日英同盟召喚   作:東海鯰

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妹大好きなパラディオン

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

イングランド ロンドンのとあるホテルのロビー

 

「・・・・今から連合王国の皇太子が来るのか・・・・緊張するな・・・」

 

ホテルのロビーでは、連合王国国王チャールズ3世の招待を受けてバッキンガム宮殿を訪れる予定のイヴとアウラムがスーツ姿で待機していた。

 

「考えてみれば、これから会う人達は今まで訪れたニュージーランドとオーストラリア連邦の国王や皇太子でもあるのよね・・・・そりゃあ、緊張するわよね・・・・」

 

二人とも他国の国家元首や皇太子に会うのは初めてであり、失礼のないようにと何度も身だしなみを確認する。外ではマスコミはロンドン市民が集まり、皇太子の到着を待っている。やがて外から歓声があがる。

 

「どうやら到着したみたいね。行きましょう、アウラム君!」

「行こう、イヴ!」

 

二人は席を立ち、ホテルの出口へと向かう。

 

「初めまして。私はパラディオン共和国・・・いえ、英連邦パラディオン王国第216代星杯の巫女、イヴ・カグラ・パラディオンと申します」

「僕は英連邦パラディオン王国第216代巫女イヴの守護者、アウラム・ジャックナイツ・パラディオンです。よろしくお願いいたします」

 

二人はホテルまで迎えに来たウィリアム皇太子と握手をかわす。軽い談笑をした後に二人は皇太子と共にホテルの外へ出る。

 

「・・・・凄いや・・・・ロンドンにはこんなにも人がいたなんて・・・」

 

世界の首都ロンドンに住まう人々の数に圧倒されるアウラム。皇太子に促される形でイヴと共に聴衆に手を振る。すると更に大きな歓声があがり、二人は困惑しながら車に乗り込む。周囲を警察車両に囲まれながら二人は式典会場へと向かう。

 

「大英帝国は本当に凄いわ・・・・凄いとしか言いようがない」

「ニュージーランドやオーストラリアも凄いと思ったけど、大英帝国に比べたら田舎町にしか見えないな・・・・」

 

車の中からロンドンの町並みを見渡すイヴとアウラム。やがて皇太子が車は間も無く式典会場に到着することを伝える。

 

「もうすぐ式典会場に到着か・・・・」

「あれが今回の式典会場!? 凄い!! こんな立派な建物、見たことないわ!!」

 

基本的に森の中にある社で暮らすイヴにとって、巨大な石造建築の建物は初めて見る代物だった。

 

「アウラム君は昔首都に住んでたんでしょ? こんな豪華な建物とかあった?」

「住んではいたけど、基本的にそっちに泊まり込むことが多かったし(ニンギルスが帰してくれない)、僕は次男だったからあまり帰らなくても咎められなかったから、あまり記憶はないんだよね」

「言われてみればそうね」

「でも、ニンギルスは招待されなかったのか。何か可哀想だな・・・」

「たまには良いのよ。兄さんは私とアウラム君に近すぎて他の人を寄せ付けなかったりするし」

「ニンギルスは確かイヴの両親が産んだ子では唯一の男子だったし、ニンギルスに懐いたのがイヴだけだったから大切にしたかったんだろうな」

「まあ、御姉様皆死んだけどね。ほぼ自滅で」

「神様も酷い悪戯をするよ・・・まあ、僕はおかげさまでイヴの守護者だし、お父さんは天井に頭を打ち付けるぐらいには喜んでたし・・・」

「そりゃあ、ただの冷や飯食いの次男坊が急に祭祀の杖の継承者の守護者になりました、なんて聞いたら喜ぶわよ」

「まあ、お母さんもお父さんも兄さんも皆たぶん死んだけどね。クルセイリースのせいで」

「「・・・・・・・」」

 

何とも言えない気持ちになりながらも、二人や皇太子を乗せた車は歓迎式典の会場であるホース・ガーズに到着する。

 

「あれは何だろう? 黒い帽子を被り、赤い服を来た人が沢山いるみたいだけど?」

「あ! アウラム君、あれが国王夫妻じゃない?!」

「へ?!」

「・・・・・・・・・・(やはり年相応の子供達なんだな・・・・)」

 

後に二人を迎えに行った皇太子は、

 

「歳が離れすぎていて何を話せば良いのかが全く分からなかった。我が子ならまだしも、相手は実質的な女王と王配である。女王に対して失礼な発言は出来ないので、車内ではあまり会話が出来ず、二人が気になった建造物に対する補足説明ぐらいしか出来なかったが、二人はそれで満足している様子であった」

 

と述べたという。当の二人はあまり話しかけて来ない皇太子を見て、

 

「車内でも変に砕けたりはせず、己を律している・・・流石は大英帝国の皇太子。これが国を背負う者の覚悟か・・・僕も見習わなくては・・・・」

「無口な方なのかしら? でも、悪い人ではないみたいね。やはり皇太子という立場は大変なのね・・・・」

 

と思ったという。

 

(これが世界の中心、英連邦王国国王・・・・世界20を超える国の国王・・・・)

(かなりのお爺ちゃんなのに、即位したのは割りと最近なんだ・・・)

 

到着した二人は出迎えた国王夫妻と握手を交わした。幾つか当たり障りのない会話をした後に二人は国王夫妻に連れられ、大英帝国の首相や陸海空軍の関係者と握手を交わす。やがて歓迎式典の一環として、英連邦パラディオン王国の国歌(パラディオン共和国時代と変わらない)が流れる。イヴは懐かしさと戦争前の祖国を思いだし、思わず涙が出そうになる。

 

(脱出の際に持ち出したパラディオン国歌の楽譜、イギリス側に渡してはいたけど・・・まさかここで聴けるなんて・・・)

 

英連邦パラディオン王国国歌

「我は巫女と守護者に捧げり」

 

1.

我は巫女と守護者に捧げり

我が心を我が身を

慈愛と生命に満ちた国

我らが祖国パラディオンに

慈愛と生命に満ちた国

我らが祖国パラディオンに!!

 

2.

我が心は燃え盛る

汝への忠誠に

自由と平和に生きる国よ

輝かしきパラディオン人の国よ

自由と平和に生きる国よ

輝かしきパラディオン人の国よ!!

 

3.

我は神と遣いを信じ奉ずる

忠実に自由に

祖国よ我は何時までも

揺るがず忠実であり続けん

祖国よ我は何時までも

揺るがず忠実であり続けん!!

 

4.

我に力を育み給え

我が心に我が身に

生と死を捧げる為に

聖なる祖国に

生と死を捧げる為に

聖なる祖国に!!

 

その後イヴはチャールズ3世と共に近衛兵を閲兵。互いに苦労した過去を語り合いながら近衛兵の間を抜けていく。やがて英王室所有の馬車が現れる。

 

「凄く豪華な馬車・・・・」

「馬車を使わなくても良い国力であるにも関わらず馬車・・・イギリスは本当に凄い国だ・・・・」

 

イヴは国王チャールズ3世、アウラムは王妃カミラと共に馬車に乗り込む。彼らは馬車パレードでバッキンガム宮殿へと向かう。

 

「あれがパラディオンからやって来た女王と王配らしいぞ!!」

「女王は紫色の髪か・・・完全に異世界だな!!」

「いやいや、ここは異世界だろ!!」

「完全に老夫婦と孫みたいな感じだな!」

「God save the King!」

「God save the Queen!」

「でも、形式上は女王ではなく、魔道具を操る聖職者らしいぞ?」

「でも彼らの本国では神の遣い扱いだから、ウチでいう総督みたいなもんか?」

「まあ、滅んでしまったみたいだがな」

「なお我らが大英帝国が再建しに行く模様」

 

馬車パレードを見ようと押し寄せたロンドン市民の歓迎を受けながら彼らはバッキンガム宮殿へと向かう。沿道に集まった市民に手を振り、パラディオンへの理解と浸透を図る。ちなみに大英帝国側は、

 

こんな健気な子達の国が滅ぼされたんですよ?

しかも侵略者は古の魔法帝国を復活させるかもしれないんですよ?

その侵略者は、ニュージーランドやオーストラリアにも侵略しようとしているんですよ?

国王陛下が治める国への侵略、皆様許せませんよねえ?

よろしい、ならば戦争だ!!

 

という世論を形成するのが目的だったりする。道中、イヴとアウラムは各々同乗した相手と談笑しながらバッキンガム宮殿に向かう。特にアウラムは王妃と非常にリラックスした態度で会話が弾んでおり、満面の笑みを周囲に見せていた。対するイヴは国王と隣合わせということや、馬車に乗るのも初めてであり、終始緊張していた。その後二人は国王夫妻の案内を受けながら、宮殿内の各地を巡った。宮殿内の様々なイギリス王室コレクションを閲覧した他、二人は叙勲式に臨んだ。

 

((・・・・・き、緊張する・・・・))

 

形の上では共和制であるパラディオン共和国だが、大統領は存在せず、民衆から選挙で選ばれた議員の中から選ばれた宰相が政治を担い、祭祀の杖を管理する巫女を実質的な国家元首に据える変わった国家であった。その為イヴは実質的な国家元首であり、アウラムは王配とも言うべき存在だが、無論彼らは王や王配として教育された訳ではないし、そんな文化も慣習もない。全てが初体験である彼らはガッチガチに固まっていた。

 

「・・・・これがロイヤル・ヴィクトリア頸飾・・・・」

 

二人の胸には国王個人による栄典である、ロイヤル・ヴィクトリア頸飾が輝いていた。まだ10歳の二人が揃ってこの勲章を授与されるのは前代未聞であり、大英帝国の威厳はこの星の至るところにも届くということを示していた。その後、イヴとアウラムは国王夫妻と共にウィンザー城へと移動した。ここでは先代の女王エリザベス2世とエディンバラ公フィリップ殿下が埋葬されている。馬車で移動中、イヴが国王に対して、

 

「この後、陛下はウィンザー城に行かれるべきです。貴方のお母様とお父様が貴方と話をしたがっています」

 

と助言したことが理由である。イヴは祭祀の杖の継承者であると同時に、迷える魂を導く巫女でもある。パラディオン島では何度か死を受け入れられない、または未練がある迷える魂を導く為に社で祈祷をしたことがあり、女王の魂が国王を見守っていることを伝えたのである。

 

 

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

イングランド ウィンザー城 セントジョージ礼拝堂

 

「・・・・・迷える魂よ・・・汝の願いを我に聞かせてくれ給え・・・」

 

女王エリザベス2世の棺の前で祭祀の杖を用いて儀式を始めるイヴ。すると関係者の周りを淡い色をした結界が包み始めた。

 

「・・・・本当に結界が・・・これが古の魔法帝国を封じる魔道具の力か・・・」

 

国王夫妻やイヴ、アウラムと同行した近衛兵がそう呟いた。

 

「・・・・・!!」

 

イヴの前に皆が見慣れた老夫婦が姿を現す。それを見た国王は思わず涙を流す。

 

「・・・・・・汝の思い、しかと承った。安らかに御眠り下さいませ」

 

どうやら魂だけの存在であり、言葉を発することは出来ないらしい。代わりに魂と交信出来るイヴが思いを読み取り、傍らに控えるアウラムがそれを一字一句間違いなく書き記す。最後にイヴと内容を確認し、間違いがないことを魂と確認。そして女王と王配の魂は静かに消えていった。

 

「此方が女王陛下から国王陛下に宛てたメッセージにございます」

 

イヴが国王に一枚の手紙を手渡す。それを読んだ国王は更に涙を流し、王妃に優しく背中を撫でられる。後にとある近衛兵はこう語る。

 

「何が書いてあったのかは私の知るところではない。だが、確実に言えることは、国王にとって必要な文言であり、不安を払拭する内容だったのだろうということだ。偉大なる女王陛下からの御言葉に励まされたのか、最近まで病気がちだった国王陛下はかなり持ち直した。癌の進行も緩やかになった。女王陛下は英連邦の縮小の時代だったが、国王陛下は偉大なる大英帝国復活の時代。ゆえに不安なことがあったに違いない。大英帝国の君主としての役割と誇り。それを間接的にではあるものの、感じ取ったに違いない。国王陛下万歳」

 

数日後、イギリスでの日程を終えたイヴ、アウラム、ニンギルスの三人はヒースロー空港に向かった。駐機場には先回りして待機していた日本の政府専用機B777-300ERで日本へと向かう。

 

「国王陛下、本日までありがとうございました。この御恩は必ず忘れません」

 

イヴは空港までわざわざ見送りに来た国王と固い握手を交わした。その様子をカメラに収めようと報道陣が集まる。

 

「そろそろ宜しいですか?」

 

日本政府の関係者が搭乗を促す。予定時刻をやや過ぎたところでイヴが搭乗する。他の二人は既に搭乗済みである。国王は名残惜しそうに見送り、王妃にはまた会えるから、と背中を優しくポンポンされる。

 

 

日本国政府専用機

B777-300ER

 

「ようこそ、日本国へ。私は今回皆様の案内役を勤めさせて頂きます、外務省駐神聖ミリシアル帝国日本領事館領事の根布昭子と申します」

「私は今回皆様の健康管理・・・お医者さんを勤めさせて頂きます、防衛省海上自衛隊横須賀基地自衛隊横須賀病院の医官、未来葵1尉です」

 

外務省から日本に呼び戻されたアキコと横須賀病院から派遣されたアオイ(日本人)がイヴらに挨拶をする。互いに挨拶をした後に、アキコから日本国内での行動内容についての説明を受ける。

 

「日本国内におきましては、まず本機で東京の羽田空港に向かいます。その後、日本政府が手配しているリムジンにて皇居に向かい、天皇皇后両陛下と会談。夜は晩餐会を予定おります」

 

各人にはパラディオン語で書かれた資料が配られる。イヴとアウラムが国王夫妻と会談している間にニンギルスが日本政府の職員と接触。日本国内での日程の擦り合わせや日本語→パラディオン言への翻訳作業を実施していたのである。本当にお疲れ様でした。

 

「翌日は首相官邸にて、総理大臣と会談。日本政府からパラディオン側に対する支援内容について話し合います。その後・・・」

 

一通りの説明が終わり、アキコとアオイが去る。これから向かう日本国について、イヴとアウラムの期待が膨らむ。政府専用機は順調に飛行し、翌日の夜に東京の羽田空港に到着。リムジンにてホテルへ移動し、一泊した後に一行は皇居へ。天皇皇后両陛下と会談し、和やかな雰囲気に包まれた。夜に開催された晩餐会には皇嗣殿下夫妻も参加。皇嗣殿下を見たアウラムが思わず、

 

「父上!」

 

と、発言するハプニングが発生。どうやら、皇嗣殿下の風貌と雰囲気が彼の父上に似ていたらしく、思わず出てしまったらしい。一瞬驚いた表情を見せた皇嗣殿下であったが、先に彼らについて話が入っており、

 

「父上ならここにおりますよ」

 

と、かつての上皇陛下を彷彿とさせる神対応を行い、場を和ませたという。翌日、一行はと首相官邸にて、総理大臣以下重要閣僚と会談。日本側からは軍の派遣は出来ないと言われたものの、主権回復後の復興支援についての申し出がなされた。その後、日本各地を回り、日本の技術力と国力の高さを見せつけられたのである。

 

 

ニンギルスの日記

 

俺達は最後の訪問国日本に辿り着いた。大英帝国の同盟国である日本はどんな国なのか。聞けば、カナダやオーストラリア、ニュージーランドとは全く違う括りかつ、大英帝国とは完全に対等な国であるという。ロンドンで会談した日本の女性外交官は非常に礼儀正しく、イギリスの外交官からやや感じていた傲慢さは全くない。そしてロンドンから東京に向かう機内では、日本国についての説明がなされたが、聞けば聞く程豊かな国であった。約38万平方kmという、祖国パラディオンより遥かに小さい面積に対して、1億人以上住んでいる。パラディオンの人口はせいぜい2000万人であり、クルセイリースの統治により人口は減少しているだろう。そして羽田空港に降り立つ際に眼下に広がる大都会。ロンドンで見た車が無数に走り回り、人の往来も活発である。そしてバスで都内に入れば、無数の高層建築物や鉄道と呼ばれる大量輸送手段が目に入る。日本の外交官のネブに東京近辺の鉄道路線図を見せて貰ったが、網の目のように張り巡らされており、複数の鉄道事業者が存在している。大英帝国の首都ロンドンは支配する国や地域の広さ等の点から世界の首都に相応しい。だが、日本国の首都東京は世界経済の全てが集まる点からも世界の首都に相応しい。経済力と技術力においては大英帝国に勝るだろう。軍事力に関しては、経済力の割には貧弱なようだが、大英帝国と同盟していることや、そもそも日本人が非常に温厚な民族であることが影響しているのかもしれない。その後、日本各地を巡った訳だが、日本の技術力の象徴である新幹線には驚かされた。最高時速300キロで東京から博多まで走る。それで脱線せず、車内も快適そのものだ。他にも様々な技術力を見せつけられたが、もう驚きすぎて反応するのに疲れた。明日はイギリス領ニュー・ホンコンに向かう。同地を経由して、当面の滞在先になるカルトアルパスの日本領事館に入ることになる。ただ、日本の女性外交官がニュー・ホンコンにて、ニュー・ホンコン総督府を訪れることに難色を示していたことが気になる。何があるのだろうか。

 

 

出発前日の東京都千代田区

靖国神社

 

「たった今、英連邦パラディオン王国の関係者が靖国神社に入ります。女性は巫女服でしょうか? 日本式とはかなり違う服装をしています!!」

 

東京へ戻る新幹線に乗車する際、日本の報道陣に対してイヴはこんな発言をした。

 

「明後日にニュー・ホンコンに向かいます。ですが、その前に行かないといけない場所が都内にありますので、日本政府に対してお願いしようかと」

「どこに行かれるのでしょうか?」

「靖国神社に行きます。彼処には今、行き場を喪い、鎮魂を求める魂が無数に彷徨っています」

 

靖国神社に行きたい。それを聞いた報道陣は驚愕する。特にTOKYO新聞の餅月は狂ったかの如くイヴを罵倒した。

 

「イヴちゃん! 貴女は何も知らなさすぎる!! 彼処は犯罪者を崇め、奉る場所なのよ!! 其処に行きたいだなんて・・・悪いことは言わないから、考え直しなさい!!」

「・・・・靖国神社にA級戦犯とされる人達が合祀されていることは承知しています。ですが、犯罪者を崇め、奉る場所だと私は思いません。もし本当にそんな場所なら、戦後にアメリカによって更地にしている筈ですし、再建しないように圧力をかける筈です」

「だ~か~ら~!! 彼処は日本が昔悪いことをしたことの象徴なのよ!! わかる?!」

「では、何故数多の迷える魂が靖国神社を彷徨っているのでしょうか? 何故鎮魂を求めるのでしょうか? 日本はかつて、太平洋と呼ばれる地域で戦い、多数の死者を出し、未だに日本に帰れていない兵隊さんを遺骨が多数存在し、異世界転移により永久的に切り離されてしまったそうではないですか。彼らは魂だけとなり、靖国神社に集まり、今この時も鎮魂を求めています。彼らの気持ちに寄り添うことが何故、いけないことなのですか?」

 

日本の歴史は外交官のアキコから聞いていたイヴ。アキコからも止めた方が良いとは言われていたが、彼女の巫女としての義務感、責任感から押しきっていた。

 

「女、俺からも言わせて貰う」

 

今にもイヴに殴りかかりそうな餅月記者に割り込む形でイヴの前にニンギルスが立つ。

 

「聞いていればかつての日本の指導者に対して犯罪者だ犯罪者だと宣っているが、はっきり言わせて貰う。お前はバカか? 彼らが何故戦犯なのか。それは戦争に負けたからだろう。確かに彼らは戦争により、日本人を含む多数の軍人や民間人を殺害しただろう。多数の戦争犯罪を犯しただろう。だが、同じことをアメリカやイギリスもやっていなかったのか? アメリカはここ東京に多数の爆弾を投下し、一夜にして10万の命が奪われたそうではないか。これを指示したアメリカ人は犯罪者として処罰されたのか? 広島や長崎に原爆を投下したアメリカ人は処罰されたのか? されてないだろ? はっきり言って、戦犯というのは戦後処理の一環でしかない。そしてそれは政治的ショーであり、勝った側が自国の国民を納得させるガス抜きでしかない。違うか?」

 

まさか反論されるとは思っていなかった餅月は何も言い返せずに黙る。

 

「今頃、祖国パラディオンでは国の指導者達が結論ありきの裁判にかけられ、戦犯として処刑されているだろう。もしパラディオンが主権を回復し、彼らを祖国の為に散った英雄として何かしらの施設を建てたら、餅月記者、貴女は俺達に犯罪者を奉るなんて言語道断だと、激怒するのか?」

 

この様子はテレビで中継されており、ネット上では、

 

「ニンギルスニキ、左翼記者をフルボッコにしてしまう」

「左翼記者をフルボッコにして黙らせるニンギルスUC」

「アウラム君、ニンギルス兄さんの後ろでイチャイチャしてて草」

 

と大草原であった。まだまだ話し足りなさそうであったが、イヴに促され、ニンギルスは車に乗り込んでいった。

 

「もしあのままイヴに手を出してたら、どうなっていたかな?」

 

最後にそう言い残して行った。ニンギルスの妹大好きな兄を世界に見せつけ、左翼記者をフルボッコにして去っていった。翌日、パラディオン式の巫女服を身に纏ったイヴは、守護者のアウラムと共に靖国神社に参拝。本殿にて、パラディオン式の鎮魂の祈りを捧げ、迷える魂を導いた。その様子を見ていた宮司は後に、

 

「まさに異世界と感じた。また、肉体を捨て、魂だけになっても日本に帰りたい。そんな思いを汲み取ることが出来ずに悔しい。彼女には本当に感謝です」

 

と語った。後日、迷える魂を慰めるパラディオン式の社が建てられ、内部には太平洋戦線で亡くなった日本兵の名前がびっしりと刻まれた慰霊碑が納められた。あまりにも膨大な数の魂にイヴは、

 

「自分も連れていかれるかと思った。アウラム君が隣で連れていかれないように、守護してくれたから助かった」

 

と語った。一行は日本での予定を終えると、ニュー・ホンコンへと飛び立った。ニュー・ホンコン総督や駐パーパルディア皇国英国大使の歓迎を受ける予定である。一方で、港区の大使館区域では・・・

 

 

東京都港区麻布台

神聖ミリシアル帝国大使館(旧ロシア連邦大使館)

 

「日本政府はパラディオンの一行や祭祀の杖の引き渡しを拒否しただと!?」

「はい。我が国からは異例の頭を下げての要請でしたが、それを踏みにじった形です」

 

旧ロシア連邦大使館に入っている神聖ミリシアル帝国大使館。神聖ミリシアル帝国はニュージーランドにパラディオンからの亡命者が祭祀の杖と共に到着したことを知ると、ロンドンに置いている大使館からイギリス政府に対して、

 

「魔道具の研究開発については、我が国が世界最先端である。古の魔法帝国に共に立ち向かう為にも、我が帝国と共同研究してはくれまいか。その為にも、一行と祭祀の杖をルーン・ポリスまで送って欲しい。充分な待遇と安全を保障する。必要であれば、此方から迎えを出す」

 

と要請。しかし、イギリス政府からは、

 

「魔道具は現在ニュージーランドにある。我が国はニュージーランド政府に対して、命令出来る立場にはない。要請するのであれば、ニュージーランド政府に直接要請されたし。また、一行が何処へ向かうか、祭祀の杖をどう扱うかは彼らの判断次第である」

 

と、事実上の拒否を通達した。ロンドンに一行が到着した際、神聖ミリシアル帝国は接触しようと試みたものの、イギリス政府に全て阻止されていた。イギリス政府からして見れば、

 

「将来的には神聖ミリシアル帝国と刃を交えることになるだろう。そもそも古の魔法帝国対策の戦力にすらならない癖にプライドだけは高い国だ。いっそのこと、一度更地にした方がよい」

 

という考えだった。一行が日本に到着すると、日本政府に対しても同様の要請をしたのだが、G5では一行と祭祀の杖を第三国に引き渡さないこと、G5と認めた一部の国以外の研究への参画は認めないこと、表向きはカルトアルパスに滞在させるとしておくが、実際はニュー・ホンコンに滞在させ、ニュー・ホンコン総督府にて匿うことで合意していた。ちなみに、ニュー・ホンコン総督府に滞在することは、ニュー・ホンコン総督府とエストシラントのイギリス大使館以外には知らされておらず、全員が裏をかかれた形であった。また、アキコは日本を離れる直前に外務省に呼び出され、辞令を渡された。

 

「え? ニュー・ホンコンの領事館に異動? ニュー・ホンコン領事になれ、ですか?」

「そうだよ?」

「カルトアルパスに行く話だと聞いていたのですが・・・・」

「あれは罠だよ。イギリスの領事館から、カルトアルパスの日本領事館近辺に神聖ミリシアル帝国の不審な人物が出入りしていると情報が入ったらしくてね、逆手にとったみたいだね」

 

アキコの上司は淡々と事実を述べる。

 

「安心して。君の夫、シンはニュー・ホンコン領事館副領事として栄転させるから! 離ればなれにはしないから、我慢してね!!」

「は、はあ・・・・(なんだろう? ハルトがニュー・ホンコンに配置替えにされてそう)」

「ちなみに君の学友ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンもニュー・ホンコンに異動するみたいだよ。良かったね!」

「良くないです」

 

こうしてアキコとシンはカルトアルパスを離れ、ニュー・ホンコンへ異動。カルトアルパスの領事館には後任の人物が送られ、パラディオンの一行は暫くの間ニュー・ホンコンの日本領事館で過ごすことになる。

 

 

東京都港区麻布台

神聖ミリシアル帝国大使館(旧ロシア連邦大使館)

 

「何ぃ?! カルトアルパスに向かわないだと!?」

「完全に裏をかかれました。奴等はニュー・ホンコンに滞在する模様です!!」

「クソ! ニュー・ホンコンはイギリスの庭ではないか・・・日本とは違い、イギリス国内に諜報員は送れぬぞ!!」

「どうしましょうか?」

「とにかく本国に報告だ!!」

 

こうして日英は祭祀の杖とイヴの身柄を安全な場所で匿うことに成功した。日英両国は残る6つの秘宝を探すため、この星を更に調べることになる。

 

(続く)

 

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