な力で各国家を統治する事が必要であると。しかし、民度によって同一の支配方法では国に混乱を与える事例が散見されるため、その土地に会う統治方法を認めた上で、圧倒的な力で管理するのだ。我が国が目指すところ、それは永遠の平和であると断言しよう」

「なんだろなあ・・・それって時代錯誤の帝国主義ですよね? 金と時間と資源の無駄でしかないんですけど、頭アップデート出来ます? あと貴国は支配地から富を吸い上げているんですけど、これで真の平和が得られると思います?」

「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国は、地方自治体から税を吸い上げていないのか? 従属している他の連邦王国から吸い上げていないのか? 本社が首都にあるという理由から、地方で得た富を、首都あるいは国が吸い上げてはいないのか? 貴国のみならず、日本国も一定の文明レベルにあると聞く。大体の国がそうだが、貴国も過去に内乱を経験し、統治しているのではないのかね。我が国は、それを世界レベルで行おうとしているに過ぎない」

「既にそれ、我が大英帝国や日本国、更にはアメリカ合衆国やソビエト連邦、モンゴル帝国に神聖ローマ帝国、あとはチョビヒゲのナチスドイツが通ってきては失敗した道なんすよね。何なら今は中華人民共和国やソビエトロシアが失敗に向けて突き進んでいるだろうし・・・やっぱり貴女方って、どうしようもない人達ですよね~」

「・・・・・茶番は良いだろう。日本国並びにグレートブリテン及び北アイルランド連合王国が今回来た目的は何だ?我が国を挑発しにきただけでもなかろう」

「挑発しに来たのは間違いじゃないんすけどね。まあ、アキコとシン。後は任せるわ」

 

アキコの目付が変わる。

 

「相変わらず後始末は私です・・・か。まあ、良いわ。我が国の事を、少しでも知ってもらおうと。そして貴国がこれ以上無駄な多大な死者を出す前に、再考してもらおうかと思ってね」

「今、我が国が何を見ようが、何を説明されようが、国家の目指す世界統治の目標は変わらぬ。もちろん、征服範囲には日本や英連邦王国も含まれるがな。弱き国の外交官よ、本来ならば追い返しても良い所だが、この帝国の強さを知り、なおもたてつく貴国に敬意を表して説明を許す」

「やっぱりコイツらバカっすね。帝都を核攻撃されててこれすかからね。命知らずにも程があるというか・・・というか、何なら今から追加の核報復される間近というか・・・哀れっすね~」

 

苦笑いをする日英の外交官たち。彼らはバッグに入れていた小型有機ELテレビを取り出し、SDカードを入れる。そのテレビはグラ・バルカス帝国人の見慣れた大きい箱、小さい画面、白黒で、画質の悪いテレビに比べ、厚さが無いのではないかというほどに薄く、故に最初彼らはそれがテレビだとは気づかなかった。

 

「これより、日本国についてまとめた簡単な映像を見ていただきます」

 

アキコの説明により、会議に同席していたシエリアが、テレビだと気付く。

 

「そ、それはテレビか?」

「ええ、そうですよ」

「電源の規格が会わないのではないか?」

「これは電池を内蔵しているので、ご心配無く」

「本国から中継するつもりか?大型機械の持ち込みは許可されていないはずだが」

「いえ、データの映像を見てもらうだけです。これにデータは入っていますので」

 

アキコはシエリアにSDカードを見せた。

 

「!!!」

 

絶句。アキコとシンは黙々と、準備を進めるのだった。

 

「さてさて、今頃君達の本国は大変なことになっているだろうねえ・・・」

 

ハルトはマスクの下でニヤニヤしながらダラスを見つめる。

 

「ちなみに、我が大英帝国の盟友、日本国による報復が行われる都市は此方になります」

 

ハルトはクッソニヤニヤしながら核攻撃を実施する13の都市を写した写真をシエリアらに示す。

 

「!!」

 

その中の一枚の写真を見て、シエリアは一瞬動揺したのをハルトは見逃さなかった。

 

「おや? どうやらこの長閑な農村は、シエリアさんにとっては大切な場所みたいっすね~。生まれ故郷だったりします?」

「・・・・・・・」

「図星みたいっすね。まあ、安心してください!! 収穫間近の農作物共々消し炭になるだけですから!!」

「フン・・・・出来もしないことをつらつらと・・・・」

「貴方方の首都が灰塵に帰したのと同じことが起きるのに?」

 

やがて、アキコとシンは準備を終え、テレビを点ける。一方、その頃・・・・

 

 

同時刻

グラメウス大陸日本領区域

日英合同弾道ミサイル部隊基地

 

「総理からの命令を受信! 核ミサイル13発をグラ・バルカス帝国に向けて発射せよとのこと!!」

「ガルマ派の支配地域は外してあるな?」

「全てレギン派並びにキリシア派支配地域にセットされています!!」

「念のため再度確認せよ。問題がないことが確認され次第発射する!!」

「ははっ!!」

 

日英とグラ・バルカス帝国の会談と並行して日本政府は、グラ・バルカス帝国に対して、初の核攻撃を実施することを決定していた。先のシーン暗殺部隊によるテロ事件を受け、日本国内ではグラ・バルカス帝国に対する徹底的な報復を求める声が高まっていた。そこにイギリス政府から、グラ・バルカス帝国皇帝グラ・ルークスの四男、グラ・ガルマの調略に成功したとの報せがもたらされた。彼を日英の傀儡として即位させ、戦後復興を支援する形で日英の企業を進出させ、将来的な古の魔法帝国復活に対する戦力として組み込む。同時に第二文明圏の安定と、神聖ミリシアル帝国に対する牽制として機能させる。これらから核攻撃の対象について慎重に検討が進められた。そして、最終的に13の都市が選定され、レギン派の都市5、キリシア派の都市8が選ばれた。無論、ガルマ・ドスル派は攻撃対象から外されており、日英軍の本格的侵攻までの時間稼ぎになると見込まれている。無論、大規模な上陸作戦は行わず、NATO式への再編や技術支援、除染活動がメインとなるのだが。

 

「目標への座標データ全て正常! 行けます!!」

「よし! 東京での卑劣なテロ事件への報復だ!! マサカド発射!!」

「マサカド、発射します!!」

 

イギリスから提供された在庫処分待ちの核弾頭を乗せた大陸間弾道ミサイルが次々と発射される。無論、彼らにこれを防ぐ力はない。ちなみに、攻撃目標から皇帝のいる、ルナ御用邸は敢えて外している。これは彼らに日英には敵わないことを再考させる余地を与え、交渉相手を残しておく為である。

 

「さて、彼らはどう出るかな?」

「我々に対する知識が少しでもあれば、ガルマ総督のようにむしろ降伏を選ぶはずですがね」

 

日英両国の基地司令官は茶を嗜みながら会話をする。日本側は緑茶、英国側は紅茶である。

 

「まあ、技術レベルが第二次大戦レベルだ。自棄糞になって核爆弾を載せた爆撃機を神聖ミリシアル帝国の首都まで飛ばしたりしてな」

「ないとは言いきれませんが、むしろそうしてくれた方が大英帝国としては好都合かもしれませんね。あの国は模倣しか出来ない癖に、プライドだけは一級品。生かしておけば我々に牙を剥くかもしれません」

「確か、我々と神聖ミリシアル帝国の間には軍事同盟も、協定もありませんからな。カルトアルパスは例外的に市長が日英に好意的なおかげで補給をさせて貰えていますが」

「ゆえに、グラ・バルカス帝国の爆撃機が神聖ミリシアル帝国に向かうのであれば、敢えて無視するのも手でしょう。警告だけは紳士としてしておきますが、まあ撃ち落とすのは無理でしょう」

「B29レベルなら、下手な戦闘機は返り討ちに出来ますからな。問題は、ルーンポリスに滞在する邦人ですか・・・」

「まあ、その辺は政治家が考えることだ。そう言えば、我が大英帝国は戦後を見据え、G5をG8に拡大する予定らしい」

「G8・・・懐かしい響きですね。ちなみにどの国が加わるので?」

「うむ、噂では第一文明圏からはエモール王国、第二文明圏からはムー国、そして第二文明圏外からは新生グラ・バルカス帝国だそうだ。核攻撃されまくったとしても、グラ・バルカス帝国のポテンシャルは高い。我々で飼い慣らしておきたいのだろうな」

「あからさまな神聖ミリシアル帝国外し・・・大丈夫ですかな?」

「さあな。さて、奴らの絶望する顔が楽しみだな」

 

13発の大陸間弾道ミサイルは順調に飛行を続ける。日英の担当者はミサイルの軌道を追尾し、目標に向け着弾するまで監視し続ける。

 

 

第二文明圏列強ムー港湾都市マイカル

マイカル海軍基地乾ドック

 

「・・・・なんて巨大な戦艦なんだ!!」

 

ムーの技術士官マイラスは眼前にそびえ立つ巨大戦艦に圧倒される。グラ・バルカス帝国最強の戦艦グレード・アトラスター級。その四番艦グレード・ガルマが乾ドック入りしていた。皇帝グラ・ルークスが、正室の子であるガルマのニューアーク総督就任に伴い、ニューアーク艦隊旗艦として与えた艦である。四番艦ということだけあり、グレード・アトラスターよりも洗練され、居住性の改善や電子機器の改良が行われている。

 

「しかし、こんな巨大なドックなんて持て余すと思っていたが、まさか本当に使うなんてな・・・・」

 

ムーは将来的な戦闘艦艇の巨大化を見越し、既存のドックを大幅に拡張していた。基本的には完全に持て余していたのだが、今回の巨大戦艦のドック入りに役立ったのである。

 

「日英の担当者が続々とやって来たな・・・・」

 

日英両国は、事実上の傀儡国家となる新生グラ・バルカス帝国の近代化を全面的に支援する予定であり、その第一段として現在グラ・ガルマ総督が指揮権を有する艦艇の近代化改修を実施することに。その先陣に選ばれたのが、戦艦グレード・ガルマであった。

 

「巨大な主砲はそのまま残し、副砲や高角砲、機銃、カタパルトは撤去。代わりに5インチ砲やVLS、CIWSを増設し、最新鋭の電子機器を搭載。艦載機はヘリコプターに変更し、機関もガスタービンに換装・・・・かなり大掛かりだな・・・しかも24時間体制で工事を行う・・・・か」

 

マイラスは日英の担当者から渡された資料を見てそう呟いた。他方では、グレード・ガルマの艦長以下上級士官が日英の海軍基地司令官と面会していた。新生グラ・バルカス帝国海軍の将兵らは、NATO式の訓練を受けることになっており、後日到着予定の練習艦「かしま」にて、電子機器類やガスタービンの取り扱いや補修について訓練を受けることになる。

 

 

第二文明圏列強ムー首都オタハイト

駐ムー英国大使館

 

「・・・・ブレンダン大使、ヒノマワリ王国の大使が参られました」

「うむ。丁重にお通しせよ」

「ははっ」

 

特殊な民族衣装に身を包んだもの達がブレンダン大使の目の前に現れる。

 

「この度は、我がヒノマワリ王国に何の用でございましょうか? そもそも我が国と貴国には国交はございませんが・・・」

「我が大英帝国政府より貴国に対して、最後通牒を突きつけることになった故、お知らせしようと思ってな」

「!? な、何故ですか?! 我が国は貴国に対して何もしておりませんが!?」

「そなたらは大英帝国の要請を無視し、グラ・バルカス帝国に対して従属したそうではないか。かの国への従属は、我が大英帝国並びに同盟国に対する敵対行為であるとも警告したはずだが?」

「・・・・で、ですが! グラ・バルカス帝国はムーはおろか、神聖ミリシアル帝国でさえ敵わないのです! 従属するのは現実的でありましょう!!」

「愚かなものだな・・・目先の平和に囚われ、大局を見誤る。やはり貴国は危険だ。力を見せつけられたらいとも簡単に寝返る。それもまともに情報を集めようともしない。そのような蝙蝠国家は信用するに値しない」

 

ブレンダン大使は本国からの命令書を読み上げる。

 

「我が国の再三に渡る警告にも関わらず、ヒノマワリ王国はグラ・バルカス帝国への従属を決断した。ヒノマワリ王国の従属は、事実上のグラ・バルカス帝国への編入であり、同盟国ムーの安全保障に重大な影響をもたらし、第二文明圏全体の安全保障環境を揺るがすものである。よって、大英帝国政府は事前の警告通り、ヒノマワリ王国に対して宣戦を布告する!!」

 

この時ヒノマワリ王国はまだグラ・バルカス帝国の統治が始まっておらず、帝国軍は駐留していない。ヒノマワリ王国の大使らは暫し待つように要請する。

 

「お、お待ちください!! ひとまずは本国に報告してから・・・」

「これを見てもそう言えますかな?」

 

ブレンダン大使はテレビをつける。

 

『速報です。大英帝国政府は、第二文明圏の都市国家、ヒノマワリ王国に対して、宣戦布告しました。国境線に待機していた戦車部隊を先頭にヒノマワリ王国側へと越境した模様です』

 

その後、ムーとヒノマワリ王国の国境線を越えていくカナダ陸軍仕様の10式戦車やオーストラリア陸軍のブッシュマスター装甲車、そしてイギリス陸軍の様子が映像で流れる。一週間の間に到着していたイギリス、カナダ、オーストラリアの先発隊は予めマイカル空軍基地防衛用で持ち込んでいた戦車や装甲車と共に列車で移動。宣戦布告に合わせて進軍を開始したのである。

 

『ヒノマワリ王国はグラ・バルカス帝国への従属を表明しており、これを大英帝国側が事実上の宣戦布告であると判断したとされています』

 

淡々と流されるイギリス軍の侵攻にヒノマワリ王国の大使らは呆然とするしかなかった。イギリス、カナダ、オーストラリアはヒノマワリ王国へ宣戦を布告。後にハルナガ侵攻とも呼ばれる戦いが始まった。英連邦王国軍は宣戦布告から3日足らずでハルナガ京を陥落。既に一部の諸侯は、所領安堵を条件にイギリスの宣戦布告に合わせて寝返り、英国国王に忠誠を誓い、ハルナガ京までの道案内することを約束しており、戦闘という戦闘が起こらないままハルナガ京へと進軍。タケチノキミ以下王族一家は、ハルナガ京陥落の直前に、同国統治の下準備の為に来訪していたグラ・バルカス帝国の職員やタケチノキミを支持するグラ・バルカス帝国派の諸侯らと共にレイフォリアへと逃亡した。彼らはレイフォリアにヒノマワリ王国亡命政府を樹立し、本国帰還の機会を伺い、グラ・バルカス帝国側は彼らの本国帰還を名目にイギリスとの戦闘に向けて動くことになるのである。

 

「まあ、その頃には民の心はタケチノキミから離れているだろうがな」

 

(続く)

 

 

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