シルカーク王国王都タカク
駐シルカーク王国日本大使館大使執務室
「何と言うことだ!!!」
日本国外務省本庁からのメールを開き、朝田は頭を抱える。もう一度読み直し、大きなため息をついた。
「どうしました?」
落胆する朝田を見て、事務員が問う。
「シルカーク王国に先日、クルセイリース大聖王国を名のる国が砲艦外交を仕掛けた件だ・・・・」
「何と?」
「シルカーク王国は、神聖ミリシアル帝国、ムー国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、そして日本国に、圏外文明国侵攻の可能性有りとの書簡を送った」
「圏外文明国??」
「そう。文明圏と文明圏外国家のどれにも属さない国家の内、多くの支配領域を持ち、全貌の判明していない文明圏に匹敵する共同体もしくは国家の事を指す言葉だそうだ」
圏外文明国と文明圏外国家、何だか混乱する言い方だが、大層な表題に、事務員は察した。
「・・・・・・と言うことは、未知の文明圏が我々の現在国交のある共同体に大規模侵攻をしてくる可能性があると?」
「そうだ。日本国政府が神聖ミリシアル帝国とムー国と調整した結果、神聖ミリシアル帝国は国内の建て直しが急務であり、軍を派遣する余裕がなく、ムー国は新生グラ・バルカス帝国と共に第二文明圏の防備を固めるので精一杯であり、派遣出来るのは僅かなフリゲート艦や駆逐艦のみであると。ここは東方の雄たる日本国並びに英連邦王国に何とかして頂きたいと。圏外文明国の侵攻は、過去に大災厄をもたらしたことがあるとか・・・・」
「と、なるとシルカーク王国、そしてイギリスが解放した英連邦パラディオン王国が最前線ですね」
「そう・・・・これからとてつもなく忙しくなる事が確定してしまった。何てことだ・・・・・」
朝田は膝から崩れ落ちる。
「まだ・・・・俺は休めないというのかっ!!」
彼の落胆は2分程続いたが、気を取り直して職務をこなすのであった。
駐シルカーク王国イギリス大使館
大使執務室
「ニュージーランドとソロモン諸島への侵攻を完全阻止。更には空中戦艦プリンス・オブ・フィリップの有効性を示すことが出来た、か・・・・」
本国からの情報に通すカーレッジ大使。クルセイリース大聖王国による砲艦外交を受け、シルカーク王国は各国に対して支援を要請。これに対してイギリス政府は、同国並びに英連邦パラディオン王国に滞在する邦人に対して、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの空軍輸送機による脱出作戦の実施を通知した。既に英連邦パラディオン王国の空港には各国の大型輸送機が待機しており、往路では追加の陸軍部隊や機材の輸送を行い、復路では脱出した邦人をニュージーランド本土へ退避させる運用を開始。シルカーク王国と英連邦パラディオン王国の間は陸上自衛隊とオーストラリア陸軍のCH-47が担い、既にシルカーク王国を脱出する第一陣が同国を離陸している。
「脱出作戦は始まったばかり。一刻も早く邦人の退避を進めなくては・・・・うっ・・・・」
車椅子の肘置きに置いた手が震え、意識を手放しかけるカーレッジ。直ぐに彼の秘書官が駆け寄り、意識を此の世に呼び戻す。
「カーレッジ様!!」
「・・・・・・・うう」
「カーレッジ様、お気を確かに!!」
「・・・・・僕にはあまり時が残されていない。キリト君、君には本当に迷惑しかかけていないね・・・・」
カーレッジは日本人を秘書官として常に同行させている。彼の名前は霧ヶ谷斬人。カーレッジからはキリトと呼ばれている青年である。彼の両親はミカドアイHDに多額の借金をしており、彼も地下帝国送りになる予定であったが、彼の両親から債務を回収しに来た白服が熊谷直信であったこと、彼の可愛い一人娘である熊谷明日奈(当時)の彼氏であったこと、アスナと共にミカドアイHDに囚われるも、直信が根部商事に逃げ込むことに成功したこと、その逃げ込んだ先の支店長がマサヨシであったこと、マサヨシがアキコに助言を求めたこと、そしてアキコが一族でミカドアイHDの株式を45%保有するハミルトン公爵家の跡取りの親友であったこと、その跡取りの弟君カーレッジがキリトの事を一目で気に入ったこと等、幸運が重なり、流石のカズタカ会長でも、大株主様を敵に回せないとしてミカドアイHDはキリトと直信の家族を解放。アスナはハルトやアキコ、マサヨシの計らいで大学を中退の上でケンブリッジ大学へ入学。キリトはハルトの末弟であるカーレッジの秘書官に抜擢され、必要な修業をスコットランドにて叩き込まれ、更に彼の素質を見抜いたハルトの計らいにより、並行して当時英国最先端のメカトロニクス関連の教育を同時に受けたのである。
「いえいえ、俺はあのまま地下帝国送りにされる運命にあった存在。それを救い上げてくれたのがハミルトン公爵家。その恩義を少しでも返さないと、俺の存在意義がない・・・・」
「キリト君・・・・ありがとう。ありがとう、ハルトお兄様・・・貴方が用意してくれた秘書官は素晴らしいよ・・・」
薬物耐性型のエイズに感染してしまい、人生を半ば諦めているカーレッジ。隣で彼の為に尽くしてくれる唯一の秘書官は、彼の兄であるハルトが用意してくれた者であり、外務・英連邦・開発省入省以来ずっと傍に控えてくれている。
「カーレッジ様、お気を確かに!!」
「・・・・・キリト君、僕はずっと考えていたんだ」
「・・・・・・何をお考えになられていたので?」
「死ぬ為に生まれてきた僕が今生きている理由は何だろうってね」
「・・・・・カーレッジ様の存在は、俺が今を生きる理由です。意味がないなんてことはありません」
「じゃあ、僕が死んだ後はどうするんだい?」
「それは・・・・」
返答に窮するキリト。
「キリト君、僕は遠くない将来死ぬ。だからこそ、僕は君がどうなってしまうのかが気になって仕方がないんだよ。僕は確かに君をどん底から救い上げたかもしれない。でも同時に、僕と君は一心同体になってしまい、道連れにしかねない。僕は彼の世まで君に付いてきて欲しくはないんだ。何れは僕の呪縛から解放されて、君にしか出来ない物を探して欲しいんだ」
「俺にしか、出来ない物・・・・・」
「直ぐに見つける必要はない。一生かかってでも見つけてくれれば良いんだ」
「・・・・カーレッジ様、間もなくニュージーランドへ向かうオーストラリア軍の迎えが来ます。ご準備と参りましょう」
「もうそんな時間か・・・・もう少し君とお話がしたかったなあ・・・」
涙ながらに別れを惜しむカーレッジ。
「キリト君、今日まで秘書官を勤めてくれてありがとう。たった今を以て、僕の秘書官の任を解く。ニュージーランドにいる最愛の妻の下に戻り、今まで僕が奪ってしまった日常を少しでも取り戻して欲しい」
カーレッジはキリトに対して1000万円分の小切手を切る。
「この大金をどう使うかは君の判断に任せるよ。いつかまた会える日を信じて・・・・」
「カーレッジ様・・・・」
数時間後、オーストラリア軍の輸送ヘリが到着。カーレッジらイギリス大使館の面々を乗せて飛び立つ。キリトはニュージーランドの日本大使館より、現地で待機の上で迎えの者と合流するよう指示を受けた為、シルカーク王国に置いてけぼりになる。
「・・・・・・・・いつかまた会える日・・・・来ると良いな・・・・」
迎えのオーストラリア陸軍のヘリの機内
「・・・・・さて、何処で最期の時を迎えようか・・・ハルトお兄様のいるカルトアルパスか、アオイお姉様のいるニュー・ホンコンか、それとも生まれ故郷のスコットランドか・・・・」
キリトには隠していたが、カーレッジは既に余命4か月と診断されていた。間もなく外務・英連邦・開発省を退任し、残された時間を穏やかに過ごすつもりであった。その為彼は世話になった者達に私財を分け与え、断捨離と部下の再就職先を斡旋していたのである。
「・・・・・でも、キリト君だけは最後まで残しておけば良かったのかな? 今更だけど」
男性ながら中性的で整った容姿が特徴的だったキリト。病に蝕まれた身体故に、恋を諦め、女は眼中になかった・・・否、眼中にあってはならなかったカーレッジは、彼の写真を初めて見た時、頭の中で何かが弾ける音がした。
「今思えば、あれは恋だったんだね。そして言われなければどちらの性別なのか分からない見た目も、僕が彼を救いたかったきっかけだった」
カーレッジは私用のスマホに保存している、キリトとのツーショット写真やハルト、アオイを加えた4人で写った写真を見つめる
「あの時はハルトお兄様の胸ぐらを掴んでまでキリト君を救うよう嘆願したな。たまたま帰郷してたアオイお姉様がドン引きしてたぐらいに」
段々と眠たくなってきたカーレッジ。
「最期の場所は、ニュージーランドに着いてから決めよう。ハルトお兄様やアオイお姉様の都合もあるし」
カーレッジはスヤスヤと暫し眠りについた。彼は最期の場所に何処を選ぶのか。この時はまだ決めていない。
シルカーク王国王都タカク
駐シルカーク王国日本大使館
「ここが・・・・シルカーク王国が恐れていた日本国の大使館か」
クルセイリース大聖王国の王族の使者という名目で、ミラは日本国の大使に面会を申し込む。ちなみにイギリス大使館、カナダ大使館、オーストラリア大使館は既に封鎖されている。まだパプアニューギニア大使館は通常通り業務を行っているが、彼等はパプアニューギニアも日本の同盟国だとは知らない。
「日本の同盟国の大使館は既に封鎖済か・・・明らかに我が国に備えているな・・・・」
通常はシルカーク王国との良好な関係のために存在する大使館であり、他国の担当大使が交渉することはありえないが、準有事に近い状況となったため、実績のある朝田が担当することとなった。日本国としては話し合いに来た者を断る理由も無く、会談が行われることとなった。
「・・・・・・・・・」
ミラは室内に入って辺りを見る。質の良い統一された調光、室内の空気は外のジメジメとした空気と違い、涼しく、快適に制御されている。
「なっ!!!」
入口から少し進み、ドアの先、エントランスに大型のモニターが設置されていた。モニターではDVDにより、日本国の紹介映像が再生される。
「これは・・・・何だ!! このレベルの映像魔具を日本国は実用化しているのかっ!?」
所々に見える高度文明の形跡。
「シルカーク王国が敬意を払うのも頷ける。日本国の秘密を探ってやる!!」
ミラは緊張しつつ、会議室に入室した。
駐シルカーク王国日本大使館会議室
「・・・・・・何なんだ、この映像魔具は?!」
会議室にはG5各国のニュージーランド大使の顔が映し出されており、全員がミラを憐れむ表情を向けている。
「貴方がクルセイリース大聖王国の代表ですかな?」
明らかに日本人とは似ても似つかない白人の男性がミラに話しかけてくる。
「誰だ? 日本人ではないようだが・・・」
「これは失礼。私は駐シルカーク王国ニュージーランド大使を務めさせております、オリバー・ジョージ・スミスと申します。この度はよろしくお願い致します」
「ニュージーランド・・・・日本の従属国か何かか?」
「従属・・・・ですか。敢えて申し上げるのでしたら、イギリスの、ですかね? 今は対等な同盟国ですがね」
「は、はあ・・・・」
その後、お互いの挨拶から会議が始まる。
「今日はどのような用件で来られたのでしょうか?」
今までの異世界での経緯、そしてクルセイリース大聖王国がシルカーク王国へ提示した内容を知っている朝田は警戒して尋ねる。隣に座るオリバー、そしてビデオ会議にて参加している日本、イギリス、カナダ、オーストラリアのニュージーランド大使も同様である。
「私はクルセイリース大聖王国の王家から命を受け、参りました。私としてはお互いの事を良く知らず、不幸な衝突を起こしたくないという願いがあります」
朝田は今までとは異なる展開に目を丸くする。ミラは更に続けた。
「シルカーク王国の方々から、この周辺国に対する日本国並びに英連邦王国の影響力は絶大だと伺っています。我々は日本国並びに英連邦王国の事を良く知りたいと思います。なるべく早く、9名から成る調査団を日本国や英連邦王国へ派遣したい。本日は、その調整をお願いにやって来ました」
「調査団受け入れは本国に報告したいと思います。先ほどおっしゃった、不幸な衝突を起こさないようにしたいというのは、国としての意思でしょうか?」
「申し訳ないが、国家としての意思ではありません。ただ、不要な衝突を避ける方法は常に模索したいと考える人間は王家にもいるという事です。よって、今回の派遣はあくまで調査団であり、使節団ではありません」
「お話になりませんな」
朝田の隣に座るオリバーは呆れた表情を浮かべる。
「ミラ殿、貴方方の飛行艦は我が国の領空を侵犯した。そしてあろうことか迎撃の為に向かい、国際法に基づいて警告を行った我が国の同盟国の戦闘機に対して攻撃を行いました。それにも関わらず使節団を派遣せず、調査団の派遣ですか・・・・」
オリバーは回収した飛行艦の残骸の写真をミラに見せつける。そこにはイギリス、カナダ、オーストラリアにより撃墜された飛行艦の姿があった。ミラはクルセイリースはとんでもない国を敵に回してしまったのだと実感した。
「我が国は貴国により一方的に攻撃を受けた立場。故に我が国並びにイギリス、カナダ、オーストラリアから貴国に対して、以下の和平案を共同で提案する」
オリバーはミラに対して和平案を記した1枚の紙を手渡す。自国のどの紙より高品質かつ白い紙にミラは驚いたが、内容に更に驚く。
1.クルセイリース大聖王国は、ニュージーランド並びにソロモン諸島に対して領空侵犯並びに武力侵攻を行ったことを全面的に認める
2.クルセイリース大聖王国は、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド軍が行った一連の軍事行動の正当性を認め、飛行艦撃沈に対する一切の請求権を放棄する
3.クルセイリース大聖王国国王は、一連の軍事行動の責任を取り、退位の上でグレートブリテン及び北アイルランド連合王国国王がクルセイリース大聖王国国王に即位する
4.クルセイリース大聖王国軍は解散し、英連邦王国軍の一員として再編する
5.クルセイリース総督を設置し、イギリス人の総督を置く
6.クルセイリース大聖王国は立憲君主制国家とし、G5各国の指導の下で民主化を行う
7.クルセイリース大聖王国は保有する全ての属領並びに植民地にて独立の賛否を問う国民投票を実施すること
8.クルセイリース大聖王国は、クルセイリース総督の指導の下で政治改革を行う
9.クルセイリース大聖王国は、クルセイリース総督府が指定した人物を重要犯罪人としてグレートブリテン及び北アイルランド連合王国へ引き渡すこと
10.クルセイリース総督は、政治改革の妨げとなる人物の公職追放を行う権利を有する
11.クルセイリース総督府設置後、軍事裁判を行い、関係者への処罰を行う
「・・・・・賠償金はいらないと?」
「賠償金なんかお前らの国を占領してしまえば幾らでも回収出来るからな。わざわざ書く必要もない」
(どっちが侵略者何か分からないんだが・・・・・)
完全に悪人面のオリバー大使と引き気味の朝田大使、顔面蒼白のミラ、そしてそれをビデオ会議で見守る日本、イギリス、カナダ、オーストラリアのニュージーランド大使。
「で、受け入れるんですか?」
「・・・・・調査団であり、使節団ではないので・・・・お答え出来ません・・・・」
「では、この和平案を受け入れない。我々と戦争をする用意がある、という事で宜しいですかな?」
「ち、違う!! されど、私は外交官ではない。故に和平案を持ち帰り、検討をさせて頂きたい!!」
必死に朝田とオリバーに訴えかけるミラ。
「・・・・解りました。ちなみに日本国から貴国に対し、調査団もしくは使節団派遣を受け入れていただく事は可能でしょうか?」
「現時点では・・・・出来ません」
ミラは言葉に詰まる。
「・・・・・解りました。色々事情がおありなのでしょう」
「では、色よい返答を期待しておりますよミラ殿」
朝田とオリバーはクルセイリースが一枚岩では無いことを改めて確認する。彼等はイギリス政府からそれぞれの本国政府を介して、クルセイリースの内情に関する情報を受け取っており、この場では答え合わせを行っていたのである。G5各国は調整を実施し、後日各国は調査団を受け入れる事となった。
シルカーク王国王都タカク
練兵場
「来たか・・・・あれが・・・凄いな」
船の上にプロペラが付いた機体が飛ぶ。G5への調査団がやってくる。データがほしかったため、空飛ぶ船でG5最初の訪問国であるニュージーランドまで来ることは出来ないか打診したが、
○高純度液体魔力燃料が手に入らない
○最寄りのニュージーランドからクルセイリースへ迎えに行こうにも、船の入港を拒否される
等の理由から、第三国で他の交通手段に乗り換える事となった。シルカーク王国がイギリスの後ろ盾を得るために協力を申し出、王都練兵場で乗り継ぐ事となったのであった。シルカーク王国練兵場では相手の技術レベルを探るため、日本はもちろんの事、各国の有識者や技師が待機していた。彼等を案内する為、
根部昭子∶駐英連邦パラディオン王国日本大使(内定)
根部真∶駐英連邦パラディオン王国日本公使(内定)
未来葵∶日本国海上自衛隊横須賀基地所属医官(二等海尉)
風屋躍∶日本国宇宙航空自衛隊英領カルトアルパス派遣部隊整備班班長(一等空佐)
霧ヶ谷斬人∶駐新日本大使館臨時職員(メカトロニクス担当)
ジュリナ・アイラ・シンプソン∶駐英連邦パラディオン王国英国大使(内定・イングランド人)
セレナ・サンピエール∶駐シルカーク王国加大使(フランス系カナダ人・フランス語通訳担当)
アレックス・ウィリアム・タイラー∶駐英連邦パラディオン王国豪大使(内定)
テ・アタワイ・ジョンソン∶駐シルカーク王国新公使(マオリ族と白人の混血・マオリ語通訳担当)
の9名が待機。彼等の周りには日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの各国陸軍から選抜された精鋭50名が固めており、黄色人、白人、黒人、先住民、異世界人と多種多様な人種で構成されていた。ちなみに朝田大使とオリバー大使は引き続きシルカーク王国大使として赴任を続ける為、練兵場にてアキコらに引き継ぎを行っている。
「やれやれ・・・・主人とお別れしたと思ったら、大役を任せられるなんてな・・・・アキコさん、貴方の口添えですか?」
「まあ、そんなところね」
「キリトはアキコに土下座して感謝すべきなんだがな。アキコがいたから今のお前があるようなものだからな!!」
「貴方も私が拾ったようなものでしょ」
飛空艦が近づいてくる。おおよそ考えられない大きさの物が飛ぶその様子にG5各国の面々は息をのむ。
フィィィィィン
「あれは・・・・まいったんだYO! 航空力学や空気力学を使用した飛行ではないんだYO!」
フーヤンは隣にいたシンに話しかけた。
「何故そう思うんだ?」
「ヘリコプターのダウンウォッシュ・・・・簡単に言えば、下へと吹き付ける風が少なすぎるんだYO! また、あの程度の翼であれほどの大きさの機体は飛ばないんだYO! まあ、とてつもなく軽い素材なら別だがYO!」
「なるほどね。キリト、メカトロニクス関連としてはどう見える?」
アキコは今回案内人の一人である、キリトに話しかけた。
「初見のみだからなんとも言えないが、我々西側諸国が運用する電子機器では説明することは出来ないな」
「それに、あれは航空戦力の主力では無いだろうYO! おそらく我が国でいうところの護衛艦か、輸送ヘリに相当するんだろうYO! あれに限定するなら、遅いのでヘリコプター程度の脅威度とは思うが、彼等の国にはどれほどの機体があるのか解らないため、大きな脅威となる可能性は決して捨ててはならないと思うな!!」
「そうなると、まともに対抗出来るのはイギリスが保有する2隻の空中戦艦だけか・・・・」
様々な可能性を議論する日本国の専門家達。イギリスの代表は空中戦艦の前にはガラクタに過ぎないと確信し、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの代表は本国へ空中巡洋艦の建造計画の前倒しを進言することを決める。
「外見じゃメカトロニクス関連は分からないから、可能なら鹵獲して調査したいところだが・・・・中立国でやるのは不味いよな」
「イギリス次第じゃない?」
「ブリカスはやりかねないよな。中立国から同盟国に強制的に移動させて鹵獲とか」
シンはチラッとイギリス側の代表に目をやる。
「・・・・・・あ、これマジでやる気だな・・・・」
明らかに悪い笑みを浮かべているジュリナ大使を見てシンはこの後何が起きるのかを察した。それを見たアキコはジュリナに対して釘を刺した。
「ジュリナ大使、あくまで我々は話し合いの為に接触する。くれぐれも、そこから外れた真似はしないように。シルカーク王国側の面子を潰すことにもなるわよ?」
「・・・・・あらま? 日本人は慎重に慎重を期すのね〜残念」
悪巧みがバレてしまっては仕方ない、と着陸した瞬間に陸軍部隊を突入させて鹵獲する計画を断念するジュリナ大使。そんな中、飛空艦は練兵場へ着陸するのだった。
クルセイリース大聖王国
メステル型飛空艦サラマンカ
「間もなくシルカーク王国王都タカクへ着陸いたします」
機内にアナウンスが流れる。
「ニース様、本当に行かれるおつもりか」
ミラは頭を抱える。
「もちろんですよ。あ、今日の私は王女ではなく、貴方の部下のニースです。呼び捨てにしてもらってかまいません」
聖王女ニースより推薦した1名は、すでに飛空艦に乗り込んでいると聞いていたため、その他の人員でミラ達は出発した。しかし、調査団の王女推薦の者と対面したミラは推薦された者が王女本人であった事に、頭を抱える。
「私が勝手に国外に行くことに驚いているのでしょう? 大丈夫、バレませんよ。手は打っています。この変装もすてきでしょ? 他の調査団の方々も気付いてないようですよ」
「バレるに決まっているでしょう!!どういった手をとったのですか?」
「秘密です」
ニコニコと笑う聖王女ニースに様々な不安を抱える中、ミラ達は下船の準備を進めるのだった。
日本国東京都福生市
航空自衛隊・在日英空軍横田基地管制塔
「日和田司令、まもなくカルトアルパスから帰還並びに派遣されるユーロファイタータイフーン4機が到着します」
かつては在日米軍が使用し、アメリカ大統領が来日する際、空の玄関口としての役割を担ってきた横田基地。しかし、異世界転移により使用者はイギリス空軍に代わり、更にこれまではアメリカ側が握っていた航空管制も日本側が握ることになり、日本側の基地をイギリス側が共同使用する形に変わった。また日英同盟締結に伴い、基地の司令官は日本側、副司令はイギリス側が出すことになり、日英両軍の一体化が進んでいる。
「カルトアルパスからか・・・・あの問題児とそのお仲間でしょう? 僕も貧乏くじ引かされたな・・・・」
昆虫採集が趣味の横田基地司令官、日和田都久志空将は溜息をついた。身長158cmと小柄だが、司令官としての能力の高さと真面目さを評価され、トントン拍子で出世し、将来は統合幕僚長になると称されており、異世界転移直後は那覇基地司令として、輸送作戦の指揮を執っていた。
「カルトアルパスからの部隊をレーダーで捕捉。着陸態勢に入りました」
「着陸を許可して。3番滑走路を使用させる」
やがて4機のユーロファイタータイフーンが横田基地上空に飛来する。途中、2機のがタイフーン予定航路を外れ、基地周辺に集まった報道陣やマニアに曲芸飛行を披露する等トラブルはあったものの、無事に到着した。
「久々に日本に帰って来たな」
「ああ。しかし、横田に降りるなんてな」
これまで乗り慣れたF15Jからユーロファイタータイフーンに機種変更をしたオグリとウッチー。元々卓越した操縦技術を有していた2人は機種変更を1カ月で完了。今は航空自衛隊の飛行教導群の職務を拝命し、カルトアルパスにてNATO式に再編された各国空軍の指導にあたっていた。
「あ! あれは伝説のエースパイロットの小栗一等空佐に内一等空佐じゃないか!?」
「マジだ!! スツーカで戦車を破壊しまくった令和のルーデル閣下だ!!」
「アンビリバボー!!」
今や日英陣営でその名を知らぬ者はいない存在となったオグリとウッチーを一目見ようと横田基地で勤務する基地要員が集まっていた。
「やれやれ・・・人気者は辛いね〜」
「オレとウッチーは当たり前の事を当たり前にしただけなんだがな・・・・誰でも出来ないか?」
「それが出来るのは御二方だけですよ・・・しかし凄い人気ですね・・・・」
「ラスティはそんな人気者の配偶者として恥じない働きをしないとな!」
「わ、分かってますよ!!」
彼等はクルセイリースの調査団が来日した際にユーロファイタータイフーンにて曲芸飛行を披露する予定であり、基地司令である日和田空将らと調整を行う事になる。因みに防衛省では、
「敵国が飛行艦を持っているという事は、空飛ぶ艦を持っているという事です」
と防衛相が発言。財務省に対して2隻の空中巡洋艦の建造予算を認めさせた。また既に呉では1隻目の原子力空母の建造が開始されており、神戸では2隻目の原子力潜水艦が起工する等、軍備増強が進められていた。日英陣営は砲艦外交の空中艦隊、実力行使の空母打撃群、最終兵器のSLBMとICBMの3本を防衛戦略の柱とし、G5を中心とした国際秩序の構築に努めることになるのである。なお原子力空母の1番艦は「ずいかく」、2番艦は「しょうかく」、イギリス海軍所属の3番艦は「ハーミーズ」、やまと型原子力潜水艦の2番艦は「むさし」となる見込みである。空中巡洋艦については命名基準がない事から引き続き検討するとの事である。
(続く)
「しかし、凄い」