病みつきになるやばげなチキンのあるコンビニ 作:ハピエン主義者
ところでこの話は9話目です。ということは...?
「やぁ、また会ったね」
「...」
「ん、無視か。悲しいね」
「...」
「ダメか、それじゃあ今日も商品を見させてもらうよ」
「...」
既にこのコンビニに
店内に並んでいるのはコンビニによくありそうなものばかり...というわけでもなく、充電バッテリーなどが並ぶ日用品売り場の棚の中に、まるで当たり前かのような顔をしてプラスチックケースで梱包された銃弾や手榴弾が存在していた
(やはり
それを見た男はそう思いつつも平然とその横を通り過ぎ、他の商品を吟味し続ける
ここは学園都市キヴォトス、男が知っている世界とは違う別世界だった
これも違う。あれはこの前に買ってしまった。他に何か刺激的なものはないものか。と自分が別世界にいるにもかかわらず、特に焦ることもなくこのコンビニにわざわざ出向いた目的を果たすために店内を歩き続ける男は、そこでこの世界のコンビニであっても見慣れない明らかに異質なものを発見した
「ん、これは...」
コンビニの内装にまったく似合わないその
普段ならば店内のオブジェを触るなどということはしないだろうが、今回に至っては事情が違った
元々男は特に何か買いたいものがあってこのコンビニに来たわけではない。なんとなく...いわば暇つぶし、冷やかしのため来たのだ。そのため自分の興味がある物など見つけてしまえば、生まれてから少し時間が経った程度の危険を知らない幼児のように、目に見えるものを手当たり次第に触ってしまうことは必然だった
「触るなよ」
だがそのような赤子の好奇心を、少女による一言の忠告が吹き飛ばした
後数センチで男の手がワニに触れる、というところで突如男の後方からそのような声がかかった。店員である赤い髪の彼女の存在を完全に意識外に置いていた男はその声に驚き、反射的にその手を引っ込めた
おかしなことに男から見たオブジェであるはずのワニの目は、どこか獲物を逃し悔しがっているかのように見えた
「どうして?」
「汚れる」
「そうか」
男は深くは追及しなかった。その「汚れる」ということがワニのオブジェが汚れることか、それとも店の内装が汚れることを指しているのかの判断が男にはつかなかった。しかし、少なくとも自分に対する心配などはしていないだろうことは今までの関わりから理解していたからだ
男には明確な理由こそわからないが、この少女に嫌われている。いや、そもそも他者への興味自体が限りなく薄いということを理解していた。先ほどのように男の行為が何か彼女に影響を及ぼさなければ、その存在などすぐに忘れられるだろう
多いとも少ないとも言えない関わりの数から、男はその程度のことくらいは把握できていた。故に男は少女に対して感謝をしつつも、彼女が嫌う自分とのやり取りを言葉少なに済ませた
「...?」
あの今にでも人に食いつきそうなワニのオブジェから離れ、数分。気分転換に何か美味しそうな菓子類でもないかと思い陳列棚をよく見て回っている。チョコミントははたして歯磨き粉の味なのだろうかとしょうもないことを考えていると、ふとどこかからか視線を感じた
「...」
視線を感じる元をたどっていけば、そこにいたのは店員の少女ただ一人。その視線は彼女の持つスマホに注がれており、男に対してその仏頂面な横顔を見せている。男の様子などまるで興味がないと言わんばかりの無関心であった
男はその様子に首を傾げつつも、自分の気のせいだったかと再び商品を見て回る
「...」
が、やはりどこかからか視線を感じる。その視線の主として真っ先に候補に挙がったのはあの少女。興味なんてありませんよ、などという様子の割にはこちらを気にしているのでは?そう考えた男は意趣返しとしてあの少女を驚かせてやろうと悪だくみをした
そうしてどこか居心地の悪い視線を肌で感じつつ、男は少女がどんな表情をするのだろうかと想像しながら商品を見て回るフリをしてたっぷり数分待った
そして陳列棚を曲がり、少女の正面が見える位置まで移動する。完全に相手の意表を突く絶好のタイミングで男は全力で振り返った
どのような表情をしているだろうか。慌てた顔?口を開け驚いた顔?それともこちらを軽蔑するかのような顔?なんにせよ、彼女の仏頂面しか拝んだことのない男にとってはどれも等しく貴重な表情だった
「...」
だがそんな男の妄想も虚しく、視界に入ってくるのは先ほどと姿勢が全く変化しない店員の姿。男は企みが不発に終わったことを悟り、一人意気消沈して店内を歩く
(彼女ではないのならば、いったい誰が?)
気を取り直した男はそう考えながら、なんとなく壁に貼ってあるポスター群を眺めた。貼ってある内容はアルバイト募集、シャーレの広報、地域のイベントなどごく普通の、何の異常性もないありふれたものだった
「何か...変だな」
しかし男はとある一つのポスターの前で立ち止まった
「見てるぞ」の文字に二つの目のイラストがあるこのポスターは犯罪発生の抑止効果を持つごく一般的なものだ。しかし男はそのポスターのある一点が妙に気になった
(これは?)
男が注視したのは目のイラストの瞳孔部分。よく目をこすって見てみれば、そこには小さく真四角の何かが見えた。その何かが気になった男は、先ほどのワニのオブジェの件を忘れたかのようにポスターへと近づいていく
ポスターまでおよそ2m、1.5m、1m...
男とポスターの距離が50cmほどになったところで、男はようやくその小さい四角形の何かがどういったものかを視認し、理解した
──理解して、しまった
男が見た物は絵画だ
机の上にフォークやナイフ、皿にグラスなどが描かれている、食事の風景を想像させる絵画。
不意に男は、自分は見られていると思った
視線は男の周り全方位から感じられた。右上にある監視カメラ、目の前にあるポスターの目、真後ろからの突き刺すような少女の目...
先ほど通った商品棚にあった菓子にプリントされているキャラクターの目ポスター横にある別のポスターに載っている人物の写真の目ポスター内にある瞳孔の中にあるであろう絵画の目見えないはずの場所にある生鮮食品売り場に置いてある魚の目チキンのポップアップの目雑誌の表紙の目床の目天井の目壁の目扉の目取っ手の目ガラスの目電気の目棚の目服の目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目
「おい」
瞬間、視線に侵されていた男の脳が少女の声で鮮明になり、視界が開かれたかのような感覚に陥った。そして同時に、視線が消え去った脳内を再び埋めるようにして疑問符が沸き上がった
「...ああ、なるほど。そういうことか」
呟くようにして発された何かに納得する言葉にヒーちゃんは耳を傾けない。身長99.99...cmの男を感情の読み取れない目で見下ろすようにして、ヒーちゃんは口を開いた
「出禁だ。帰れ」
それは、迷惑行為を行った客への最終的な措置であり
事実上の死刑宣告だった
ヒーちゃんは静かに怒っていた。毎度毎度店にやって来たと思えば、自分にちょっかいを掛けてきたり店の商品をべたべたと触っては店の損害になるラインギリギリを攻めるかのように迷惑をかけて帰っていく。その行動に腹が立つ
それに加え、今回のことだ。常人ならばどれだけ近づいてその異常性に晒されたとしても「なんか見られてる気がする...」ほどの影響で済むはずの良い防犯対策だったのだが、なぜか目の前の男...SCP-999-JPにはそれ以上の影響が出てしまっているのだ
これは本来ならば彼には何の非もないことだった。まさかコンビニに暇つぶしに来たら、本来は財団に収容されているはずの異常な物品がそこかしこに存在している...どころか、防犯対策として使用されているのだから
しかもこの防犯対策、彼との相性が非常に悪い。彼の異常性により、絵画の影響を99.9999...%もろに受けてしまうのだ
実物と大差のない影響を実物より遥かに小さくなり受ける影響が減少しているはずだというのに受けてしまう。なまじこのポスターを設置したことでチンピラ生徒による窃盗が格段に少なくなった実績があるために、ヒーちゃんにとってこの問題は頭の痛い話だった
なぜなら目の前の厄介者に望まぬ悪影響が出てしまった以上、他のコンビニ利用客にも同様の事象が起こる可能性があるからだ
たとえこの事象がこの男にしか起こりえないものだったとしても、万が一に配慮して対応しなければいけない。それが一定の有用性を示していたとしても、もし他の一般客に影響が出れば店の不評につながり、やがてチキンの売り上げに支障が出てしまう...そこまで考え、ヒーちゃんは社会に生きるということの恐ろしさに身震いした
社会という概念に飛ばしていた意識を現在に戻す
目の前にはヒーちゃんから見ても年齢が不安定な男が眉を下げ申し訳なさそうにしていた。先ほどから不安げな表情を見せたりコロコロと表情を変えていることに余裕がありそうで苛立ちを覚えるが、監視カメラもあることから一応の体裁を考え自制した。ヒーちゃんにとって自分の外聞などどうでもいいことだが、チキンの売り上げに関わるからにはこの程度のことはお茶の子さいさいである
さて、
チキンにどう関係するか?
この男は今まで数回このコンビニに来たことがある。そこでは先ほども述べた通り損害を被ることも多かったが、毎回とは言わずとも高確率でチキンを買って帰っていた。そのため、男を顧客であると認めて今までの狼藉を見逃していたのだ
チキンの売り上げという面だけで見れば、ヒーちゃんにとってこの男は圧倒的に無罪である。ヒーちゃんにとってチキンを買う者は何者であっても素晴らしい人格者であり善人である*1ということとチキンについてしか書かれていない己の教義に従って、すぐにでも開放してもいいぐらいだ
ここだけ見ればすぐ釈放!でおさらばなのだが、しかしいくらチキン信者であるヒーちゃんであってもこのような防犯対策をお釈迦にされてしまうことは看過できないことである
先日、ソラ先輩にこのポスターを提言して即採用された時から格段にトラブルが少なくなったと嬉しそうに報告され、感謝されたことは今でも記憶に残っている。コンビニ内とはいえ序列が上の者に褒められたことは、チキンに関係しないことであったとしても、ヒーちゃんにとって嬉しいと思えることであった
それ故にこの男は処罰を受ける。チキンの顧客であるということを根拠にした無罪と、毎度の迷惑行為や防犯対策の対応などを根拠にした有罪を天秤にかけ、ギリギリつりあっていたところが、ソラ先輩の「ぼ、防犯対策のポスター?わぁ、とっても効果がありそう。ありがとうヒーちゃん!」という目がつぶれるほどのまばゆい笑顔で一気にガタン!と有罪に傾いた*2
脳内裁判で有罪が決定したヒーちゃんは、未だ困惑した表情で正座している男に感情の見えない目を向け、口を開いた
「うむ、ではs──「チキン食べたいなぁ」ボソッ──では無罪。さっさとチキンを買って帰れ」
悲しいかな、ヒーちゃんはことチキンのことになるとゲロ甘だった。先ほどの脳内裁判や先輩に対する熱い思いはどこに行ってしまったのか、冷や汗を流しながら突然の状況に呆然としている男をあっさりと無罪放免として、原因となったポスターを壁から引っぺがしてから元いたレジカウンター内へと戻っていった
「えっと、これを...」
「...合計999円になります」
「じゃあこれで」
「お釣りは99円になります。またのご利用お待ちしております」
男が例の特製チキンが入ったレジ袋を手に提げながらエンジェル24の自動ドアをくぐる。出入りするたびに流れる独自のBGMが、今回の小さな事件の終わりを告げていた
ヒーちゃんは再び一人になり、同時に店内は静寂に包まれた。そして無表情で新たなチキンを揚げ始める。その心中ではいつものようにチキンの事しか考えていない
だが視線はチキンから決して逸らさない。体だけはいつものように跳ねる油を回避し、脳で理想のチキンについて想像する
しかし、いつものルーティンであることをしていると何かを考えることができる余裕ができるもので。ふと先ほど取っ払った犯罪防止ポスターに目を向け、あの眩しい笑顔を浮かべる上司がかすかに浮かんだ
(まあ、流石にポスターをはがしてすぐに窃盗が起こったり、トラブルが起きたりはしないだろう...あ」
SCIPに対して怒りを発露するなどという慣れないことをしたからだろうか、ヒーちゃんは知らぬ間に溜まっていた疲労(緋色の鳥が疲労するのか?という疑問はさておき)によって、心の声を無意識のうちに声に出してしまっていた
次の瞬間、ヒーちゃんは違和感を覚えた。体にズレが起きるような、世界が一瞬変化したかのような不快感。遠くもあり近くにもあると知覚した場所で巨大な何かが出現したことを感覚で理解したヒーちゃんは、一瞬だけ動揺した精神をすぐさま安定させドガーン!!
「ヒャッハー!アタシらはバリバリヘルメット団!お菓子もらいに来てやったぜ!!」
「ついでにジュースもだァ!」
エンジェル24の自動扉を吹き飛ばし、外から戦車が突っ込んできた。通常であれば戦車が店に突っ込んでくる前にヒーちゃんが気付いて事前に対処するのだが、先ほどの一件とズレによって僅かに体勢が崩されてしまったため、一瞬反応が遅れた
「こっちは爆弾だってあるんだ!痛い目を見たくなきゃ大人しくするんだな!」
「そうだそうだ!姉御をキレさせると怖いぞォ!?」
「む。爆弾、か」
爆弾程度、ヒーちゃんにとって脅威でも何でもない。ヒーちゃんはコンマ一秒で
(1)この不良生徒の発言からヒーちゃん(緋色の鳥)が起こした行動を、SCP-CN-009がレジの横にカラーボール代わりに存在していたことを考慮して記述せよ。(0/20点)
答:ヒーちゃん(緋色の鳥)がSCP-CN-009を店の裏のバックヤード*3に押し込み、通報した後華麗な動きで制圧した*4。
(2)その後、店はどうなったか(5/20点)
答:ヒーちゃん(緋色の鳥)が不良生徒たちを制圧した後、*5突撃してきた戦車に括り付け、腕力で彼方に投げ飛ばし*6通常業務に戻った。*7
(3)現在、SCP-CN-009はどこにあるか。どのような状態であるか(10/10点)
∵ヴァルキューレにより回収されたが、先生の要望によりヒーちゃん(緋色の鳥)に返却されることとなった。しかし本人が保有するための余裕がないとして返却を拒んでいる。(2/2点)
∴所有者不明としてシャーレにある先生の机の上に置いてある。(3/3点)
∵SCP-CN-009はヒーちゃん(緋色の鳥)に投擲された後、奇跡的に無傷だったにもかかわらず爆破に巻き込まれてしまった。(2/2点)
∵SCP-CN-009は異常な硬度および破壊耐性、自己修復能力を有さない。(1/1点)
∵SCP-CN-009の主要な構成素材は、一般的なガラスである。*8(1/1点)
∴よって、爆破に巻き込まれたSCP-CN-009は破壊こそされなかったものの一部がひび割れた。*9(1/1点)
その日、エンジェル24は
「やあ、おはよう。正しくはおやすみかな?」
「は?」
赤く染まった空の下、落ち着いた様子の一人はベンチに座り、先ほど眠りについたはずの一人はただ呆然と立ち尽くす
周囲に一切生気が感じられない世界で、二人の大人が相対していた
SCP-999-JP君がどんな話し方をしているのか分からなかったのでなんとなくそれっぽい怪しい?底の見えない?感じにしました。99歳...???
・ヒーちゃん
最近変な社会性が芽生えてきた。その中途半端な社会性のせいで野生(チキン)に対する姿勢を日々悩んでいる。が、結局チキンに帰結するのでそこまで気にする必要はなさそう。
最近SCIPによく出会うので精神的に不調。具体的にはチキンを作った時の完成度がPERFECT!からGOOD!になるくらい。
普通に面倒くさかったのでSCP-999-JPを廃人にするつもりだった。
・ソラ
ヒーちゃんのおかげで心労が減った子。最近の悩みは先輩としての威厳を保てているかということ。平和
・SCP-999-JP
方法は不明だが財団世界からやってきた。なんか銃がはびこりすぎてて違和感あるけど可愛い子がコンビニにいたのでちょっかいを掛けてみた。無表情だし対応が冷たいけど面白そうだしヨシ!
何を見てヨシ!って言ったんですか?
タイトル(Title):SCP-999-JP I am No.9
著者(Author):locker
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タイトル(Title):SCP-009-JP 閏秒
著者(Author):shinjimao
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タイトル(Title):SCP-990 ドリームマン
著者(Author):Dave Rapp
訳者:Red_Selppa
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出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-990
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タイトル(Title):SCP-CN-009 既知 求解 答(『SCP-CN-009についての詳述問題 練習テスト』)
著者(Author):Flea_ZER0
訳者:snoj
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-009
出典(原語版):https://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-009
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
タイトル(Title):SCP-099 肖像
著者(Author):Zaeyde
訳者:m0ch12uk1
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-099
出典(原語版):https://scp-wiki.wikidot.com/scp-099
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
タイトル(Title):SCP-99.99-JP-J 不幸の言葉
著者(Author):akauo
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/scp-9999-jp-j
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
タイトル(Title):Anomalousアイテム 099 切断されたイリエワニ(Crocodylus porosus)の頭部
著者(Author):不明
訳者:不明
出典(Source):http://scp-jp.wikidot.com/log-of-anomalous-items
出典(原語版):http://www.scp-wiki.net/log-of-anomalous-items
ライセンス(License): CC BY-SA 3.0
SCP-099=JPに関しては内容が内容なので見送りました。流石にキヴォトスでアレはね
ちなみにですが、二話後にアリウス生徒関連を書く予定です。他のリクエストについてはお待ちください!
次回は夢のお話です