病みつきになるやばげなチキンのあるコンビニ 作:ハピエン主義者
そしてこの話を書いている最中にセイアが実装されました。やったぜ。
嬉しすぎて[ PQLが閲覧上限値を超過しています]です。なのでセイアにはチキンを食わせましょう。
「祝い事にはもちろんチキンである。常識だ。で、あるならば今すぐ食え。おい逃げるな。まだまだ在庫はあるのだぞ。今すぐに買え。今なら...おい逃げるな。」
「......」ポチポチ
「...ハァ。」
気品あふれる部屋の中、狐のような耳が生えた金髪の少女がスマホをつっつきながら深いため息を吐く。
彼女がいるのはトリニティ総合学園にあるとある一室。先述した通りその内装は非常にロイヤリティがあり、いかにも階級の高そうな部屋だが...彼女の表情は沈んでいた
それもそのはず、なんと今日は彼女...百合園セイアが襲撃される日であることに他ならないからだ。しかし彼女はそのことを知りつつもわざわざこの場にとどまっている。
傍から見れば自殺願望でもあるのかと思われそうな行為だが、むろん彼女も考えなしでこの部屋にいるわけではない。その襲撃犯に付け入る余地があるため、そこをついてうまいこと寝返らせようと計画していたのだ。華奢な体に反してやることはかなり大胆である。
「...」
だが彼女は別に常人離れした強靭な精神力を持っているわけではない。失敗した時のことを考えれば思わず身がすくむ程度の”多少”強い精神を持っているだけだ。それゆえに今彼女は心のうちの不安から目を背けるようにして手慰みにスマホをいじっているに過ぎない。
「フッ...ん?」
SNSに流れてきた『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットで貴方も一攫千金!!!』といういかにも怪しげな広告に対して、いったい誰が引っかかるのだろうかと思いつつ鼻で笑い飛ばして画面をスクロールしていく途中、とある一つの広告が目についた。
「...なんだ、この広告は...」
あまりの自己主張の激しさ、そしてそのケバケバしさに思わず言葉を失うセイア。だがその指は彼女の意思とは関係なく動いてしまい──
「あ」
気づいたころにはもう遅く、指はその広告をタップした。
「...!?...!...!」
自分自身の思いがけない行動に冷や汗をかきつつも、急いで戻ろうとナビゲーションバーから前のページへ戻ろうとひたすらに連打する。本来なら戻りすぎでアプリを閉じるほどまでタップしたのだがなぜか広告の先に表示されているページから一向に抜け出せない。彼女はワンクリック詐欺に引っかかったことを察してうなだれ、そして苛立ちを覚えた。
まさか襲撃の直前に詐欺に引っかかるとは思いもしなかった...というか予知でもそんなところは見ていなかったはずだが、事実目の前で起きてしまっているのでもうどうしようもない。
一種の諦めの境地に入ったところで、今度はタップした先のホームページを観察してみた。相変わらず目に優しくない赤が目立つが、内容を見てみれば至極真っ当な広告。どうやらエンジェル24というコンビ二のような店舗の広告のようだ。リンクをたどってみても正規の店舗が出てきたりとあまり詐欺のような雰囲気は見られない。
もしかしたらこれは詐欺ではないのでは?そう思ったセイアはこわばっていた肩の力を抜き、寝転がっていたベットのクッションに自分の顔を押し付けた。
どうやらこの後襲撃の証拠品になるだろうスマホに詐欺にかかった履歴は残らないようで心底安心した。まさかこんな醜態をナギサやあのミカにまで見られると思うとそれだけで死にたくなるが、これが他の人たちにまで見られたらと思うとゾッとする。だがそんな未来は起こりえない。起こらなかったのだ。彼女は深く安堵の息をついた。
「ふぅ...ん?」
そして画面に映るのは先ほどのデリバリー依頼の広告。まさか頼んでやるものかと思いつつも、先ほどの安心感から緩み切った危機感はその詳細を開くことを許可してしまった。また目に優しくない赤が目に映る。
見にくいし怪しい...
彼女の嘘偽りのない本心であり、これを見た人全員が思う感想である。しかしこれは決して詐欺や怪しいものでもなんでもない。信じがたいことにエンジェル24本店からのお墨付きもある上に連邦生徒会の承認を得ている。セイアはこれを許可した人間は果たして正気なのかと疑った。
一旦デリバリーからは遠ざかり、まずは彼女は好奇心のみでチキンの詳細を見てみた。実際にデリバリーされる商品がどんなものか気になったのと、先ほどから上下左右にうっとおしいほど流れてくるチキンについての広告に嫌気がさしてきたからだ。ちなみにこの広告はバツ印を押せば消えるのだが、そのバツがとんでもなく小さいうえに消した五秒後には復活してくる。セイアはかなりムカついた。
GAME OVER
「あっ」
あの後なぜかチキンについての説明を見ていたらチキンをモチーフにしたシューティングゲームが始まってしまい困惑していたが、思いのほか出来が良くその面白さに嵌っていたところで彼女は本来の目的を思い出した。少しだけ夢中になってしまいスコアが10000を超えていたが、まさか時間を忘れるほど夢中になどなっていない。止めようと思った後も十五分ほど続けてしまっていたのも、別に関係のない話だ。セイアは不信感しかなかったこのホームページを少しだけ認めてやろうと思った。
気を取り直して再びデリバリーの画面に向かう。すると先ほどと同じように「ここまで見に来てくださったお客様限定で~」などという胡散臭い文言が連ねられていた。深く考えないようにしてそのまま下にスクロールしていくと、そこだけ背景色が赤から白へと変わっている場所を見つけた。
「...あつきやみつき、みなもかえ...え?」
気付いたころにはもう遅かった。まるで何かに魅入っている。いや、魅入られていたいたかのようなおぞましい感覚に陥った。頭の中で読んでいたはずの言葉が、いつの間にか口に出されていた。
ハッとして自身の口を押さえる。だが既に言葉は発された。
「む、来たか。」
「...なにも、ない?」
あの言葉を口にしてから数分が経った。あれから何かが起こることを察して周囲の警戒を強め、何かあった際にはすぐにミネに連絡を取れるようスマホを準備していたのだが何も起こらない。
「当然か...はぁ。」
今までこわばっていた体が安堵のあまり脱力する。考えてみればあんな魔法の言葉などおふざけの範囲内でしかない。しかも言うにしてもせめて電話を通して言うとか、そういったサービスでしかないというのに...自分はなぜあそこまで怖がっていたのだろうか。自分の肝っ玉の小ささに自嘲の思いが込み上げてくる。
コンコンコン
ドアの方からノックが聞こえた。だがまさか襲撃犯が丁寧にノックをするわけがない。その上予知で見た時間はまだもう少し先だったはずだ。おそらくミネだろうとアタリをつけ、入室の許可を与え...
バン!
「失礼、チキンのでりばりぃである。ではチキンを食え。」
...る前に扉が開かれた。ものすごい勢いで開かれた扉に驚き、そしてあらわれた全く見覚えのない赤い髪の毛の少女に衝撃を受け驚きを隠せない。セイアの狐のような耳と尻尾がピンと立ち上がった。
セイアは他にも誰か来ていないか、もしくはこの部屋に既に何か設置されていないかを確認するため大げさともいえるほどに周囲を確認する。そんなどう考えても動揺している彼女の様子を見ても赤い少女は何も気にすることなくずかずかと部屋に押し入る。
「ッ!だ、誰だい君は!一体何の用でここに来た!」
「...?」
セイアは震える体を精一杯押さえつけ、自身の恐怖を相手に見せないように大声で目の前の少女に尋ねる。少女は何も言葉を返さない。何も感情を映さない瞳がセイアを捉えた。
(どうする?ここからどう状況を好転させる?というかそもそも彼女はどこの誰だ?彼女は
キッ!と少女を睨みつけるセイアの内心は荒れていた。正しく予期していなかった完全なイレギュラーである赤い少女の意図を読み取ろうとして、その手に持っている物に目が行った。
「...なんだい?その手に持っている物は?」
「チキンだが?」
「...なぜ?」
「は?でりばりぃだが?まさか”どたきゃん”というものか?」
「...ん?」
「...ええと、君の話を整理すると、先ほど私がホームページの言葉を発したのを聞いてここにやってきた...で、間違いないかい?」
「是なり。ではチキンをだな...」
「ああもう分かっているとも!買うさ!買うからちょっと待ってくれ...」
頭を抱えるようにしてうなだれるセイアと、それを面倒くさそうにして見つめる赤い髪の少女...ヒーちゃんと名乗った彼女だったが、その後もチキンを売る意欲が高すぎるあまり話が進まないのでひとまず買うことになった。
ちなみにこの時、ヒーちゃんによるとてもすごいマーケティング(混乱している相手に向かってゴリ押し)によりチキンのバラエティーパック(五個入り)を買わされていた。特段セイアの懐事情に変化はなかった。*1
「正直どうやって私の声を聞いたのかとか、どうやってここまでやってこれたのか聞きたくてしょうがないが...ともかくとして、君は私に害をなす気はない、ということでいいんだね?」
「是なり。」
「そうか...はぁ~...なんだか気が抜けてしまったよ。」
「そうか、では我はこれで。...コホン、またのご利用をお待ちしています♪」
「あ、ああ...」
ぐでーっとベットに全体重をかけたセイアに大した関心も抱くことなくそそくさと退出しようとするヒーちゃんに小さくない苛立ちと、出ていく直前に突如として完璧な接客対応?をしたことにとてつもない困惑を覚えるが、思い返せば彼女はただの一店員。そこまで客と親しくなる必要はないと考えたうえでの行動なのだろう。セイアには到底納得はできないが。
「...」
そんな彼女が扉に手を掛けたころでピタッと止まり、そこから一切微動だにしない。たまらなくなってセイアは声を掛けた。
「...何かあったのかい?」
「誰かいる。銃を構えていて敵対しているようだ。」
「!!」
淡々とそう告げるヒーちゃんに対し、「なぜ分かったんだ!?」「なぜ敵対していると分かった!?」など聞きたいことは山ほどあるが、自分だけでなく彼女にも身の危険が迫っているのでそれらの質問を無理やり押し込んだ。理性的フォックスですまない。
「そうか、来たか...君は...そうだな、部屋の隅に隠れておいた方がいいかな?」
「む、そうか。ではありがたく使わせてもらおう。」
(...使う?)
ヒーちゃんの言葉使いに多少の違和感を覚えるものの、今はそれどころではないと思考を切り替え襲撃してくる相手に交渉する内容を頭の中で再度思い出す。ヒーちゃんは部屋の隅でしゃがみ込んでいた。
「...!...!」
そして数秒後、突然ヒーちゃんが部屋の角に向かってしゃがみながら飛び始めた。
「...!!??」
あまりにも奇妙な動きをし始めた彼女の姿に言葉を失うが、ハッと意識を取り戻してまずはその挙動を止めさせようと彼女に近づく。
セイアが目の前にまで近づいてきているというのに、一心不乱に
「...お、おい。君は何を...」
まるで今からゾンビに噛みつかれた人間に近づくかのような非常に遅い足取りでヒーちゃんに近づき、その肩を触ろうとしたところで...
壁をすり抜けるようにしてその姿が消えた
「...な...は...え...???」
突然の異常に何もできない。頭が真っ白になった。先ほどまで頭の中で思い描いていた説得の内容が一切合切消え去る。もはや彼女に理性は、それを上回る恐怖と困惑で塗りつぶされていた。
「...美味しそうだな。」
そして彼女の
「...一口だけ、一口だけだ。」
セイアはチキンにかぶりついた。
「...セイアさんが、襲撃された?」
「はっ、はい。昨夜に何かが爆発するような音がして、それで何事かと見に行ってみたら...その...」
「...わかりました。報告してくださりありがとうございます。ミカさんの方には私から話をしておきますので。」
「はい...あっ、すみません。その、現場から一枚メモが見つかっていて...」
「メモ、ですか?それはどんな...」
「ええと...はい、これです。」
「ありがとうございます。......???」
「な、何かわかりますか?」
「...すみません、私には何とも...後ほどミカさんにも伝えますので、こちらは私が預からせていただいても?」
「全然大丈夫です!ええと、それでは失礼します...」
「...制服からして、あの方は正義実現委員会所属でしたね。一つ、頭の片隅に入れておきましょう。」
「...それにしても、セイアさんが襲撃...私も、他人ごとではないのかも...」
「...いえ、今は止めておきましょう。それよりもメモの内容を考察しなければ。確か内容は...」
「...あのセイアさんが、まさかそのままの内容をわざわざメモするはずがありません。」
「チキン...鳥でしょうか。鳥、ということならば羽を持つ者...まさか犯人はトリニティに?」
「...いえ、ゲヘナのほうが可能性は...でも、鳥の羽ならばやはり...」
・セイア
いあ!いあ!チキン!いあ!いあ!チキン!
無事チキンの虜になった。依存作用?あるわけないじゃないですかそんなもの入れたら販売できないでしょいい加減にしてください。
ちなみにメモの内容に深い意味はない。
「......」もぐもぐ
「...何を食べている?」
「んぐんぐ...チキンだが?」
「???」
「...食べるかい?」
「え、いや...私は...」
「へたっぴ...!」
「...は?」
「欲望の解放のさせ方がへた...!隙あり!」
「んぐ!?......!」
「フッ...これで君も今日から
ちゃんと布教はした。
・ヒーちゃん
まあ普通にやべーやつ。ピザ屋の体埋め込み型異世界ワープでセイアの部屋の前まで来たし、帰りはマリオ64でよく見るアレだった。多分これが一番早いです。
ちなみにピカピカなホームページとそのミニゲームは自作で、魔法の言葉は祝詞を改変したやつ。その言葉で彼女は《認識》する。なんでコイツホームページ作ってんの!!??
・アズサ
襲撃しに行ったと思ったらいつの間にか
タイトル(Title):SCP-5522 ピザデリバリー 100% Speedrun (RTA)
著者(Author):Deadly Bread
訳者:Extra3002
出典(日本語版)(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-5522
出典(原語版)(Source):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5522
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
※前話の最後のアレはSCP-001jpと同じ扱いです。これも深夜テンションが悪い。