ニュージーランド南東1500キロ
パラディオン共和国星辰の森
「・・・・・・はあ、はあ、はあ・・・」
ニュージーランドの南東1500キロの沖合いに浮かぶ島国パラディオン共和国。王政時代も含めれば1000年以上の歴史を持つ同国は今や崩壊の時を迎えようとしていた。
「・・・・だめ・・・・もう脚が動かない・・・」
古来より伝わる祭祀の杖を持つ少女がその場に座り込む。彼女の名はイヴ。パラディオン共和国における当代の巫女であり、大いなる闇を封印する鍵の一つを有する継承者である。
「じゃあ、ここからは僕がおんぶするからさ、早く!!」
彼女と同い年の少年がイヴの背中に背負い、再び走り出す。彼の名はアウラム。イヴの幼馴染みであり、同時にパラディオン共和国当代の巫女の守護者を任され、更には婚約者でもある若き少年である。
「もう少しで秘密の港に着く。もう少しの辛抱だ!!」
二人を励ます青年。彼の名はニンギルス。イヴの兄であり、同時に共和国最強の槍使いでもある青年である。彼ら3人は、パラディオン共和国の首都から命からがら脱出し、海を越えて第三国へ亡命するべく星辰の森を駆け抜けていた。
「幸いにも敵は追ってきていない。もう少しだぞ!!」
3人は森を抜け、北西の海岸に出る。そこには一隻の小舟が待機していた。
「ガウ! ガウガウ!!」
待ちくたびれたぞ!と言わんばかりに小さな竜が鳴く。
「待たせたねイムドゥーク。大丈夫、イヴも一緒だから!」
アウラムが子竜に彼女の顔を見せる。イヴは完全に疲れはてており、彼の背中でぐっすりと眠っている。
「全員乗ったな? 出港するぞ!!」
3人と1匹の竜を乗せた小舟が島を離れる。
「・・・・燃えてる・・・」
「ああ・・・・燃えているな・・・・」
段々遠ざかるパラディオン島。島の中心部に位置する首都パラディオンから立ち上る黒煙は空を焦がし、遠くから見ても悲惨な状況であることが分かる。
「この舟はどこに向かうのかな・・・ニンギルス」
「さあな。だが、この小舟は祭祀の杖が導く先にしか進まない。恐らくはこの先に別の国があるのだろう。今はそれを信じ、イヴを守ること。それだけを考えれば良い」
小舟はイヴの持つ祭祀の杖に反応して加速する。帆を持たず、何の推進力のない小舟はぐんぐん加速し、島は更に遠くなる。
「・・・・お父さん・・・・お母さん・・・・」
イヴが燃え盛る島の中心部を見て涙する。
「イヴ・・・・」
アウラムがイヴの隣に立ち、優しく手を握る。するとイヴはそれを強く握り返す。
「アウラム、貴方は絶対に私の隣にいて。アウラムまで喪いたくないの・・・」
涙を流すイヴ。彼女は当代の巫女とは言え、まだ10歳にも満たない少女である。本当ならまだまだ両親に甘えたい年頃。アウラムは自分も泣きたい気持ちをぐっと堪え、イヴを抱き締める。
「・・・・・そろそろ中に入れ。風邪を引くぞ」
ニンギルスに促され、二人は船内に戻る。一方、パラディオン共和国首都パラディオンでは・・・・
パラディオン共和国首都パラディオン
「パラディオン軍の9割を殲滅!! 残りはパラディオン城に立て籠っている模様!!」
「今更城・・・・か。飛行艦にて城ごと吹き飛ばしてやれ!!」
「了解!!」
首都上空には飛行艦が飛び交い、制空権を完全に掌握。航空支援を受ける陸軍部隊はパラディオン市街地を縦横無尽に駆け回る。また1人、また1人とパラディオン軍の兵士が倒れていく。
「今更甲冑に剣、そして槍に騎馬隊なんて時代錯誤だな!!」
パラディオン軍の騎馬隊が突撃するも、呆気なく返り討ちにされる。
「探せ探せ!! パラディオン市内の社に眠りし秘宝を探し出せ!!」
異国の兵士達は手当たり次第に怪しいと思った場所を破壊していく。中には尋問と称して婦女暴行や民間人虐殺に手を染める兵士の姿もある。
「社の中をくまなく捜索しましたが、秘宝らしき物はありません!!」
「それどころか、誰もいません!!」
「あり得ぬ!! 社には祭祀の杖を持った巫女がいるはずだ!! 床を剥がし、穴を掘れ!! 見つかるまで探せ!!」
既に祭祀の杖を持った巫女は、護衛の兵士2名と子竜1匹と共に島を離れたことを知らない彼らは、ありもしない宝を探し続ける。翌日、パラディオン島全体を制圧。ここにパラディオン共和国は消滅した。一方でこの様子は、日本の地球観測衛星だいち5号やイギリスが開発し、日本のH-3ロケットで打ち上げられたスパイ衛星パイオニア1号が捉えており、日英両国はオーストラリア、ニュージーランド両国に対して、両国並びに旧南太平洋諸国の領海領空の警戒監視態勢を強化するよう働きかけることになる。
ニュージーランド空軍P1哨戒機
「我が国の南の方では侵略戦争・・・下手すれば我が国が巻き込まれかねんな」
空から監視の目を光らせるニュージーランド空軍のP1哨戒機。日本から輸入した最新鋭哨戒機が今日も祖国防衛の為に飛行する。
「政府は日本とイギリスからの情報提供や、自国の安全保障強化の為に本格的な戦闘機部隊を編成することに決定したそうですね。機種は何になりますかね?」
「値段のユーロファイタータイフーンか、オーストラリア空軍との部品共通化と保守点検を考慮してF35ライトニングか・・・恐らくは後者だな」
「機長! 国籍不明の小型船を確認! 6時の方向、真っ直ぐウェリントン方面に向けて航行中!!」
機長と副機長の雑談が見張り員の報告により遮られる。
「もしかすると、侵略された国からの亡命者の可能性がある。また、真っ直ぐウェリントンに向かっているのも気になる・・・直ちに向かう。副機長、進路を変更してくれ。見張り員は小型船から目を反らすな!!」
「「アイアイサー!!」」
パラディオン共和国亡命船「ガラテア」
「・・・・・航海を始めて2週間。未だに島は愚か、船すら見えねえ・・・」
「しっかりしろニンギルス! お前が倒れたらイヴが悲しむだろう!」
「うう・・・すまないアウラム。だが、既に水はなく、食料も底をついた。仮に船が陸地にたどり着いたとしても、仏になってるかもしれんな・・・」
船縁で周囲を見渡す二人。
「・・・・・お、おいニンギルス!! 何かが・・・巨大な鉄竜が此方に向かって来るぞ!!」
「おいおい、ここは大海原だぞ。それに鉄竜なんてあり得る訳・・・」
次の瞬間、甲高いジェット音を響かせながらニュージーランド空軍のP1哨戒機が亡命船「ガラテア」の上空に飛来する。轟音を聞き付けたイヴとイムドゥークも外へ出てくる。
「な、何だあれは?」
「見たことのない鉄竜だ・・・・いや、そもそも生き物なのか?」
「・・・・・大きい・・・」
「ガウ・・・・」
暫くP1哨戒機は亡命船「ガラテア」の上空を旋回する。アウラムらはただポカーンと哨戒機を眺める。
「・・・・・取り敢えず手を振っておくか?」
「もし俺達を助ける意志があるのなら、反応するはずだしな・・・」
その後彼らは上空を旋回するP1哨戒機に手を振り、救助を要請する。通じてるかは分からなかったものの、暫くすると哨戒機は現場を離れ、どこかへと飛び去っていった。
「・・・・どうなるのか・・・な?」
「分からん。だが、何かは起きるだろうな」
「今は助かることを祈るしかないわね・・・・」
ニュージーランド空軍P1哨戒機
「本部、此方第三哨戒飛行隊。ウェリントン方面に向けて洋上を航行する小型船を確認。船内には子供が2人、青年の男性が1人、竜らしき生命体が1匹乗っている。彼らは本機に対して手を振っており、救助を要請しているものと思われる。至急、船舶を向かわせられたし」
(了解した。周辺海域に展開している船舶を探す。暫くその場で待機されたし)
「了解」
数十分後
(一番近い海域にオーストラリア海軍の哨戒艦が展開していることが確認された。座標データは既に送付している。第三哨戒飛行隊は基地へ帰投せよ)
「了解、基地に帰投します」
オーストラリア海軍哨戒艦アラフラ艦橋
「本艦の進行方向左手に小型船を視認!!」
「ニュージーランド空軍の哨戒機より通報のあったヤツだな」
「帆もエンジンも積んでないのに航行出来るなんて・・・どんな魔法だ?」
ニュージーランド空軍からの通報を受けて現場に急行したオーストラリア海軍の哨戒艦アラフラは、非常に小さな小型船を視認する。帆はなく、エンジンらしき物も搭載していない謎の船。やがて小型船と並走すると、小型船が速力を落とし始め、やがて停船する。
「小型船、停船しました」
「どうやって速力を調整しているのか・・・・まあ、良い。小型船に可能な限り近付けろ。接舷出来そうか?」
「小型船が小さすぎて不可です」
「では、小型ボートを出せ。救命胴衣を忘れるなよ!」
「ですが、竜らしき生命体用の救命胴衣は・・・・」
「ああ・・・・まあ、なんとかせい!!」
「畏まりました」
パラディオン共和国亡命船「ガラテア」
「こ、今度は灰色の船だ!!」
「見たことのない旗を掲げているわ!!」
哨戒艦アラフラに掲揚されているオーストラリア海軍旗を見たイヴは指を指しながらそう叫んだ。
「お、おい! 船が停船したぞ!?」
「兄さん、おそらく祭祀の杖はあの船に乗り移れと言ってるわ。きっと祭祀の杖により本船は灰色の船に導かれたのよ!!」
「・・・・イヴ、お前の言葉を信じるぞ」
彼らは全員荷物をまとめ始める。やがて小型ボートが降ろされ、ガラテアに向けて進んでくる。
「Do not be afraid!! We are the Royal Australian Navy!! We are here to help you!!(怖がらないでください!! 私達は王立オーストラリア海軍です!! 私達は貴女方を助けに来ました!!)」
「・・・・彼らはオーストラリアという国の海軍みたい。私達を助けに来たみたいよ」
「じゃあ、僕達助かったんだ!!」
「ガウ!!」
喜びを爆発させるアウラムとイムドゥーク。やがてオーストラリア海軍の小型ボートが接舷。オーストラリア海軍の兵士が乗り込んでくる。
「これより貴女方を彼方の船まで移送します。万が一に備えまして、此方の救命胴衣を着用してください」
「お荷物は我々がお持ちします。どうぞ順番にお乗りください」
「まずはイヴとアウラムが乗せて欲しい。彼らが一番弱っている」
「承知しました。お二人方、お足もとにお気をつけください」
屈強な白人の海軍軍人らに軽々と持ち上げられるイヴとアウラム。やがて小型ボートは洋上の哨戒艦アラフラに向けて移動する。
「・・・・鉄の船?」
「凄いわ・・・魔法の類いが一切使われてないわ・・・」
こうしてパラディオン共和国から命からがら脱出したイヴ、アウラム、ニンギルス、イムドゥークはオーストラリア海軍により救助された。彼らは病院で検査を受けるためにウェリントンまで直行することになるのだが、彼らがパラディオン共和国から既に脱出していたことを知ったとある国は後にニュージーランド政府に対して、不当な要求を突きつけることになるのである。
クルセイリース大聖王国聖都セイダー
聖城テンジー城軍王執務室
「何?! 祭祀の杖とそれを扱う巫女は既にパラディオン島から脱出していただと!?」
軍王ミネートは部下からの報告に言葉を荒げる。
「はい。パラディオン共和国中くまなく捜索しましたが、全く手掛かりが掴めませんでした。また、捕虜に拷問しましたが、誰1人として居場所を吐きませぬ」
「ぐぬぬ・・・・恐らくは祭祀の杖が導く先に行ったのだろうな・・・故に居場所は分からぬから知らなくて当然・・・・か。祭祀の杖は古の魔法帝国を封印すると共に、古代兵器に関する情報を秘めた秘宝・・・・他国の手に渡してはならぬ!! パラディオン共和国に一番近い国はどこだ!?」
「パラディオン共和国より北西の方角にニュージーランド、そしてオーストラリア連邦という国がございます。詳しい詳細は不明ではありますが、最近よく名前を聞く日本国やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国と深い関係を有している模様です」
「ぐぬぬ・・・日本国にグレートブリテン及び北アイルランド連合王国か・・・・ニュージーランドやオーストラリアに下手に手を出せば彼らが出てくる・・・か。将来的には倒さねばならぬが、今はまずパラディオン島の統治が優先だ。統治が安定し次第、ニュージーランド、その次にオーストラリアを攻め落とすぞ!!」
「承知!!」
クルセイリース大聖王国はパラディオン島の統治を開始。将来的なニュージーランド・オーストラリア侵攻作戦実施に向けての準備も進めることになる。
「一旦は祭祀の杖と巫女はお前達に預けよう。だが、最終的にはお前達の国ごと頂く!! ニュージーランドにオーストラリア連邦よ、覚悟しておけ!!」
この時駐パーパルディア皇国イギリス大使館では、ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン大使が、
「そろそろ核兵器のお代わりがしたいんだけど?」
と、部下の男女カップルに対して狂った発言をしており、核兵器がクルセイリース大聖王国に向けられることになるのをこの時は誰も知らない。
「汚物は核で消毒。死は救済だよ」
(んな訳あるか・・・・)
(狂ってる・・・・)
神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス
駐神聖ミリシアル帝国日本領事館食堂
「・・・・・・・」
急にアキコの脳内に電流が走る。
「どうしたのお姉さま? 急に箸が止まったみたいだけど?」
「いや、何か嫌な予感がしたのよ」
「ま、まだ何もしてないです~!! まだシンと殴り合い宇宙してないから!!」
「違うのよアイ。外部から面倒ごとが持ち込まれそうなのよ」
寝台特急でカルトアルパスまで帰ってきたアキコはこの日、久々に従妹アイが1人で切り盛りする領事館食堂でカツ丼(味噌汁、沢庵付き)を食べていた。
「お? 久しぶりだなアキコ。今日から領事館業務再開か?」
「アキラ、あんたは相変わらず領事館勤務なのね。てっきり練習艦と一緒にムーに行ったかと思ったわ」
「俺もそう思ったンだがな、今回は違うみたいなンだな。まあ、たまにはヒロシが1人で頑張って貰わないとな!!」
「どうせケントも一緒だろうしね」
「あ、そうだ。ちなみにケントって結婚してるの知ってたか?」
「知ってる知ってる」
「たぶん知らないのヒロシだけじゃない?」
「そうか? シンは知らなかったみたいだぜ? まあ、お相手は同じ医官の2佐だけどな。それよりアキコ、箸が止まってるじゃねえか。どうしたンだ?」
「何か嫌な予感がして・・・」
「お? 遂にシンとやったのか?」
「いや、やったけどそれは違うし、嫌な予感にはならないでしょ」
「分かンねえぞ? ヒロシがアキコのアレをシンに奪われたショックのあまりにムーから引き返してくるかもしれンしなwww」
「その時は従弟かミカドアイHDに頼んで何とかするわ。いい加減諦めろよあのバカ」
「おっかねえおっかねえ・・・アイ、何か食うもんねえのか?」
「時間切れですー、昼間の営業は終了しましたー」
「ケチケチすンなって」
「はあ・・・・問題児共が・・・」
アキコが再び箸を進めようとした時だった。領事館職員が食堂に駆け込んでくる。
「根布領事、本国から緊急連絡です! 至急領事執務室までお越しください!!」
また面倒ごとが増えたな、そう思いながらアキコは執務室に戻るのであった。
「じゃあ、残り食っとくか!!」
「お姉さまと間接キス!?」
「気にしたら負けなンだよなあ・・・・ごちそうさン」
ニュージーランド首都ウェリントン
ビーハイブ
「さて、今回保護した少年少女をどうするべきかな?」
ニュージーランドの政治の中枢ビーハイブ。今回オーストラリア海軍が救出した3人と1匹の処遇を巡り、首相も参加する会議が行われていた。
「まずは国防省から。オーストラリア海軍との合同での事情聴取に対して彼らは、パラディオン共和国から命からがら脱出して来たと申しておりました。彼らは隣国・・・と言ってもかなり距離はありますが、クルセイリース大聖王国に侵略され、祭祀の杖とそれを扱う巫女を護衛しながら脱出。どういう仕掛けかは分かりませんが、祭祀の杖が導いた先がウェリントンであったとのこと。侵略の目的は祭祀の杖と資源の確保が目的である、とのことでした」
「資源はまあ、分かるが何故祭祀の杖とやらを求める?」
「イヴと名乗る巫女によれば、祭祀の杖は古来より伝わる魔道具であり、かつて存在した古の魔法帝国を封印する7つの鍵の内の一つでもあるとのことでした。他の6つがどこにあるかは分からないそうですが、クルセイリース大聖王国はこの魔道具を強く欲しているようです」
撮影された祭祀の杖の写真や資料が配られる。
「う~む・・・・国防相、まさかクルセイリース大聖王国の目的はその古の魔法帝国復活なのか?」
「いえ、そうではないそうです。巫女によれば、クルセイリース大聖王国は祭祀の杖が持つ古代の魔法技術が欲しいのではないか? とのことでした。まあ、魔法技術を解析してしまうと、最終的には古の魔法帝国が復活してしまう可能性があるそうですが」
「意図はしていないが、結果的にそうなる・・・・か。これは厄介だな」
首相は頭を抱える。何れはクルセイリース大聖王国は巫女と祭祀の杖がニュージーランドに渡ったことに気付くだろう。引き渡しを拒否した場合、パラディオン共和国に対して行ったような武力行使に出る可能性が高い。しかし、異世界転移前は周辺国を友好国に囲まれ、アメリカと軍事同盟を結んでいたニュージーランドの軍備は極めて脆弱である。戦闘機を持たず、基本的に防衛は隣国オーストラリアに依存している。そしてクルセイリース大聖王国に関する情報が無さすぎる。
「今奴らの攻撃を受けた場合どうなる? 我が軍は勝てるのか?」
「オーストラリア連邦からの援軍がなければ厳しいかと・・・また事前に我が国の領域に展開させておく必要もあります」
「う~む・・・かと言っても、古の魔法帝国に繋がる情報を持った彼らを引き渡す訳にもいかぬな、外相」
「その通りです。既にイギリス大使館からは我が国の防衛戦力を増強する用意があり、仮にクルセイリース大聖王国が侵略する場合、報復で核兵器を使用することも辞さないと言ってきております。要は、彼らを引き渡すな。と・・・」
「オーストラリア連邦からは何かないのか?」
「至急、援軍を送ることを確約して頂けました。また、カナダも戦闘機を派遣する用意があると」
「あとは日本・・・・か。外相、彼らを日本に逃がすことは出来ないか? 日本はクルセイリース大聖王国から一番離れた場所にある。軍の派遣は求めない代わりに、身柄は引き取ってくれ。この線で交渉してくれないか?」
「成る程・・・・確かに日本は未だに軍の派遣を嫌いますからな。行けるかもしれません」
「では、我が国の方針としては以下の三つとする。仮にクルセイリース大聖王国が身柄の引き渡しを要求した場合、これを断固として拒絶すること。そして侵略に打ってでた場合、イギリス、カナダ、オーストラリアと共にこれを撃退する。万が一に備え、少年少女と祭祀の杖は日本に退避させる。良いな?」
「「ははっ!!」」
こうしてニュージーランド政府の決定が各地に通達される。ニュージーランド軍は予備役を召集。オーストラリア、カナダの増援部隊がそれぞれ本国を出発。オーストラリア空軍は最新鋭のステルス戦闘機F35A、カナダ空軍はユーロファイタータイフーン(CF-18 ホーネットの後継機としてイギリスから購入)を派遣。ニュージーランド国内の空軍基地にて駐留を開始した。また、イギリス陸軍はグラメウス大陸の大陸間弾道ミサイル基地に配備している核弾頭搭載型のICBMの照準をクルセイリース大聖王国に向け、万が一の際には即座に報復出来る態勢を整えた。
(・・・・とは言え、グラ・バルカス帝国とは戦争中な上にリーム王国やメスマン帝国がキナ臭い動きをしている・・・各地に軍が分散している・・・万が一の際にはロデニウス連合にも援軍を要請しなくてはならぬな・・・・)
ニュージーランドの首相は国民の生命と財産を守る為に取れる手段をすべて取るべく動き出す。
メスマン帝国首都アンコラ
「・・・・・・わ、ワシはまだ死にとうない・・・」
「す、スルテン!!」
メスマン帝国皇帝メトメフ6世は病に伏せていた。日英からの要求を受け入れつつも、メスマン帝国を延命し続けていたスルテンも死の時が迫りつつあった。
「わ、ワシが死んだら・・・・瀕死の病人は実に死んでしまう・・・い、嫌だ・・・死にとうない!!」
過去に日英により瀕死となっていたパーパルディア皇国に宣戦布告したメスマン帝国。皇国に負け続けたことへの復讐のみならず、皇国からの多額の賠償金や債務が積み重なり、戦争で皇国を倒し、借金や賠償金の支払いを帳消しにすることが宣戦布告の理由であった。しかし、日英の介入により領土の一部は取り返せたものの、過去の条約で定められた賠償金の支払いや借り入れしている債務の返済は免除されず、戦費や新たな領土の統治で財政は更に悪化した。日英からの投資を呼び込むことで何とか国家としての体裁を保ち続けてきたメトメフ6世であったが、日英に従属する形の外交政策は国民の反感を招き、国内の不満は蓄積する一方であった。
「む、息子に伝え・・・よ。絶対に日英と争ってはならぬ・・・争えば帝国は崩壊・・・・ぞ・・・」
「か、閣下!!」
この日、メスマン帝国皇帝メトメフ6世は病により息を引き取った。これによりメトメフ6世の息子がメトメフ7世として即位。新たに皇帝となったメトメフ7世は父の政策を軟弱姿勢、弱腰外交と強く非難。強く美しいメスマン帝国を取り戻すと議会で演説し、同時に日英の企業や個人が所有する財産の差し押さえを断行すると表明。日英への対決姿勢を鮮明にした。しかし、事前にメトメフ6世の様態が芳しくないことや、日英への対決姿勢を示すことが容易に想像されたことから、イギリス政府は事前にパーパルディア皇国を中心とするフィルアデス大陸条約機構軍をメスマン帝国に差し向けていた。パーパルディア皇国海軍を中心とする艦隊30隻(パーパルディア皇国海軍20隻、アルタラス王国海軍7隻、ポルスカ共和国海軍2隻、イギリス海軍1隻)が首都アンコラ沖合いに展開。なお旗艦はイギリス海軍の新型フリゲート艦(もがみ型ベースに、31型フリゲート艦の要素を加えた)「キャンベルタウン」に置かれている。
メスマン帝国懲罰艦隊旗艦
イギリス海軍フリゲート艦「キャンベルタウン」
「ははは! 愚かな皇帝を持つと苦労するな。我が大英帝国は今や世界を統べる国である!! 帝国を敵に回して助かると思わぬことだな!!」
外交交渉と並行して艦隊による威圧を継続。メスマン帝国海軍の制止を無視して実弾を用いた演習やメスマン帝国海軍艦艇に対する異常接近等、挑発行為を続けており、あちらから手を出してくるか、外交交渉が成立するかを待っていた。また、イギリスはメスマン帝国国内の親日英派のグループを通じて武装蜂起の準備を進ませており、仮にメトメフ7世が日英に宣戦布告した場合、国内各地で近代兵器で武装した勢力が武装蜂起する手筈にもなっていた。イギリス政府は彼らが打ち立てる政府を国家承認し、ゆくゆくはメスマン帝国全土を親日英派で統一させる予定であった。
「つまりは、詰んでいるのだよ!!」
数日後、メスマン帝国政府は日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに対して資産の没収、邦人の拘束、国交断絶を一方的に通告。G5に対して宣戦布告した。待ってましたと言わんばかりにメスマン帝国各地では親日英派が武装蜂起。メスマン帝国懲罰艦隊は首都アンコラに対して艦砲射撃を敢行し、沿岸部を徹底的に破壊。メスマン帝国海軍艦隊は懲罰艦隊の砲撃と、密かに展開していたオーストラリア海軍の潜水艦コリンズ(たいげい型のオーストラリア海軍仕様)の魚雷攻撃で全滅。首都アンコラの皇帝宮殿に対して、キャンベルタウンによる対艦ミサイル攻撃が実施された。この攻撃により、皇帝メトメフ7世は瓦礫の下敷きとなり死亡。指導者を喪い、各地で発生した反乱軍に一方的に敗北し続けたメスマン帝国は戦闘開始から5日で降伏。結ばれたアンコラ条約では、帝政の廃止、共和制への移行、領土の割譲、軍備制限、フィルアデス大陸条約機構並びにフィルアデス連合への加盟、財閥解体、日英企業への優遇措置等が盛り込まれた。賠償金こそは課せられなかったものの、かつてはパーパルディア皇国と並ぶ大国であったメスマン帝国は消滅。以後、国名をトゥルキエ共和国と改め、親日英派の国として細々と存続していくことになる。トゥルキエ共和国は、クイラ王国と並ぶ資源大国として、日英からの投資が盛んとなり、急速な経済成長を遂げることになるのである(これまでは稼いでも殆どが皇帝や官僚の懐に消えており、国民には還元されていなかった)
イギリス「やったぜ、石油をゲットなんやで」
日本「流石はアメカスの産みの親だな・・・・・・」
(続く)
コンステレーション級を捨てて、もがみ型フリゲートを買えばアメリカ海軍の艦艇不足解消に繋がるのでは?