病みつきになるやばげなチキンのあるコンビニ 作:ハピエン主義者
”
よう、
ハッピーチキン!レッツゴーチキン!
Lチキっておいしいよね
ザッザッザッ
平時ではさんさんと太陽が照るアビドス砂漠が周囲も見えぬほどに暗くなった頃、少女は一人気だるげに立っていた
「...うへ、おじさん、今日は気持ちよく眠れるとおもったんだけどな~」
ザッザッザッ
少女......小鳥遊ホシノは誰にも聞かせるつもりのない独り言を呟き、慣れた動作で愛用の盾と銃を構える
「銃もなしにここまで来るなんて...もしかして遭難しちゃった?」
ザッザッザッ
目の前から歩いてくる人間?ロボット?に対し、念のためにとコミュニケーションを取ろうと試みる。しかしある程度予想していた通り返答はない
「うーん、何か喋ってくれると嬉しいんだけど...ま、いっか。ヘルメット団って格好でもないしね」
ザッザッザッ
少女は今一度、こちらにやってくる存在を観察した。対象は金属製の帽子を被り、いつかの歴史の授業で見たような軍服を着てガスマスクとつけている。もうずっと授業をまともに受けていないため記憶がおぼろげであるが...少なくともまともではなさそうだ。警戒度を高めつつ、相手をよく見る
前方から歩いてくる者のその装備は不自然なほどにボロボロだった。まるで大規模な戦闘をした直後のような...それにしては時間が経ちすぎている?自分でもよくわからない考えに首を傾げつつもよく目を凝らせば、その周囲の空気に違和感がある。どうやら
「...警告だよ、この先は私たちの大事な学校があるんだ。もし君がこのまま歩いてくるんだったら...敵とみなして、撃つ」
ザッザッザッ
向こうからやってくる
「はぁ......おじさんだって不用意な戦いはしたくないんだけどなぁ
──これが最後の警告だよ。今すぐ止まって」
ザッザッザッ
暗いながらも明確に視認できるほどの巨大な黄褐色の雲を背後に引き連れ、周囲にガスを漂わせる
「...後悔しないでね」
ザッザッザッ
「...あ、れ?」
ボーっとする
考えがまとまらない
遠くで何かが聞こえる...?
人々の悲鳴
聞き慣れているようで何かが違う銃声
音質の悪い誰かの声
爆発音
...
ザッザッザッ
意識が明確になる。先ほどまでその一挙手一投足に注視していたはずだがなぜか意識が逸れていて、気が付けばソレが手を伸ばせばホシノに触れることができるほどの距離にまで接近を許してしまっていた
「ッ!?まずッ!?」
シュコー、シュコー、シュコー
気づいた時にはもうホシノにソレの手が伸びていた。咄嗟にガスの存在を思い出し、息を吸わないよう口を閉じつつ身をねじってその手から逃れようとする。咄嗟の行動だったがその速度は速く、通常の間合いならば十分に避けられただろう。だが、優位は
荒い、
ホシノは自分の失敗を悟りつつも、その瞬間をただ見ることしかできず
その手が か お に ふ
──ブツッ
「...あれ?」
少女は一人、
「ん~~?」
何だったかと頭を捻るが、それを意識すればするほどに記憶が薄れていく感覚がある。明らかに異常事態だったが、ここ最近寝不足気味な彼女にとってはよくあることだった
「まぁ、いっか。ふぁあ~」
だから少女はあの一瞬の悪夢のような出来事を思い出すこともなく、あくびをしながらいつものように夜間の巡回へと戻っていった
「やはり不味いな。だが、将来の顧客は確保できた」
ぱっと見は無表情な顔の奥で満足げな感情を浮かべた赤い髪の毛の少女は、去っていくホシノの背を見ながらそう呟く
「...む、そろそろ奴らのチキンの時間か。行かねばな」
一瞬にして姿がかき消えるそこには何もいなかった。が、ほのかに揚げたてのチキンの香りが漂っていた
「...場所はここだな?」
「そうだよリーダー。マダムが言うにはここに”遺物”があるってさ」
そう言ってミサキが周りを見渡すが、あるのは朽ち果てた廃墟のみ。彼女たちにマダムから与えられた情報は少ない
【大まかな場所を教えられ、そこで扉を見つけたら紙に書かれた番号を押し、そこで”遺物”の存在を確かめる】
この程度の情報であるかもわからない”遺物”とやらを探さなければいけないというのはかなりの無茶だが、アリウスでは慢性的にその無茶が横行しているためわざわざ異を唱える者はいなかった。呆れるほどに独裁である。生徒会長()の姿か?これが...
「す、すごくボロボロです...こんなところにあるものなんて既に壊れてしまっているんじゃ...もしマダムがそれを聞いたら...うわーん!もうおしまいです!」
「...」スッスッグッ
「『マダムはあまり期待してないから大丈夫』?なら、私たちじゃなくてもっと暇なやつらにやらせたらいいのに。特にこの前の奴らなんか...」
「ミサキ、口を慎め。これはマダムの指示だ。姫の言う通り今回の調査はあくまで”遺物”があるかだけに集中しろ。その品質は考慮しない。壊れていたとしても、それを持ちかえればいいだけだ」
「ところで、なんですけど...なんで私たちが選ばれたんでしょうか?」
「お前もか、ヒヨリ......マダムが言うには、今回の任務は少人数かつある程度の戦闘能力が求められるらしい。事実、私たちより先に調査しに行った班は誰一人として帰っていない」
「そ、それってかなり危険ってことじゃないですかぁ!?うう...こんなことなら最後にお腹いっぱいご飯を食べたかったです...あと、まだ読んだことのない雑誌とか、寝ても痛くないお布団とか、それとそれと...」
「...大丈夫でしょ。マダムだっていたずらに私たちを使い切ろうなんてしないだろうし...姫?」
姫と呼ばれる少女、秤アツコはミサキの袖を引っ張り何かの意思表示をする。手話でしかコミュニケーションを許されていないがための行動だが、傍から見ると内気で可愛らしい。その内面は内気とは真逆の超アグレッシブお嬢様なのだが
「...!」チョイチョイ
「どうしたの?...ねえリーダー、ちょっとこっち来て」
だがミサキは今まで何度もされてきた行為なので今更何かを感じることはない。アツコが指をさす方向を見てみるが、特に何かがあるようには...いや、何かがあった
「どうした、何かあったか?」
「うん、あそこ。瓦礫のせいで分かりづらかったけど、姫が見つけてくれた」
ミサキが指で示す先には周囲と同様に朽ちた廃墟があるだけだ。しかし先導する姫に続いてその中を進んでいけば、やがて視界が開けて汚れきったガラスに囲まれた部屋と扉が見えた
「これは...流石だ、姫。目的地に行くためのエレベーターだな」
「こ、この下に行くんですか!?狭いですね...私たちが入るだけでいっぱいいっぱいです...き、きっと下には待ち伏せした人たちがいて、降りてきた私たちを滅多打ちにするんです...かといって上に残っていたら何もできないし...うわーん!もうおしまいです!」
「落ち着け、ヒヨリ」
「とりあえずヒヨリはその重たいリュック下して」
「ええ!?な、なんでですか!?」
いつものように悲壮感溢れる泣き言を言うヒヨリを全く意に介さず、冷徹に指示をする
「どう考えてもかさばるでしょ。それが無かったら余裕をもって乗れるし。ほら、早く」
「ああ、ここでお別れなんですね...」
ヒヨリはいつものようにめそめそと泣きながらとんでもない大きさのバックを地面へと下した
...いくつかの雑誌や食料をポケットにパンパンになるまで敷き詰めてから
「...」
あまりのがめつさというか、神経の図太さに呆れを通り越して無我の境地に入った他の少女たちは、仕方がないので意識を他に向け、お菓子のつかみ取りをしているかのような様子のヒヨリを待ってあげたのだった。優しい
ビーッ!!!
だがその優しさも、全員でエレベーターに乗った直後に過荷重のためブザーが鳴るまでのものだったのだが
「...ヒヨリ」
ため息を飲み込み、名前だけを呼んでポケットの中身を出すよう促すサオリ。その目はどこか悲しみを帯びていた
「う...わ、わかりました...じゃあ、私は外で待っておきますね」
何を血迷ったのか、今ある選択肢で一番
「は?そのパンパンに入ったポケットの中身を出せばいいだけじゃん」
「ええ!?これをですか!?そんな...」
「...」グイグイ
「うわっ!姫ちゃん、引っ張らないでください...そこには何も、何もないんです!」
だがそんなことは知るかとばかりにアツコがポケットをグイグイと引っ張れば、そこから堰を切るように雑誌や食料の端など色々なものがなだれてくる。その光景はダムが崩壊した瞬間のようであり、せっかく頑張って詰めた成果が無に帰す絶望感はそれと変わらないものだったとか
「あ、あぁ...」
「...凄い量だな。よくここまで物を詰め込めるものだ。まさか帽子の中にまで潜ませているとは思わなかったが...」
「よくポケットがもったよね。これもう伸びきってるよ」
「...」^^
「うぅ...こうやって隠し事は白日の下に晒されてしまうんですね...悲しいですね、辛いですね...」
被害者ぶっているがこの女、冬に食料を頬張るリスよりもポケットを膨らませた猛者である。一体何をどう隠したつもりだったのか。その根拠だけは晒されることもなく、全員がエレベーターへと乗り込んだ
「...ここか」
「暗いですね...何か明かりはないのでしょうか?」
事前情報の通りの手順を行い、無事に目的地の地下にたどり着いたスクワッド。周囲を軽く見てみるが、当然明かりをともすスイッチなどあるわけもなく持ってきたライトで狭い範囲を照らしながら進行していく
「待って、この階段の先、扉がある...光が漏れてる」
丁寧にクリアリングをしながら暗い階段をゆっくりと下りていく。その動作は洗練されており一切の無駄が省かれており、いつ敵と接敵したとしても問題はない。今回の調査に参加するよう命じられた理由がその行動により如実に表れていた
「何かがいる、もしくはあるか...私が先行する。姫たちは私のフォローを」
「「了解(です)」」
「...」
「...姫?」
全員が再度気を引き締める中、アツコ一人だけが仮面越しでも微かにわかるほど、どこか気の抜けたような雰囲気を醸し出していた。まるでここには何も危険はないかのような...
しかし、いつもの廃墟探索などではこのように油断することはなかったためにサオリはその雰囲気に困惑する。その様子に気が付いたのか、アツコは少し悩むようなそぶりを見せてからヒヨリたちと同様にサオリのフォローをする位置へと戻った。違和感は拭いきれないが、位置に着いた以上特に何かを言って時間を無駄にすることはない。サオリは脳内に浮かぶ「?」を払い、そのドアを開けた
「中は思っていたよりもきれいだな...」
「な、なんだか寒くありませんか?こう、肌に刺さるような...えと、帰ったりは...しないですよね。わかってます、わかってますから、姫ちゃん引っ張らないで...」
「...」スッ
「匂い?...確かに、言われてみれば何か匂う...?」
手話で匂いについて指摘するアツコ。顔全体にマスクを着けているはずなのになぜこの中の誰よりも先にそれに気が付いたのか。疑問が浮かんだミサキがアツコの指す指先の方を見てみれば...
「...な、なんだかおいしそうな匂いがするような?」ジュル
涎をたらす
「はぁ...で?ヒヨリ、その匂いはどこから?」
「匂い?ヒヨリ、何か匂いがするのか?」
「...ちょっとだけ?美味しそうな匂いが...」
「そうか...だが、罠の可能性がある。事実、先の班が全滅しているんだ。慎重に行くぞ」
「...ねえヒヨリ、匂いの元がどこだかわかる?この中で唯一マスクしてないんだし、いけるんじゃない?」
「なっ、それはあまりにも酷では...」
「えっ?そ、そんなことを言われても...あっ、あそことあそこと...あ、でもあっちが一番濃いです」
「分かるのか...!?」
「犬...?」
何かのプレートがかかった部屋を一つずつ指さし、最後に奥の扉を指すヒヨリの姿に驚きを隠せないサオリとミサキ。一方は単純な驚愕であり、もう一方は提案した張本人でありながらも若干引いていた
その後は匂いについて一旦置いておき、遺物の探索を行った。微かに匂いがするとヒヨリが言った扉は完全に施錠...どころか溶接されており、開閉できないようになっている。上部になにやらへこんでいるような部分があるが、
部屋へ入る前にサオリが扉のすぐ傍へ近寄り、中の様子を伺う。そこまで近づいてみれば、確かに中から食欲をそそる匂いがする。自分はこの距離で気づけたというのに、ヒヨリはよく気が付いたものだと感心しながら次は中の音を探る
ザクッ
「おいし!!ちょっと!手が止まらないんだけど!!」
「もうちょっと落ち着いて食べないか。ボクたち一応女子だぞ?」
「るっさいわね!おいしいもんは美味しいからしょうがないのよ!」
「うるさいな...」
「げ、元気があっていいですね...?」
扉が分厚いのかくぐもった声と何かが弾ける...割れる?形容しがたい音しか聞こえないが、誰かが、もしくは何かがいることは明確だった。素早くその情報を共有し、全員がその手に自分の得物を持った
「何か物音がするな...全員、戦闘態勢を取れ。部屋に突入し、拘束して遺物についての情報を得る」
「3、2、1...突入!」
サオリのカウントダウンと共に全員が部屋へとなだれ込む。中に誰かがいる前提で行われたその動作は流れるようにするりと部屋に突入することを可能とした
確かに中には誰かがいた。それも武器を待たず、代わりに何かを口にしているという無警戒な状態で。撃てばすぐに無力化できる状況だった。だが、サオリは終ぞその引き金を引くことはなかった。代わりに一つ、疑問を口にした
「ングッ...ゴホッゴホッ!!あ、アンタら...!」
「お前たちは...!?」
部屋にいたのは、チキンを貪る先の班の生徒、そして他でも行方不明となった生徒たちだった
書きたいこと書いたら終わらなかった...
ミサキがこんなにしゃべるわけないだろ!いい加減にしろ!という方。会話が回らんのです...チキン買うから許して!
マダムの生徒の使い方は財団のGPSと同じ定期
タイトル(Title):SCP-4099
著者(Author):Connor MacWarren
訳者:mi6584
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-4099
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4099
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0