病みつきになるやばげなチキンのあるコンビニ   作:ハピエン主義者

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その日
死神は彼の鎌を置いた
外套を返し
人々に別れを告げ
そして静かに隠遁した







汝は叫ぶ者なりや?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからよぅ!<ヒック> 聞いてんのかよぉ!クソォ!」

 

 キヴォトスにあるこじんまりとした小さなバーで、()()()()()()()()()()()()()()()が酒を呷り、そして喚き散らしていた。

 

「お、お客様、店内ではお静かに...」

 

「うっせぇ!<ヒック> お、お前もなぁ、俺をなぁ、<ヒック> ひにがみ(死神)だなんてなぁ、おお()っちゃいねえん()ろう!」

 

 店員が周囲の人々からの「どうにかしろ」という視線に耐えかねてやんわりと説得を試みるが、相手には何の効果もない。それどころか相手を激情に駆らせてしまったようだ。店員は顔を青ざめ、相手はさらに顔を赤くさせた。

 

「そ、そんなことは...」

 

だまりゃあ!(黙れ!)<ヒック><すすり泣く>くほぉ(クソォ)ほれ()らって、ほれ()らってなぁ!はんはって(頑張って)んらよぉ!でもよぉ!ここ(キヴォトス)ひゃあ(じゃあ)、ほ、ほれ()ほれ()ひこと(仕事)がぁ...<すすり泣く>」

「お客様...」

 

うぅ...<水を飲み呼吸を整える>ぐっ、はぁ...前じゃあ、あのかわいそうな小っちゃいちっちゃい無垢の赤ちゃんをあの世に送り返すっつうクソみてぇな悲しい仕事をしてったっつうのによぉ...<ヒック>」

 

「...赤ちゃんを...送り返す...?」

 

「ああそうだよクソッ!<ヒック>......クソみてぇな仕事だったが、その内容で上から文句を言われたこたぁなかった...」

 

 先ほどの勢いから一転、意気消沈した様子でカウンターに沈む相手に、ここは好機!とばかりに店員は客の退出の準備を進めた。

 

「それはそれは、大変でしたね...ではお客様、そろそろお支払いn「でもなぁ!」ひっ!」

 

「銃撃戦が日常のくせにここ(キヴォトス)じゃあ逆に仕事がねぇんだよ!<ヒック>あぁ仕事をしようにも対象になるヤツがいねぇ、ここ最近じゃあ干からびた女の子供だ!なんなんだよここはよォ!」

 

「ハッ!あまりにも暇だったもんで、この前鎌もあのボロッちぃ布切れも置いてきてな~んにも言わずバックレてやった!<ヒック>ざまあみろってんだあのクソ上司が!(グラスをテーブルに叩きつける)」

 

 客は酒をバーのテーブルに叩きつける。その音を聞いた周囲の客の視線を一気に集めるが、本人はそれに気付いていないのか気にする様子はない。

 

ダァン!

 

俺はまさしくクソ死神なんだぜ!......ああクソ、まだ <ヒック> 全く呑み足りてねえ──」

 

 

 

バン!

 

 

 

 客が新たに酒を飲もうとしたところで、バーの入口にあるドアが音を立てて荒々しく開かれる。客たちの視線が集まる中、現れたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「......」

 

「お、お客様。申し訳ございませんが、当店では生徒の方にサービスをしておりませんので...」

 

「...ああ。」

 

 店員の言葉が聞こえているのかいないのか、女子生徒は相変わらずの愛想のない顔でズカズカと店内に入り、そしてとある客の前までやってきたところでその歩みを止めた。

 

「...あぁ?なんだガキぃ...ん?お前...」

 

「...チッ」

 

「あ?」

 

「お、お客様?」

 

 今にも酔いつぶれて寝てしまいそうな客がほんの一瞬、その赤い髪の毛の女子生徒に目をやり、そして何かに気が付くようなそぶりを見せる。しかし少女は表情を一切変えないままに小さく舌打ちをすると、誰から見てもわかるほどのかなり冷え切った目線でその客を心底面倒くさそうに一瞥し、そして店員に向き直って閉じた右手を差し出した。

 

「??」

 

「ハァ...おい、手を広げろ。」

 

「は、はい!」

 

 頭の中に疑問符が大量に浮かび上がる店員だったが、その小さな体から出ているとは考えられないほどの圧を感じて怯えつつ彼女の言う通りに手をお椀の形に広げる。そして少女がその手の上に握りしめた拳を重ね...

 

バサッ

 

 次の瞬間、店員の手の上には数枚のお札と小銭により構成された山が積み上げられていた。

 

「...!?え、あの、こ、これは...」

 

「チッ...これの代金だ。我が引き取る。」

 

 少女はいらだちつつ店員の問いにそう短く答えると、「まだ飲み足りねぇ~!」と言う酔っぱらいの客を無言で引きずりながらバーを出ていった。

 あの状況でまだ飲み足りないなどと言うのは命知らずだと店員は思ったが、それをこの場で言うことはさらに命知らず、生き急いでいる行為である。店員はまだ生きていたかった。

 

 大人が情けなく少女に引きずられていくその姿をしばらくの間呆然と見つめる店員だったが、それも少ししてから我に返りそそくさと通常通りの業務を開始する。

 先ほどのぱっと見異様な光景は実は大して珍しいことではない。友人であったり保護者であったりする人々が嫌な顔をしながら酔っぱらいを引き取っていくのはこの店では割とよくあることだった(それにしても引きずっていくというのはなかなかに見ないことではあったが)。他の客も同様にして、いつものことだと元の落ち着いた雰囲気に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 そうして普段通りに戻った店員だったが、ふと先ほど受け取った手元の金額が気になり、一度裏方に戻ってからその正確な金額を調べてみることにした。

 もしもこの金額が先ほど引き取られていった客の払うはずだった金額より少ないのであれば、然るべき場所に連絡をしたり出禁の処置をしなければならない。逆に、そうでなかった場合...つまり多く払われている場合には返金する義務があるため、どちらにしろこの行為は必要なことであったのだ。

 もし仮にも後者の場合ならば、その余剰分は自分へのチップ代だと考え懐にしまっておこうと考えウキウキでその金額を数え始めたのだが...

 

「なっ!?こ、これは...」

 

 驚愕した店員の見つめる先にあるのは、あの客が派手に飲み食いしていった金額丁度が表示された電卓の画面だった。なぜあんなに多種類のメニューの金額を計算しきれたのか。いや、それよりも途中からやってきた彼女があの一瞬でどのようにしてお代の額を知ったのだろうか。

 気になることはあったが、そこは不本意ながら厄介ごとが多いバーに務めている店員。下手なことには首を突っ込まず、まあそんなこともあるだろうということにしてその出来事をさっぱりと忘れ去り、再び表のカウンターに戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー?なんでぇお前がここに...」

 

「......」

 

「なんとか言えよぉー!お前チキン売ってたんじゃねぇのかよー!」

 

「......」ズモモモ

 

「つーか痛ェ!俺を引きずんな!おい!聞いてんのか!?」

 

「......」ズルズル

 

 ヒーちゃんにズルズルと引きずられながらもダル絡みを止めずに酔っぱらう、先ほどまで客だった人間だが、この間ずっと少女からとんでもない圧を受けているということを忘れてはいけない。少女が客の輸送中に不幸にも出会ってしまった人々は皆あまりの重圧に身がすくみ、汗が吹き出し、足がガクガクと震え動けないほどだったのだ。

 余波?を受けているだけでそのような状態だというのに、それを直に受けなおまるで何も感じていないようにふるまう酔っぱらいに対しては称賛を送りたいほどだが、この客も人の皮を被った人外であり死神であるのでその称賛はとどめておくべきだろう。代わりに早くその鳥を何とかしろと言うべきだ。

 

 余談だが、ほとんど人気のない道を進み、やがて潰れた客を引きずる赤い髪の毛の少女を見た人々は、それを少女が死体を引きずっているというように勘違いし、このことを()()()()だと言い、後に広まって都市伝説として語り継がれていくこととなったとか

 

 

 

 

 

 

 そんなことなぞ気にも留めていない少女...もといヒーちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にその死神を投げ飛ばし、軽く手を払ってからゴミを見るような目でソレ(死神)を見た後、舌打ちをしてから元来た道を戻っていった。

 

 なぜヒーちゃんが今回このようなことをしたのかというと...それは毎度のことながら

 

チキン

 

のためであった。

 

 何をどうしたら酔っぱらいの死神を開放した後にゴミ捨て場に捨てることがチキンのためになるのか。我々はその謎を解き明かすべくジャングルの奥地へと向かう...必要はない。この理由は単純と言えばまあ単純なものだ。

 

 同族だと思われたくない。

 

 さて、ここで一つ例えを出して分かりやすくしてみよう。

 

 あるところに一人のゲヘナ生徒がいた。そのゲヘナ生徒はゲヘナらしからぬ心優しい性格だが、他の学園からすればそのようなことは関係がない。「ゲヘナ学園は野蛮だ、危険だ」という思い込み(おおむね事実)に基づき、彼女のことを同じく野蛮だと評することだろう。もちろん深くかかわっていけば彼女はそうではないと気付くだろうが、生憎そこまで関係するには「ゲヘナ」の肩書は邪魔過ぎた。人々は彼女...彼女たちと距離を置いている。

 

 そんなとき、彼女は他の学園へと転校することとなった。それはキヴォトス内のどこかでもいいし、はたまた外の世界のどこかでもいい。重要なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

 ゲヘナの悪評が届かないということは当然、その場所は今まで彼女がいた場所とは隔絶していて、常識など様々な違いがあり混乱することなど容易に想像できるだろう。だが彼女はそれでよかったと思っている。ゲヘナ学園所属という肩書きにより一目見て「あれは危険だ」などと言われて距離を置かれることがないためだ。そんなこんなで割と平和に過ごしていた...

 

 が、そんな時に偶然?ゲヘナ学園からやってきた知り合いの生徒がやってきた。当然彼女は動揺した。「なぜ彼女がここに?」「どうやって?」などと考えるが、まず思いつくことは一つ。

 

 彼女を野放しにはできない!

 

 それは、その女子生徒の行いによりゲヘナ学園とはどういったところかということを周囲の人々に理解されてしまったりするかもしれない。そしてそんな彼女がもし自分に対して親し気に接してきたら?当然周囲の人々は彼女に対して見る目を変えてしまうかもしれない...

 というように、様々な不安が浮かび上がった結果、焦った彼女がすぐに暴力的行為を行うことは(キヴォトス的思考からしても)至極当然なことだ。

 

 さて、長くなってしまったが、ヒーちゃんの動機はおおよそこのようなものである。以前(もしくは現在も)、彼女は無様にもゴミ捨て場で寝ている死神と同様にSCIPとしてナンバリングされ、扱われていた。

 SCIPの時のヒーちゃんは少々やんちゃ*1をしてしまったこともありその評判はなかなかに悪いものだった。しかし、その時にはヒーちゃんより酷評されていたものがSCIP内にはいくつもあったのだ。で、あるならばヒーちゃんはまだ許される部類であると考えた。そこまで深く考えていなかったのである。

 

 また、特に目的もなく貪り続けていたあのころとは違い、現在ヒーちゃんはチキンという最大の目標であり生きるための指標としているものがあるため、そのようなやんちゃはしない。するはずがない。*2

 

 だが、このゴミに埋もれている死神はそのヒーちゃんの過去を知っているときた。コイツがもしヒーちゃんの過去を話した時には...考えるだけでおぞましいことであるが、もっとひどいのはSCIPについてを話された時である。ヒーちゃんが同列とされ、もしもチキンの評判に傷がついたならば...これは自身でもなにをするかわからない。とにかくよいことが起こるのではないことは確かだろう。

 

 そしてさしもの死神がそのような危険なことを話すはずはない、とは言い切れない。なぜなら先ほどまでよく知らないバーで酔っぱらって()()()()()について赤裸々に話していたのだ。信用も何もあったものではない。さらに言えば自分を死神とまでのたまっていたのだ。そんな者に機密情報の保持など誰が期待できようか。

 それゆえヒーちゃんは持ち得る数少ない慈悲を捨て、今回の行動を起こしたのだ。さっさとコレには消えてほしい。そんな思いが、ソレ(酔っぱらい)を引きずるヒーちゃんからは感じられた。

 

 ちなみにこの数分後、ゴミ捨て場で無防備にも寝ていたはずの死神はいつの間にやら見知らぬ世界のゴミ捨て場にて目を覚ますことになるのだが......これはまた別のお話。まあ紆余曲折あって結局はキヴォトスに戻る羽目になるので語らなくともよいだろう。

 ただ一つ言えることは、ヒーちゃんはその死神を鼻をかんだティッシュや8()0()0()g()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()便()()と同等の存在と認識していたということだ。ゴミ!

 

 

 

 

「ふぅ...よし、チキンだ。チキンを売るぞ。」

 

 厄介事(ゴミ処理)を終え、軽く手を払って珍しく疲労感を漂わせたため息を吐いた後、ヒーちゃんは自身を鼓舞しながら元のコンビニへと戻っていく。チキンを売るためには数秒も無駄にしてなどいられないかのように狭い路地を悠々と駆け抜け、道を通る通行人からは突風が吹いたかのように感じられるほどの速度でエンジェル24の前までたどり着いた。しかしその時、平時では見られない騒ぎがエンジェル24の前...正確にはシャーレの前で起こっていた。

 

 また面倒事かと思いつつも、変化することのない表情をマニュアル通りの愛想のよい笑顔へと変化させてサラっとその前を横切る。

 これはヒーちゃんがチキンを売るにあたって重要だとする持論である

 

「最初に出会った時の第一印象、これをできるだけよくすること」

 

 先ほどの行動はまさしくこれにのっとった行いであった。この時の印象一つでチキンが売れるかどうかが決まるというのは、ヒーちゃんが今もなお強く信じていることだ。

 

「出たぞ!あのすばらしいチキンを、ここシャーレ付近にのみ独占している悪魔だ!」

 

「...は?」

 

 ...だったのだが、今回はそれは適用されないらしい。流石のヒーちゃんも突然の出来事にポカンとして呆けている。その頭の中では「もうアレとの関係がバレた?」「チキンの売り上げが...下がる?」「チキン?今チキンと言ったか?」「チキンチキンチキンチキン...」というような言葉があふれかえっていた。()()()()()()()()()()()()()。それだけがヒーちゃんの頭を支配していた。

 

 しかし、そんな中でもヒーちゃんの理性は冷静に思考する。

 

(まさか...いや、()()()()()()()()()()()()今ならまだ...)

 

 その考えと共にヒーちゃんの赤い髪がゆらゆらと揺れる。その赤色がすべてを飲み込むかのようなへと変化していく...

 

(...間に合う(喰える)!)

 

 ヒーちゃんが下手人の記憶を消すべく、すぐさま行動に移る。だが、その数秒前にメガホンから発された声によってその動きを止めることとなった。

 

 ヒーちゃんが行動を起こす少し前、何も声を発さずに呆けているヒーちゃんの様子を見て好機だと思ったのか、白いヘルメットを被るリーダーらしき少女がわざわざメガホンを使って意気揚々に声高々に演説?を開始した。

 

「みんな!騙されるな!無害な労働者の皮を被っているが、その本質は忌むべき資本家(ブルジョワ)だ!あたしたちからチキンを遠ざけようと画策する悪魔だ!」

 

「レッドウィンターのプリンは水増しされ、もはや希望はない!生徒会長という存在を無くし、真の平等が結実するまであたしたちは闘争を止めない!」

 

「そのためにも、あたしたちはこのおいしいチキンの独占を決して、決して許してはならない!」

 

「そうだそうだー!」

 

「もっと食べさせろー!」

 

「レッドウィンターでも売ってよー!」

 

「???」

 

 言っている意味が分からない。独占?ぶるじょわ?????????

 

 てっきり同類扱いの件かと思っていたが、実はそうではないのかもしれない。そうしてヒーちゃんが状況を理解するために立ち止まっている間にも、ヘルメット少女の演説はシャーレ前に響き渡っていた。

 

 しかしここはエンジェル24シャーレ前支店、当然シャーレに近い場所に位置であるからには、そこに属する人間がこの大音量の演説を聞いて何事かと事態を確認しにやってくるのは当然である。

 

「い、一体何が...え?」

 

 そして健康的な太もも揺らしながらやってきたのは、本日のシャーレ当番でありミレニアムのセミナー所属、会計の早瀬ユウカだった。

 先生は仕事から手を離せないのか、やってきたのは彼女一人。対してデモを行うのは20人あまりの生徒...あまりにも人数差が大きすぎた。

 

「ちょっとあなたたち!ここはシャーレの前よ!それもコンビニの前で大声を出すのは止めなさい!他の人たちに迷惑よ!」

 

 この人数差にも気圧されずに、彼女は堂々と迷惑行為を咎める。その姿は模範的な風紀委員を想起させるものだったとかないとか。

 

 しかし、あの過酷なレッドウィンターで生活していた少女はこんな挨拶にもならない注意には屈しない。それどころか明確な敵として認識してしまったのか、その勢いはさらに強まっていく...

 

「フン!これは正当な権利だ!それともなんだ?チキンだけに飽き足らず、あたしたち労働者の権利をも奪い取ろうというのか!?」

「ひどいぞー!」

「私たちにも権利を!」

 

「なっ!そんなこと言ってないわよ!?え、えっと...あ~もう!とりあえずここは先生に連絡を...」

 

 状況が不利に傾いていることを悟ったのか、ユウカは先生に助けを求めようとスマホを手にした。

 

「大人の手を借りることでしか問題を解決できないとは...呆れたものだな。やはり権力者は軟弱者しかいない!あたしたち労働者から搾取することしかできないということだ!」

「ひどい!」

「こんなことが許されていいのか!?」

 

 だが相手はこの手のプロ。そんな隙を見逃しはずがなく、着々とユウカから冷静さを失わせていく。因数分解は焦ったせいでケアレスミスを起こしてしまったようだ。

 

「な...ぐっ!お、抑えなさい早瀬ユウカ!ここで怒っては相手の思うつぼ!人目もあるし、最悪学園との軋轢にもなるかも。対応は慎重に...」

 

 あんまりな言い分に怒りを覚えるも、不必要な混乱を引き起こさないよう怒りも悲しみも因数分解し、今できる最善の行為を行おうとするユウカだが、人間である以上矢継ぎ早にやってくる言葉を完全に無視することはできていない。太ももを...ではなく全身を震わせて必死に怒りに耐えている。

 

「みんな!あの姿が見えるか!あれが権力にへりくだり、本来あたしたちの得ることができるはずだった権利を不当に奪い取る人間の姿だ!あたしたちはあんなものに負けていいのか!?」

「そんなわけない!」

「負けてたまるかー!」

 

「そうだ!これは不義に対する闘争と権力への抵抗だ!あたしたちは卑劣な権力に決して負けはしない!」

「「「オォーー!!」」」

 

 

「だ、黙って聞いていれば...!というか、そもそもチキンを手に入れることがどうしてあなたたちの権利に関係するのよ!全っ然関係ないじゃない!言ってることが無茶苦茶よ!」

 

「見ろ、邪悪な権力の犬が本性を現したぞ!あたしたちの言い分はすべて無視して搾取することにしか頭にない!」

 

「はぁ!?なんで搾取なんて話になるのよ!そもそもあなたたちは──」

 

「ハッ!誇りを盾にするのは、資本家の常套手段だな。そんなことであたしたちは──」

 

 そして彼女たちの口論はどんどんと激化していき...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──くっ!どれだけ言葉を並び立てようとも、あのチキンの前にはすべては無力だ...」

 

「...いや、私は元からこれを望んでいたのか?」

 

「まさか、このようなデモを行い、このすばらしいチキンをレッドウィンター内で独占しようとしていたのか...?」

 

「そ、そんな!独占、などと!これでは資本主義のブルジョワと同じじゃないか!」

 

 自分が行った行動の本質?に気が付いてしまったミノリは自己嫌悪に寄りその場で頭を抱えてうずくまってしまう。

 なぜこうなったのか。傍から何も考えずに傍観していたヒーちゃんには知りようもないことだった。*3

 

「...!」

 

 それを見ていたヒーちゃんは何かを思いついたようにその場を去り、すぐに右手に何かを握りしめながら帰ってきた。そして右手に何かを握ったまま、その手を振りかぶって...

 

「てりゃ」

 

 コッコッ...と地面と固いモノがぶつかるような音を立てながら、ヒーちゃんの右手から放り出されたソレはうずくまるミノリのすぐそばに着地した。

 

「ん?なんだ、この()()()...はぁ...」

 

「はわわわ~ちきん~ぷりん~」

 

 その石をなんの疑いもなくに拾い上げてしまったミノリの表情は、先ほどの「闘争心溢れる活動家」からは程遠い「すべてが面倒になってしまったただの女子高生」のものへと変わってしまっていた。ふにゃっとしたあからさまにやる気の抜け落ちた顔...あのデモ活動を主導していた張本人とは到底思えない。

 

「え?な、何よこ「ふん!」...れぇ....」

 

「もう、ぜんぶどうでもいい...」

 

 目の前の異常事態に困惑の感情を隠せないユウカに対しても、ヒーちゃんは無慈悲に()を投擲する。その効果は他と同じく顕著に表れ、すぐに地面に横たわり脱力してしまった。

 

「うむ、では、運ぶか。」

 

 結局のところいつもの迷惑客に行う対処とさして変わらないということに気付いたヒーちゃんは、とりあえず目の前の死体の山(死んでない)を一か所に集めることにした。

 

 

 

 

 

”ごめんユウカ!ひと段落付いたから応援に...え?”

 

 半泣きになりながら積みあがった書類の山を死ぬ気で終わらせてからやってきた先生が見たのは、無気力な様子で地面に横たわるユウカと数名の生徒たち、そしてその横に佇んでいる、生徒たちが()()()()()()重なってできた山。さらには横たわる生徒たちをどんどんとその山の上に積み上げていく作業を行うヒーちゃんだった。

 

「ぷりん...」

 

「いんすうぶんかいなんてできない~」

 

”(絶句)”

 

 流石の先生もこれには唖然とし、まるで時が止まったかのように動かなくなってしまう。

 だが、流石は将来宇宙へとゆくことになる先生。理解するのに数秒かかったものの、すぐに気を取り直して、この中で一番情報を持っているであろう人物に事情を聞こうと動き出した。

 

”ひ、ヒーちゃん?これは何を...というかなんでこうなったの?”

 

「ん?先生か。見たらわかるだろう、エベレストだ。なかなかいい出来だと思うぞ。」

 

”エベレスト!?いや、これはエベレストっていうより()()()()じゃ...って違う!”

 

「?」

 

 先生の不満になにも思い至る節がない、といった様子で山を積み上げ続けるヒーちゃんに頭痛が止まらない先生だが、それでも対話の意思は崩れない。何があったのかという詳細を聞こうと不屈の意思で試み続ける。

 ちなみに先生は地獄の書類仕事の後にこれである。先生に合掌。

 

”はぁ、はぁ...えっとね、ヒーちゃん。皆がどうして地面に倒れてるのかってことなんだけど...何か知ってることはある?”

 

「ああ、それだな。ヘルメット女どもが店の前で迷惑行為をして、で、そこの太もももうるさかったから対処した。それだけだ。」

 

 何事もないかのようにあっけらかんと答えるヒーちゃんに、そうだけどそうじゃない...と頭を抱える先生。その後のヒーちゃんからのチキンの販促を丁重に断りつつ、ユウカを抱き起しながらこの事件の報告書について再び頭を悩ませるのだった。

 

*1
ちょっと人の意識を食べたり、ある時は世界を...

*2
ヒーちゃんにとっては黒歴史的な扱い

*3
この時ヒーちゃんは勤務時間外だったので、究極のチキンについて考えながらコンビニ前で三角座りをしていて待っていた





・ヒーちゃん
 ミノリの演説には微塵も興味がないが、それがチキンの売り上げに関わるのなら話は別。ミノリを石を使って意志を弱らせた後(激ウマギャグ)(トマト≣≣)、引き連れていたやつら全員レッドウィンターに送り返した。
 個人(個鳥)的にエベレストは結構的を得ていると思っている。
 「限定感」を強めるため、現時点では他店舗での販売は考えていない。

・先生
 レッドウィンターにて革命(n回目)が起こり、チェリノたちと非難していた際にミノリたちの前で不用心にもチキンを取り出し、その視線に耐えられずにそれを差し出した。要するに今回の事件の発端。
 先生曰く”あんな視線を受けて渡せない人間はいない”そう。後で正気に戻ったユウカに餌付けをするなと怒られた。

・”上司”
 機動部隊オメガ-0 ("アラ・オルン")かもしれないし、"メグの素敵な家庭料理"("Meg's Good Eatin'")に毎日9時から18時まで滞在する常連客の4人の初老の男性かもしれないナニカ。その正体は[管理者により検閲済]。知らぬが仏。

・死神
その日
死神は彼の鎌を置いた(キレながら)
外套を返し(叩きつけて)
人々に別れを告げ(あばよクソども!)
そして静かに隠遁した(何も言わずにバックレた)

ウソは言ってないな!ヨシ!(安全ネコ)

 社畜。かわいそう。ただそれだけ。目が覚めたらなんか霧の濃い街にいた。静岡かも。

・ユウカ
 怒りも悲しみも因数分解しようとするオカン系少女。無気力になる石の前にあえなく撃沈した。その太ももの質量はブラックホール並みらしい(先生調べ)。


・ミノリ
 な、なんだこのチキンは!?美味しすぎる!せ、先生これはどこに売って...え?これはシャーレ前で限定販売?
 ...

 労働者の権利を!さらなる保障を!(覚醒)(確変)(天下無双)(特製チキンください)

 地味に生命の危機に陥りかけた。







書きたいこと書いたらこんな文量になっちゃったし更新も遅れちゃった(´・ω・`)
前半はscp関連、後半はリクエストという内容にしてみました。こんな感じでよかったのだろうか...

それはそれとして ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ は読み切れたにもかかわらず、プロジェクト・パラゴンを読める気が一切しません。なぜでしょう、これはSCP-____-Jによるものなのでしょうか。

...ならこの小説を書くのが遅いのもしょうがないか!あっこんなところになんかいい感じの石g_


・使用させていただいたscip記事について

後で書き上げます。 - ハピエン厨







タイトル(Title):SCP-6292 死神を酔わせるな
著者(Author):Ralliston
訳者:Witherite
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-6292
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-6292
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0


タイトル(Title):SCP-2935 あゝ死よ
著者(Author):djkaktus
訳者:C-Dives
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-2935
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2935
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0



タイトル(Title):SCP-____-J
著者(Author):Communism will win
訳者:Dr Devan
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-j
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-j
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0


タイトル(Title):SCP-5140 エベレスト
著者(Author):Rounderhouse
訳者:C-Dives
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-5140
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5140
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0

タイトル(Title):SCP-1330 宇宙ゴミ捨て場
著者(Author):Dmatix
訳者:gnmaee
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-1330
出典(原語版)(Source):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-1330
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0


タイトル(Title):SCP-2111 これを読めるなら……
著者(Author):sirpudding
訳者:m0ch12uk1
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-2111
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2111
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0


タイトル(Title):SCP-1295 メグの晩餐
著者(Author):Dmatix
訳者:gnmaee
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-1295
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-1295
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
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