日英同盟召喚   作:東海鯰

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ニューアーク平和条約

グラ・バルカス帝国臨時帝都ルナ

ルナ御用邸皇太子執務室

 

「なんと! 世界連合に大打撃を与えただと!! 本当か!!」

 

グラ・バルカス帝国皇太子グラ・カバルは執務室にて、武装親衛隊の作戦が成功したことを知った。

 

「はい。第二文明圏ムーの報道によれば、レイフォリア奪還の為に上陸した世界連合軍20万を武装親衛隊の秘密兵器にて焼き払ったとのことで、敵方の報道からも我が武装親衛隊の作戦が成功したことが裏付けられた形です」

 

武装親衛隊の隊員は届いた資料を皇太子に見せながら説明を続ける。

 

「皇帝陛下はどうなった?」

「未確認ではありますが、レイフォリアで蒸発したか、ニューアークに留まっているかになりましょう。レイフォリアに滞在していたとの情報はありますが、ハゲーズ閣下の見立てでは影武者であり、本物はニューアークにいる可能性が高いとのこと」

「そうか。して、陛下と弟ガルマは何時ごろ帰国する予定なのだ?」

「その事ですが・・・・」

「どうした? この場には我々しかおらぬ故、遠慮せず話してくれ」

「ニューアークから命からがら脱出した武装親衛隊隊員によれば、皇帝陛下とガルマ様は世界連合、正確に言いますと日本国並びに英連邦王国と講和するべき動き出しているようです」

「講和だと!? 何故我が帝国が講和なんぞしなくてはならぬ!! むしろ我々が降伏勧告を突き付けるが筋ではないのか!!」

「恐らくは、自らの保身の為に民を見捨てたのではないかと。ガルマ様の領地ニューアークにて隠居して過ごせればよい、と」

「なんと・・・・父上も老いたということか・・・ガルマは父上に可愛がられていたし、拒否は出来ぬか・・・」

「失礼致します!!」

 

武装親衛隊の女性隊員が大急ぎで執務室に入ってくる。

 

「如何した?」

「大変です!! 敵方の放送にガルマ様が!!」

「ガルマが敵方の放送に? 何があった?」

「此方をお聞きください!!」

 

執務室に備え付けられているラジオの電源を入れる女性隊員。するとラジオからはガルマの勇ましい声が聞こえてくる。執務室にいた者全員がラジオ放送に耳を傾けるのである。

 

 

新生グラ・バルカス帝国帝都ニューアーク

ニューアーク中央放送局

 

「栄光あるグラ・バルカス国民よ! 私は新生グラ・バルカスのグラ・ガルマである!! 我々グラ家によって引き起こされたこの戦いは更にその激しさを増している!!」

 

グラ・バルカス帝国首相、レギン・ビザの命により、神聖ミリシアル帝国に対して核兵器が使用された翌日、ニューアーク市内に設置されているニューアーク中央放送局では、ニューアーク総督グラ・ガルマによる演説が全世界に対して放送されていた。日英両国の支援により、テレビ、ラジオ、魔信問わず全ての受信機で受信可能な状態であり、敵国グラ・バルカス帝国本土でも多くの国民がガルマの演説に耳を傾けていた。

 

「今こうしている間にも、多くのかけがえのない命が戦火に焼かれようとしている。敵味方問わずにである!! これを見よ!!」

 

テレビ放送を受信可能な国々のテレビには、鮮明に映し出された神聖ミリシアル帝国首都ルーンポリスの衛星写真が映し出される。

 

「これは神聖ミリシアル帝国の首都ルーンポリスの現在の様子である。我が帝国は正義の為に戦いを始めた筈である。しかし、この凄惨極まりない都市を見て、果たしてそこに正義はあるのだろうか? また、我が帝国は帝都ラグナを始め、多数の都市がルーンポリスを遥かに上回る被害を受けている。このまま戦争を続けることに正義があるのか!! 無関係の市民を虐殺する帝国に何の正義があるというのか!!」

 

ガルマの鬼気迫る演説を父グラ・ルークスやガルマの婚約者イセリア、そして日英両国や第二文明圏諸国の大使や兵士らが見守る。

 

「帝国には世界平和の実現という崇高なる目的があったとは言えど、この戦争が人類に与えた影響はあまりにも大きい。そして、このまま戦争を続ければ、グラ・バルカス帝国は日英により崩壊し、グラ・バルカス人は間違いなく絶滅するだろう!! にも関わらず、本土にいる政治家連中は私利私欲の為にしか働かず、困窮する民を虐げ、更には同じ帝国臣民であるはずの各地の現地人を迫害し、不当に搾取し、挙句の果てには民族浄化にまで手を染めている!!」

 

ガルマはレイフォリアで行われていたレイフォル征統府によるレイフォル人虐殺の証拠を示しながら演説を行う。

 

「改めて思い返して欲しい。我が帝国が何故戦争をしていたのかを。世界平和という大義を掲げてはいたが、その実態は一握りのエリートと企業幹部による私利私欲と膨れ上がった軍を維持する為に起こされた、戦争の為の戦争でしかなかったという事実を!! それにより民は重税を課せられ、男は兵士に取られたという現実を!! 今や帝国の軍事予算は国家予算の80%を超えている!! 仮に戦争に勝てたとしても帝国は破綻する!! しかし、誰もその尻拭いをしようとはしない!!」

 

ガルマは一回水を飲み、喉を潤す。

 

「帝国を破綻寸前にしてしまった事は、グラ家の血を引く私にも大きな責任がある!! だから私は立つ!! グラ・バルカス帝国を建て直し、歪んだ国内を改革し、再度国際社会の一員として責務を果たすために!! 国民よ、我の元に集え!! そして共に戦おう!! グラ・バルカス帝国の栄光の為に!! グラ・バルカス帝国の未来の為に!!」

 

ガルマは更に畳み掛けるように重大発表を行う。

 

「また、我々新生グラ・バルカス帝国は日本国、英連邦王国、そして第二文明圏諸国との間に単独講和を結ぶことを決定した!! 既に細部を詰めており、本日ここで各国と講和及び通商、軍事同盟に関する条約を締結することになる!!」

 

ガルマはカメラに向けて指を差しながら発言を続ける。

 

「父である皇帝グラ・ルークスは皇太子グラ・カバルの廃嫡とレギン首相以下政府閣僚全員の罷免、そして私を中心とした臨時政府に対して、世界連合との講和を命ずる勅命を出された!! 即ち、グラ・バルカス帝国の政治は私、グラ・ガルマの手にある!! 私は日本国並びに英連邦王国と交渉をし、名誉ある降伏への道筋を開いた。しかし、それに納得せず、未だに出来もしない理想論へ現実逃避する輩が本土に蔓延っているのもまた、事実である!!」

 

ガルマは日英両国と纏めた講和条約の内容について解説を行う。内容は数日前に日英の大使と話し合った内容がベースとなったものであり、条件付き降伏である。この内容を聞いていた元皇太子グラ・カバルは怒り狂ったという。

 

「これらの内容は帝国国民に取ってあまりにも衝撃的かつ屈辱的であろう。だが、今のまま座して死を待つよりも、可能性にかけて一筋の光を求める方がよい!! 私はその責任を取るために立ち上がったのだ!! 再度言う!! だから私は立つ!! グラ・バルカス帝国を建て直し、歪んだ国内を改革し、再度国際社会の一員として責務を果たすために!! 国民よ、我の元に集え!! そして共に戦おう!! グラ・バルカス帝国の栄光の為に!! グラ・バルカス帝国の未来の為に!!」

 

ガルマの演説が終了すると、一同から一斉に拍手が巻き起こる。続けてイギリスの駐ムー大使ブレンダン・ピース・フィリップが壇上に上がる。

 

「皆様初めまして。私は大英帝国駐ムー国大使のブレンダン・ピース・フィリップと申します。我が大英帝国はガルマ皇太子を首班とする新生グラ・バルカス帝国政府を承認すると共に、本土奪還の為に必要な軍事支援を行うことをお約束致します。同時に、ニューアークはグラ・バルカス帝国の永久領土であることを承認し、仮に第三国がグラ・バルカス帝国の領土であるニューアークへ侵攻した場合、それは大英帝国に対する宣戦布告でもあるということを、ここにはっきりと宣言するものである!!」

 

ブレンダン大使はニューアークへ侵攻を企てる神聖ミリシアル帝国に対して強い牽制を入れた。そして各国の大使による、新生グラ・バルカス帝国政府樹立を歓迎する演説が行われた後、グラ・バルカス帝国と各国の間で講和条約が調印された。

 

「グラ・バルカス帝国との平和条約」

 

通称ニューアーク平和条約の調印である。この条約は、グラ・バルカス帝国並びに48か国との間で結ばれた単独講和条約であり、以下の内容から成っている。

 

1.グラ・バルカス帝国と世界連合との戦争状態の終結

 

2.グラ・バルカス帝国はニューアークを除く植民地並びに従属国に対する一切の請求権の放棄

 

3.グラ・バルカス帝国が行うべき賠償は役務賠償のみとし、賠償額は各国と個別交渉する

 

4.グラ・バルカス帝国の商標・文学的及び美術的著作権は世界連合各国の一般的事情が許す限りグラ・バルカス帝国に有利に取り扱う

 

5.世界連合は、世界連合の全ての賠償請求権、戦争の遂行中にグラ・バルカス帝国及びその国民がとった行動から生じた世界連合及びその国民の他の請求権、占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄

 

6.世界連合は、グラ・バルカス帝国が主権国家として個別的自衛権または集団的自衛権を有すること、グラ・バルカス帝国が集団的安全保障取り決めを自発的に締結できることを承認

 

批准国一覧

日本国

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

カナダ

オーストラリア連邦

ニュージーランド

アンティグア・バーブーダ

バハマ

ベリーズ

グレナダ

ジャマイカ

パプアニューギニア

セントクリストファー・ネイビス

セントルシア

セントビンセント・グレナディーン

ソロモン諸島

ツバル

クワ・トイネ公国

クイラ王国

ロウリア王国

ローデシア連邦

パーパルディア皇国

アルタラス王国

ポルスカ共和国

ローマニア共和国

アルーニ王国

英連邦パラディオン王国

フェン王国

ガハラ神国

トーパ王国

シオス王国

ネーツ公国

アワン王国

マオ王国

マール王国

パンドーラ大魔法公国

エスペラント王国

グンマー帝国

エモール王国

トルキア王国

ムー国

ソナル王国

二グラート連合

マギカライヒ共同体

パミール王国

サナダ公国

イキスギ公国

英連邦レイフォル王国

イルネティア王国

 

第二、第三文明圏に属する国々の中で世界連合に参加、または日英両国に部隊を派遣している国々が講和会議に参加。一部の国はイギリスの意向で形の上では宣戦布告をした上で会議に参加している。第一文明圏の国々は神聖ミリシアル帝国の意向を確認する為に参加を見送る国が殆どであったが、エモール王国とトルキア王国のみは、空間の占いの結果、日英と協調することが望ましいとの結果が出たことから講和会議に参加した。各国は次々とニューアーク平和条約に調印。最後に新生グラ・バルカス帝国皇太子グラ・ガルマが調印。全世界に対して、グラ・バルカス帝国と世界連合の間で戦争が終結したことを宣言した。

 

「このニューアーク平和条約により、帝国は敗北こそしたが、他国の民と共に手を携え、共に発展していく。帝国の本来あるべき姿に進む未来が開かれた!! その未来を阻む者を私は絶対に赦すわけにはいかぬ!! 今より72時間以内に武装親衛隊を含めた全ての軍は私の兄グラ・ドスル率いる新生グラ・バルカス帝国軍に対して投降せよ!! これに従わぬ場合は逆賊として討伐されることになるだろう!! 我々新生グラ・バルカス帝国は日本国並びに英連邦王国と誼を通じている!! その気になれば何時でもラグナのような廃墟地を増やせることを忘れるな!!」

 

その後、第二文明圏諸国と新生グラ・バルカス帝国の間で集団安全保障条約であるムー大陸条約が締結された。この条約は、地球世界の北大西洋条約に非常に酷似した内容の条約となっており、第二文明圏諸国が再び争うことのないように軍事同盟を結ばせるものである。後にムーの首都オタハイトに本部を置き、ムー大陸条約機構が発足。日本の東京、イギリスのロンドン、ニュー・ホンコン、カナダのオタワ、オーストラリアのシドニー、ニュージーランドのウェリントンに連絡所が設置されることになる。

 

 

ムー大陸条約機構加盟国

 

日本国

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

カナダ

オーストラリア連邦

ニュージーランド

ムー国

新生グラ・バルカス帝国

二グラート連合

マギカライヒ共同体

ソナル王国

パミール王国

サナダ公国

イキスギ公国

英連邦レイフォル王国

イルネティア王国

ヒノマワリ王国

 

この他、ガルマは各国との間で個別に国交及び通商条約を締結。また各国にそれぞれ対する賠償金の支払いについては、皇帝グラ・ルークスが戦艦グレート・ルークスに隠していた多額の金銀財宝を活用し、全額の支払いを完了させた。これにより、皇帝の私有財産は99%なくなってしまったものの、グラ・ルークスはむしろ誇らしげであった。可愛い四男の為に使えたのだ、と。

 

 

グラ・バルカス帝国臨時帝都ルナ

ルナ御用邸皇太子執務室

 

「私が廃嫡?! 何故だ!!」

 

ラジオ放送を通して伝えられた残酷過ぎる決定。グラ・バルカス帝国の敗戦と自身の身分の剥奪。そして戦後には公職追放と戦犯に対する裁判の実施。元皇太子はあからさまに動揺する。

 

「レギン首相は何と言っているんだ!! レギン首相を呼び出せ!!」

「ははっ!!」

 

 

臨時首相官邸総理執務室

 

「・・・・・やはり老いたな、皇帝陛下。もう手遅れだと言うに」

 

カバルと同様にラジオ放送を聞いていたグラ・バルカス帝国首相レギン・ビザはつまらなさそうにそう呟いた。

 

「皇帝陛下は世界連合と講和を結んだのでしょうが、奴等の効力が及ぶのはニューアーク一帯とグラ・ドスル国防相の支配地域に過ぎません。本土防衛部隊は既に我ら武装親衛隊の傘下にあり、皆再教育により、閣下の為に命を捧げる覚悟が出来ております」

 

武装親衛隊隊長エギーユ・ハゲーズは継戦の意思を示す。

 

「うむ。それに我らにはカバル皇太子がおられる。皇太子殿下を皇帝に即位させ、我々こそが正当なグラ・バルカス帝国政府であると主張する。それに、そろそろ奴も私に泣きついてくる頃であろう」

 

次の瞬間、レギン首相お気に入りの女性秘書官が入室してくる。

 

「レギン閣下、カバル皇太子がお呼びです。大至急ルナ御用邸に来て頂きたいとのことです」

「噂をすれば、だなハゲーズ。うむ、直ぐに向かう。車の手配をしてくれ」

「ははっ!!」

 

女性秘書官は速やかに退室する。

 

「さて、神聖ミリシアル帝国の本土に秘密兵器を投下した精鋭も連れて行くとする。直ちにルナ御用邸に向かわせろ」

「ははっ!!」

 

三十分後、ルナ御用邸にはレギン首相、武装親衛隊隊長エギーユ·ハゲーズ、武装親衛隊大尉アルベール・トガー、その他秘書官や隊員が到着。皇太子グラ・カバルに謁見した。

 

 

「グラ・カバル皇太子殿下、お呼びでございますか?」

「当たり前だ!! レギン首相!! そなたなら分かるだろう!! 私から相当な怒りを感じるだろう!!」

「はい。今にも目の前のラジオを叩き割りそうな勢いですな。何か不都合なことでも?」

「レギン首相、とぼけるのは止めて頂きたい!! そなたには分かるだろう!! 我々が置かれた立場を!!」

「皇帝陛下並びにガルマ総督についてですな?」

「ああそうだ!! 帝国臣民が一丸となってこの国難に立ち向かわんとしている最中に父上は自らの保身の為に可愛い弟ガルマを唆したのだ!! ガルマは嵌められたのだ!! 謀られたのだ!!」

 

同じ正妻の子として、非常に良好な関係にあったと自負しているカバルは未だにガルマのことを信じていた。自分が説得すれば此方に帰ってくるはずだと。しかし、レギンは冷酷に切り捨てる。

 

「皇太子殿下、ガルマ様を信じたい御気持ちは理解出来ますが、情に流されてはなりません。ガルマ様の背後には日本国並びに英連邦王国がいるのです。奴等の傀儡と化した存在を生かしていては、今後の帝国の未来に暗い影を落とすことになります」

「では、ガルマを伐てと言うのか!?」

「残念ながらそうなります。ガルマ様だけではありません。それに与するドスル国防相、そして不穏な動きを見せるキリシア内務相も討たねばなりません。彼らを生かしていては、皇太子殿下の治世に悪影響を及ぼすでしょう」

「わ、私以外の皇帝陛下の子を皆討てと・・・」

 

動揺するカバル。レギンは続ける。

 

「それだけではありません。皇帝グラ・ルークスは自らの保身の為にニューアークに逃亡したのです。保身の為に臣民を捨てた男が果たして偉大なるグラ・バルカス帝国皇帝に相応しいでしょうや? ここは皇太子であるカバル様が皇帝に即位し、新たな帝国政府を樹立し、反逆者ガルマに対抗すべきではないでしょうか?」

「わ、私が皇帝に?」

「カバル様を置いて他に誰が帝国の統治者に相応しいでしょうか?」

「し、しかし私は政治という物が分からぬ故・・・」

「その為に私がいるのでしょう。政治に関しては、私レギン・ビザ、そして武装親衛隊の面々にお任せ下さい」

「そ、そうか。私が皇帝に即位すれば良いのだな?!」

「はい。また、その際には彼ら武装親衛隊の精鋭に勲章を授与頂けると幸いにございます。同時にカバル様、いえ皇帝陛下の正統性を主張する根拠にもなりましょう」

「よし、わかった!! 即位の段取りはレギン首相、そなたに任せる!! そして帝国に忠節を尽くすそなたを余は総帥に任ずるとする!! 以後はグラ・バルカス帝国総帥、レギン・ビザと名乗るがよい!!」

「ありがたき幸せにございます。では」

 

こうして元皇太子グラ・カバルはレギン・ビザら武装親衛隊の傀儡となった。彼らは世界連合との戦争継続に向けて動き出す。

 

 

帝国本土のとある農村

 

「ガルマ様が立ち上がるなら、俺達も従うぞ!!」

「そうだそうだ!!」

「一部の官僚らの私利私欲の為の戦争なんて懲り懲りよ!」

「なんだと?! この裏切り者が!! 恥をしれ!!」

 

皇帝グラ・ルークスと四男グラ・ガルマによる突然のクーデターは帝国本土に混乱を起こした。帝国臣民の間で絶大な人気を誇るガルマの蜂起の話は、瞬く間に帝国中に広がった。

 

 

グラ・バルカス帝国港町コンペートー

コンペートー海軍基地 

 

「皆の者、ガルマの放送は聞いたな!! これよりグラ・バルカス帝国正規軍改め、新生グラ・バルカス帝国軍はガルマ率いるニューアーク政権の指揮下に入る!!」

 

これにニューアーク政権により、国防相に再任したグラ・ドスルが呼応した。

 

「無論、諸君らの中には世界連合との和平に納得出来ぬ者、レギン率いる武装親衛隊に参加したいという者もいるだろう!! 本日中にルナへ向かうのであれば見逃そう!! 志を同じくする者のみ、ここコンペートーに来い!!」

 

帝国正規軍からの信望の厚い彼の演説は帝国本土中の武装親衛隊への引き抜きに応じなかった帝国軍兵士の支持を獲得した。こうして本土に展開する正規軍10万人はガルマとドスルの指揮下に入った。しかし、正規軍はレギン派やキリシア派への引き抜きで既に名ばかりの存在となっており、彼等はニューアークへの戦略的撤退に向けて動き出すことになるのである。

 

 

グラ・バルカス帝国臨時帝都ルナ

臨時首相官邸総理執務室

 

「やはりドスルはガルマに味方したか。更に正規軍の99%が奴等反逆者の指揮下に加わったか。ガルマに味方したことによる効果は絶大のようだな」

「99%が参加。数字だけ見れば素晴らしい数ですが、奴等は我ら親衛隊への引き抜きにより既に瓦解しており、所詮烏合の衆に過ぎませぬ。集められて精々10万が良いところ。そんな有象無象なんぞ、このハゲーズが蹴散らしてみせましょう!」

「うむ。だが、奴等はニューアークと本土の連絡を維持する為に暫くは動けんだろう。その前に我々は怪しげな動きを見せる秘密警察並びにキリシアを討つ。奴等は我々にスパイを送り、秘密兵器の機密を盗み出し、生産に移ろうとしている。また帝国本土の資源地帯も奴等が押さえている。速やかに倒さねばならぬ。出来るな?」

「無論にございます。このハゲーズ自ら指揮を執ります故、心配は無用であります」

「うむ、頼もしい限りだ。ハゲーズ、そなたには神聖ミリシアル帝国本土に投下した兵器の使用も認める。必ずキリシアを討つのだ」

「ははっ! では直ちに作戦の立案に移りまする!!」

「だが、その前にまずは皇帝陛下のお膳立てをしなくてはな」

 

ガルマの演説に対抗する形でグラ・バルカス帝国本土から全世界に対して放送が行われていた。帝都ラグナの放送局は無論使えない為、首相官邸総理執務室に必要な機材を持ち込んでの収録となった。

 

 

「新生グラ・バルカス帝国を自称する反逆者並びに世界連合の者共に告ぐ。私は、グラ・バルカス帝国総帥、レギン・ビザである。我々グラ・バルカス帝国はレイフォリアにて世界連合軍20万を全滅させ、世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国の首都ルーンポリスを焼き払った。世界連合に如何ほどの戦力が残っていようと、それは既に形骸である!! 敢えて言おう!! カスであると!!」

 

カリスマ性溢れるレギンは武装親衛隊隊員や継戦を主張する国民の心を激しく揺さぶる演説を繰り広げる。

 

「我々の国力は世界連合に比べれば10分の1以下である!! しかし、今日まで戦い続けることが出来た理由はなぜか? 諸君、我々の戦争の目的が正しいからである!! にも関わらず、グラ・ルークスは戦況が少しでも悪くなると自身の保身の為にガルマを抱き込んで敵方に内通した!! 皇帝自らが我々臣民を見捨てたのである!! 反逆者グラ・ルークスはもはや我々の皇帝ではない。我々の皇帝は皇太子であるグラ・カバル殿下を他に置いて存在しない。本日を以て、皇帝グラ・ルークスは政務不能となったことから、皇太子グラ・カバル殿下が我らの皇帝として即位することになったのである!!」

 

レギン総帥は自身の傀儡としてカバルを皇帝に即位させた。政治や軍事に疎い彼は世界統一の為に邁進(カバルにはそう見えている)するレギンに絶大の信頼を置いている為、彼の傀儡になっているという事実に気付くことはなかったのだが。

 

「我々グラ・バルカス帝国は非常に苦しい立場にある! だが、我々の大義ある戦争を信じて進むその先には必ずや帝国の繁栄が待ち受けているであろう!! 我々グラ・バルカス帝国は反逆者グラ・ルークス並びに世界連合を倒し、真の世界平和を実現する為に、新生グラ・バルカス帝国並びに世界連合に対して、宣戦を布告する!!」

 

こうしてグラ・バルカス帝国は、臨時帝都ルナを本拠地とするレギン政権とニューアークを本拠地とするガルマ政権による内戦に突入した。しかし、両者共に最初は地盤固めに奔走したことから、両者が直接的に戦闘に突入する事は回避され、散発的な衝突が起きたのみであった。レギン政権は、帝国本土の資源地帯を支配下に置くグラ・キリシア率いる秘密警察を打倒するべく、武装親衛隊の主力を動員。キリシア派も応戦し、両者の熾烈な争いが開始された。一方のガルマ政権はニューアークとコンペートーを結ぶ海上交通路の確保に着手。ニューアークやムーの港町マイカルにて、海軍艦艇の近代化改修や訓練、またムーの軍縮により余剰となった紫電改2やJu88スツーカ2、フェアリーソードフィッシュ2の受領と訓練の為に帝国本土から多数の兵士や技術者、軍事企業関係者が来訪することになった。

 

 

海上自衛隊護衛艦「わかば」

艦橋CIC

 

「本艦はこれより新生グラ・バルカス帝国本土方面へと向かう!! 途中、帝国本土より向かってくる新生グラ・バルカス帝国海軍の駆逐艦2隻、輸送船3隻と合流し、反転してマイカルへと誘導する!! 全速前進!!」

 

新生グラ・バルカス帝国と世界連合(神聖ミリシアル帝国を除く)の間で講和が成立したことを受け、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはマイカルに最低限の部隊を残して撤収を開始した。英連邦王国軍は途中、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパス、イギリス領ニュー・ホンコンを経由し、それぞれの本国に帰還。その後クルセイリース大聖王国に占領されている英連邦パラディオン王国奪還の為に部隊の再編を行う予定である。日本は英連邦パラディオン王国奪還戦には参加しない代わりに、万が一に備えて第二文明圏諸国防衛の為に暫くの間、派遣中の陸上自衛隊と航空自衛隊の部隊をそのまま待機させることになった。海上自衛隊は、ニューアーク・マイカルとコンペイトウを結ぶ海上交通路護衛の任務を新たに与えられた。グラ・バルカス帝国軍潜水艦部隊による妨害が予想されることから、潜水艦キラーである海上自衛隊に白羽の矢が立ったのである。

 

「だが、嫌な予感がするな 」

 

艦長である若葉響は不穏な空気を感じていた。

 

「梯子を外されたあの国が余計なことをしないと良いんだけど・・・」

 

 

神聖ミリシアル帝国首都ルーンポリス

政府仮庁舎閣議の間

 

「日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国が中心となり、グラ・バルカス帝国と講和しただと?!」

「しかもエモール王国やトルキア王国までもが講和に応じたとは・・・・」

「我が神聖ミリシアル帝国は軍の再建や首都復興の為に多額の国債を発行している。我が国も講和に応じ、賠償金を受け取るべきではないのか?」

 

閣議の間では政府閣僚らによる緊急の閣議が開かれていた。無論議題は日英によるグラ・バルカス帝国との単独講和である。

 

「しかし、皇帝陛下や国民は復讐を求めています。皇帝陛下の御言葉で国民の怒りを鎮めたいところなのに・・・」

 

ある閣僚は皇帝ミリシアル9世の政治的野心を嘆く。彼はミリシアル第一主義を掲げており、日英との対立を強く主張していたからである。

 

「幸いにも、皇太弟は日英との対立を望んではおられません。ここは皇太弟に宥めて頂くしかないかと」

 

閣議の方向性が決まり始めた時だった。

 

「閣議の途中、失礼致します!!」

 

外務省の官僚が大急ぎで入室。外相に耳打ちする。

 

「な、何だと?! だ、誰がそんな指示を・・・まさか、皇帝陛下が!?」

 

(続く)

 

 

 

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