日英同盟召喚   作:東海鯰

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開戦初日

クワトイネ公国西部 国境から20kmの町ギム

中央歴1639年4月12日午前早朝

 

「モイジ団長! イギリス空軍より連絡!!」

「申せ!!」

 

後方のエジェイに展開するイギリス空軍基地からの連絡を部下が読み上げる。

 

「ロウリア王国の物と思われる国籍不明機150が貴国の防空識別圏に接近中である。これ受けイギリス空軍は航空自衛隊、カナダ軍と共にこれを1機残らず叩き落とすべくスクランブル発進させた。我々の勇姿を見届けられたし!!」

「承知した!! 皆の者!! 命令があるまで決して基地の外には出てはならぬぞ!!」

 

クワ・トイネ公国西部方面騎士団長モイジは指揮下の部隊に現場待機の指示を出す。イギリスからの支援によりアサルトライフルや手榴弾で武装した陸軍兵士達が各々装備品の最終点検を行い、ある兵士は供与された105mm砲やM1A1エイブラムスの周りや車内で命令が下るのを待機していた。また僅かではあるが軍事顧問として派遣されているオーストラリア陸軍とニュージーランド陸軍の部隊も装甲車やヘリコプターに乗り込み待機している。

 

「民間人の退避は抜かりないか!?」

「飛龍24騎の護衛を付け、昨夜既に最後のバスが出発しました!」

「よくやった!!」

「団長! あれを!!」

 

副官が指を指した方角からは轟音と共に飛来するイギリス空軍のユーロファイタータイフーンの姿があった。その数10機。全ての機体が6発のASRAAMを搭載している。先制攻撃で60騎を撃墜し、残りは機関砲で蜂の巣にする計画である。

 

「なんと・・・・我が国は100万の援軍を得たに等しいではないか!!」

 

ユーロファイタータイフーンが通過すると基地で待機する兵士達が歓喜の声をあげる。戦闘機が高速で通過するその様子は疎開により空き家となった民間人の住居に身を潜める各国の諜報員の手により記録され、後に各国を困惑させることになる。

 

 

ロウリア王国軍先遣飛龍隊

 

「ギム攻略の一番槍の誉れは我々飛龍隊に与えられた!! 全軍突撃せよ!!」

「「「「「「「「「「うぉぉぉ!!」」」」」」」」」」

 

ロウリア王国軍先遣隊のワイバーン部隊が遂に国境線を越えてクワ・トイネ公国側に領空侵犯を行う。領空に入った次の瞬間、先頭を行くワイバーン部隊に悲劇が襲い掛かる。

 

パン! パン! パンパン!!

 

轟音と共に黒い花火が広がる。同時に先ほどまで竜騎士だった肉片が地面に向けて落ちていく。

 

「何事だ!?」

「隊長!! 槍が飛んできています!!」

「槍だと!?」

 

目のよい隊員の指差す方角に向けて携帯型の望遠鏡を向けると、そこにはとんでもない速さで迫ってくる矢のような、槍のような飛翔体があった。

 

「いかん! 全騎散開!!」

 

隊長の指示を受けて飛龍隊は一斉に散開する。しかし、火を吹く槍は進路を変えて次々と竜騎士を肉片へと変えていく。

 

「せ、先頭を進行していた飛龍隊の内60騎が撃墜!!」

「バカな! 蛮族共にそんなことが出来るわけがない!!」

「隊長! 鉄竜が此方に!!」

「鉄竜だと!?」

 

 

「ミサイル攻撃に成功。これより後方に待機している自衛隊の部隊を突入させる風穴を空ける。機関砲でトカゲモドキを撃墜せよ!!」

 

先制のミサイル攻撃で出端を挫いたイギリス空軍のユーロファイタータイフーンは機関砲による機銃掃射を開始した。圧倒的速度差の前にロウリア王国の飛龍隊は成すすべなく撃ち落とされていく。

 

「敵航空戦力の80%を撃墜!」

「自衛隊とカナダ軍に突入の指示を! 後方の敵軍陣地を耕してやれとな!!」

 

ロウリア王国の飛龍隊が大混乱している間隙を突いて航空自衛隊とカナダ軍の戦闘機が突入する。ロウリア王国軍の航空戦力を突破した自衛隊とカナダ軍はロウリア王国軍先遣隊の陣地に向けて進撃する。

 

「・・・・ターゲットロックオン。投下! 投下!!」

 

飛龍隊の後方を進軍中の先遣隊を確認した航空自衛隊のF2部隊はJDAMを投下する。1機辺り4発搭載しており、今回の爆撃任務に参加したF2は5機である為、20発の爆弾が密集して進軍するロウリア王国軍先遣隊の頭上に降り注ぐ。

 

「投下完了。続けて地上への機銃掃射を行う」

 

自衛隊のF2は地上の敵に対して機銃掃射を敢行。カナダ軍のホーネットは万が一に備え自衛隊機の護衛として展開する。

 

「残弾なし。撤退する」

 

武器弾薬を使い果たした日英の航空隊はカナダ軍の護衛でエジェイ基地へ全機無事に帰投した。今回の作戦でロウリア王国軍先遣隊は航空戦力を全て喪い、進軍中であった先遣隊歩兵、重装歩兵合わせて25000の内10000が死亡、または重傷を負った。後方に待機していた魔獣や指揮官らは無事であったものの、完全に出鼻を挫かれた結果となった。

 

「一体何が起きているのですかあああ!!」

 

ロウリア王国軍先遣隊の本陣ではアデムが甲高い声で副官を怒鳴り付けていた。

 

「アデム君、そこまでにしたまえ。とにもかくにも負傷した兵士の治療を優先しなさい」

「ははっ! 失礼致しました」

「しかし、一体何が起きているというのか・・・・クワ・トイネ側に鉄竜がいたとは・・・・」

 

この日の進軍は国境線とギムの町の中間に陣地を築き、負傷者の治療や戦死者の埋葬に専念することになった。その動きはドローンにより日英の知るところとなっており、追加の爆撃の準備が進められると共にクワ・トイネ公国陸軍による長距離砲撃に向けた準備が本格的に進められることになる。

 

「戦車、前へー!!」

「撃てー!!」

 

初日の攻勢で大損害を受けたロウリア王国軍であったが、休みを取ることは出来ずにいた。夜間に進軍したクワ・トイネ公国陸軍のM1A1エイブラムスはオーストラリア陸軍の戦車部隊やニュージーランド陸軍の装甲車部隊と共に戦車砲や機関銃による遠距離攻撃を行っていた。更に避難民の護衛から帰還したクワ・トイネ公国空軍のワイバーン部隊が航空支援を行い、じわじわとその戦力を削り取っていた。食料を集積していた陣地が公国空軍のワイバーンにより燃やされたことで、ロウリア王国軍の士気は低下。飯にありつくには目の前の町を制圧しなくてはならなくなってしまったのである。それも近代化されたクワ・トイネ公国陸軍が待ち構えるギムに、である。

 

「糧秣は敵に求めよ・・・か。まあ、元々その予定だったし、繰り上がっただけか」

「でもギムには昨日の夜現れた鉄の象が待ち構えているんだろ?」

「それだけじゃねえ! 鉄竜もいるはずだ!! クワ・トイネの奴ら、一体何を使役しているんだ!?」

 

将兵達は口々に不安の声をあげる。そんな中、遂に突撃の指示が下る。朝飯抜きになったロウリア王国軍先遣隊は糧秣を求めて進軍を開始する。

 

 

「・・・・敵が進軍を開始した模様!」

「団長! 射撃許可を!!」

「まだだ・・・今少し引き付ける・・・・」

 

団長モイジは物見やぐらから双眼鏡片手にロウリア王国軍先遣隊を見つめる。

 

「・・・・よし! 砲撃を開始する! 火蓋切れー!!」

 

(続く)

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