日英同盟召喚   作:東海鯰

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二グラート沖海戦1

二グラート連合西方300キロ沖合い

神聖ミリシアル帝国海軍ニューアーク攻撃艦隊旗艦

戦艦「オリハルコン」艦橋

 

「ビッグムーン司令! 最前線に展開する小型艦シゴロサイより入電!! 我、敵艦隊と思わしき煤煙を見ゆとのこと!!」

「確認するが、ムーの艦隊はいないのだな?」

 

神聖ミリシアル帝国海軍少将ビッグムーン。大きな団子鼻に糸目、タラコ唇、そしてふくよかな体型が特徴的な中年男性である。彼は皇帝ミリシアル9世直々の命令である、ニューアーク攻撃作戦を指揮する為、そして最新鋭の戦艦であるオリハルコンの評価試験の為に乗艦していた。

 

「はい。ムーの艦隊がいないことはムー政府より確認済みです。ですので、あれは憎きグラ・バルカス帝国の艦隊と見て間違いないかと」

 

神聖ミリシアル帝国最新鋭の戦艦オリハルコン。ミスリル級と比較して一回りから二回り大型の艦体に大威力の魔導砲を装備しており、その建造費は1個艦隊を整備できると言われるほど高額なものになっている。主要区画にはオリハルコン合金を使用した装甲を装備しており、大出力魔導機関による装甲強化も併せると「グレードアトラスター」の46cm砲弾が直撃しても耐えられると言う大和型にも匹敵する防御力を持つ。しかし、本級の特筆すべき点は大口径魔導砲や装甲では無く、神聖ミリシアル帝国初の誘導魔光弾装備艦である事。対艦用のウルティマⅠ型と対空用のクウ・ウルティマⅠ型をそれぞれ装備している。これらの誘導魔光弾は魔帝製ではなく、以前から解析を続けていた魔帝製誘導魔光弾の研究成果に、駐在武官の名目で日本に赴任させていた産業スパイが盗み出した17式SSMの技術情報と運用情報をヒントに神聖ミリシアル帝国の技術者が生み出したもの。本級の誘導魔光弾による同時攻撃能力は3発以上であり、第一文明圏には日英を除けば、本艦に勝てる艦は存在しない。

 

「全艦に通達。直ちに集結せよ!!」

 

ビッグムーンの指示により、偵察の為に散っていた小型艦や巡洋艦が続々と集まりだす。やがて戦艦4、巡洋艦8、小型艦15の大艦隊が彼の元に集結し、グラ・バルカス帝国の艦隊に向けて突き進んでいく。

 

「敵艦隊発見!! 巡洋艦2,小型艦3、輸送艦4の艦隊です!!」

 

見張員が発見した艦隊の艦種を報告する。敵に戦艦はいないと知ったビッグムーンはほくそ笑む。

 

「カカカ・・・・フォフォフォ・・・」

「国籍を確認! か、スワンプリバー艦長!!」

「どうした? 何があった!!」

「敵の巡洋艦2隻は何れも日本国の海軍旗を掲げています!! 他の小型艦や輸送艦は日本国の海軍旗を掲げていません!!」

「日本国の海軍艦艇と行動を共にしているのか?」

「日本国の巡洋艦は小型艦や輸送艦を守るように最前列と最後尾に展開しています!!」

「司令、如何致しましょう? 日本国の巡洋艦と行動を共にしているということは、敵対の意思はない可能性があります」

「・・・・じゃあ、確認してみようか」

「司令部に、ですか?」

「違うよお。あの巡洋艦に確認するんだよ。もし、小型艦や輸送艦がグラ・バルカス帝国の物だったら、日本国は敵国と内通しているということに出来るじゃないか。新生グラ・バルカス帝国とやらと日英は講和したらしいけど、我が神聖ミリシアル帝国は講和していない。即ち戦争状態にある。我が艦隊には、戦争状態にある敵国の艦艇を攻撃する権利があるんだよ」

「成る程、流石はビッグムーン司令。悪知恵が働きますな」

「そうだろう。それに、皇帝陛下は日英に一度教育するべきだと仰せだ。日本の巡洋艦を我が戦艦オリハルコンで沈めてしまえば、良い躾になるんじゃないかい?」

「敵艦隊、1隻を残して反転。残された1隻は速力を上げ、本艦隊に向かってきます」

「カカカ・・・・時間稼ぎか。やっぱり教育をしないと、だね?」

 

神聖ミリシアル帝国海軍ニューアーク攻撃艦隊の旗艦オリハルコンは回線を開いた。

 

「此方は世界一の帝国にして世界の指導国、栄光ある神聖ミリシアル帝国海軍の戦艦オリハルコンである。私はニューアーク攻撃の任を皇帝陛下から与えられたビッグムーン少将である。日本の巡洋艦は応答するように。応答なき場合は日本艦を騙る敵国と断定し、攻撃を開始する。繰り返す・・・・」

 

 

日本国海上自衛隊新生グラ・バルカス帝国艦隊護衛隊

護衛隊「わかば」艦橋

 

「しかし、まさか本当に少人数で運用出来るなんて・・・凄いぜ!!」

「それが「もがみ型護衛艦」、そして「わかば型護衛艦」の真骨頂だからね」

 

「もがみ型護衛艦」の拡大型として就役させた「わかば型護衛艦」。そのネームシップである「わかば」では、少人数による艦の運用試験が行われていた。レーダー員の席には砲雷長のユウキ、操舵員の席には船務長のコウキ、見張員の席には機関科のミヅキが座っていた。ミヅキは万が一、機関に不調が出た場合の応急対応の為に今回見張員を兼務している。後方の艦長席には、ヒビキが座り、各種評価試験を行なっている。

 

「防衛省が言うには、第二文明圏諸国は新生グラ・バルカス帝国と講和し、新生グラ・バルカス帝国には海軍部隊が中心に参加したことから、レギン派やキリシア派の海軍戦力は潜水艦隊のみ。故に第二文明圏諸国の沖合いは潜水艦さえ気を付ければ良い安全地帯である。とは言うが・・・・」

 

艦長のヒビキは不安な表情を浮かべる。

 

「ユウキ、レーダーに感があったら絶対に報告しろよ。嫌な予感しかしない」

「今この護衛艦「わかば」には私達4人しかいないもんね・・・もし敵に遭遇したら・・・」

「ヒビキとコウキは心配性だな。大丈夫大丈夫」

「ユウキは二人を見習うべきよ」

「そいつはどうも」

 

クアトロKが操艦する護衛艦「わかば」。彼等以外の乗員は出迎えに来た護衛艦「もがみ」に移乗。「もがみ」は「わかば」と共に新生グラ・バルカス帝国の駆逐艦、輸送艦を護衛してムーのマイカルに向かう任務に従事していた。「わかば」は艦隊の最前列、「もがみ」は最後尾に展開していた。

 

「艦長はもし、敵と遭遇したらどうするつもりなんです?」

 

頭脳派であり、色白で優しい性格の自衛官コウキは艦長であり、同級生のヒビキに問う。

 

「・・・・戦うよ。僕は自衛官だ。国民の生命と財産を守ることが使命だ。今回の任務は、同盟国新生グラ・バルカス帝国の艦隊を無事マイカルまで送り届けること。同盟国への攻撃は我が国への攻撃。当然のことだよ。コウキ、君は気に食わないかもしれないけど」

「・・・・気に食わない? そんなことはありませんよ。僕には艦長を始め、ユウキにミヅキもいます。ただ、艦長が不安そうだったので、気を遣ったんですよ」

「そうか。でも、嫌なら僕を置いて脱出しても構わないんだよ?」

「親友を見捨てる奴が国民を守れますか?」

「グチグチうるせえ! 要は敵が来たら俺が沈めれば問題ないんだろ!!」

「ふふふ」

 

4人が試験をしながら雑談をしていた時であった。レーダー画面を見ていたユウキが絶叫する。

 

「レーダーに感あり!! IFFにはない艦隊です!!」

「二グラート連合の艦隊か?!」

「にしては速すぎますし、大き過ぎます!! レーダーには30000トンクラスの戦艦と思わしき艦が少なくとも4隻、重巡洋艦クラスが少なくとも4隻、フリゲート艦が少なくとも5隻います!!」

「戦艦が4隻!? ユウキ、それは見間違いじゃない?!」

「馬鹿にするなコウキ!!」

「IFFにはない艦隊、そして余りにも大き過ぎる艦。艦長、これは神聖ミリシアル帝国の艦隊である可能性が高いのではないかと」

 

ユウキとコウキのじゃれ合いを尻目にミヅキは自らの見解を語る。

 

「知っての通り、神聖ミリシアル帝国は新生グラ・バルカス帝国と講和を結んでおらず、戦争状態のままです。また、新たに皇帝に即位したミリシアル9世はミリシアル第一主義を掲げています。グラ・バルカス帝国はそれに歯向かった国第一号として、徹底的な破壊を主張しています。更に日英に対してあからさまな敵対行為も仕掛けてきており、カルトアルパスにあったカナダの領事館に爆発物を投げ込んだ事件に深く関与していました。戦闘になる可能性が高く、今のうちに護衛対象を退避させるべきかと」

「流石はミヅキ。自身の見解と共に意見具申、流石だね。うむ、そう致そう。直ちに「もがみ」と繋げ。「もがみ」と護衛対象を緊急退避させる」

「畏まりました」

 

数分後、ミヅキが最後尾に位置する護衛艦「もがみ」との間に回線を開いた。

 

「此方、護衛艦「わかば」。至急至急「もがみ」応答せよ」

(至急至急、此方「もがみ」。如何した? 試験中に異常が発生したのか?)

「本艦の水上レーダーが神聖ミリシアル帝国のものと思わしき艦隊を捕捉。少なくとも30000トンクラスの戦艦が4、重巡洋艦クラスが4 、フリゲートないし駆逐艦クラスが7」

(戦艦4、巡洋艦4、フリゲートないし駆逐艦が7、了解。では、試験を中止することとする)

「試験中止了解。されと、神聖ミリシアル帝国は新生グラ・バルカス帝国と講和条約を締結しておらず、昨今の情勢を鑑み、護衛対象が攻撃を受ける可能性大である。貴艦に当たっては、至急護衛対象と共に現場海域を離脱することを提案する」

(「わかば」よりの提案を是非とも採用したい。マイカルの本部への報告は任されたし。これより進路を変更し、ニューアーク方面へと転進する。貴艦も我に続け)

「・・・・若葉艦長から何が言うことがある模様です。暫くお待ちください」

 

ミヅキと「もがみ」の通信士の会話をリアルタイムで聞いていたヒビキは、ミヅキからヘッドホンを受け取るとこう返した。

 

「此方、護衛艦「わかば」艦長の若葉響だ。本艦はこれより、「もがみ」を含めた艦隊の離脱を支援する為にこのまま神聖ミリシアル帝国艦隊と会敵する」

 

艦長であり、海上自衛隊期待の新人であるヒビキには、自分達が生きて帰れないかもしれない。その可能性に気付いていた。自分らには鈍足の輸送艦を随伴させており、仮に今すぐニューアークに反転したとしても、速力差を考えれば追い付かれてしまうのは明白。そうなると、必然的に誰かが時間稼ぎをしなくてはならない。

 

「幸いにも、本艦の乗員はほぼ全員「もがみ」に移乗している。仮に本艦が沈められたとしても、損失は抑えられる。本艦が時を稼いでいる間にニューアークへ向かわれたし」

 

ヘッドホンの向こうにいる「もがみ」の通信士が絶句する。

 

「総員、第1種戦闘配置。これは演習ではない。繰り返す。これは演習ではない!!」

 

次の瞬間、護衛艦「わかば」は速力を上げ、神聖ミリシアル帝国艦隊へと向かって行った。その様子は護衛艦「もがみ」のレーダー画面に捉えられていた。

 

 

護衛艦「もがみ」艦橋

 

「松葉艦長、「わかば」が速力を上げました!!」

「若葉二等海佐、君という人は・・・・」

 

護衛艦「もがみ」艦長、松葉延寿一等海佐は絞り出すようにそう呟いた。

 

「ヒビキ君、君はどうしてそんなに自分を簡単に犠牲に出来るんだ・・・・・」

 

ヒビキが最初に現場配属された際、直属の上司として指導を行ったマツバは目を帽子で隠しながら涙を流した。彼は本気だ。何を言っても引き返しはしないだろう。だが、彼がそうしなければ、護衛対象も、そして「もがみ」は沈む。そんなことくらい現場を長くやっているマツバには分かっていた。

 

「艦隊に通達。「わかば」を除き、我に続け。ニューアークへ向かうと・・・・・」

「・・・・畏まりました」

「ヒビキ君・・・・・死なないでくれよ・・・」

 

護衛艦「もがみ」を先頭に、新生グラ・バルカス帝国艦隊は転進。ニューアークへ向けて移動を開始した。同時にニューアーク総督府とマイカルの日英合同司令部に事の次第を速攻で報告。ニューアーク総督府からは、再建中のイルネティア王国海軍と演習中であった戦艦「グレート・ガルマ」を旗艦とする、空母1、戦艦1、巡洋艦4、駆逐艦10、フリゲート艦3(イルネティア王国海軍)が救援の為に派遣させると返答が即座に送られた。一方、マイカルの日英合同司令部は大混乱であった。

 

 

第二文明圏列強ムー港町マイカル

マイカル海軍基地日英合同司令部

 

「神聖ミリシアル帝国の大艦隊が二グラート連合の西方300キロの沖合いに出現だと!?」

「それを受け、護衛艦「わかば」が時間稼ぎの為に突撃し、他はニューアークへ向けて転進を開始したとのことで・・・・」

「しょ、正気か!? 如何に最新鋭の護衛艦と言えど、精々やや性能の良いフリゲート艦でしかないのだぞ!! しかも1隻だけで戦艦4、巡洋艦8、駆逐艦ないしフリゲート艦15の大艦隊に勝てる訳がなかろうが!!」

「た、確か・・・「わかば」の艦長は飛び級で二等海佐に昇格した若葉響だった筈です。若さ故に先走ったのでは?」

「そんなレベルではない!! 直ちに「わかば」に伝えよ!! 速やかにニューアークへ離脱するようにと!! 死に急ぐなとな!!」

「畏まりました!!」

 

 

海上自衛隊護衛艦「わかば」艦橋

 

「マイカルの司令部からは、本艦もニューアークへ離脱するようにとのことです」

「ハハハ! ミヅキ、実にお役所的な対応だ。そう思わないかい?」

「如何にもね。戦いは作戦室じゃなくて、現場で起きてる。昨今の情勢を鑑みれば、戦いは避けられないと分かりそうだけどね」

「建前上そう言う指示しか出せないのは分かりきってるけど、死に急ぐな・・・か。別に急いでないのにね」

 

ヒビキとミヅキは艦橋から敵艦隊を視認する。

 

「ユウキ! コウキ!」

「「は、はい!!」」

「間違いなく戦闘になる。ユウキは砲雷長としての責務を果たせ。本艦の攻撃は全て当てろ。コウキは船務長としての責務を果たせ。可能な限り敵の攻撃を回避しろ。出来るな?」

「あったりめえだ!! この俺と戦ったことを後悔させてやるぜ!!」

「可能な限りですか? 違いますよ、全て回避しろ。そう指示してください。僕はユウキ君と違って、馬鹿じゃないので」

「なにぃ?!」

「ミヅキ、今一度機関を点検してくれ。無茶な操艦になるのは間違いない。出来る範囲で再点検を頼む」

「了解。リモート機能を活用した簡易的な点検を開始します」

 

護衛艦「わかば」の艦橋では、各々がそれぞれの職責を全うするべく動き出した。艦長のヒビキは通信用のヘッドホンを装着し、来るであろう神聖ミリシアル帝国艦隊からの通信に備える。それと同時に、マイカルの司令部に最後の連絡を行った。

 

「此方護衛艦「わかば」艦長、若葉響二等海佐だ。マイカルの司令部に対し、最後の連絡をさせて頂く」

(馬鹿なことを言うな!! 司令部も本国も神聖ミリシアル帝国との戦闘行為を認めていない!! 直ちに転進せよ!!)

「馬鹿なことを言わないで頂きたい。此方に戦闘の意思がなくても、あちらがその気なのです。昨今の国際情勢を鑑みれば一目瞭然です。神聖ミリシアル帝国皇帝、ミリシアル9世の言動はご存知か?」

(ごちゃごちゃ言わずに命令に従え!! 上官に歯向かうのか!!)

「後方の安全地帯でぬくぬくしている愚か者には分からぬでしょうな。現場の緊迫した状況を。時間がありませんので、我らの辞世の句を聞いて頂きたい」

 

ヒビキは深く深呼吸をした後に、自身と共に護衛艦「わかば」に残る死を覚悟した同胞の辞世の句を読み上げた。ただし、日系アメリカ人であったミヅキだけは辞世の句はない。

 

 

若き葉よ

黄金の思い

芽吹かせよ

愛する君に

思いは響く

 

若葉響二等海佐

 

 

帰らざる

旅路となりし

航海へ

勇気を持って

遥か彼方へ

 

三代勇気三等海尉

 

 

君の為

命を散らす

覚悟持ち

光り輝く

明日を信じて

 

真砂光輝三等海尉

 

 

「・・・終わったね」

 

そう言うとヒビキはマイカルの司令部との通信を切った。

 

「さて、ユウキ、コウキ、ミヅキ。死ぬ覚悟は、出来たね?」

 

真面目な表情で同僚に覚悟を問うヒビキ。

 

「分かりきったことを聞くなよ艦長!!」

「僕達はみんな入隊した時から、死ぬ覚悟は出来てる!!」

「辞世の句? は分からないけど、私もよ!!」

 

ヒビキと仲間たちは覚悟を決め、護衛艦「わかば」は更に加速した。その後、「わかば」の無線機から大きな声が響く。

 

(此方は世界一の帝国にして世界の指導国、栄光ある神聖ミリシアル帝国海軍の戦艦オリハルコンである。私はニューアーク攻撃の任を皇帝陛下から与えられたビッグムーン少将である。日本の巡洋艦は応答するように。応答なき場合は日本艦を騙る敵国と断定し、攻撃を開始する。繰り返す・・・・)

 

「・・・・・来たな。戦争を教えてあげよう」

 

ヒビキは何時もの優しい年相応の若き青年の表情から、防人の表情に変わる。マイカルの司令部と通信する為に先ほどまで付けていたヘッドホンを使い、そのまま返信する。

 

「此方、日本国海上自衛隊護衛艦「わかば」艦長、若葉響二等海佐である。本艦は同盟国の船舶を護衛し、ムー国のマイカルへ向かう途中である。敵対の意思はない。艦隊の安全航行を保証されたし」

(これは奇妙な物語だねえ。君達が護衛している船舶は紛れもなくグラ・バルカス帝国のもの。世界の敵を同盟国? 日本国は何時から世界の敵に寝返ったのかなあ?)

「我が国を初め、世界48か国は新生グラ・バルカス帝国を正当な国家として承認し、ニューアークにて平和条約と軍事同盟を締結している。貴国にとっては敵のままかもしれないが、少なくとも世界の敵ではない」

(我が神聖ミリシアル帝国は世界の支配者である。我が帝国が敵と認定した国は誰が何と言おうとも世界の敵である。和睦、ありえないねえ)

「仮に貴国が同盟国を攻撃するのであれば、我が国日本国も参戦することになる。それだけではない。世界7つの海を支配した大英帝国を喜ばせることになり、貴国は確実に崩壊することになるだろう」

(日本国海上自衛隊に告ぐ!!)

 

ヒビキからの忠告を完全に無視してビッグムーン少将は最後通牒を送る。

 

(直ちに降伏して艦を明け渡し、世界の敵グラ・バルカス帝国討伐に全面協力すべし!!)

「断る!!」

(・・・・・良くぞ申した。ならば、名誉の戦死を与えるだけだねえ・・・・)

 

その後雑音のみが入り、通信が切られる。

 

「来るぞ! 総員第1種戦闘配置!!」

 

こうして、二グラート連合の沖合いにて、日本国と神聖ミリシアル帝国の艦隊による艦隊決戦が幕を開ける。後に二グラート沖海戦と呼ばれた戦いは、神聖ミリシアル帝国の滅亡を決定付けた海戦として、後世に語り継がれることになる。

 

 

神聖ミリシアル帝国海軍ニューアーク攻撃艦隊旗艦

戦艦「オリハルコン」艦橋

 

「日本艦は我が神聖ミリシアル帝国からの慈悲を拒否した。これより、本艦の装備の試験台として教育する。ウルティマⅠ型を発射せよ!!」

 

神聖ミリシアル帝国唯一のミサイル兵装を搭載する戦艦「オリハルコン」から、対艦用のウルティマⅠ型が2発放たれる。

 

「カカカカ、日本よ、誘導魔光弾が使えるのが自分達だけだと思わないことだね」

 

 

日本国海上自衛隊護衛艦「わかば」艦橋

 

「敵戦艦がミサイルを発射!! 本艦に向けて進んでいることを確認!! 目標をブラボー、及びチャーリーとする!!」

「対空戦闘!! ブラボー及びチャーリーを撃墜しろ!!」

 

護衛艦「わかば」のVLSから23式艦対空誘導弾が発射される。「もがみ」型護衛艦の拡大改良型である本艦には、対空ミサイルも搭載されており、防空能力が格段に向上していた。

 

「インターセプトまで10秒! 10、9、8、7、6、5、4 、3、2 、1」

 

艦内に緊張が走る。異世界で初のミサイル同士の対空戦闘。皆が迎撃成功を祈る。

 

「スタンバイ! マークインターセプト!!」

 

ユウキは必死にレーダー画面を見つめる。

 

「・・・・本艦のA-SAM、ブラボー及びチャーリーを撃破!!」

「反撃だ!! 28式艦対艦誘導弾の評価試験の実験台にしてやれ!!」

 

反撃として、「わかば」は28式艦対艦誘導弾を2発発射。目標は戦艦「オリハルコン」。12式地対艦誘導弾能力向上型の海上自衛隊仕様である本装備は、新型ステルス巡航ミサイルであり、現時点では「わかば」にしか搭載されていない新兵器であった。同時に電波妨害を実施し、敵艦隊のレーダーを撹乱。混乱する神聖ミリシアル帝国艦隊をステルス巡航ミサイルが襲うことになる。

 

「・・・・・敵艦、迎撃ミサイルを発射!!」

「「「・・・・・・・・・」」」

 

暫しの静寂。

 

「敵艦、迎撃に失敗! ミサイル、直撃します!!」

 

電子戦に関する知識に疎い神聖ミリシアル帝国。最新鋭のステルス巡航ミサイルと電波妨害の前に、虎の子の対空ミサイルも明後日の方角に飛んでしまい迎撃に失敗。巡航ミサイルは戦艦「オリハルコン」の艦橋に直撃する。

 

「敵戦艦、炎上!!」

「更に2発発射!! 敵の司令塔を潰せ!!」

 

とどめと言わんばかりに追加で2発の巡航ミサイルを発射。本艦に搭載している巡航ミサイルは4発のみであり、ここですべてを使い切る。

 

「・・・・・全弾命中!!」

 

ユウキの報告を聞いたミヅキは双眼鏡で戦艦「オリハルコン」を視認する。

 

「・・・・・敵フリゲート艦が旗艦と思わしき戦艦の周りに集まっています!!」

 

ミヅキの報告が意味すること。それは・・・・

 

「敵の旗艦は機能を喪失した、そう見て良いな」

「艦長、離脱しますか?」

「・・・・コウキ、敵艦隊のど真ん中に突っ込め」

「・・・・ですよね」

 

一瞬だけ2人は顔を合わせる。ヒビキは申し訳なさそうな顔、対してコウキは任せろと言わんばかりの顔である。

 

「ユウキ、これから本艦は敵艦隊に特攻する。状況からミサイルが使用可能なのは旗艦の戦艦のみであると思われる。だが、ニューアークに離脱中の艦隊にとって、敵残存艦隊は脅威である。故に本艦は残存艦隊を引き付ける必要がある」

「つまりは、敵艦隊を撹乱し、同士討ちを引き起こすんだな!!」

「それもあるが、挑発をして本艦をタコ殴りにせざるを得ない状況を作り出す。ユウキ、砲雷長としての責務を果たすんだ。そして、ミヅキ。艦橋は君に任せる。僕は12.7mm機関銃で敵艦を攻撃する」

「艦長、いやヒビキ。それでは片側しか撃てないじゃない。ヒビキは左を、私は右から敵艦を撃ちます」

「・・・・・そうだね。ユウキ! コウキ! 艦橋で仲良くしろよ。今生の別れだ」

 

ヒビキとミヅキは敬礼する。ユウキとコウキは座りながら敬礼する。その後、ヒビキとミヅキは艦橋から離れ、それぞれ12.7mm機関銃の操作に移る。

 

「本来なら遠隔操作なんだけど、故障しているからねえ!!」

 

ヒビキとミヅキはそれぞれ予備の弾薬を足元に用意し、何時でも給弾出来るようにする。

 

「さて、ユウキとコウキ。どっちが挑発するのかな?」

 

 

日本国海上自衛隊護衛艦「わかば」艦橋

 

「さて、コウキは操艦に忙しいから俺が挑発するか!」

 

ユウキは通信用のヘッドホンを装着し、敵艦隊に通信を入れる。

 

「さあ、お祭りの始まりだぜ!!」

 

 

護衛艦「もがみ」艦橋

 

「・・・・・船務長、「わかば」は今どうなっている?」

「・・・・・「わかば」は司令部に辞世の句を送って以降、無線を切っています・・・・最悪の場合、沈んだかと・・・・」

「そうか・・・・」

 

艦長のマツバは悲しい表情を浮かべる。自然と涙が頬を流れ、全く止まらない。

 

「・・・・・マツバ、医務室に下がっていろ」

「ミナキ君・・・」

 

副艦長の皆木俊晶がマツバを下がらせる。上司と部下の関係ではあるが、2人は同い年であり、互いに良き理解者でもある。

 

「戦いはマツバ、非情なんだ。ヒビキ君は自らの身を犠牲に、何千人という命を救う決断をしたんだ。彼の思いを踏みにじるような真似を許さない。暫く医務室で頭を冷やしてこい」

 

ミナキはマツバを艦橋から医務室に移送させる。艦隊はひたすらに北上し、ニューアークからの援軍と合流するべく、必死の逃避行を続ける。

 

 

第二文明圏列強ムー国港町マイカル

マイカル海軍基地日英合同司令部

 

「ニューアークへ離脱中の艦隊は北上を続けていますが、「わかば」は神聖ミリシアル帝国艦隊に突入した模様です!!」

「どうするんだ!! 外交問題になるぞ!!」

 

日本側の司令部要員は日本と神聖ミリシアル帝国の間で外交問題となること、それが原因で自分達のクビが飛ぶことを酷く恐れた。

 

「空軍基地から連絡!! 海場司令より、F2戦闘機とイギリス空軍のユーロファイタータイフーンを出撃させ、「もがみ」を援護する用意があるとのこと!!」

「あの馬鹿戦争がしたいのか!! せっかくグラ・バルカス帝国との戦争が片付いて一段落したというのに!!」

 

海軍基地は堂々巡りが続く。それを見たイギリス側の司令部要員は後に、

 

「戦争の経験が無さ過ぎるが故に日本側は酷く狼狽していた。既にアメリカはこの世界にいない。弱肉強食の世界を自力で生き抜かねばならぬというのに、日本にはその覚悟が無さ過ぎる。どの道彼等は閑職送りであろう」

 

と述べていた。

 

 

マイカル空軍基地日英合同司令部

 

「海自さんはやりますかねえ?」

「やらないだろうね」

「では、空軍基地の判断で出しますか?」

「ああ。「わかば」は沈むだろうが、我が国の護衛艦を沈めた以上は敵だ。反転し、マイカルの基地を攻撃してくる可能性がある。その脅威を排除しないといけない。二グラート連合の空軍基地に対して、マイカルより戦闘機部隊を派遣することを通達しろ。F2には対艦ミサイルを満載し、イギリス空軍のユーロファイタータイフーンを護衛に付けさせろ。マイカルの防空任務は、ムー空軍のユーロファイタータイフーンに担わせる。良いな?」

「了解しました」

「栄光ある英国王立空軍の皆様方、構いませんな?」

「Roger that!」

 

優柔不断な海軍基地とは打って代わり、空軍基地は神聖ミリシアル帝国艦隊との決戦に向けて動き出した。配備されている航空自衛隊のF2戦闘機8機とイギリス空軍のユーロファイタータイフーン4機が離陸。二グラート連合に新設されたイトラタ州マンデラス空軍基地に向けて移動を開始した。同飛行隊はマンデラス空軍基地で燃料を補給した後に再度離陸し、神聖ミリシアル帝国艦隊攻撃を行うことになる。

 

「海自の者らよ! 采は投げられたのだ。同盟国イギリスと共に、神聖ミリシアル帝国を解体し、第一、第二文明圏に安定をもたらさねばならない!! それが我が国と大英帝国の使命ぞ!!」

 

 

イギリス占領下

神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパス

旧ミリシアル帝国皇帝別荘/現カルトアルパス総督府

 

「ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン様!!この度はカルトアルパス総督への就任、誠に祝着至極にございます!!」

「うむうむ、ネート君出迎えご苦労。しかし、中々立派な建物じゃないか」

 

イギリス軍とカナダ軍の占領下にある神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパス。イギリス側は神聖ミリシアル帝国側に更なる圧力をかけるべく、カルトアルパス総督府を設置。戦争の口火役として世界にその名が知られている外交官、ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンを総督として送り込んだ。ミリシアル帝国皇帝が滞在時に使用する別荘を接収し、連合王国旗を掲揚。高台にあり、先のグラ・バルカス帝国による空襲の被害を受けなかった同施設はかつては皇帝の威厳の象徴であったが、今となってはイギリス支配の象徴となっている。

 

「総督になったということは、遂にアオイに並んだな」

「そう言えば、ハミルトン総督の妹君はニュー・ホンコン総督でしたね。失礼ながら、コンプレックスでもおありで?」

「君は本当に痛いところを突いてくるよね! だから僕は君を直属の部下としてどこにでも連れて行くんだけどね!! 次はどこに行きたい? パラディオン?」

 

ハルトはその後1日かけてカルトアルパス総督府の館内を部下のネート、ローサと共に見て回るのである。

 

「そう言えば、僕の学友アキコとシンは結婚式を挙げてないはず。ここでやるか!! 大英帝国は同盟国の民の挙式を総督府で歓迎!!」

「息を吐くように職権濫用」

「それがあたしたちの上司だからね」

 

(続く)

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