クワ・トイネ公国 公都クワトイネ
「今日で我が国が日英と国交を樹立して一年。我が国もかなり変わりましたな」
首相カナタの秘書官は変わった公都の街並みをみてそう呟いた。国交樹立から一年の間で今までは石造りないし土が剥き出しだった道路はアスファルトで綺麗に舗装された。これまで市内の移動は馬車や人力車が主流であったが、アスファルトで舗装されたことで大小様々な自動車が走りだし、信号や歩行者と自動車・自転車を分けるレーンも整備された。市内の公共交通機関として路面電車とバス路線が整備され、路面電車網は拡張を続けている。普通鉄道はこれまで港町マイハークと内陸部の穀倉地帯を結ぶ非電化の貨物線しかなかったが、マイハークと首都を結ぶ電化路線の建設が進行中。更に首都には上下水道の整備が進行中であり、まだ各国大使館や公王公邸、首相官邸等一部でしか使えないものの衛生的な水が蛇口から出るようになっている。
「そういえばロウリアの状況はどうなのですか?」
「我が国のスパイ並びに英国からの情報によると、ジンハークでは米の価格が上がっており、出兵と重税に不満を抱く南西地域を除く各地の諸侯らが参陣。戦支度が進められていると」
「戦争は避けられませんか・・・・日英から支援は得られそうですか?」
「日本はイギリスが参戦するのであれば、日英同盟に基づき参戦すると。イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは部隊の増強を約束しました。一方で部隊の到着、展開には1ヶ月かかるとのことで、もし仮に間に合わない場合は我々と駐留軍で耐えなくてはなりません」
「そうですか・・・ギムの民間人の疎開を開始する必要がありますね。直ちに連絡を」
「ははっ!」
グレートブリテン及び北アイルランド連合
イングランド ロンドン ダウニング街10番地
「ジャパンは我が国が参戦するのであれば、空母艦隊護衛の為にイージス艦以下護衛艦隊を派遣する用意があるとのこと」
「陸上戦力は?」
「陸上戦力につきましては、否定的な回答でした。とはいえ、現状クワ・トイネ公国陸軍の戦力はロウリア王国を質で遥かに上回っており、海軍と空軍中心の援軍で充分かと。ですので陸上戦力はヘリコプター部隊を中心とし、武器弾薬を支援するべきかと」
スターマン首相以下政府の主要閣僚がロデニウス大陸の地図を前に対ロウリア王国を想定した戦争計画の立案を行っていた。英国は既にMI6をロウリア王国へ送り込んでおり、国内情勢の正確な情報を掴んでいた。内容はファイブアイズやクワ・トイネ公国、クイラ王国と共有されており、援軍派遣の準備が進められている。ちなみにアメリカが消滅したことにより日本が代わりにファイブアイズに加盟している。
「敵にはワイバーンという、戦闘機より遅くヘリコプター並みの速さで飛ぶ航空戦力があると聞くが」
「それにつきましては、エジェイに展開している我が国の航空隊にジャパンの応援部隊を加え、洋上に展開中の原子力潜水艦と連携して開戦と同時に航空基地を叩き潰す予定です。航空戦力の位置は我が国並びにロウリア王国軍内部の買収したスパイにより把握しております」
その後イギリスを中心とする航空部隊は旧在日米軍現航空自衛隊嘉手納基地を経由してエジェイへと向かった。戦闘機部隊だけでなく、補給物資や人員を満載した輸送機も次々と到着し、整備を受けた上で離陸していく。その様子に沖縄の反米親中勢力は抗議したが、日英両政府は無視したという。ちなみに在日米軍基地が多数設置されていた沖縄県では旧在日米軍基地に自衛隊の部隊が移転しており、那覇空港は海上保安庁を含めて嘉手納基地へ移転し、普天間基地は日英共同使用となり、辺野古への移転が完了するまでの間は使用されることに。その他施設は整理縮小が行われ過剰な施設は次々と返還されていくことになる。
クワ・トイネ公国 公都クワトイネのとあるホテルの一室
「・・・・日本国にグレートブリテン及び北アイルランド連合王国・・・・我が国より遥かに優れた国力を持つ国かもしれない・・・もし仮に衝突することがあれば・・・」
商人に扮してクワ・トイネ公国に滞在するとある国の情報局員は最近オープンしたばかりの宿泊するホテルの一室でそう呟いた。
「やれやれ、この報告書を信じる者は情報局だけなんだろうな・・・」
その後彼はホテルをチェックアウトし、ロウリア王国との国境の町ギムへと向かう。
「もうすぐ戦争が始まる。そして日英が参戦し、その実力を世界に披露することになる。少しでも多くの情報を集めなくては・・・」
(続く)