ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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今年初の投稿です。これからも、よろしくお願いいたします。


戦闘校舎のフェニックス ~謎の少女、現れます!~
第14話:使い魔の森の合成獣〈キメラ〉


そこは暗闇の空間だった。

 

地面に立つ感覚はあるが、辺りを見渡しても暗闇で何も見えない。

 

「ワンっ!」

 

すると、背後から声と気配を感じて振り返るが、誰もいなかった。

 

「ワンっ、ワンっ!」

 

しかし視線を下げると、その正体が何なのか理解した。

 

暗闇とは違う色の、黒く小さな子犬がちょこんと足下に座っていたのだ。

 

「クゥ~ン……」

 

愛くるしい瞳に見つめられ、可愛さに負けて頭を優しく撫でると、子犬も気持ちよさそうに目を細めた。

 

刹那、暗闇に赤い光が輝く。

 

眩い光で全貌が確認出来ない。だが、徐々に赤い光が近付くにつれて輝きが収まり、その姿が鮮明に現れる。

 

耳まで裂けた口に生え揃った鋭い牙。

 

頭部には太い角が並び、全身を覆う真っ赤な鱗。

 

巨木の様な四股に備わる凶悪な爪。

 

巨大な体が一層巨大に見える両翼。

 

巨大なドラゴンが、悠々と目前を横切ろうとした。

 

『……ん?』

 

知らない声が聞こえた瞬間、目の前に蹲るドラゴンの視線がこちらに向いた。

 

大きく血の様に赤い瞳。ドラゴンはこちらに気付いたのか口を開く。

 

『珍しいな。こんな所に人間が入ってくるなんて……』

 

どうやら先程の声は、このドラゴンだったみたいだ。

 

『俺の相棒が世話になってるな。まあ、機会があれば会おうぜ。闘神士さんよ』

 

その言葉を最後にドラゴンは飛び去って行き、何とも言えない空気が残ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「……………ん?」

 

その直後、八雲は目覚めた。

 

「……何だったんだ、今の?」

 

首を傾げる八雲は夢の内容を思い出そうとする。だが思い出すのは子犬と共に遊び、戯れる事しか思い出せなかった。

 

(他にも誰かいたと思ったんだけどな……)

 

そう思いながら、八雲は時計に視線を向けた。

 

時刻は早朝4時。普段から行ってる朝の鍛練には少し早いが、最近はこの時間なので苦にならない。

 

「それじゃあ、今日もやりますか……」

 

そして、八雲は鍛練の準備を終えて玄関に向かう途中だった。

 

「おや。おはよう、八雲ちゃん」

 

「……………」

 

「おはよう、おばあちゃん。おじいちゃん」

 

声を掛けられて振り向くと、そこにいたのは割烹着姿のおつると、八雲の祖父である『吉川赤蘭(せきらん)』だった。

 

赤蘭はつる屋の和菓子職人であり、滅多な事でしか喋らないとても寡黙な人だ。しかし、寡黙だからこその人気があり、近所付き合いもいい関係に築いていた。

 

「最近早起きやねぇ。何かあったんかい?」

 

「まあね。友人と一緒に鍛練してるんだよ」

 

「……………」

 

赤蘭の視線に八雲は苦笑する。

 

「彼女? 違う違う。同じクラスメイトの男子で、同じ部の仲間だよ」

 

「そうかい。気をつけんさいね」

 

「はーい。それじゃあ、行ってきます」

 

そして、八雲は何時もの公園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

暫く時間が経過した、八雲が毎朝使っている公園。その広場に、八雲以外の者達がいた。

 

「ふんっ……………ぬぉっ……………」

 

1人目、腕立て伏せを行っている一誠。

 

「また邪念が入ってるわよ、イッセー」

 

2人目、そんな一誠の背中に座っているリアス。

 

「だ、だから……ぶ、部長が、何時も、俺の上に乗っているかと思うと……お馬さん根性が、マックスになります……よ……」

 

「あら? だったらアーシアに乗ってもらいましょうか?」

 

「はうっ!? わ、私は、イッセーさんがよければ……」

 

3人目、リアスの提案に頬を染めるアーシアだった。

 

何故、この3人が早朝の公園にいるのか?

 

理由は一誠にあった。ハーレム王(目標)に向かって前へ進む為、強くなる必要があったからだ。

 

悪魔の世界は圧倒的に力がものをいう。なので、まずは体力を上げる為に、一誠は毎日朝練を八雲とリアスの2人と共にしていたが、一誠の家にホームステイしているアーシアも今回初参加しており、アーシアは主に一誠達に水分補給の水筒やタオルの用意等を行っている。

 

そして、八雲はと言うと……。

 

「ふっ……ふっ……ふっ……」

 

『頑張れ、残り20を切ったぞ』

 

広場の近くにある木の枝に足を引っ掛けては逆さ吊りになり、腹筋を行っていた。

 

その光景を見ながら、リアスとアーシアは言う。

 

「何度見ても朝練の域を越えてるわね。あれで普段の鍛練の3割程らしいわ」

 

「あれでですか! 何だか、あまりやり過ぎると授業中に寝てしまいそうですが……」

 

「そうね。私も初めて見た時はやり過ぎだと思ったわ。でも、それが八雲の神器に繋がるのよね……」

 

そう言い、リアスは最近分かった八雲の“二十四気の神降機”が持つ機能を語る。

 

“二十四気の神降機”は、ただシキガミに力を送る事や闘神符を作り出す他、“発動と同時に自らの力を倍にする事が出来る”。つまり、“龍の手”と同じ機能をも持っているのだ。

 

今まで戦えたのは八雲が持つ身体能力もあるが、やはり“二十四気の神降機”の影響も大きく、前回の堕天使達とも戦えた。最近になって分かった八雲は今まで以上に鍛練に打ち込み、自らを鍛えたのだ。

 

「ブーステッド・ギアは時間経過で更に強くなるけど、トゥワイス・クリティカルは倍にするだけ。でも、両方は基礎が高い程に意味を持つ。八雲のシーズン・ドライブもトゥワイス・クリティカルと同じだけど、元々八雲の基礎が高いから強い……………いえ、もっと強くなるわ。だからイッセー、最低でも八雲に渡り合えるまで強くなりなさい。そうすれば、ある程度の戦いでも最後まで生き残れる筈よ……」

 

「う、ういっス……」

 

「頑張ってください、イッセーさん!」

 

こうして、朝練の時間が過ぎていくのだった。

 

「……っしゃ! 腹筋終わりっと」

 

『そんじゃあ、次はダッシュ1000本だな』

 

「分かってるよ」

 

「「「まだするの(かよ)(ですか)!?」」」

 

リアス達の言葉が重なった。

 

 

 

 

 

 

朝練後の学園。特に何の変化もなく気が付けば放課後になっていた。

 

現在、オカルト研究部の部室では、一誠とアーシアが慣れた手つきで仕事用の簡易版魔方陣のチラシをまとめていた。その間、人間である八雲は悪魔の仕事をする必要はないのだが、取り敢えず一緒にチラシをまとめる程度の手伝いをしていた。

 

話は変わるが、八雲はオカルト研究部ではぐれ悪魔討伐やチラシのまとめの他、グレモリー眷属と様々な事で過ごしている。

 

リアスとお茶をしたり、祐斗と将棋で勝負したり、小猫とお菓子を食べたり、朱乃とお茶をしたり、アーシアに日本の事を教えたり、一誠の猥談を無理矢理聞かされたり等々、少々変わっているが青春を謳歌しているのだ。

 

「それじゃあ、チラシ配り行ってきます。行こう、アーシア」

 

「はい」

 

そして準備が終わったのか、チラシを入れた鞄を肩に掛けた一誠とアーシアが立ち上がる。因みに、一誠はアーシアの移動の為に自転車を走らせている。

 

「待って」

 

しかし、出かけようとした2人を部長席に座っているリアスが呼び止めた。

 

「チラシ配りは今週まででいいわ」

 

リアスの言葉に2人は少し驚いた表情を浮かべた。

 

「前に言ったでしょう? 修行の一環としてやってもらったけど、チラシの配布は本来使い魔の仕事なの」

 

その言葉に一誠が質問する。

 

「じゃあ、チラシ配りは卒業ってことですか?」

 

「それにはまず、あなたたちも自分の使い魔を手に入れなくてはね」

 

すると、リアスは手品の様に手元から赤くて丸いコウモリを召喚した。

 

「これが私の使い魔よ。イッセーは一度会った事があるわね」

 

「え?」

 

一誠が疑問を抱いていると、リアスの手から離れたコウモリがボフンと煙に包まれた。そして煙が晴れると、そこには1人の女性が立っていた。

 

「ああ! じゃあ、あの時の子が……」

 

女性に見覚えがあったのか、一誠が納得すると同時に軽く落ち込んでしまった。因みに、リアスのコウモリと一誠の出会いは、一誠の初デートの待ち合わせの最中、街で配っていたチラシを受け取った時だ。

 

「私のはこの子ですわ」

 

リアスのコウモリが元に戻ると、朱乃は地面に指を向けた後、その先が光り出しては使い魔が現れる。

 

「こ、小鬼?」

 

現れたのは手乗りサイズの小鬼。辺りを見渡し終わるとグイッと背伸びをしていた。

 

「……シロです」

 

小猫の腕の中に可愛らしい白い子猫がいた。

 

「僕のは――」

 

「あ、お前のはいいや」

 

「つれないなぁ」

 

祐斗の言葉を省こうとする一誠だったが、アーシアは興味があったようで、祐斗は自身の使い魔である小鳥を召喚した。

 

「「「「……………」」」」

 

「ん?」

 

一通り紹介が終わる中、使い魔達は八雲を見つめていると、ある行動を起こした。

 

「おっ……」

 

リアスのコウモリと祐斗の小鳥が八雲の両肩に乗っては頬擦りし……。

 

「おおっ……」

 

小猫の子猫は喉を鳴らしては八雲の足下に体を擦り付け……。

 

「おおおっ!」

 

朱乃の小鬼が八雲の足をよじ登り、制服のポケットに入っては顔をちょこんと出して喜んでいた。

 

「ふおぉぉぉ……っ!!」

 

そんな使い魔達の行動に、八雲は頬を染めて嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「あらあら。可愛らしいですわ」

 

「へぇ、初対面なのにすぐ打ち解けたみたいだね」

 

「……ちょっと、羨ましいです」

 

『八雲は昔っから動物に好かれるんだよ。まあ、オレ達を宿してる影響だろうな』

 

そんな光景を朱乃、祐斗、小猫、コゲンタが各々反応する中、リアスが一誠とアーシアに説明する。

 

「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に扱えるから、イッセーとアーシアも手に入れないといけないわね」

 

「えっと……その使い魔さん達はどうやって手に入れればいいのですか?」

 

「それはね……朱乃」

 

「はい部長。準備は整ってますわ」

 

朱乃の言葉に一誠とアーシアは怪訝に思う中、リアスは笑顔で告げる。

 

「という訳で、早速あなた達の使い魔をゲットしに行きましょうか。八雲も行くわよ」

 

「分かりました。じゃあ、後で【転】の――」

 

「ああ、その必要は無いわよ」

 

「え?」

 

リアスの言葉に八雲は疑問符を浮かべると、朱乃が説明した。

 

「実はそろそろ、八雲くんの体がこの部室に漂う魔力に慣れましたので、魔方陣ジャンプが可能になりましたの。眷属の誰かと一緒であれば、八雲くんも魔方陣ジャンプが可能ですわ」

 

なるほどと八雲は納得すると、再度リアスが言った。

 

「それじゃあ、改めて向かいましょうか」

 

こうして、八雲は初めての魔方陣ジャンプを体験しながら、リアス達と共に目的地へとジャンプしたのだった。

 

 

 

 

 

 

転移魔方陣の光が止むと、一誠達は見知らぬ森の中に立っていた。

 

「……………うっぷぃ」

 

同時に、八雲は顔を青くして口元を押さえており、祐斗が心配して声を掛ける。

 

「八雲くん、大丈夫?」

 

『こりゃあ符力に酔ったみたいだな。普段は【転】の闘神符で移動するから酔わねえが、違う符力に慣れてないから気持ち悪かったんだろ』

 

「あらあら。では少しの間、私が背中を撫でてあげますわ」

 

「す、すみません……」

 

八雲が朱乃に介抱される中、リアスは心配して八雲を一見した後、一誠とアーシアに話す。

 

「ここは悪魔が使役する使い魔の多く住み着いている森。その入り口よ。ここで今日、イッセーとアーシアには使い魔を手に入れてもらうわ」

 

リアスの言葉に一誠は辺りを見渡す。

 

やたら背の高い巨木が周囲に生え、日の光もあまり届いていない鬱蒼とした森。湿気も感じ、何が出てもおかしくない雰囲気もあった。

 

「ゲットしてぇぇぇぇぇ!!」

 

「なっ!」

 

「きゃっ!」

 

突然の大声に一誠とアーシアは驚くと、目の前に現れたのは帽子を深く被ったラフな格好をした青年だった。

 

「オッス! 俺の名前はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だ!」

 

使い魔マスターを目指しているザトゥージの登場に困惑する一誠とアーシアだが、リアスが2人を紹介する。

 

「ザトゥージさん、例の子達を連れてきたわ」

 

「へぇ、冴えない顔の男子と金髪の美少女さんか。そっちの酔ってる男子は誰だい? 見たところ人間だけ……ど……!?」

 

すると、ザトゥージが未だに酔っている八雲を一見した瞬間、その隣にいたコゲンタを見て口を大きく開いて興奮していた。

 

「ななな、何だいその見た事もない使い魔は!? レアだよね? 新種だよね! よければ俺の持ってる使い魔と交換――」

 

『誰が使い魔だゴラァ!』

 

失礼な発言に怒りを露にするコゲンタ。それを他所に朱乃が口を開く。

 

「この子はコゲンタちゃん。八雲くんのパートナーのシキガミで、使い魔ではありませんわ」

 

「はい……。それと、絶対に、コゲンタ達は、渡しません……」

 

『さすが八雲だ! 嬉しい事を言ってくれるぜ!』

 

酔いが収まった八雲の言葉に、不機嫌だったコゲンタは一気にご機嫌になった。

 

「そうなんだ。ちょっとガックシ……」

 

そして使い魔ではないと言われてテンションを戻すザトゥージに、リアスは話し掛ける。

 

「彼は私達の付き添い。使い魔が必要なのはこの子達だけだから、お願い出来る?」

 

「OK! 任せてくれ! 俺に掛かればどんな使い魔でも即日ゲットだぜ!」

 

ゲットを強調しながらサムズアップをするザトゥージ。だが「しかし……」と言った後、先程よりテンションが下がっていた。

 

「今回は時期が悪いなぁ」

 

「時期? それってどう言う意味かしら?」

 

リアスの言葉にザトゥージは答える。

 

「実は1ヶ月程前から、使い魔になる生き物の姿が見つからないんだ」

 

「生き物が見つからない? それって1匹も?」

 

「そうなんだよ! ウンディーネと言った精霊は勿論、鳥や猫とかの動物、あの迷惑なスライムや触手も全く出ないんだ。おかげでこっちは暇でね、久し振りかつ珍しい彼を見たから興奮したんだよ」

 

「迷惑な?」

 

スライムと触手の言葉に反応した一誠にザトゥージは答える。

 

「そう。探索中に現れては邪魔をするんだ。スライムは服だけを融かしては食べ、触手は女性の分泌物目当てで襲うんだ」

 

「……………何……だと……?」

 

一誠は耳を疑った。

 

服を融かすスライムに、女性の分泌物を食べる触手。それはまさに、一誠が求めていたスケベな使い魔だった。

 

「まあ、迷惑な生き物でも長い間見ないと寂しい――」

 

「部長! 俺、そのスライムと触手を使い魔にしたいです! 服を融かす! 女性の分泌物を食べる! 俺が求めていた人材です!」

 

ザトゥージの言葉を遮りながら、一誠は目をランランと輝かせて宣言すると、リアスは呆れながら溜め息をついた。

 

「あのね、イッセー。使い魔は悪魔にとって重要なものなのよ? ちゃんと考えなさい」

 

「うっ……。分かりました」

 

そして、一誠が暫し目を瞑っては考え込む事、約3秒……。

 

「やっぱり使い魔にしたいです!」

 

決意は変わらなかった……………その直後だった。

 

「……ん?」

 

八雲は背後から何かの気配を感じ取り振り返ると、茂みから現れた。

 

「……………ク~ン……」

 

現れたのは、弱々しく震えているシベリアンハスキーの様な姿をした子犬だった。

 

子犬は八雲の足下に来るとその場に倒れてしまい、八雲は抱き抱えた。

 

「大分弱ってる……。ザトゥージさん、こいつは一体何ですか?」

 

「おおっ! 久々の生きも、の……!?」

 

子犬を見た瞬間、ザトゥージは目を輝かせながら近付く。

 

「こいつは驚いた。初めて見る精霊だよ、その子犬。何だろうなぁ……。コボルトか、それとも新種のノームなのかも……」

 

「……っ!」

 

ギャブリィ!

 

「痛たたたたたたたたたたっ!?!?」

 

そして、ザトゥージが子犬に手を伸ばした瞬間、子犬は勢いよくザトゥージの手に噛みついたのだった。

 

「だ、大丈夫ですか、ザトゥージさん!?」

 

「ハ、ハハハ! だ、大丈夫。普段から噛まれたりしてるから、な、慣れてるよ……」

 

言葉と笑顔の裏腹に、ザトゥージの傷から血が流れており、アーシアは神器を出しては傷を治した。

 

そんな中、八雲は子犬を見つめては口を開く。

 

「噛みつく元気はあるのか……」

 

ポケットに手を入れると、八雲は帰りにでも食べるつもりだった購買のパンを取り出しては子犬に近付けると、子犬は貪る様にパンを食べては平らげた。

 

「ワンっ!」

 

「腹が減ってただけか。よかった……」

 

元気になった子犬は八雲の腕の中で元気に吠えると、何度も八雲の顔をペロペロと舐めた。

 

「おいおい、くすぐったいって、あははは!」

 

「ワンっ!」

 

「あの子、とても八雲になついたみたいね」

 

「あらあら、少し妬けますわ」

 

八雲と子犬の間に見せる穏やかな空気にリアス達が微笑む中、ザトゥージだけは肩を落とすのだった。

 

「ワンっ!」

 

すると子犬は八雲の腕の中から抜け出すと、来た茂みの前に立ち止まっては八雲達に振り返る。

 

「どうしたのでしょうか?」

 

子犬の行動にアーシアは首を傾げる。

 

「着いて来いって言ってるのか?」

 

「ワンっ!」

 

八雲の声に子犬は嬉しそうに答えると、茂みの中に入った。

 

「リアス部長。ちょっと向かいます」

 

「あ、ちょっと八雲!」

 

そして八雲は子犬を、リアス達は八雲を追う様に、森の入り口と真逆の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

それから暫く、八雲達は子犬の後を追っていた。

 

近ければ離れ、遠ければ立ち止まる子犬の行動に、次第に八雲達は子犬が持つ高い知性に感心していると、森では珍しく明るい大きな空間に出た。

 

「……何だこれ?」

 

すると、八雲は茂みの前に立ち止まると、空間の中央にある物を見つけた。

 

それを形に例えるなら、薔薇の蕾。八雲を上回る程の大きさを持つであろう巨大な蕾は、とてつもない違和感を醸し出しながら存在を放っていた。

 

「おかしいな。前に来た時は何も無かったのに……」

 

「ザトゥージさん。この前、この場所に来たのは何時頃かしら?」

 

リアスの質問にザトゥージは答える。

 

「1ヶ月前だね。この辺りに使い魔となる生き物はいないから……………って、まさか」

 

「ええ……。この蕾が、今回の事に関係しそうね……」

 

そしてリアスは一見すると、蕾に変化が起きた。

 

ドクンドクンと心臓の様に鼓動しながら蕾が開花し、その中から顔が現れたのだ。

 

「グガァァァァッ!!」

 

真っ赤な花弁に似合った、黄色いドラゴンの顔が……。

 

「植物のドラゴン!?」

 

一誠が驚く中、ザトゥージは怒りながら否定する。

 

「いや、違うぞ少年! 植物の体を持つと言われている華龍(フローラル・ドラゴン)は滅んでいるから既に存在しないんだ! それに微かだが、薬品の臭いがする! 断言しよう……………この生き物は、“人工的に作られた怪物”だ!」

 

「まさか……合成獣(キメラ)ですわね」

 

「キメ……?」

 

朱乃の呟きにアーシアは首を傾げると、祐斗が答える。

 

「様々な生き物の特徴を混ぜ合わした怪物だよ。多くは錬金術師が作るんだけど、近くにそんな人物の気配はしないし……一体誰が……」

 

「……………なるほど。大体分かった」

 

リアス達の言葉を聞き、八雲は目の前の合成獣を作り出した者を理解した。

 

「リアス部長。この合成獣を作った奴が分かりました」

 

「本当なの!?」

 

「大分前、キョニーと言ったはぐれ悪魔がいたでしょ。アイツなら可能です」

 

その人物の名を言われ、一誠とアーシア以外のグレモリー眷属は理解する。

 

はぐれ悪魔キョニー。全世界の女性を巨乳にする為だけに、元主の私財である金髪巨乳のキャラクターの商品を持ち逃げてはぐれ悪魔となった錬金術師の悪魔であり、キョニーの隠れ家には大量の合成獣の苗が見つかっていた。

 

だが、朱乃は八雲に言った。

 

「ですが、合成獣の苗は全て処分しましたわ」

 

「それは俺も見てました。でも、もしその苗が、“目の前の合成獣の苗だったら”……」

 

『『『!!』』』

 

その言葉にリアス達も納得した。目の前の合成獣が最初に作られた……言わば、合成獣第1号なのだと……。

 

「なるほど。私達が処分したのは、目の前の合成獣から作り出された苗だった訳ね」

 

「……オリジナルを何処かに隠せば、苗だけ処分されても平気」

 

「そして隠された合成獣は、この森に住む生き物を捕食して大きくなったのですね……」

 

リアス、小猫、朱乃の言葉に、ザトゥージは決心する。

 

「グレモリーさん! 俺にも手伝わせてくれ! 自然を崩しかねない奴を、俺は許さないんだ!」

 

「ありがとう。じゃあ、被害が更に拡大する前に討伐しま――」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

刹那、ザトゥージがある方向に指差しては叫んだ。勿論、合成獣に気付かれない様に小声で……。

 

「どうしたの!」

 

「あ、あれは!」

 

ザトゥージのはしゃぐ声にリアス達は視線を向けると、蒼い輝きを放つ鱗を持った小さなドラゴンが、合成獣の後ろに生えた巨木の枝で羽を休めていた。

 

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)! 飛来してると情報はあったが、まさかこんな所にいたとは……」

 

「生で見るのは私も初めてだわ。綺麗な鱗ね……」

 

「小さいですね。まだ子供でしょうか?」

 

「そう、子供だ。ゲットするなら今だよ。成熟したら絶対にゲット出来ない。龍王程ではないけど、ドラゴン族の中でも上位クラスの筆頭だからね」

 

「そうなんですか。でも……」

 

アーシアの心配は、この場にいる全員に伝わった。ゲットするにも合成獣に見つかる覚悟をしなければ、蒼雷龍に近付く事さえ出来ないからだ。

 

そんな中、事態は動いた。

 

「ウゥー……」

 

「ん? どうした『くぅろ』。唸り声なんて出して……」

 

「……くぅろ?」

 

「子犬だけじゃあ分からないからな。黒くて綺麗な毛並みだから、くぅろ」

 

聞かない単語に小猫は首を傾げると、八雲はくぅろと名付けた子犬を視線で示した。

 

「ワンっ♪」

 

気に入ったのか、くぅろは嬉しそうに答えるが、すぐにまた唸り声を上げる。

 

「一体どうしたのでしょう――」

 

しかし、アーシアの言葉は最後まで言い終える事はなかった。

 

「え?」

 

何故なら、地響きと共に地面が盛り上がり、ある物が生え出したからだ。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

「こ、これは……っ!?」

 

現れたのは、数多もの植物の蔓。どうやらリアス達は合成獣の領域(テリトリー)に知らず知らず入ってしまい、合成獣の体の一部である蔓が地中から襲い掛かったのだ。

 

「……ヌルヌル、です」

 

「あらあら、エッチな触手ですわね」

 

そのせいで、リアスを含むグレモリー眷属の女子達が蔓に絡め取られ、宙に浮いていた。

 

叫ぶアーシア。驚愕するリアス。蔓の感触に嫌気する小猫。頬を染めて少し喜ぶ朱乃。……1人だけ反応が違うが、状況は不利になっていた。

 

「部長! アーシア!」

 

「小猫ちゃん!」

 

「朱乃先輩!」

 

『抜け出せそうか?』

 

「ダメね。上手く魔力が練れないわ」

 

「こちらも、雷撃を発動出来ませんわ」

 

「……ヌルヌルして、上手く力が入りません」

 

混乱するリアス達。そんな中、ザトゥージはリアス達に向かって飛び出した。

 

「その子達を放す――」

 

ベチンッ!!

 

「タコスッ!」

 

しかし、残っていた蔓が襲い掛かり、ザトゥージは弾き飛ばされては木に叩きつけられ、気絶してしまった。

 

「ザトゥージ!?」

 

「意外と強いね、この合成獣……」

 

「だな……。――行くぞ、コゲンタ!」

 

『おう!』

 

戦闘態勢に入る八雲達。各自が神器を出し、八雲も右腕を突き出した。

 

「シキガミ、降神!」

 

腕の宝玉が輝きを放つと“窓”が現れ、そこからコゲンタは現れた。

 

「コゲンタ!」

 

「おう! 行っくぜぇぇぇぇぇ!」

 

八雲とコゲンタが飛び出すと共に一誠と祐斗も連れて飛び出し、同じタイミングで合成獣の蔓も襲い掛かった。

 

「はあっ!」

 

手刀足刀を駆使して蔓を切る八雲に、剣で一刀両断する祐斗とコゲンタ。

 

【Boost!!】

 

「よし、俺も行ける!」

 

そして一誠も“赤龍帝の籠手”の効果が発動し、蔓を排除しようとした時だった。

 

「きゃっ!?」

 

「大丈夫か、アーシ……ア……」

 

アーシアの声に視線を向けると、一誠は動きを止めた。別に蔓に捕まって身動きが出来ないのではない。アーシアの……強いてはグレモリー眷属の姿に釘付けになったからだ。

 

それもその筈。何故なら――

 

「ふ、服が……アーシアや部長達の制服が、融けてるだとぉ!?!?」

 

「へ?」

 

「はい?」

 

一誠の言葉に八雲と祐斗もその場に止まり、視線をリアス達に向ける。勿論その際、襲ってくる蔓は排除しながら……。

 

その間でもリアス達の服は融け続け、遂には下着も融け始めていた。

 

「……見ないでください」

 

蔓のおかげか大事な部分は隠れていたが、小猫の言葉に八雲と祐斗は視線を逸らす。無論、一誠はガン見だが……。

 

「……蔓の粘液で融けてる様だったな。でも、衣服だけ融けてたが、体には何も負傷してなかった」

 

「さすがの観察力だね、八雲くん。……もしかしたら、合成獣はスライムも食べてその特性を得たんだと思うよ」

 

「じゃあ、絡み付くのは触手の特性か。面倒だな……」

 

「な……何……だと……!?」

 

そんな祐斗の説明に一誠は驚愕する中、合成獣の猛攻は激しくなる。

 

「あっ……っん……」

 

「ふぁ……あんっ……」

 

「……………んっ」

 

「あぁぁ……いぁ……」

 

何と、合成獣の蔓がリアス達の露になった胸の先端に張り付き、リアス達は悩ましい喘ぎ声を出してしまったのだ。

 

「精気を吸ってるのか!」

 

「そりゃあ、女性の胸から精気を吸い取る合成獣って話だからな。この森の中じゃあ、餌となる女性も出会わないだろし……!」

 

蔓への攻撃を止めないコゲンタと八雲の声に、一誠は本日何度目かの驚愕。

 

「なっ、何て素晴らし……いやいや、何てイヤらし……いやいや、何て恐ろしい攻撃なんだ!」

 

「何回噛んでるんだよ! ってか、毎回エロに正直すぎっぞ!」

 

触手を斬りながらコゲンタは突っ込む中、合成獣にある変化が起こる。

 

「八雲くん、あれ!」

 

「合成獣の周りに、実が生ってるだと?」

 

八雲の言葉通り、合成獣の周りに生えている枝から果実が生っていたのだ。しかもその形は、女性の乳房そのものだった。

 

すると、祐斗は思い出す。

 

「そうか! 確かこの前、キョニーの隠れ家にあった合成獣の文献に載ってあったんだ。全世界の女性を巨乳にする為、精気を吸い取っては果実を実らせ、その果実を食べた者は巨乳になるんだって……」

 

「な、何だってー!?」

 

祐斗の説明に、とうとう一誠は感動して涙を流していた。

 

「女性のおっぱいに張り付いて精気を吸い出し、巨乳になる果実を作る。なんて……………なんて俺に相応しい使い魔だ!!」

 

「ちょい待て! まさかイッセー、この合成獣を使い魔にする気か?」

 

「そのまさかだぁぁぁぁぁ!!」

 

「やめろイッセーーーーー!」

 

雄叫びを上げる一誠。それを八雲は止める為に叫ぶが、一誠の行動力が勝利してしまい、合成獣の目の前に出ては両腕を広げた。

 

「お願いだ合成獣……いや、ドラゴ衛門(えもん)! 俺の話を聞いてくれ!」

 

「イ、イッセー! あんっ……そ、そんな事で……んっ、止まる訳……ない、じゃない……ぃあっ、そこっ!」

 

「部長! ここは俺に任せて――」

 

ベシンッ!

 

「ぶへっ!」

 

合成獣の蔓攻撃。だが、一誠は負けずに説得に応じる。

 

「ドラゴ衛門! 俺の下に来い! そうすれば俺の……いや、男達の夢の1つが叶――」

 

バシンッ!

 

「痛っ! お前がいれば、貧乳の女性の悩みが解決するんだ――」

 

バチンッ!

 

「ぁ痛っ! そして、そのおっぱいを見て、社会に落ち込む男達も立ち上がれる――」

 

バゴンッ!

 

「……っだぁぁぁぁぁっ!! 人が少しでも擁護してやってるのに、きちんと喋らせろよドラゴ衛門!」

 

合成獣の猛攻に、さすがの一誠もキレてしまった様だ……。

 

「擁護する前に……!」

 

「助けてやれっての……!」

 

その一方、八雲とコゲンタは無数に生えてくる蔓に対して攻撃速度を上げ、遂にリアス達を拘束していた蔓の排除が完了した。

 

「コゲンタ、祐斗、イッセー!」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

「え? ア、アーシア!」

 

そして、蔓に解放されて落下するリアス達を八雲達は助けた。因みにリアスと小猫は着地に成功する中、八雲は朱乃を、一誠はアーシアをキャッチし、コゲンタと祐斗は再度リアス達を捕まえようとする蔓に応戦していた。

 

「助かりましたわ、八雲くん」

 

「……と、取り敢えず、これを……」

 

胸を晒けて半裸となった状態の朱乃に八雲は視線を逸らす中、自分が着ている制服の上着を渡しては羽織らせた。

 

「ふぅ……。イッセーにも困ったものね……」

 

「ぶ、部長! 俺は全女性の夢と希望を叶える為でして……」

 

「……おい、あれ」

 

コゲンタの声に全員が視線を向ける。その先には、空中を羽ばたく先程の蒼雷龍が、合成獣の頭上に停滞していた。

 

「何だか、あの子ドラゴンの体に電気が走ってる気がするが……」

 

「気がする……じゃねえぞ八雲。本当に走ってるんだよ、あのチビ助に……。しかも不機嫌だからマズイぞ……」

 

「マズイって、どういう――」

 

バリバリバリバリバリバリッ!!

 

「グギャァァァァァ!!」

 

刹那、蒼雷龍から蒼い雷撃が広範囲に放出され、合成獣に激しい電撃が走り抜いた。

 

「あ、危なかったぁ……」

 

間一髪、八雲とコゲンタ、そしてリアス率いるグレモリー眷属の女性陣は雷撃を免れた。

 

「な、何で俺まで……」

 

「あ、あははは……」

 

だが、一誠と祐斗は雷撃の餌食になり、髪の毛もアフロの様にモッサリしていた。

 

「確か、あのドラゴンは外敵と定めた相手に雷撃する習性を持ってたな。合成獣やオレ達を外敵として認識してるな……」

 

「なるほど……って、コゲンタ!?」

 

「何だ――」

 

瞬間、コゲンタは宙に上がった。

 

「ぬわぁぁぁぁぁっ!?」

 

跳躍したからではない。合成獣の蔓がコゲンタの足を捕らえて持ち上げたからだ。

 

「コゲンタ! 今助ける!」

 

コゲンタを捕らえてる蔓を切ろうと、八雲は大きく跳ぶ。

 

バシンッ!

 

「ぐはっ!」

 

だが、空中で合成獣の蔓に弾かれてしまい、八雲は地面に叩き付けられてしまった。

 

「八雲!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

心配して駆け寄るリアス達に蔓が再び襲い出す中、その横を抜く影が八雲の視界に入った。

 

「ワンっ! ワンっ!」

 

くぅろだ。まるで主人を傷付けた者に噛み付く様に、くぅろは八雲達を襲う蔓に噛み付いた。

 

「ガァァァァァッ!」

 

「キャインっ!」

 

「ガー!」

 

しかし、その行為に合成獣は怒りを感じ、くぅろと蒼雷龍を蔓で捕まえてしまった。

 

その光景に、八雲は起き上がりながら言う。

 

「抜け出せそうか、コゲンタ?」

 

「ダメだ。虎鉄も落としちまったし、粘液のせいで力が入らねぇ……」

 

(どうする? 飛び出そうにも空中で蔓の攻撃が待ってるし、リアス部長達も魔力を消費してるから厳しいぞ。何か……)

 

その時だった。八雲がコゲンタ達を助けだそうと考える中、左手の“二十四気の神操機”の宝玉が輝き、ある事が八雲の頭に浮かんだ。

 

「……ぶっつけ本番だが、やってみる価値はあるか。――コゲンタ!」

 

「どうした!」

 

八雲の呼び掛けにコゲンタは視線だけを向けると、八雲の手には闘神符が2枚握られており、コゲンタはある事を考えては口に出す。

 

「まさか、オレと交代なのか? だけど無理だ。蔓のせいでオレの符力が足りない――」

 

「違うぞコゲンタ。コゲンタを交代する為に出したんじゃない」

 

「何だと? じゃあ、まさか……」

 

「ああ、そのまさかだ!」

 

そして投げたのは【窓】の闘神符。普段はシキガミを交代する為に使うのだが、八雲は初めて別の使い方を行った。

 

「シキガミ、降神!」

 

そう……“シキガミの複数降神”だ。

 

まずは1体目。十五夜満月が輝くすすき野原を跳ね回り現れるのは、ロップイヤーウサギに似た獣人的な外見を持つシキガミ。修道院の様な和服姿と首に掛かった大きな数珠が清楚で可憐な雰囲気を出していた。

 

「柊のホリン、見参!」

 

次に現れたのは、ゴリラに似た獣人的な外見を持ったシキガミ。烏帽子を被った神主の様な姿とは裏腹に、鍛え抜かれた肉体が装束を裂け、その豪腕が“窓”を突き破る。

 

「榎のコンゴウ、見参!」

 

「よし、出来た!」

 

グッと拳を握りしめる八雲は複数同時降神の成功に喜ぶと、ホリンとコンゴウは嬉しそうに語り掛ける。

 

「さすが八雲はんや。毎朝鍛練をきばったさかい、符力もぎょーさん増えたんやね。おかげでウチ達シキガミも、ぎょーさん呼べれるよ」

 

「新たな知恵を身に付けたか。喜ばしい事だ、八雲よ……」

 

「神器が教えてくれたんだ。おかげで闘いの幅が広がった」

 

そして、八雲は2人に指示を出す。

 

「俺がコゲンタ達を助ける! その間、コンゴウは合成獣を! ホリンは皆の援護を!」

 

「あい分かった!」

 

「はいな!」

 

指示を受けて2人が駆け出す中、八雲はホリンに印を切る。

 

「離兌震離!」

 

「必殺、浄化之産声(じょうかのうぶごえ)!!」

 

すると、ホリンの瞳と首に掛けた陰陽数珠“嬰児(みどりご)”が神秘的に輝き、口から発せられた念と言霊(ことだま)が合成獣の蔓を塵に返した。

 

「リアスはん達、大丈夫ですか?」

 

「ええ……。新しいシキガミね。助かったわ」

 

「ホリンです。以後、よろしゅう願います」

 

軽い挨拶を交わす中、合成獣の蔓がホリンを襲い掛かる。

 

「服融かすなんて最低なやっちゃな。――ハァッ!」

 

しかし、ホリンは自身の長い耳をパンチの様に繰り出して蔓に対抗した。

 

「ほら、そこでアフロなっとるイケメンとエロッ子。きばって退治すんで!」

 

「は、はい!」

 

「ちょっ、エロッ子って何だよ!?」

 

ホリンが加わり3人はリアス達を守る一方、コンゴウと八雲も行動していた。

 

「震兌坎兌!」

 

「必殺、微塵粉砕下死(みじんふんさいおろし)!」

 

印を切った瞬間、コンゴウは腕を上げては符力で作られたエネルギー状の腕を出現させると、その腕を伸ばしては合成獣の上に雨の如く連続で降り注がれた。

 

「キャワンっ!」

 

「ガー!」

 

微塵粉砕下死が止まった瞬間、くぅろと蒼雷龍の拘束が解かれて2匹は落下する。

 

「危ない!」

 

だが、その瞬間に八雲は2匹を優しく空中で受け止め、合成獣が倒れると同時に着地した。

 

「怪我はないな。よかった……」

 

「ワンっ!」

 

「……………」

 

くぅろは嬉しそうに吠え、蒼雷龍はジッと見つめる中、同じく拘束を解かれたコゲンタが八雲の側に着地する。

 

「助かったぜ八雲」

 

「礼はコンゴウに……。――それより2人共、一気に叩くぞ!」

 

そして八雲は最後の印を切ろうとした。だが……。

 

「待つんだイケメェェェェェン!」

 

「へっ?」

 

合成獣を守る様に、一誠が八雲に対峙――

 

バリバリバリバリバリバリッ!!

 

「あびゃびゃびゃびりゃびゃびゃびゅびゃ!?!?」

 

出来なかった。理由は勿論、蒼雷龍が一誠に電撃を浴びせたからだ。

 

「……何だか知らんが改めて……。――一気に叩くぞ!」

 

そして、今度こそ八雲は印を切った。

 

「震離坎兌!」

 

印を切ると同時に合成獣に駆け出すコゲンタを他所に、印を切られたコンゴウの手の中に光の粒子が溢れ、陰陽長槍“無双樹(むそうじゅ)”が形成されては矛先を地面に向けた。

 

「必殺、大樹根地脈鎖(だいじゅこんちみゃくさ)!!」

 

高らかに叫ぶと同時に、コンゴウは無双樹の矛先を地面に突き刺した瞬間、地面から無数の木の根が地面を走り、合成獣に襲い掛からせた。

 

「グギャァァァァッ!?!?」

 

その結果、合成獣の強固に張り巡らせた根が全て引き抜かれ、巨体が高く宙へ舞った。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!」

 

そこへ追い討ちを掛ける様に、コゲンタはコンゴウが発動した木の根を伝って駆け出しては木の根の先から高く跳躍した。

 

「八雲ぉ!!」

 

「ああ! 離、震、離、兌!!」

 

合成獣よりも高く上がったコゲンタの言葉に、八雲は印を切る。その直後、コゲンタは西海道虎鉄を天高く翳し、刀身に“二十四気の神操機”から送られた気を集中させた。

 

「ひっさぁぁぁぁぁつッ!」

 

雄叫びと共に刀身に纏った気が噴出し、コゲンタは合成獣の頭上目掛けて唐竹割を繰り出した。

 

怒涛(どとう)(ざん)(こん)(けん)!!」

 

繰り出されるコゲンタの必殺剣……怒涛斬魂剣。

 

「ギャァァァァァッ!?!?」

 

その結果、合成獣は断末魔と共に一刀両断され、光の粒子となって消え去ってしまった。

 

「っしゃあッ!」

 

「へへっ、どんなもんよ!」

 

討伐に成功した八雲は後ろを振り向くと、リアス達も喜んでいた。

 

仲間を守れて喜ぶ八雲。そんな仲間の笑顔を見て、八雲はコゲンタとコンゴウと共に側に寄るのだった。

 

「ド……………ド……………ドラゴえもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんッ!!!!」

 

涙を流しながら、合成獣が爆発した所を見つめる一誠を、そっとしておいて……。

 

 

 

 

 

 

「……ア、アーシア・アルジェントの名において命ず! な、汝、我が使い魔として、契約に応じよ!」

 

それから暫くして、リアス達は使い魔の森の入り口に戻っては、アーシアが朱乃のサポートの下、使い魔の契約儀式を執り行っており、たった今、契約が完了した様で、アーシアの使い魔が彼女にじゃれ始めた。

 

契約儀式の魔方陣の中央にいたのは、あの蒼雷龍の子供。合成獣に捕らえられた時に怪我をしてしまい、アーシアが皆と共に“聖母の微笑”で癒したのだ。その結果、アーシアにとても懐いてしまい、使い魔として迎え入れたのだ。

 

ザトゥージ曰く、蒼雷龍は心の清い者に心を開き、悪魔に降らないドラゴン。だが、アーシアは誰もが認める清い心を持っており、蒼雷龍の条件をクリアしている。見事アーシアはレアドラゴンをレアな条件でゲットした訳だ。

 

「うふふ。くすぐったいですよ、ラッセーくん」

 

「ラッセー?」

 

リアスの疑問に、アーシアは答える。

 

「はい。雷撃を放つ子ですし、イッセーさんから名前をいただきました。雷撃を放ちながらもイッセーさんの様に元気な子であって欲しいと思ったので……」

 

そんな中、八雲はその光景と共にザトゥージの会話に目を向ける。そこには、霊体となっているホリンとコンゴウが、ザトゥージに何か説明している。

 

『一応、うちとコンゴウはんとで森の木々通して符力を流したさかいに、暫くしたら元の生き物達も戻りなはる』

 

『当分は観察だけにしておく事だ。また厄介事になれば、生き物のいない森に戻ってしまうぞ』

 

「そうか、分かったよ! いやぁ、本当にありがとう! おかげで使い魔マスターの修行を再開させる事が出来るよ!」

 

ホリンとコンゴウに何度も礼を言うザトゥージ。そんな光景を見て八雲は微笑ましく思う中、隣から聞こえるすすり泣く声に目を向けた。

 

「……うぅ、ドラゴ衛門……」

 

その声の主は、今だに合成獣の死に悲しんでいる一誠であり、さすがにかわいそうと思ったのか、八雲は一誠の肩に手を置いた。

 

「あんまり悲しむな。今日はアーシアがラッセーを使い魔にしただけでも喜ぼうぜ」

 

「で、でもよぉ……」

 

「それにさ……」

 

そあいて、八雲は一誠にだけ聞こえる様に言った。

 

「世の中の女性が巨乳になっても、所詮見るだけだろ?」

 

「なっ!?」

 

刹那、一誠に電撃が走っては冷静に考える。

 

世の中の女性が巨乳になっても、所詮は横目でそれとなく観賞するだけ……。恋人でない限り、触らせてくれる確率は限りなく0と言えるだろう。

 

「それに比べてリアス部長はどうだ。眷属を大事にしてくれるリアス部長なら、頑張り次第であの大きな胸を好きにさせてくれるかもしれないぞ?」

 

「吉川……」

 

「ん?」

 

「意外とエロかったんだな……」

 

一誠の一言に、八雲はずっこけた時だった。

 

「イッセーさん! ラッセーくんの契約が終わりました!」

 

「おお、そっか。よろしくな、ラッセー――」

 

バリバリバリバリバリバリッ!!

 

一誠が気軽にラッセーに近寄った際、無慈悲にも雷撃の餌食となり黒コゲになってしまった。

 

「言うの忘れたけど、ドラゴンのオスは他生物のメスが好きと同時に、他生物のオスが大嫌いだ」

 

何故雷撃を食らったのか分からない一誠に対し、同じく黒コゲのザトゥージが捕捉説明する。その奥で祐斗も黒コゲになっており、女性陣は黒コゲにならなかった様だ。

 

「オスなら見境なしですか、ラッセーさん……………っておい!?」

 

そして、一誠はある事に気付いた。

 

「何で八雲も無傷なんだよ!?」

 

そう……一誠の言う通り、雷撃を浴びた筈の八雲は無傷だったのだ。

 

すると、コゲンタは言った。

 

『言っただろ。八雲は動物に好かれるんだって』

 

「だからって、一体何処でフラグ立てたんだよ!」

 

『合成獣の蔓から落ちた時に助けてただろ。あそこで、だよ』

 

「そ、そんな事で懐かれるなんて……………ズルいだろぉぉぉぉぉ!!」

 

そして、一誠は何度目かの叫びを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

使い魔の森から魔方陣ジャンプで八雲達は戻って来たが、少々厄介な事態が発生した。

 

「ワンっ!」

 

「……いつの間に、着いて、来たんだ……?」

 

酔っている八雲の言葉に全員頷く。どうやら、魔方陣ジャンプの終了間際にくぅろが飛び込み、一緒に着いて来た様だ。

 

「あらあら。部長、どうしましょうか?」

 

「ひとまず、この部室に居させましょう。それから八雲。くぅろの問題が解決するまでの間、お世話主任として任せるわね。私達も交代でお世話するから」

 

「わ、分かりました……」

 

「ワンっ!」

 

八雲の返事にリアスは頷くと、指を鳴らしてはテーブルにお菓子やジュースを出した。

 

「それじゃあ、アーシアが使い魔を持てた事を祝してパーっといきましょう♪」

 

その言葉に皆がはしゃぎ、笑顔で小さなパーティーを過ごすのだった。

 

“翌朝、あんな事態が発生するとは知らずに”……。




ホリンの京都弁が難しい……。因みに今回登場した赤蘭の姿は、『NARUTO』の『エビゾウ』をイメージしてます。

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