ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第17話:婚約者は不死鳥〈フェニックス〉

七十二柱(ななじゅうふたはしら)”。

 

大昔、悪魔には72もの爵位持ちの一族が、それぞれ何十もの軍隊を率いていた。しかし、その大多数が戦争で消滅してしまい、今では半数も残っていない。グレモリー家、フェニックス家、いずれも戦争で生き残った純血悪魔一族である。

 

本来ならば、リアスは大学を卒業するまでは人間界で自由に生活を送れるはずだったが、そんな彼女にフェニックス家の政略結婚が突然舞い込んだ。純血悪魔の根絶を恐れたグレモリー家とフェニックス家の両家が持ち掛けた縁談であり、リアスの悩みの原因でもある。

 

「いやー、リアスの“女王”が淹れてくれたお茶は美味しいものだな」

 

今、一誠達はリアスとその婚約者であるライザーから少し離れた席に集まり、事の成り行きを見守っている中、ライザーは朱乃が淹れた紅茶を誉めていた。

 

「痛み入りますわ」

 

何時もの笑顔を浮かべている朱乃だが、何故かそこに感情が感じられず、少し怖いものを感じていた。

 

(あ、あの野郎……!)

 

そんな中、一誠は腹を立てる。ソファーに座るリアスの隣についているライザーが、軽々しくリアスの肩を抱いているからだ。

 

リアスが何度もライザーの手を振り払うが、ライザーは構わず肩やら手やら髪やらを触り、馴れ馴れしい行動をしていた。

 

(……いや、待てよ)

 

ふと、一誠は思い出す。

 

ライザーが幾らリアスの婚約者でも、自分はリアスの胸の感触を知っており、更には美しい裸体を2度も目の当たりにしていた。

 

(お、俺の勝ちじゃねぇか!?)

 

そう自己解釈し、一誠は脳内で勝利宣言したのだが、アーシアが怪訝そうに訊いてきた。

 

「あ、あの、イッセーさん。何か楽しい事ありました?」

 

その一言に、一誠は我に返った。

 

「……卑猥な妄想禁止」

 

「取り敢えず、涎を拭いた方がいいよ。イッセーくん」

 

痛烈な一言を発する小猫に、笑顔でハンカチを差し出す祐斗。

 

「そろそろお茶の時間ですから、お菓子の事を考えて涎が出ちゃったんですね」

 

「いや、多分違うぞ……」

 

「くぅーん……」

 

仕舞いにアーシアの屈託のない笑顔と言葉に、窓から空を見上げていた八雲が小声で突っ込み、そんな八雲にくぅろは頭を撫でられていた。

 

そして、一誠の心が痛んだその時だった。

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

稀に見ない怒気がひしひしと伝わっていたリアスが、我慢の限界が来たのかとうとう激昂した。ソファーから立ち上がり、低く迫力のある声が部室に響く。

 

「ライザー、以前にも言ったはずよ。私はあなたと結婚なんてしないわ」

 

だが、ライザーは向けられた怒りの視線をどこ行く風でニヤけた面を浮かべていた。

 

「ああ、以前にも聞いたよ。だがリアス、そう言う訳にはいかないだろう? 君の所の御家事情は、そんなわがままが通用しない程に切羽詰まっていると思うんだが?」

 

ライザーはカップの紅茶に口をつけ、更に話を続ける。

 

「先の戦争で純血悪魔が大勢亡くなった。純血悪魔の血を絶やさないというのは、悪魔全体の問題でもある。最近は転生悪魔が幅を利かせているが、それでは古い家系である俺達の立場がない。君のお父様もサーゼクス様も、純血悪魔の未来を考えてこの縁談を決めたのさ」

 

ライザーの言葉にリアスは鋭い視線を送りながら黙り込むが、それは長く続かなかった。

 

「私は家を潰さないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

リアスの言葉を聞き、ライザーは満面の笑みを浮かべる。

 

「おおっ、さすがリアス! じゃあ早速、俺と――」

 

しかし、すぐにリアスが言葉を遮った。

 

「でも、私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔だって、それぐらいの権利はあるわ。だから、ライザー……」

 

そしてリアスは、溜め込んだ感情を一気に吐き出すように言い放った。

 

「あなたとは結婚しないわ!」

 

「……………はぁ」

 

その言葉を聞いた途端、ライザーの機嫌が悪くなったのが分かった。

 

「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。この名前に泥をかけられる訳にもいかないんだよ。俺は君の下僕を全部燃やし尽くしてでも、君を冥界に連れ帰るぞ」

 

立ち上がったライザーはリアスの顎に指を添え、猛禽類の如き目つきで彼女を睨み付ける中、リアスも負けじと鋭い目つきでライザーを睨み返す。

 

その瞬間、殺気と敵意が室内全体に広がり、両者から放たれるプレッシャーが一誠達を襲う。

 

「……と、本来なら言いたいところだが」

 

しかし、何の前触れもなくライザーから威圧感が消えるが、すぐに視線をリアスから離しては殺気を放つ。

 

「……ん?」

 

その先にいたのは、八雲だった。

 

視線と殺気に気付いた八雲はライザーに体を向けるのだが、撫でられていたくぅろは中断させられ、ライザーを睨んだ。

 

「お前、人間だろ? なんで人間がここにいるんだ?」

 

「俺もここの部員だ。名前は吉川八雲。よろしく」

 

不意の質問にも動じず、右手でシュッと敬礼の様なポーズで挨拶する八雲だが、その返答にライザーは呆れた様な溜め息をついた。

 

「……まったく。まさか、こんな下等種族がリアスの近くにいたとはな……」

 

そう言うなり、ライザーの手に炎が宿る。

 

「ちょ――」

 

ライザーはそれを八雲に投擲し、八雲は両手を合わせては驚いていた。そして――

 

ボウンッ!

 

ガシャンッ!

 

炎の爆発と窓が砕ける音が重なった。

 

「八雲!?」

 

「吉川!?」

 

「くぅろちゃん!?」

 

リアスや一誠達が、白い煙で隠れた窓から落ちたであろう2人の名前を叫ぶ。

 

「ライザー! あなた何をっ!」

 

ライザーの行動に、慈愛の情が深いリアスが今までとは比べ物にならない程の激昂を見せた。

 

「おいおい、何を怒ってるんだ? 俺はただ、目障りな猿を燃やしただけだぜ?」

 

その言葉で、リアス達はライザーを完全に敵と認識した。

 

全員、いつでも動ける様に臨戦態勢を取る中、ライザーは何の悪気もなく、殺意を抱く笑みを浮かべては視線を窓に向けようとした時だった。

 

「危ねーな、おい」

 

聞き覚えのある声にライザーが……いや、この場にいる者全員の表情が驚愕に変わった。

 

煙が晴れ、その先に見えたのは、“八卦の水の障壁”に守られた八雲だった。

 

「八雲くん! 無事でしたのね!」

 

安堵の表情をして駆け寄る朱乃に八雲は頷くと、ライザーを睨み付ける。

 

「ほぉ、下等な猿の分際で奇妙な魔力を使うのだな」

 

「育ちのなってない奴だな。あんた、火の扱いには注意しろって親に言われてないのか?」

 

八雲とライザーの間に火花が散る。

 

一触即発の雰囲気になろうとした瞬間だった。

 

「――がっ……はっ……!!」

 

突如、ライザーは体に重さを感じた瞬間、急に息が苦しくなっていた。

 

「御主人様に何してくれてるんだ、あぁん!?」

 

その正体は、肩車の様にライザーに股がっては膝をつかせ、両腕を掴み上げて三角絞めの要領で首を絞めているくぅろが原因だった。どうやら煙に紛れて気配を消し、ライザーに近付いた様だ。

 

「その辺にしておけ、くぅろ」

 

「でも!」

 

「俺の為にしてるんだろ? もういいから、すぐに離れろ」

 

「……分かりました」

 

そしてくぅろは瞬時に技を解くと、自身の周囲に炎を駆け巡らせるライザーは再び八雲に殺気を向ける。

 

「き、貴様ぁ……! 由緒ある純血悪魔に向かって……無礼だろうが!!」

 

「先に無礼をしたのはそっちだろ。無礼を無礼で返されたんだ。自業自得ってもんだ」

 

対して、八雲も怒気を含んだ空気を漂わせ、再び一触即発の時だった。

 

「落ち着いてください」

 

2人の仲裁に入ったのは、先程の騒動にも動じなかったグレイフィアだった。

 

「これ以上やるのでしたら、私も黙って見ている訳にもいかなくなります。私はサーゼクス様の名誉の為、一切の遠慮などしないつもりです」

 

冷静に介入したグレイフィアの言葉には静かな迫力が含まれ、それを聞いたライザーは気を落ち着かせる様に溜め息を深く吐きながら頭を振った。

 

「……最強の“女王”と称されるあなたにそんな事を言われたら、俺もさすがに怖いよ」

 

ライザーが戦意を無くした事を確認した八雲も気持ちを落ち着かせ、リアス達も臨戦態勢を解いた。どうやら、最悪の状況は脱したようだ。

 

そして全員の戦意が無くなった事を確認すると、グレイフィアが口を開いた。

 

「こうなる事は、旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も予想されておられました。よって、決裂された最終手段を取り入れる事としました」

 

「最終手段って……どういう事よ、グレイフィア?」

 

「お嬢様。それほど御自分の意志を押し通すのでしたら、ライザー様と“レーティングゲーム”にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」

 

「……っ!?」

 

グレイフィアの通達にリアスは驚いては言葉を失った。

 

“レーティングゲーム”。

 

爵位持ちの悪魔が行う、下僕を戦わせて競うチェスに似たゲームであり、ゲームでの強さが悪魔の中での上下関係に大きく影響を与えるのだ。

 

「あれ? それって成人した悪魔しか出来ないんじゃなかったっけ?」

 

一誠の疑問にグレイフィアは答える。

 

「公式なレーティングゲームは成熟した悪魔しか参加出来ません。しかし、非公式の純血悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加出来ます。この場合の多くが身内同士、または御家同士の歪み合いです」

 

グレイフィアの言葉にリアスはイラついた様子を見せる。

 

「……つまり、お父様方は私が拒否した時の事を考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね? どこまで私の生き方を弄れば気がすむのかしら……っ!」

 

「では、お嬢様はゲームも拒否すると?」

 

「いえ、まさか、こんな好機はないわ。……いいわよ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

挑戦的な物言いに、ライザーは嫌味な笑みを浮かべる。

 

「へー、受けちゃうのか。俺は構わない。ただ、俺は何度もゲームを経験してるし、勝ち星も多い。それでもやるのか、リアス?」

 

「やるわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

更に挑戦的な態度をするライザーにリアスは勝気な笑みを浮かると、両者は激しい眼光をぶつけ合った。

 

「承知いたしました。お嬢様とライザー様の御意思は私グレイフィアが確認させていただきました。御両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせてもらいます。よろしいですね?」

 

グレイフィアの言葉に2人は了承するように頷いた。

 

「分かりました。御両家の皆さんには私からお伝えします」

 

グレイフィアは確認すると、すぐにライザーは何度見ても慣れない嘲笑を浮かべ、当惑する一誠に視線を向けた。

 

「なあ、リアス。念の為に確認しておきたいんだが、君の下僕はそこの2人(下等種族)を除いた面子で全部なのか?」

 

「だとしたらどうなの?」

 

それを聞いてハハハと高笑いを上げるライザー。

 

「これじゃあ話にならないんじゃないか? 君の“女王”である“雷の巫女”しか俺のかわいい下僕に対抗出来そうにないな」

 

そう言ってライザーは指を鳴らすと、それに応じるかの様に再び部室の床にフェニックス家の魔方陣が出現し、ライザーが現れた時と同じ様に炎の中から人影が次々と現れる。

 

現れた人影達は、何れも女性だった。

 

「と、まあ、これが俺の可愛い下僕達……つまり、駒がフルに揃ってるぞ」

 

両腕を広げては堂々と言うライザーの周囲を、ライザー眷属の悪魔総勢15名が集結した。

 

鎧を着こんだ“騎士”らしき者。フードを深くかぶった魔導師らしき者。チャイナドレスに身を包んだ者。長い棍を持った和服の者。獣の様な耳を生やした双子とTシャツとスパッツ姿の双子に、剣を背中に背負うワイルドな者や顔半分に仮面を被った怪しい者から、十二単を着た和風の者に西洋のドレスを着る者等々……“王”を含めた16名の眷属悪魔は、まさに壮観だった。

 

「全員美少女、美女じゃないか!!」

 

一方、それ以上に全員が女性の眷属悪魔だと心を捉えられては叫ぶ一誠の全身に電撃が走り抜ける。

 

ライザーは実現したのだ。男の夢……一誠が夢にしているハーレムを……。

 

「な、なんて奴だ……」

 

膝から崩れ落ちた一誠から嗚咽が聞こえると、それを見たライザーはドン引きしていた。

 

「お、おい、リアス……。この下僕くん、俺を見て大号泣しているんだが……」

 

「……その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔達を見て感動したんだと思うわ」

 

一誠の姿を見たリアスは困り顔で額に手を当てていると、それを聞いて何か思い付いたのか、ライザーは1人の下僕の名を呼んだ。

 

「ユーベルーナ」

 

「はい、ライザー様」

 

ユーベルーナと呼ばれた眷属悪魔がライザーの下に歩み寄り、ライザーが彼女の顎に指を添えて持ち上げては何の躊躇もなく、その唇を唇で封じた。

 

「んっ……あふっ……」

 

しかも舌を絡ませるディープなもので、くちゅくちゅと両者の唾液が混ざる水音が聞こえていた。

 

「ライザー様ぁ……」

 

呆れて見ているリアス。無表情の顔で僅かに眉の間にしわを寄せる小猫。笑顔の裏から殺気に近い雰囲気を出している朱乃。唖然とする八雲。じっくりと凝視するくぅろ。珍しく笑みが消え失せた祐斗。赤面して頭をパンクさせるアーシア。絶望で顔面を蒼白させている一誠。目の前の光景に、様々な反応をしていた。

 

そしてライザーが2回戦を終え、嘲笑しながら一誠を見下しており、一誠は感じ取った。

 

お前じゃ、こんな事は一生出来まい、と……。

 

「お前じゃ、こんな事は一生出来まい。下級悪魔くん」

 

「俺が思っている事、そのまんま言うな! ブーステッド・ギア!」

 

嫉妬心全開で怒り心頭の一誠が左腕を構えて叫ぶ。

 

赤い光を発しながら、一誠の左腕に“赤龍帝の籠手”が出現すると、赤い装甲で覆われた指を突き付けてはライザーに物申す。

 

「そんな調子じゃ、部長と結婚した後も他の女の子とイチャイチャしまくる気だろ!」

 

「人間界には『英雄、色を好む』と言うことわざがあるだろう。いい言葉だ。――まあ、これは俺と下僕達とのスキンシップ。お前だって、リアスに可愛がってもらっているんだろう?」

 

「何が英雄だ! お前なんか、ただの種まき焼き鳥野郎じゃねぇか!」

 

「や、焼き鳥だとぉ!? この下級悪魔ぁぁぁぁ! 上級悪魔に対して態度がなってねぇぜ!」

 

一誠の挑発にライザーは憤怒の表情へ変貌する中、八雲は内心呆れていた。

 

(……何だか、緊迫した雰囲気から一気に同レベルの口論になってる気がするな)

 

同族嫌悪なのだろう。そう思う八雲だが、一誠はそんな事はお構い無しだった。

 

「ゲームなんざ必要ねぇさ! 俺のブーステッド・ギアで全員倒してやらぁ!」

 

【Boost!!】

 

「イッセーさん!」

 

アーシアの静止を聞かず、一誠が駆け出す。

 

「ミラ。やれ」

 

気合いを入れる一誠に対し、ライザーは嘆息しながら1人の眷属に命令を下した。

 

小猫と同じくらい小柄で童顔な少女。武闘家が使う様な長い棍を器用に回した後、一誠へ構えた。

 

「……………あの馬鹿!」

 

「え? ご、御主人様!」

 

それを見た瞬間、八雲は体を動かした。

 

(こんな小さい子が相手か。やりにくいけど、棍を叩き落とせば戦意もなくなる……!)

 

そんな事を思いながら油断したのが、一誠の間違いだった。

 

「っ!?」

 

一誠は駆け出して数歩の所で八雲に突き飛ばされ、ミラの素早い棍の突きが八雲の腹部を捉えようとした。だが――

 

バシッ!

 

「なっ!?」

 

棍は八雲を捉えられず、逆に八雲が棍を素手で掴んでしまい、その光景にミラは驚愕した。

 

驚愕したミラを余所に八雲はライザーを睨む。

 

「安い挑発を今買ってどうする? この怒り、ゲームでぶつけてろ」

 

「ほぉ……。先程の魔力といい、人間にしてはなかなかやる様だな」

 

その光景の後、ライザーが突き飛ばされた一誠を見下しながら鼻で笑う。

 

「それにしても、凶悪にして最悪のブーステッド・ギアの使い手が、まさか人間に救われる程に弱くて下らん男だったとはな!」

 

ライザーの嘲笑いを受け、一誠はあまりの悔しさに奥歯を激しく噛んだ。言い返したいが言い返せず、不甲斐なさを実感した。

 

すると、何か思い付いた様にライザーはリアスに言った。

 

「リアス、そこの下等種族の参加も認めてやる。そして、ゲームは10日後でどうだ?」

 

「……私にハンデをくれると言うの?」

 

リアスの視線にライザーは軽く受け流す。

 

「嫌か? 屈辱か? 自分の感情だけで勝てる程、レーティングゲームは甘くないぞ。それだけの期日があれば、下僕も何とか出来るだろう」

 

ライザーの視線が一誠へ移る。

 

「リアスに恥を掻かせるなよ、リアスの“兵士”。お前の一撃が、リアスの一撃なんだよ」

 

「っ!」

 

その言葉がリアスの事を想っての一言だと一誠は理解する中、ライザーは魔方陣を出現させた。

 

「楽しみにしてるよ、愛しのリアス。次はゲームで会おう」

 

それだけ言い残し、ライザーは下僕達と共に魔法陣の光の中へと消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

冥界のフェニックス家。

 

ライザー達が帰還し、魔方陣から一歩踏み出した瞬間だった。

 

ピキ……ッ!

 

「ん?」

 

何かの音に気付き、ライザーとその眷属達は音がした方へと視線を向けた。

 

視線の先は、ミラが持っている棍。八雲が掴んだ箇所に亀裂が出来ており、次第に亀裂は広がった。そして――

 

バキィッ!

 

「わ、私の棍が……!」

 

ミラの言葉に棍が破壊された事が分かった。その事実に眷属達が動揺している中、ライザーは愉快そうに口を歪ませる。

 

「……このゲーム、楽しめそうだな」

 

予想外の出来事に、ライザーの瞳には八雲に対する興味と、叩きのめそうとする決意で満ちていた。

 

 

 

 

 

 

ライザーが帰還して暫く室内の雰囲気はどこか沈んでいる中、グレイフィアが事務的に淡々と言う。

 

「では、期日は10日後とします。その間、お嬢様は下僕と共に準備を行っておく様、頑張ってください」

 

淡々と事務的に言うと、グレイフィアは一礼しては魔方陣を出現させ、冥界へと戻った。

 

すると、リアスは開き直る様に溜め息を溢した。

 

「悔しいけど、認めないとね……。――皆、今日はもう上がってちょうだい。期間中の事は後で連絡するから……」

 

リアスの言葉に全員頷くと、不意に朱乃が八雲に訊いた。

 

「八雲くん。先程の障壁は一体どうやって行ったのですか? 【壁】の闘神符とは違っていましたが……」

 

「……本当なら、今朝の鍛練でお披露目したかったんですけどね。正体はコレです」

 

そう言って八雲が取り出したのは、2枚の闘神符。それを両手で合わせた瞬間、八雲の目の前にライザーの炎を防いだ水の障壁が現れた。

 

「別々の闘神符を合わせて発動させました。この場合は【壁】と【水】を合わせたので、水の障壁を作りました」

 

『この方法を、オレ達は“統合符(とうごうふ)”と呼ぶ事にしたんだ』

 

「コゲンタ? 今まで出て来なかったけど……」

 

リアスの言葉にコゲンタは大声で言った。

 

『出たかったさ! あの焼き鳥が八雲を馬鹿にした時、抗議してやろうと思ったさ! でも、八雲が心の中で言ったんだよ。「今は姿を現すな」ってよ……』

 

コゲンタの言葉に全員の視線が八雲に向けられる。

 

「相手に手の内を知らせる訳にはいかないからな。今頃、相手は俺が闘神符(奇妙な術)を使う奴だと認識してるでしょう」

 

「じゃあ、まさか向こうが八雲くんをゲームに参加させようと仕向けたのも……」

 

祐斗の言葉に八雲は首を横に振った。

 

「いや、そこまでは考えてないな。イッセーの頭に血が昇っていて冷静も欠けてたから、体が動いただけだ」

 

「……………」

 

その言葉で、一誠は静かに握る左手に力を込めた。

 

「イッセーさん……」

 

本人は誰にも気付かれない様に行ったのだが、その姿をアーシアが心配そうに見つめている中、八雲が口を開く。

 

「期日は10日ある。短いけど、それまでに俺達も強くなろうぜ、イッセー」

 

「……ああ、分かった!」

 

その言葉に励まされて一誠は力強く頷くと、室内の雰囲気は少しだけ明るくなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、10日後にリアス対ライザーによる非公式のレーティングゲームが行われる事となった。

 

そしてこのゲームを通し、八雲の存在を多くの観戦者が驚愕する事など、現段階では誰も知らない……。

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