日英同盟召喚   作:東海鯰

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未開の文明国の接触4

シルカーク王国王都タカク郊外

航空自衛隊・イギリス陸軍防空陣地

 

「あれが噂の飛行艦か、あまりにも遅すぎる上にデカすぎだな」

 

シルカーク王国からの要請で急遽タカク郊外に配備された航空自衛隊のPAC-4部隊とイギリス陸軍のスカイセイバー部隊。彼等は万が一に備え、常に照準をクルセイリースの飛行艦に向けており、撃墜命令が下れば直ぐにでも攻撃可能であった。

 

「あれでは外す方が難しいな」

「まあ、防空ミサイルを一発耐えられれば上出来だろうな」

「そもそも実際に戦闘になれば、スクランブルしてきた戦闘機部隊と交戦し、次いでイギリスの空中戦艦と殴り合い、続けて日英の水上艦艇と戦い、ようやく地上部隊だからな・・・」

「いやあ、勝てねえだろ、クルセイリース」

「にも関わらずイギリスを敵に回すのか・・・・」

 

航空自衛隊の面々はクルセイリースに憐れみの目を向けながら監視を続ける。やがて飛行艦は練兵場に着陸するのである。

 

 

シルカーク王国王都タカク

 

練兵場において、ミラは整列してアキコ達案内人に挨拶する。今回のクルセイリース聖王国は、調査団長ミラをはじめとして

 

○生活調査員(仮)ニース(聖王女)

 

○飛空艦隊長 シエドロン

 

○第二魔戦騎士団長 アバドン

 

○魔法武具士 アニーナ

 

○魔法技師  テタル

 

○国政経済学者 イルサ

 

○銃神 ダルサイノ

 

他1名から成る。各々がその道のプロであり、日本国の国力を測るための強力な布陣だとミラは考えていた。

 

「これより、こちらV-22オスプレイに乗って頂き、北西の大国ニュージーランドの首都ウェリントンに向かいます。その後は機体を換え、オーストラリアのシドニー、カナダのオタワ、イギリスのロンドン、そして日本国の首都、東京へお連れいたします」

 

アキコがオスプレイへと誘導する。元々英連邦パラディオン王国やシルカーク王国に配備されていなかったものの、安全にタカクからウェリントンまで直行出来てかつ、国力をアピール出来る機体がオスプレイしかなかった事から、護衛艦「いずも」艦載機として新たに海上自衛隊に導入された機体が使用されたのである。

 

「ふん、何とも小さい飛空艦だ。こんな小さいのしか無いのか」

 

アバドンが吐き捨てる。そらく日本人やイギリス人にも聞こえる大きさの声であったため、ミラは焦る。失礼な言ではあるが、確かに小さいので、他のクルセイリースの者達はうなずいた。ただ一人を除いて・・・・・

 

「さて、彼等も驚く事でしょうね。オスプレイの異質さに」

「こんな化け物を試作し、実用化出来るアメリカは偉大なものだ。今はいないけどな」

「今となっては我が国が最先端のメカトロニクス先進国・・・カーレッジ様の秘書官を退いた後の方が忙しくなりそうだ」

 

アキコ、シン、キリトはそう言うとオスプレイに乗り込んだ。甲高い音と共にオスプレイが離陸した。最初はヘリコプターのように垂直に離陸したかと思うと、やがて回転翼軸の角度を変更し、巡航モードに移行。クルセイリースの面々は通常のヘリコプターより遥かに速い速度で最初の訪問先であるニュージーランドの首都ウェリントンを目指す。

 

「・・・・・・ミラ」

 

聖王女ニースは日本人に聞こえないようミラの耳元で話す。尤も、機内の至るところには高性能集音器が隠されており、彼女のヒソヒソ声も全て筒抜けとなっている。ちなみに、今回の集音器はキリトが1週間で作り上げた代物であり、事情を知らない者は皆、何で今まで狂人兄妹の末弟の秘書官で燻っていたのかと首を傾げたという。

 

「必要な材料を全部手配してくれて助かったよ、根部駐英連邦パラディオン王国日本大使」

「クッソ長い役職で呼ばれるのは面倒だし、アキコで良いわよ」

「しかし、キリトの技術力は凄いな。1週間で設計製作試運転全部完遂したんだろ? ボクには無理だな」

 

特別なヘッドホンを装着し、クルセイリースの面々の会話を盗聴するアキコ達。彼女らはクルセイリースの面々とは仕切られた区域に座っており、誰かが入って来ないように葵が外で見張っている。

 

「・・・・我が国の方が技術力が上? 正気かな?」

 

苦笑するキリト。その後も彼等は盗聴しながら報告書の作成を進めていくのである。一方、盗聴されていることを知らないクルセイリース側は・・・・

 

「アバドンさんの言うことはごもっともです。今のところ、我が方の技術が遙かに上だと感じます。日本国についてはそこまで警戒する必要は無いのかも知れませんね。しかし、弱小国といえども、むやみやたらに蹂躙するのではなく、平和的に物事を進めるべきですし、何より日本の同盟国である英連邦王国は未だに正体が分かりませんし・・・・」

 

楽観的なニースとは異なり、ミラは少々居心地が悪そうだ。

 

「私は・・・・日本国大使館に出向いたときに高い技術によって作られた物を多く見ました。 姫様、先入観を持たないようにお願いします」

「ええ、そうでしたね、おや??」

 

ニースは魔法技師テタルを向く。

 

「テタルさん、どうしました? 顔色が優れませんが・・・・乗り物酔いでもしましたか?」

「い、いえ・・・・・ニースさんでしたね? これを見て下さい」

 

テタルは魔力測定器を持っていた。針に動きが無い。

 

「魔力が・・・・この飛行物体は魔力が計測出来ないのです!!! でも私が魔力を込めると測定器が反応するので故障ではありません」

「まあ・・・・他の文明って面白いですね」

「そんな、そんなレベルの話しでは無いのです! 魔力を使用せずに飛ぶとすると、空気を押し出して飛んでいる事になります。この大きさを飛ばすとなると、とんでもない出力が必要なのです!!」

「と、なると我が国の魔導機の出力はもっとすごいということですね」

「そういう話ではありません。飛空艦が時速にして200km後半の速度しか出ないのは、飛行方式の限界なのです。よって小型化しても速度が上がらない。理論上上げようが無い。しかし、日本のこれが空気を押し出して飛んでいるとすれば、理論上のスピード限界は遙かに上なのです」

「もっと速い飛空艦が日本にはあると?」

「可能性ではなく、間違いなくあると私は思います。そして、それだけではありません。このオスプレイという機体は非常に特殊と言わざるを得ません」

「魔力なしで飛ぶからですか?」

「違います!! 先程まではあのプロペラは真上に展開していました。しかし見てください!! あの機外を映している画像が正しければ、オスプレイはプロペラの角度を自由に変えながら飛行が可能なのです!! 我が国にはそのような技術はありません!!」

 

魔法技師テタルは、日本国の兵器の理論限界に戦慄した。やがてオスプレイはニュージーランドの領空に接近。予定通り、オーストラリア空軍のF35A戦闘機2機が護衛と誘導の為に合流。クルセイリース側の文官らは機外を映し出しているテレビ画面に矢じりのような見た目かつ、プロペラのない戦闘機にただ口を開けていることしか出来なかったという。

 

 

ニュージーランド首都ウェリントン

ウェリントン国際空港

 

「皆様、長らくのご搭乗お疲れ様でした。当機はニュージーランドの首都ウェリントンの空の玄関口、ウェリントン国際空港に着陸致しました。案内がありますまで、そのままでお待ちください」

 

やがてオスプレイの後部ドアが開き、クルセイリースの調査団らはニュージーランドの首都ウェリントンに降り立った。G5の一角を担う大国ニュージーランドの首都ウェリントン。その首都の空の玄関口であるウェリントン国際空港には、大小様々なジェット旅客機が行き交っており、活気あふれる様子がクルセイリースの調査団らの目に飛び込む。

 

「ほう? 少しは大きい飛空艦があるじゃないか。しかし、武器を積むスペースが無いな」

 

ニュージーランド側が用意した空港ターミナルへの連絡バスの車内にて、アバドンはそう呟いた。

 

「しかし、数だけはやたら多いですな」

 

魔戦騎士団長アバドンの横に立つ飛空艦隊長シエドロンは更に続ける。

 

「それに、ウェリントン国際空港に駐機する飛行艦全てに大きな翼がありますな。まるで鳥のようだ。魔素拡散器が見当たらない、本当に未知の文明だ」

「しかし威厳の無い形だ、戦になれば、あっさりと勝ちそうだな」

 

二人のやりとりを聞いていた魔法技師テタルは話しに割って入る。

 

「アバドン様、シエドロン様、お話中のところ申し訳ないけど、あれ・・・・たぶん途轍もなく速いです」

 

テタルは国と国の対立に興味は無く、技術にのみ興味を持つ。純粋に技術的視点から滑走路や駐機場を行き交うジェット旅客機を眺めた時、あまりの線形美にため息が出た。凄まじい性能を誇る機械は美しくなる。

 

「ん? どうやら離陸するようだ」

 

彼等の目には、今まさに滑走路から飛び立とうとしている1機の大型旅客機の姿があった。ブリティッシュ・エアウェイズが運行する、ロンドン-ウェリントン線である。使用機材は日英加3カ国共同開発の新型旅客機、New-MSJ。異世界転移に伴い、三菱重工業を中心に、イギリスのロールスロイスやカナダのボンバルディアが加わって開発された最新鋭機だ。既存のMSJと区別する為にNewの呼称が追加されている。

 

「あの圧倒的な大きさ、流れるような流線型、空気圧縮放射で飛ぶなら、あの翼に2つ付いているのがエンジンだろうな。たったあれだけの大きさであれほどの大きい機体を、魔力を使わず空に浮かべるなど、とんでもない出力だ・・・・」

 

我が国の技術を遙かに上回る物が目の前にあるという事は疑いようが無く、感動さえも覚えるこの状況下において、軍人達は自分たちの国が上だとのたまっている。滑稽であり、日本人やイギリス人に聞かれたらたまらなく恥ずかしい発言。そのような思いから、テタルは軍人達の会話に割って入ったのであった。

 

「・・・・・・は、速い!!」

 

彼等の常識から完全に外れたジェット旅客機New-MSJは轟音と共に離陸して行く。テタルは冷や汗が止まらない。旅客機であれなら軍用機となれば・・・と。その後、彼等はニュージーランド政府が手配したバスでウェリントン市内各地を回る。

 

 

テ・パパ国立博物館

 

「へえ〜、ニュージーランドは原住民と入植者が融和した国なのですね」

「その裏にはやはり悲しい歴史もあるみたいですね」

 

まず一行は、ニュージーランドの歴史、文化、自然を総合的に学べる国立博物館、テ・パパ国立博物館へと案内された。マオリ語で「私たちの場所」を意味する「テ・パパ・トンガレワ」の略称で、1998年にオープン。 6階建ての広大な館内には、先住民マオリの文化や歴史、ニュージーランドの自然環境、移民の歴史など、多岐にわたる展示がなされている。

 

「我が国にも博物館はあるが、ここまで立派なものではない・・・」

 

ニースは展示品に気持ちが高ぶるのに対して、ミラは内心穏やかではなかった。館内設備の全てが自国を軽く上回っており、更に展示品の状態も非常に良好だ。

 

「・・・・・テタル殿はどう見ますか?」

 

ミラは隣に立つテタルに話し掛ける。

 

「やはり恐ろしいと言わざるを得ません。この博物館にも魔力が使われておりません。時折反応しますが、それは魔力を持った者がすれ違う時だけです。基本的には館内に魔力は存在せず、魔力に依存しない構造とみて間違いありません。それも6階建てという巨大な建造物全てが魔力に依存しない・・・我が国には不可能です・・・」

「となると、ニュージーランドはかなりの強国ということになりますか?」

「強国なんて生優しいものではないでしょう。それに、説明によればニュージーランドはイギリスからの入植者が中心となって建国された国。つまりは入植者を送り出した国があるはずです」

「そのイギリスはニュージーランドより優れていると?」

「その可能性は非常に高いかと」

 

その全てが常識外れであり、ウェリントンに比べれば聖都セイダーなんて田舎町にしか見えない。

 

「如何ですかな? 我が国アオテアロアは?」

 

ニュージーランド側の案内人、テ・アタワイ・ジョンソンが話し掛ける。

 

「ここにある資料が全て真実であるのであれば、ニュージーランドは非常に国力の高い強国であると言わざるを得ないかと・・・・」

 

ミラは絞り出すようにそう述べた。するとハテナという顔のニースが割り込む。

 

「ところで、アオテアロアとは何でしょうか? 貴国の国名はニュージーランドなのでは?」

「一般的にはニュージーランドと呼ばれますが、先住民であるマオリ族側の名称がアオテアロアなのです。元々はマオリの人々が北島のみを指して使っていたそうですが、19世紀後半以降この言葉は国全体を指すようになりました。原義には諸説あり、通説では「長く白い雲」を意味するとされています。これはポリネシア人が初めてニュージーランドを見つけた際の雲のかたちを示しているそうです。因みに、私は先住民であるマオリ族と入植者である白人のハーフになります」

「先住民と入植者の混血・・・・差別等を受けたりはしなかったのですか?」

「確かに昔は国家の中枢を独占する白人と虐げられる先住民という構図でしたが、今では過去の悲しみや苦しみを乗り越え、共に国を豊かにして行こうと団結しております。私は先住民であるマオリ族と、海の向こうからやってきたアングロサクソンのハーフであることに強い誇りを持っておりますし、国民も互いに相手の事を尊重しているG5では平和な国家であります」

 

クルセイリースの文官らは、ニュージーランドの歴史を知ると、自分達が今属領や従属国に対して行っている施策が恥ずかしく惨めに思えてくる。

 

「・・・・・そ、そうなのですね・・・・」

 

それしかニースは言えなかった。

 

「フン・・・・実につまらんな・・・」

 

文官らは既に戦意喪失している中、武官らは相変わらず見下したままであった。

 

「何時までそんな減らず口が叩けるものか・・・・蛮族め」

「何だと貴様?」

 

アキコと共に同行しているシンに対してアバドンが反応する。シンは変わらずに挑発的である。

 

「こんな歴史を見せられても大したことない、本気でそう思うのなら、相手のことを1ミリも理解出来ない蛮族でしかないからな」

「フン! 文官風情が良くも軍人にそんな口をきけたものだ。ここがクルセイリース本国ならシンとやらなんぞ、一瞬で斬り捨てているものだ!!」

 

軍事技術に関する展示品がないことに不満の武官ら。その後、彼等はウェリントン市内のスタジアムへと移動する。

 

 

ウェリントン・リージョナル・スタジアム

来賓席

 

「本日は我が国の代表とイングランドの代表による、ラグビーの試合が行われます。その熱気ぶりに言葉を喪うことでしょう」

 

ニュージーランドの案内役であるテ・アタワイ・ジョンソンはそう発言する。気付けば彼はスーツ姿からオールブラックスのユニフォーム姿になっている。

 

「それは何ですか?」

「見ての通り、我が国のラグビー代表オールブラックスのユニフォームですよ。観客は皆、自分達が応援するチームのユニフォームを着用し、チームに声援を送るのですよ」

 

ニースの疑問にアタワイはそう答える。因みに彼の弟がオールブラックスのメンバーであり、弟の名前の入ったユニフォームをアタワイは着用している。

 

「国歌斉唱。スタンドの皆様はご脱帽の上、国旗にご注目ください」

 

皆が帽子を取り、スタジアムに掲揚されている国旗に注目する。やがて大音量のイギリス国歌「神よ国王陛下を守りたまえ」が流れる。イングランド代表やスタジアムに駆け付けたファンが熱唱し、一部ではユニオンジャックやセント・ジョージ・クロスを振り回す。自国では見られない光景に文官らは言葉が出ない。

 

「・・・・・スポーツ・・・・謂わば娯楽でさえ、ここまで出来るというのか・・・・・」

 

経済学者イルサはスタジアムの巨大さやそこに使われている技術力の高さ、そして何よりそれを維持出来る経済力の高さに頭を抱えた。

 

「もし我が国がやろうとすれば、一体何年分の国家予算が必要なのか・・・・しかもニュージーランドはG5の中では最弱の国というではないか・・・」

 

続けてニュージーランドの国歌が流れる。初めは先住民の言語であるマオリ語、次に入植者の言語である英語の歌詞が流れる。

 

「・・・・・ほう、ニュージーランドの民には戦闘に使えそうな者もおるのだな」

「ニュージーランド陥落後に戦力として使えましょうぞ」

 

ニュージーランド代表のハカを見た武官らは、屈強な彼等の肉体をみてそう呟いた。軍事部門にしか興味のない彼等はニュージーランドを従属させた後を見据えて行動していたのである。敵うはずのない相手とは知らずに。その日の夜、彼等はウェリントン市内のホテルに宿泊した。

 

 

ニュージーランド首都ウェリントン

駐ニュージーランド日本大使館大使執務室

 

「それでアキコ、クルセイリースの面々はどうだったの?」

「文官らは既に降参状態よ。ウェリントンの活気ぶりに心が折れたみたい」

「その話し方だと、武官共は見下してた?」

「まあね。でも、明日にも理解する事になるわね。明日はオーストラリアのシドニーに向かうことになるわ。オーストラリア政府とニュージーランド政府が手配したチャーター機でね。オーストラリア空軍が戦闘機による護衛を見える位置でするしね」

「オスプレイには窓がなかったから、画像を現実とは受け入れなかったのね」

「そう言うこと」

 

アキコとアスナの談笑は続く。

 

「でも良いなあアキコは。税金で英連邦旅行に行くようなものでしょ? 私も行きたかったなあ・・・」

「アスナ、貴方はニュージーランド大使でしょ。重要国の大使様を外せるわけないでしょうが」

「でも、同期なのにアキコは色んな国に行かせて貰えてるじゃない。ベラルーシから始まってロシア、イギリス、ドイツ、中国。異世界転移後はメスマン帝国、神聖ミリシアル帝国でしょ? 私なんてずーっと日本の中よ?」

「その代わりに面倒な仕事も押し付けられてきたのよ? ベラルーシ赴任時は邦人がベラルーシ当局に拘束される事件も起きたし、中国赴任時は反日感情に駆られた現地人に襲われかけたし・・・あとはシンの尻拭いもね」

「そう言えばメスマン帝国赴任時も、シンの尻拭いをしてたわね。確か、怒りに任せてゴミ箱を蹴り上げたんでしょ?」

「まあね。ただ、結果としてはそれが正解だったのが何とも言えないわね」

 

アキコは掛け時計を見る。

 

「さて、そろそろ風呂に入らせて貰うわ」

「明日もクルセイリースの一行を案内するんでしょ? 大変ね」

 

翌日、G5を視察するクルセイリースの調査団はオーストラリア政府とニュージーランド政府が合同で手配したB-787型機でウェリントンからシドニーへ移動。彼等の中には、

 

「そんな・・・・こんな事がありえる訳が無い!!」

 

と嘆きの声を叫ぶ者もいた。

 

「如何ですかな? 蛮族の運用する旅客機の乗り心地は?」

 

完全に嘲笑する表情でシエドロンを見つめるシン。

 

「お・・・・大川殿、この機はどのくらいの高度を時速何キロメートルで飛んでいるのでしょうか?」

 

いつまでも驚いてばかりはいられない。適正な「調査」を行わないと、とんでもないことになる。飛空艦隊長シエドロンから慢心は消えた。

 

「そうですね、確か巡航高度は13000mで、速度はマッハ0.85なので概ね時速1000kmくらいだと思います」

 

事前に外務省や防衛省、航空会社から配られた資料を見て説明するシン。

 

「じ・・・・じ・・・・時速1000kmを超えるというのですかっ!!」

「はい、昨日のオスプレイでは時間がかかりすぎるので、乗り換えて頂きました。貴方方がオーストラリアに続いて視察予定であるカナダ、イギリス、そして我が国日本への移動にも旅客機を用いる予定です」

「そ・・・・・そうですか」

 

(まずい、マズイマズイマズイマズイ!! これは民用機、これほどの高度と速度を出されたら、我が飛空艦隊が束になってもこの機を捕らえることが出来ぬ)

 

「ぐ・・・・軍用機はもっと性能が?」

 

帰ってくる答えは想定できる。しかし、聞かずにはいられなかった。

 

「ええ、軍用機には民間機よりも遙かに速く飛ぶ機体は当然あります。自衛隊やイギリス軍の見学も、今回の案内には含まれております。オーストラリアやカナダの領空に入る際にも軍用機による出迎えはありますが、本格的な見学は日本に着いてからになります」

 

シエドロンは背筋に悪寒が走る。やがて機はオーストラリア最大の都市シドニー上空に到達する。

 

「ウェリントンよりも栄えているように見えるわね・・・・」

 

ニースは飛行機の窓から町を見渡す。密集した超高層ビル群、それぞれに灯りがつけられ、宝石をちりばめたかのような輝きを放つ。これほどの大規模建造物群を作り出すG5。それもシドニーは東京やロンドンに劣るというのだ。そんな国力に圧倒される。空から見る風景はあまりにも美しく、ニースは純粋に感動を覚えるのだった。その後彼等はオーストラリアのシドニー、カナダのオタワ、イギリスのロンドンを訪問。オーストラリアではコアラを、カナダではメープルシロップを見せ付けられ、ニースはコアラのぬいぐるみを買い込み、メープルシロップをたっぷりかけたホットケーキの虜になるのであった。一方でイギリスではあまりのメシマズぶりに驚愕。彼等は日記にこう記した。

 

 

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国

 

これまでに訪れたカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事実上の宗主国であり、英連邦王国やコモンウェルスの盟主。後に訪れる予定の日本国と共に世界一の大国と言われており、今や世界にその名を知らない国はないとも言われている。だが、メシマズ過ぎて我々の口には合わず、同行していた根部殿や大川殿からカップ麺の差し入れを受ける事で腹をもたせることになった。あまりにもメシマズ過ぎ、それから逃れる為に世界征服を行っていたと、日本人は言っていたが、それも否定出来ない。

 

 

その後、ロンドンを出発したクルセイリースの調査団の一行はブリティッシュ・エアウェイズのチャーター機(New-MSJ)にて東京羽田空港に到着。その後、警視庁や自衛隊、MI6やミカドアイHDの白服による厳戒態勢の下で彼等はホテルに移動した。

 

 

夜 帝国ホテル 小会議室

 

調査団6名は小会議室を貸し切り、今日までの出来事と明日の予定について会話する。

 

「よし、大丈夫。付近に人の気配はありません」

 

クルセイリース大聖王国側の会話は日本国に聞かれてはまずいと判断したミラは周囲を確認した。無論盗聴器はセット済みであり、意味はないのだが。やがて生活調査員(仮)ニースが話し始める。

 

「正直、この街を見たとき、日本国がとんでもない国力と技術力を有する国である事が理解出来ました。それもこれまで訪れたカナダ、オーストラリア、ニュージーランドより遥かに優れています。イギリスで何とかスタートラインに立てるか否かです」

 

ニースの話しにシエドロンがうなずく。

 

「移動手段1つにしても、極めて効率的で速い。今回乗ってきた飛行機、あれは我が飛空艦隊では全く捕らえる事が出来ない」

「つっ!!!」

 

飛空艦隊は、クルセイリース大聖王国の軍事的優位を支えてきた部隊。そこに籍を置く歴戦の将、シエドロンの言は重い。

 

「アバドン殿、いたずらに日本国並びに大英帝国を刺激する事の無いようにお願いしますぞ。我が国から見れば、カナダにオーストラリアにニュージーランドでさえ歯が立たぬでしょう」

「わ・・・・・解っている!! 技術力が高い事は解った。しかし、軍は人間が運用するものだ。我が精鋭魔戦騎士団も、歴戦の猛者が多い。騎士団のみならず、魔法兵団も、最近は今までの数段上の武力を得た。私は魔戦騎士団長の立場として、日本国の武力見ずに、軽々しく負けるかも・・・などという言を吐くことは出来ない! もちろん国力が大きいことは東京の街を見れば理解出来る。決して舐めてかかることはない」

 

ミラはテタルの方向を向いた。

 

「テタルさんは日本をどう見ますか?」

 

魔法技師テタルに意見を求める。

 

「日本国は・・・・いえ、G5は完全に我が国とは異なる技術体系で国が成り立っています。街を高速で走る車、そして鉄道と呼ばれる大規模高速移動手段・・・・・そのどれもが、全く魔力を検知出来ません。魔力を効率的に使いすぎて、外に漏れる魔力が無いため検知できないという可能性も考えましたが、そんな事はあの古の魔法帝国でさえ無理でしょう。技術体系が全く異なるので、強さの上限が見えません」

 

各々が日本国や大英帝国について考察し、意見を交わす。

 

「明日からこの国をしっかりと見ていきましょう」

 

ミラの言に皆同意した。会合が終わり、各々が部屋に戻る。

 

「・・・・・夜になっても眠らない街東京・・・・か」

 

ミラは窓の外を見た。高層階から見下ろす景色は本当に美しい。快適な部屋、所々に見られる圧倒的な技術力に身震いする。

 

「国が・・・暴走しなければ良いが・・・・」

 

最近の軍王ミネートはおかしい。昔はもっと部下の言うことを聞く男だという噂があったが、今はあまり人の話を聞かずに突っ走る感がある。

 

「何が彼を変えたのか・・・」

 

山積する問題に頭を抱えながら、ミラはフカフカのベッドで眠りについた。

 

 

日本国東京都福生市

航空自衛隊・イギリス空軍横田基地

航空隊員宿舎

 

「明日の曲芸飛行についてだが、日和田空将から許可が降りなかった!!」

「日和田空将も心配性だよね〜まあ、堅実な方だから仕方ないかな〜?」

「小栗一等空佐に内一等空佐は何をしようと企てたんですか?」

「「飛行中に一瞬だけエンジンを止める」」

「そりゃあ止められますよ。周辺は住宅街ですよ・・・」

「ラスティも心配性か?」

「そりゃあ、奥さんが死なれたら嫌だもんな? ラスティ・オグリ少佐?」

「オストフルス中佐!! からかわないでください!!」

 

エースパイロット達もクルセイリースの調査団の受け入れに向けて準備を進める。

 

「なあ、オグリ? 腹へってない?」

「確かに腹へったな。ラスティ、ホットケーキ作れよ。材料はその辺にあるからさ」

「ええ!?」

「俺も食いたいな。作れ、ラスティ・オグリ少佐」

「2人に便乗するオストフルス中佐も本当に悪い人ですよ・・・」

 

※この後ラスティは本当にホットケーキを作らされた模様

 

「アイスコーヒーはないのか?」

「俺はブラックコーヒーで」

「俺は敢えてオレンジジュースにしとくぜ。髪の色に似合うしな」

「俺は皆の家政婦じゃない!!(とか言いながら準備してしまう模様)」

「明日寿司をたらふく食わしてやるから許してくれラスティ。あとそろそろお前の子を産ませてくれ」

「おお!?」

「ラスティにもこの時が来たか・・・・俺も嬉しいなぁ・・・」

「ああもう!!」

 

(続く)

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