神聖ミリシアル帝国海軍ニューアーク攻撃艦隊旗艦
戦艦「オリハルコン」艦橋
「・・・・・うう・・・」
28式艦対艦誘導弾4発が艦橋に直撃した戦艦「オリハルコン」。豪華絢爛な艦橋は一瞬にして地獄と化し、内部はめちゃくちゃに破壊された。司令部要員は殆どが戦死し、生き残っていたのは司令官であるビッグムーン少将ただ一人であった。
「司令!!」
艦橋へ衛生兵を引き連れた乗員が乗り込んでくる。あまりにも凄惨な光景に吐き出す乗員の姿もある。
「ビッグムーン少将、ご無事で!!」
「ああ、ギリギリ・・・・ね。でも他の皆はもうダメみたいだ」
ビッグムーン少将は、艦長であるスワンプリバー大佐が盾となり、重傷を負いつつも奇跡的に生存していた。少将は部下に状況報告をさせる。
「状況を教えてくれないか?」
「その前に治療を。医務室までお連れします」
「ああ、そうだね」
ビッグムーン少将は衛生兵に連れられ艦橋から脱出。その後消火作業と、工兵による修復作業が試みられるも、操舵を司る舵輪が完全に破壊されており、応急修理は不能と判断された。医務室で状況を知ったビッグムーン少将は、司令部の移乗と曳航を指示。ビッグムーン少将は小型艦「シゴロサイ」に移り、その後戦艦「ピンゾロ」に司令部機能を移動させた。
臨時旗艦戦艦「ピンゾロ」艦橋
「さて、状況を報告して貰えないかな?」
「では此方の海図にて」
ピンゾロの乗員の一人は机に海図を広げ、それぞれの艦を模した模型を用いて説明が始まる。
「現在我が艦隊は、航行不能となった戦艦「オリハルコン」を曳航、そして護衛する為、戦艦1、巡洋艦2が曳航、巡洋艦1、小型艦3が護衛として艦隊から切り離し、本国へ向けて移動しております。故に残っていますのは、戦艦1、巡洋艦6、小型艦12となります」
「敵の巡洋艦、並びに逃げ出した輸送艦を沈め、更にニューアークを火の海にするには充分だねえ。して、オリハルコンを攻撃した「わかば」とやらはどうなった?」
「報告によれば、敵巡洋艦は速力を上げ、本艦隊との艦隊決戦を挑むべく前進している模様です」
「時間稼ぎをしたいのかな?」
「そう見て間違いないかと」
「そういえば、日本の巡洋艦を間近で見たことがないな。対艦魔光弾を撃ってこない辺り、既に弾はないのだろう。見える位置まで艦隊を前進させろ。艦隊決戦を望むのであれば、応じてあげようと思う」
「ですが、奴等は我らと艦隊決戦をすることで、輸送艦離脱の時間を稼ぐつもりです。うかうかしていますと、ニューアークから出撃するであろう、グラ・バルカス帝国艦隊と合流されるかと」
「で、あろうな。よし! 本艦と小型艦5隻を日本の巡洋艦征伐の為に残し、他は輸送艦を追いかけさせ・・・・」
次の瞬間、護衛艦「わかば」より通信が入る。
「ビッグムーン少将! 敵巡洋艦が本艦に呼びかけています!!」
「繋げ!!」
ザザザザ
雑音が入った後、ユウキの声が戦艦「ピンゾロ」の艦橋に響く。
(やあやあ神聖ミリシアル帝国海軍の諸君。我が国最新鋭の巡航ミサイルの威力は如何だったかな?)
「名を名乗れ俗物が!! 栄光ある神聖ミリシアル帝国海軍に対して無礼であるぞ!!」
挑発されていることに気付いた通信士は怒りに任せて返信する。すると更なる挑発で応じてくる。
(俗物ね〜? 我が国にスパイを送り込み、やっとミサイル技術を手に入れたは良いものの、模倣も満足に出来ない落ちぶれ三流国家に言われるとはね〜。本物のミサイル、見せてあげるよ。君達から見て右舷前方のフリゲート艦を見てご覧?)
艦橋にいる者全員が右舷前方に視線を向ける。
「・・・・はっ! この方角、小型艦「シゴロサイ」か!!」
次の瞬間、護衛艦「わかば」より小型艦「シゴロサイ」に向け1発のミサイルが発射される。28式艦対艦誘導弾と共に4発ずつ搭載されている17式艦対艦誘導弾が牙を剥いたのである。本来であれば、全て28式艦対艦誘導弾にしたかったのだが、既存の老朽化した「あさぎり」型や「むらさめ」型護衛艦の置き換えに伴う「わかば」型の大量建造や陳腐化している「こんごう」型ミサイル駆逐艦の置き換え及びイージスシステム搭載艦建造に多額の予算を使わざるを得ず、配備することが出来なかったのである。
ズドーン!!
「・・・・シゴロサイ、轟沈!!」
あっと言う間の出来事。それもまさかたった4人しか乗っていない軍艦に沈められたなんて夢にも思わなかった。
「砲雷長! 本艦の主砲であの巡洋艦を沈めてしまえ!!」
ビッグムーン少将は攻撃命令を下した。
「ですが、まだ射程圏外です!! それに近付けば、あの対艦魔光弾を喰らう恐れも!」
「構わん!! あの対艦魔光弾が連射出来るはずが無い!! それに、見たところ豆鉄砲のような主砲が一門しか搭載されておらん!! 接近してしまえば此方のものぞ!!」
「更に対艦魔光弾接近!!」
続けて巡洋艦「ノーカン」に17式艦対艦誘導弾が2発被弾。対空戦闘を行ってはいたものの、無論当たるわけもなかった。巡洋艦「ノーカン」は機関室に被弾。艦としての機能を喪失した。
「・・・・・良くも栄光ある神聖ミリシアル帝国をコケにしてくれたものだねえ・・・・カカカカ」
ビッグムーン少将は全艦隊に通達を出す。
「全艦に通達。これより、世界の敵日本国の巡洋艦「ワカバ」を撃沈する!! これは皇帝陛下が我らに命じられた日本国への教育の一環であるぞ!!」
プライドをズタズタにされた神聖ミリシアル帝国艦隊は、数の暴力で「わかば」をタコ殴りにすることを選択。これにより、ニューアークへ向けて移動中の輸送艦と駆逐艦、護衛艦「もがみ」を追撃することは不可能となり、輸送艦、駆逐艦、「もがみ」は無事に新生グラ・バルカス帝国・イルネティア王国連合艦隊と合流することが出来たのである。
「日本の巡洋艦よ! 良く聞けい!! 貴様らは世界の敵に認定された!! 日本国は世界全ての国から攻撃されることになったのだ!! もし、速やかに降伏し、艦を明け渡すのであれば命だけは保証しようぞ!!」
(では、全力で断る!! 我が国は世界の敵になる理由等何一つとしてない!! 仮に俺達を沈めたとしても、必ず同胞が仇を取る!!)
(それだけじゃない。我が国を敵に回すということは、今や世界の覇権を握る大国、大英帝国を敵に回すのに等しい!!)
(おいコウキ! 通信に割り込むなよ!!)
(ユウキばかりにカッコいいところは渡せないね!!)
(何だって!? お前なんか操艦だけしてろよ!!)
(艦長がいないと強気だねユウキは。まあ、何時ものユウキで安心するよ!!)
その後、2人は息を合わせてこう言った。
((さあ、かかってきな!! 俗物国家!!))
通信は一方的に切られ、雑音のみが流れる。通話を聞いていた艦橋要員は皆怒りに震えていた。世界最強と称されていた神聖ミリシアル帝国。それを馬鹿にされた。プライドを傷つけられた。彼等は怒りに任せ、「わかば」を沈めるべく動き出した。
「全艦日本の巡洋艦を包囲するように展開しろ!! 全包囲からの火力投射でタコ殴りにするのだ!!」
普通に考えれば、誤射の危険性が高まる艦隊運動。しかし、彼等はプライドを傷つけた敵を滅することにしか頭がいっていなかった。
「撃て撃てー!! 日本艦を沈めてしまえ!!」
射程圏内に入った艦艇から順に砲撃が始まる。レーダー射撃が導入されていない艦艇しかいないことから、日本艦に比べて命中精度は大幅に劣るものの、数の暴力を見せつけていく。
「日本艦発砲!!」
「構うな!! 撃てー!!」
猛烈な砲撃戦が展開される。たった1隻のフリゲート艦を沈める為だけに各艦は搭載している弾薬を使い切る勢いで砲撃を行う。誤射も頻発し、巡洋艦の主砲弾が直撃した小型艦が轟沈する場面も見られた。
「全く当たらんではないか!!」
「日本艦より飛翔体!!」
「何!?」
次の瞬間、「わかば」に命中する進路を進んでいた「ピンゾロ」の砲弾が爆発した。
「・・・日本艦は対空魔光弾にて砲弾を迎撃した模様!!」
「ならば数で押すぞ!! 更に距離を詰めるのだ!!」
神聖ミリシアル帝国艦隊は徐々に包囲を狭めていく。徐々に砲弾は「わかば」に近いところに着弾していく。
護衛艦「わかば」艦橋
「本艦に接近する砲弾を迎撃する! A-SAMてー!!」
「取舵25度!!」
敵を少しでも長く釘付けにするべく、護衛艦「わかば」の艦橋では必死の戦闘が繰り広げられていた。
「・・・・ちっ!! 本艦に接近する砲弾、迎撃出来ない!!」
ユウキが絶叫する。見れば左方向から砲弾が艦橋に向けて接近していた。
「コウキ!!」
咄嗟にコウキを押し倒すユウキ。その直後、砲弾が艦橋に命中。ユウキは一瞬で絶命した。
「・・・・・ユウキ君?」
重症を負いながらも、何とか生きていたコウキはぐちゃぐちゃになったユウキの亡骸を見た。最後に自分を守ろうとした、不器用な同僚の姿に涙が止まらない。
「・・・・・ユウキを・・・よくもユウキ君をやったなー!!」
即座に主砲を操作するコウキ。主砲の全力射撃を敢行し、敵艦隊に砲弾の雨を降らせる。しかし、直後に敵小型艦の砲弾が命中。コウキも絶命した。
臨時旗艦戦艦「ピンゾロ」艦橋
「・・・・・敵巡洋艦に砲弾命中!! 本艦の第二主砲が放った砲弾です!!」
視線の先には、艦橋を撃ち抜かれ、無残な姿となった護衛艦「わかば」の姿があった。
「よし! そのまま沈めてしまえ!! 敵は動けないぞ!!」
更に他の艦の砲弾が「わかば」に次々と命中。しかし、「わかば」は只では沈まなかった。近接し過ぎた小型艦に対して、12.7mm機銃が叩き込まれていたのである。
護衛艦「わかば」機銃座
「Oh say can you see, by the dawn's early light,
What so proudly we hailed at the twilight's last gleaming,
Whose broad stripes and bright stars through the perilous fight,
O'er the ramparts we watched, were so gallantly streaming.
And the rocket's red glare, the bombs bursting in air,
Gave proof through the night that our flag was still there;
Oh say does that star-spangled banner yet wave
O'er the land of the free and the home of the brave?」
極限状態となり、完全に精神がイカれてしまっているミヅキは、自然とアメリカ合衆国国歌星条旗を熱唱していた。日本国籍を取得し日本人となっても、生まれ育った祖国アメリカのことを忘れたことはない。最期ぐらいは・・・ということのようだった。
「ヨウお兄様、不器用な妹をお赦しください。ミヅキは散り際を見つけたり!!」
放たれた機銃弾が小型艦「イサワ」に被弾。運の悪いことに主砲の先端から機銃弾1発が侵入。発砲の為に装填中であったエネルギーに誘爆し、爆沈してしまったのである。
「しゃあ!!」
歓喜の声も束の間。次の瞬間・・・・
「きゃあ!!」
機銃座を操作していたミヅキは後続の小型艦が放った主砲により、一瞬で塵と化した。しかし、護衛艦「わかば」の反撃はそれだけでは終わらない。
臨時旗艦戦艦「ピンゾロ」艦橋
「・・・・ビッグムーン少将!! 敵巡洋艦から新たな飛翔体が・・・本艦に向かって来ます!!」
「な、なに!?」
日本国海上自衛隊護衛艦「わかば」艦橋
「・・・・ユウキ、コウキ、ミヅキ・・・・僕を置いて先に逝ったんだね・・・・」
戦艦「ピンゾロ」の砲弾が直撃し、廃墟と化した艦橋で艦長のヒビキはそう呟いた。焼け焦げた艦橋には、ユウキとコウキの遺体の一部だけが残されており、その一部も遺留品がなければ識別することが不可能なレベルであった。
「・・・・そうか、ユウキは最後にコウキを守ろうとしたんだね・・・・」
ヒビキは残された同僚の遺体や遺留品から、2人の最期を悟る。
「・・・・辛うじて射撃管制は行ける・・・そして対艦ミサイルは1発だけ残ってる・・・・最後に一矢報いてやる!!」
ヒビキ自身、敵艦隊からの砲撃で多数の破片を浴び、身体中から血を流していた。片目は見えておらず、左手は感覚がない。それでも、アドレナリン全開である為に痛みを感じていなかった。
「目標・・・・敵旗艦・・・・」
慣れた手付きで17式艦対艦誘導弾の照準を戦艦「ピンゾロ」に向ける。その間にも敵艦隊の砲撃は続いている。
ドーン!!
「チッ!! 主砲がやられたか!! だが!!」
ヒビキは遂にミサイル発射のスイッチを押した。残された最後の1発が敵旗艦目掛けて飛翔を開始する。
「・・・・・ユウキ、コウキ、ミヅキ・・・今から僕もそっちに行くよ。あの世でもまた一緒にいようね」
ヒビキは飛翔する17式艦対艦誘導弾を眺めながら腰に差していた拳銃を抜いた。
「・・・・・マツバさん、配属時に教官であった貴方より先に逝くことをお赦し下さい。そして練習艦「かしま」でお世話になりました、羽田一等海佐と栄一等海佐。必ずや僕とユウキ、コウキ、ミヅキの仇を取ってください」
ヒビキは右手で拳銃を自身のこめかみに向ける。
「そして愛する妻である琴音・・・・今頃、僕の子を産んだ頃かな? こんな夫でごめんね。僕達の子を、強く、優しい、誠実な子に育ててね」
涙が止まらないヒビキ。そして意を決して引き金を引く。
「天皇陛下!! 万歳!!」
パアアン!!
走馬灯が彼の脳裏を駆け巡る。期待の中生まれ、寺で祝福され、その名を響かせるという意味で響と名付けられ、幼馴染みに美人の女の子がいて、高校まで共に歩み、婚約し、防衛大学校でユウキ、コウキ、ミヅキと知り合い、4人で笑い合った日々、配属後にマツバに可愛がられ、後に練習艦「かしま」では初の実戦を経験、そして飛び級に合格して一等海佐になり、艦長まで登り詰めた。そして幼馴染みと正式に結婚し、子供も産まれる。
「人生50年というけど、僕はその半分より少し上ぐらいだったかな・・・・」
次の瞬間、「わかば」が放った17式艦対艦誘導弾は戦艦「ピンゾロ」の機関室に命中。搭載していた燃料用の魔石に誘爆し、汚え花火の如く大爆発を起こした。しかし、護衛艦「わかば」も巡洋艦や小型艦が放った砲弾が多数命中。VLSの中に残っていた対潜ミサイルや対空ミサイルに誘爆し、ヒビキの遺体もろとも爆散した。こうして、後の世に二グラート沖海戦と呼ばれた戦いは終結したのである。この戦いで日本側は護衛艦「わかば」が撃沈、4人の幹部候補生が戦死したが、護衛対象であった駆逐艦と輸送艦は無事ニューアークへ逃げ込むことに成功した。また、一時的に退艦していた「わかば」の乗員は護衛艦「もがみ」と共にニューアークへ退避することに成功しており、人的損失を抑えることにも成功した。一方の神聖ミリシアル帝国側は、最新鋭の戦艦「オリハルコン」が大破、戦艦「ピンゾロ」、巡洋艦「ノーカン」、小型艦「ピンゾロ」、「イサワ」、「ヌマカワ」(巡洋艦による誤射)が轟沈、他小型艦6隻が小破した。
二グラート連合西南200キロ沖合い
日英連合航空隊
「どうやら「わかば」は沈んだみたいだな」
「俺達が仇を取ってやろうぜ!!」
「オグリやウッチーが出来たんだ!! 俺達だって!!」
若手の隊員の間では、ムー大陸にて令和版ルーデル閣下とも言うべき大戦果を挙げたオグリとウッチーはカルト的な人気を集めていた。何なら2人と一緒に戦ってみたいという理由でムー大陸派遣を志願する隊員がいる程だった。
「この戦いで戦果を挙げて、ニュー・ホンコンに行くぞ!!」
「居たぞ!! 模倣三流国家の最新鋭戦艦だ!!」
「曳航する戦艦、巡洋艦、護衛のフリゲートを沈めるぞ!!」
マイカル空軍基地から二グラート連合の基地を経由して飛来した、航空自衛隊のF2戦闘機はイギリス空軍のユーロファイタータイフーンの護衛で本国へ移動中の神聖ミリシアル帝国艦隊に襲いかかった。
「ミサイル発射!!」
各機搭載している93式空対艦誘導弾を4発ずつ発射する。8機のF2から放たれた32発の対艦ミサイルは寸分の狂いもなく飛翔。次々と神聖ミリシアル帝国艦隊を血祭りにあげていく。
「28式の空自仕様の配備も近いんでね!! お釣りはいらないぜ!!」
「敵は最新鋭戦艦のみ!! 離脱する!!」
本国へ曳航する為に離脱していた神聖ミリシアル帝国の最新鋭戦艦「オリハルコン」は、曳航及び護衛の為に展開していた艦艇全てを喪った。更に主砲を始めとした主要装備は93式空対艦誘導弾により破壊された。本隊との合流が成されるまでは戦艦「オリハルコン」は二グラート連合の沖合いで漂流することが確定した。しかし、その本隊は戦艦1、巡洋艦1、小型艦3が沈み、小型艦6が小破する等とても救援に向かえる状況ではなく、司令官であるビッグムーン少将が戦艦「ピンゾロ」と運命を共にしたことから、指揮系統が崩壊。曳航艦隊が壊滅したことを知らない本隊は「オリハルコン」を見捨てて本国へ逃げ帰ってしまうのである。そんな「オリハルコン」を鹵獲せんと、イギリス海軍が迫る。
イギリス海軍ムー国派遣部隊
哨戒艦「シカーラ」艦橋
「あのボロボロになった戦艦を鹵獲すれば良いんだな?」
二グラート連合の沿岸警備隊と共に演習中だったイギリス海軍の哨戒艦「シカーラ」は、護衛艦「わかば」と神聖ミリシアル帝国海軍の戦闘を知り、演習を中止。漂流者救助の為、二グラート連合の沿岸警備隊と共に現場へ急行していた。
「ああ、マイカル空軍基地の連中が護衛艦艇を全滅させた。主砲も使い物にならん」
「だが、相手は巨大戦艦。此方の乗員だけでは制圧出来ないのではないか? それに漂流者はどうする?」
「漂流者については、二グラート連合の沿岸警備隊に任せる。それに、二グラート連合の空軍基地よりヘリコプター部隊も出撃した。彼等と協力して艦内を制圧する」
「成る程な」
「さあ見えてきたぞ! 者共切り込みの用意は出来ているな? 接舷し、梯子をかけ、戦艦に乗り込め!!」
イギリス陸軍二グラート連合教導団
アパッチAH.Mk.1
「あれが神聖ミリシアル帝国の最新鋭戦艦か。鹵獲出来れば、カルトアルパス総督が大喜びするであろうな」
「それだけでなく、古の魔法帝国や7つの秘宝の鍵にもなろう。これは凄い獲物だな!!」
「ああ。よし、アパッチ部隊は敵の対空兵装や甲板の兵士を薙ぎ倒せ!!」
アパッチ攻撃ヘリ8機が戦艦「オリハルコン」への攻撃を開始した。先のF2戦闘機のミサイル攻撃により、機関室に被弾していた「オリハルコン」は回避することも、反撃することも出来ないまま、ハイドラ70ロケット弾を浴びていく。CIWSに酷似した対空火器や、「はたかぜ」や「しまかぜ」等旧来の護衛艦が搭載していたものと酷似した対空ミサイルを収容するランチャーが被弾し、汚え花火を咲かせる。
「よし、制圧部隊を突入させろ!!」
対空火器の制圧を確認すると、ワイルドキャットAH.1が10機突入する。イギリス陸軍機所属なのは先頭を行く1機のみであり、残りはイギリスの支援で近代化中の二グラート連合陸軍の機体である。彼等は今日まで訓練に勤しんでいたが、遂に日頃の訓練の成果を見せる時が来たのである。
「GOGOGO!!」
戦艦「オリハルコン」の後部飛行甲板から侵入したイギリス・二グラート連合軍は艦内へと突入。既に戦意を喪失していた神聖ミリシアル帝国海軍兵は速やかに降伏し、神聖ミリシアル帝国海軍旗が降ろされ、英国海軍旗が掲揚された。本艦は哨戒艦「シカーラ」及び急行してきたイージス艦「まや」の護衛の元、ムー海軍の手により曳航。1週間後にはマイカル海軍基地に到着。同基地にて解析及び修復が実施されることになる。最新鋭戦艦の鹵獲を知った神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル9世はというと・・・・
神聖ミリシアル帝国首都ルーンポリス
政府仮庁舎皇帝執務室
「世界を統べ、太陽の如く我らを導く偉大なる皇帝陛下、悲報と朗報が届いております」
「ほう・・・・まずは朗報から聞こう」
再建が進む首都ルーンポリス。イギリスから借り入れた多額の債務を元手に、急速な復旧と復興を遂げており、これまで再開発の阻害要因となっていた様々な建造物や所有者が物理的に蒸発したことも大きな追い風となっていた。また、神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル9世は自国第一主義を掲げ、復旧復興作業には自国の企業のみを採用するよう通達を出しており、事業に関わる99%の事業者は神聖ミリシアル帝国国内の企業であった。満足気な皇帝や取り巻きであるが、実際には日英の企業が設立した現地法人が関わっている場合が多く、ガワだけ神聖ミリシアル帝国製品風にした日本製品が多く使用されており、この仮庁舎も日本企業の現地法人により建設されている。無論、皇帝はそんなことを知らずに日英を罵倒しているのだが。
「ははっ。1週間程前、二グラート連合の沖合いにて、皇帝陛下直属の艦隊が日本の艦隊と決戦になりました。日本艦隊の中にはグラ・バルカス帝国の艦艇も含まれており、慈悲深きビッグムーン少将は降伏を勧告したのですが、これを受け入れなかった為攻撃を開始。日本の巡洋艦「わかば」を撃沈しました」
「ほう!!」
あからさまに大喜びする皇帝。
「各国から撃沈することは不可能と言われていた日本艦を撃沈したのか!! 素晴らしい!! 実に素晴らしい!!」
「ですが・・・・」
「ん? 話には続きがあるのか?」
「はい・・・・それが悲報になっておりまして・・・・」
「隠さぬでよい。話せ」
「仰せの通りに。巡洋艦「わかば」からの攻撃により、最新鋭戦艦「オリハルコン」が大破、他戦艦1、巡洋艦1、小型艦3が撃沈されました。更に追い打ちをかけるように日本と英国の航空部隊が襲来し、オリハルコン曳航艦隊が壊滅。戦艦「オリハルコン」は英国の手により鹵獲され、ムーの港町マイカルまで曳航されました・・・・」
部下からの悲報。これを聞いた皇帝ミリシアル9世は怒りに震えた。
「・・・・・・・真か?」
「・・・・・・・はい。既に各国の報道機関に我が国の最新鋭戦艦が公開されております。英国海軍に編入され、艦の名前を「クイーン・エリザベス2世」とするとも・・・・」
「・・・・・・・許せぬ」
「・・・・・・・申し訳ありません。また、ビッグムーン少将は先の海戦で戦死致しました・・・・」
「更に許せぬ。日本国に大英帝国、我が神聖ミリシアル帝国を愚弄した罪、断じて許すことは出来ぬ!!」
「報告はそれだけではありませぬ・・・・」
激怒した皇帝に対し、恐る恐る報告を行う部下。
「余の怒りは既に頂点に達しておる。それに、悪いのは貴殿ではない。日英である。であるから申せ。言え!!」
「ははっ!! 英国政府は不当に占拠を続けているカルトアルパスに総督府を設置しました。また、カルトアルパスポンドを発行し、通貨改革や英国市民権の発給等、領土化を狙っています!! また総督には、ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトンが就任したとのこと!!」
「ハルト・スカーレット・アーサー・ハミルトン? 何者ぞ?」
「各国では、彼が赴任した国は英国の標的になると恐れられている貴族外交官のようです」
「わざわざそのような人物を差し向けてきたということは、本気で我が国と戦争するつもりか・・・・」
ミリシアル9世は暫し思案する。
「こうなれば、パル・キマイラを始めとする古代兵器の全力投入によってカルトアルパスを奪還し、ハミルトンとやらを拘束する他ないな」
「ですが陛下、政府や軍部は速やかな英国との和睦を求めておりますが・・・・」
「ならん! そんな軟弱者なんぞ、国家反逆罪で極刑ぞ!! 近衛師団を出撃させ、軟弱者を逮捕するのだ!!」
「承知致しました」
「うむ、頼むぞ」
翌日、皇帝の命を受けた近衛師団は政府閣僚や軍の幹部らを急襲。国家反逆罪の疑いで逮捕すると共に、非常事態宣言を発令。議会を停止し、全権を皇帝ミリシアル9世に集中させること、日本国並びにグレートブリテン及び北アイルランド連合王国を世界の敵と認定すること、全ての国家に対して日英打倒の兵を挙げるように号令を出した。世界最強と称される神聖ミリシアル帝国の号令に各国は混乱した。
英連邦リーム王国首都ヒルキガ
セルコ城/リーム王国総督府
「神聖ミリシアル帝国の号令により、リーム王国国内に潜伏している反英国派や旧体制派が武装蜂起ですか」
リーム王国総督に就任したビート・フィッツジェラルド公爵は部下からの報告書に目を通す。
「でも、神聖ミリシアル帝国からの支援を受けている訳ではないんだね?」
「はい。各地で発生した武装蜂起は全て警察機構並びにリーム王国軍により鎮圧されました。調べたところ、何れも旧リーム王国軍が使用していた装備ばかりで、神聖ミリシアル帝国から直接の支援を受けていた訳ではないようです」
「やれやれ。面倒なものだねえ・・・国王陛下に歯向かう反逆者は残らず成敗するように。この機に国内の反体制派を根絶やしにする!!」
「ははっ!!」
神聖ミリシアル帝国の号令を受け、各地の反英勢力が一斉に武装蜂起。日英両国との戦争に敗北し、敗北者となった旧体制派の者らが再起を賭けて各地で立ち上がった。しかし、旧態依然の武装では、近代化された各国の警察機構や正規軍に敵う訳もなく、各個撃破されていった。また、第一文明各国は神聖ミリシアル帝国からの参戦要請には従わず、中立を表明。新生グラ・バルカス帝国はイギリスを支援すると表明し、ムーを始めとする第二文明圏各国も追随。第三文明圏では英連邦リーム王国、パーパルディア皇国、トゥルキエ共和国で反英勢力が武装蜂起したのみで、神聖ミリシアル帝国側で参戦する国家はなし。それどころか、クワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国、ローデシア連邦、英連邦パラディオン王国がイギリス側で参戦すると表明。特に祭祀の杖と巫女を擁する英連邦パラディオン王国のイギリス側での参戦は大きく、実際に軍隊を出すことは不可能であっても、政治的に大きな意味を持つことになる。一方、日本政府は・・・
日本国東京都首相官邸
「何故に護衛艦「わかば」は戦端を開いたのか!! 現場の自衛官の暴走、どう責任を取るのか!!」
「も、申し訳ありません・・・・」
「謝ったところで時計の針は戻らんわ!!」
イギリス政府が神聖ミリシアル帝国との戦争に向けて動く中、日本政府は政争に明け暮れていた。総理を始めとする政府閣僚らは今回の護衛艦と神聖ミリシアル帝国艦隊の武力衝突やそれに付随して発生したマイカル空軍基地に展開している航空隊による追撃戦をシビリアンコントロールからの逸脱であると問題視。関係者への処分に向けて動き出していた。
「現場の自衛官の暴走のせいで我が国は無用な戦争に巻き込まれるかもしれん!! 関係者にはキツイ処分を下すものとする!!」
内閣総理大臣石葉茂夫は海上幕僚長並びに航空幕僚長に対して、以下の処分を要求した。
・若葉響二等海佐、三代勇気三等海尉、真砂光輝三等海尉、ミヅキ・クチバ二等海尉の以上4名を不名誉除隊とする。遺族への退職金等の支払いはなし
・上記の4名の遺族に対して、護衛艦「わかば」喪失に伴う損害賠償を請求
・海場湊マイカル空軍基地司令を更迭。降格の上で閑職へ左遷する
・海上幕僚長並びに航空幕僚長の辞任
「こ、これはあまりにも酷すぎます!! 海場司令はともかく、若葉二等海佐以下4名の幹部候補生達は国の為に戦い、散ったのですよ!! 新生グラ・バルカス帝国のガルマ皇太子から彼等は黄金柏葉付きダイヤモンド鉄十字勲章の追贈が決定したと連絡が・・・」
「黙れ!! 我が国は神聖ミリシアル帝国との戦争は望んでいない!! にも関わらずマイカル海軍基地の命令を無視して国を危険に晒した!! 当然の処分だ!!」
後にこの時の会話の内容がミカドアイHDを通じてニュー・ホンコン総督府やカルトアルパス総督府から全世界に公開され、石葉政権は国内外からの猛バッシングを受け、起死回生を賭けて解散総選挙を選択。そんな中、石葉総理の選挙区に若葉響二等海佐の従姉が外務省を退職して出馬。総理への徹底的な批判とヒビキへの同情から、総理が完全落選するという緊急事態に見舞われることになる。しかし結果として政争に明け暮れた結果、海場湊司令は何事もなかったかのようにマイカル空軍基地で司令官を続けることになり、ニュー・ホンコンから奴等を呼び戻し、カルトアルパスへ差し向けることになる。
(続く)