ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第20話:開幕、レーティングゲーム

「……………」

 

決戦当日、深夜11時。八雲は自室にてゲームの準備を終えてから、開始30分前まで静かに本を読んでいた。

 

本来なら既に家を出ないといけないのだが、部室まではくぅろと共に【転】の闘神符で向かうので、普通に自室で過ごしていた。

 

因みに八雲の出で立ちは学生服と、手にはバンテージを巻いているのだが、何か入れてるのか制服のポケットが少し膨らんでおり、バンテージには見慣れない模様が記されていた。

 

『もうすぐだな、八雲』

 

コゲンタに話し掛けられて八雲は本を閉じる。

 

「ああ……。正直、試合と聞くと楽しみで仕方がない。普段から積み上げた鍛練の成果を出せるしさ……」

 

『確かに……ここに来てから、形は違うけど試合は初めてだよな』

 

以前住んでいた土地では小さな武道大会が開催しており、八雲は小さい頃から参加していた。勿論、表彰台に立った事もあり、去年は格闘技部門で優勝もした。

 

しかし神器が目覚めてからか、はぐれ悪魔討伐は多くこなすが、試合と言った事柄は出来なく、八雲も知らない内に寂しさを感じていた。

 

だが、リアス眷属とライザー眷属によるレーティングゲームに参加が認められ、八雲は久しく感じる試合前の緊張感に、誰にも知れずに心を踊らせていたのだ。

 

『確認するけどよ、アレは使うのか?』

 

コゲンタの言葉の意図を感じ、八雲は顎に手を添える。

 

「状況によるかな。イッセーの神器の能力を使えば、ライザーを倒せるしよ」

 

『そうだな。まあ、もし使う事態になったら使えばいいさ。それで勝率が上がれば儲けもんだしな』

 

「いざという時はよろしくな、コゲンタ」

 

そう言って八雲はコゲンタに微笑むと、不意にノックの音が聞こえた。

 

「御主人様、入ってもいいですか?」

 

「くぅろか。いいぞ」

 

許可を貰いくぅろは八雲の部屋に入ってきた。出で立ちは学園のスカートに、迷彩柄のパーカーとなっている。因みに、パーカーは八雲の御下がりであり、くぅろのお気に入りの1着である。

 

「それで戦うのか」

 

「はい。リアスさんに聞いて、動きやすい服にしました。それに……」

 

頬を赤く染めながらくぅろは言う。

 

「御主人様のいい匂いがして、まるで御主人様がすぐ側にいてくれる気がして、とっても頑張れるんです」

 

「……まあ、頑張れるのはいい事だが、前みたいに暴走するなよ」

 

「うっ……………あ、あれは反省してますよ! もう朱乃さんの巧みな話術に引っ掛かりません!」

 

『いや、誰がどう見ても巧みな話術じゃねえよ』

 

「うるさいですよ、このニャンコ!」

 

『んだとゴラァ!!』

 

くぅろの言葉にコゲンタがキレて口論が勃発し、八雲はやれやれと見つめながら“あの騒動”を思い出す。

 

修行で起こった温泉騒動後、八雲は朱乃とくぅろに対して注意する様に叱った。その際、くぅろは理解してはひたすら謝ったが、朱乃は「分かりましたわ」と一言だけだった。恐らく、懲りていないのだと八雲は思うが、その真実は朱乃しか知らない。

 

まあ実際、朱乃はこれからも八雲にスキンシップをするのだが……。

 

「くぅろ」

 

そんな中、暫く口論するくぅろに八雲は声を掛けてある物を渡した。

 

渡したのは、カードゲームでよく見るデッキケースだった。

 

「これが言ってた物だ。修行で身につけた“あの技”と組み合わせれば、様々な状況に対応出来るぞ。期待してる」

 

「ありがとうございます、御主人様!」

 

『八雲。そろそろ……』

 

コゲンタの言葉に八雲は頷いては時計を見る。もうすぐ集合の時間だ。

 

立ち上がると【転】の闘神符を取り出し、八雲は言う。

 

向かうは、駒王学園オカルト研究部。

 

「よし……行くぞ、皆!」

 

「はいっ!」

 

『『『『『おう!』』』』』

 

くぅろとシキガミ達の決意が籠った声を聞き、八雲達は向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

その頃、八雲とくぅろ以外のメンバーは既に部室に集まり、それぞれ1番リラックス出来る方法で待機している。

 

リアスと朱乃はソファに座って優雅にお茶を飲み、オープンフィンガーグローブを嵌めた小猫は椅子に座っては本を読み、手甲と脛当てを装備した祐斗は剣の手入れを行い、その反対側に座る一誠と挟まれる位置にアーシアが座り、静かに時間を待っていた。

 

因みに全員の格好は学生服だが、アーシアだけがシスターの服を着ていた。アーシア曰く、これが1番動きやすいらしい。

 

沈黙する空気の中、八卦の陣が部室の床に現れて輝き、八雲とくぅろが現れた。

 

「来たわね八雲、くぅろ」

 

「こんばんは、リアス部長。後、これを……」

 

すると、八雲は自室で読んでいた本をリアスに渡した。

 

「読み終わったのね。レーティングゲームのルールブック」

 

そう……八雲が読んでいたのは、レーティングゲームのルールが記載された本なのだ。因みに、八雲でも読める様に日本語に翻訳された物なので、八雲は内容を理解している。

 

「参考になりそうな所はある程度。それと、全員にもこれを……」

 

そう言って制服のポケットから取り出したのは、くぅろに渡した物より若干薄いデッキケースを人数分。それをリアスに渡した。

 

「闘神符が入ってます。種類は【壁】【動】【隠】の3枚だけ。公式戦じゃあ俺は参加出来ないので、今回だけ使える物だと思ってください」

 

「ありがとう。ありがたく使わせてもらうわ」

 

そして全員にデッキケースが渡ると、八雲とくぅろもソファに座り、開始時間まで静かに待った。

 

そして開始10分前、部室の魔方陣が光り出してグレイフィアが現れる。

 

「皆さん、準備はよろしいですか?」

 

「ええ、何時でもいいわ」

 

リアスの言葉に皆が立ち上がると、グレイフィアが説明を始める。

 

「開始時間になりましたら、ここの魔方陣から戦闘フィールドへ転送されます。場所は異空間に作られた戦闘用の世界。そこではどんなに派手な事をしても構いません。使い捨ての空間なので思う存分にどうぞ」

 

グレイフィアの説明が終わると、一誠がリアスに訊く。

 

「あの、部長。部長にはもう1人、“僧侶”がいますよね? その人は?」

 

「……………」

 

その質問を受けた瞬間、一誠とアーシア、八雲、くぅろ以外のメンバーの様子が変わり、一様に口を閉ざした。

 

そんな中、リアスは一誠に目線を合わせず言う。

 

「残念だけど、もう1名の“僧侶”は参加出来ないわ。何れ、その事について話す時が来るでしょうね……」

 

「は、はぁ……」

 

何か訳ありの様だと感じた一誠は話題を終えると、再びグレイフィアが口を開く。

 

「今回は両家の皆様も他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります。更に魔王ルシファー様も、今回の戦いを拝見されておられます。それをお忘れなき様に……」

 

刹那、部室の緊張感が更に高まるのが分かった。特にリアスが心底驚く様子を見せた。

 

「……そう。お兄様が直接見られるのね」

 

その言葉に一誠は一瞬、耳を疑った。

 

「え? あ、あの、今、部長が魔王様のお兄様って……」

 

「部長のお兄様は、魔王様だよ」

 

戸惑う一誠に裕斗がさらりと答えた。

 

「ま、魔王ぉぉぉぉぉっ!? 部長のお兄さんって魔王なんですか!?」

 

「ええ」

 

即肯定するリアスに祐斗が説明を始める。

 

「サーゼクス・ルシファー……通称“紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)”。それが今の部長のお兄様であり、最強の魔王様。サーゼクス様は、先の大戦で亡くなられた前魔王の1人の後を引き継いだんだ」

 

祐斗の説明で、魔王の名前は現在では個人名ではなく役職として機能していると、一誠達は理解した。

 

「……だから、部長は家を継がないといけないのか」

 

一誠が納得する中、神器の中にいるシキガミ達は驚いた様子で、それでいて誰にも聞こえない声で言った。

 

『……眠ってる間に、そこまで悪魔情勢が変わってたのか』

 

『……魔王も亡くなっていたのか』

 

刹那、全員の目の前に新たな魔方陣が現れると、それを見た全員が一層気を引き締めた。

 

「そろそろ時間です。尚、1度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」

 

グレイフィアに促され、リアスは言う。

 

「行きましょう」

 

リアスを先頭に全員が魔方陣に集結し、光が全員を包み込み、転移が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

『……行ったみたいだね』

 

リアス達が向かった頃、グレイフィアだけしかいない筈の部室に男の声が聞こえた。

 

グレイフィアの隣に、紅髪の人物の顔が魔方陣により映し出されていた。

 

『ふふ、リアスには頑張ってもらいたいね』

 

紅髪の男が口角を上げる中、その男に向けてグレイフィアが口を開いた。

 

「お嬢様に勝ち目があるとは」

 

『ああ、ないだろうね。私は選択肢を与えたに過ぎない。これはリアス自身の判断……グレモリー時期当主としての、ね?』

 

「はい」

 

あっさりとした返答にグレイフィアは静かに同意の意を示す中、紅髪の男は言う。

 

『それにしても、面白い魔力を持つ少年だね』

 

「少年? ああ、人間の方ですか……」

 

『まるで様々な色の宝石を入れた箱の様だった。それに不意討ちとは言え、フェニックスの炎を防いだと報告は貰っているからね。少し興味を持つよ……』

 

「……………」

 

紅髪の男の言葉にグレイフィアも内心納得するが、ある疑問と懐かしさも浮かんだ。

 

(あの少年……ほんの一瞬だけ、昔感じた魔力を発していた。確か、大戦時に――)

 

『グレイフィア』

 

しかし、紅髪の男の声にグレイフィアは考えるのを止めた。そろそろ開始時間だ。

 

「……では、私は仕事に掛かります」

 

『ああ。では、私も観戦しに戻るよ』

 

そして、その言葉を最後に紅髪の男の魔方陣は消えると、グレイフィアも今回のレーティングゲームの審判として、リアス達が向かった空間に放送した。

 

「皆様。このたびグレモリー家、フェニックス家のレーティングゲームの審判(アービター)役を担う事となりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます。我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、御両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します」

 

グレイフィアの説明は続く。

 

「今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学舎『駒王学園』のレプリカを異空間にご用意致しました。両陣営、転移された先が“本陣”でございます。リアス様は旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザー様は新校舎の生徒会室が“本陣”となられます。“兵士”の方は“昇格”をする際、相手の“本陣”の周囲まで赴いて下さい」

 

懐中時計を手にし、グレイフィアは宣言する。

 

「開始のお時間となりました。それでは、ゲームスタートです」

 

バトルフィールドに鳴り響く学園のチャイム。

 

今、リアス達にとっての初試合の狼煙が上がった。

 

 

 

 

 

 

レーティングゲームの舞台である駒王学園を模した疑似空間。その完成度に感心している暇もなく、作戦を立てたリアス達は動き始める。因みに現在、一誠と小猫は体育館でライザーの眷属達と戦闘を始めていた。

 

丁度その頃、拠点となる旧校舎の森の中に4つの人影が移動していた。

 

ライザーの“兵士”……シュリヤー、イル、ネル、ミラだ。

 

他にも2人の“兵士”……マリオン、ビュレントもいたのだが、途中で二手に分かれて行動している。

 

「なんか、やけに霧が出てきたわね……」

 

シュリヤーの言葉に答える様に濃くなる霧。

 

すると、辺りを警戒しながら一歩踏み出した時、前方から魔方陣が出現しては魔力の矢が放たれたが、4人は難なく避けていく。

 

「トラップにしては、やけに子供騙しよね」

 

「初心者らしい一手ね。まあ、簡単に――」

 

刹那、ネルの視界に蒼白い一閃が横切り、すぐ側の木に突き刺さる。

 

先程の魔力の矢ではなく、小さな実物の矢が……。

 

「っ、敵だと!?」

 

その言葉を皮切りに、魔力と実物2種類の矢が連続して射たれ、4人は木の影に隠れた。

 

(クロスボウの矢か……。だけど、いつの間に近付いたんだ?)

 

シュリヤーに戦慄が走る。森に入り、辺りの警戒は怠らなかった。だが、先程の攻撃は明らかに魔力の類いではなく、グレモリー眷属の誰かの攻撃であると考えた。

 

しかし、近くに敵の気配を感知出来ない事にシュリヤーは疑問が浮かび、辺りの警戒を強めた。

 

パンッ!

 

その瞬間、シュリヤーは足に激痛が走り膝をついた。

 

「シュリヤー!?」

 

いきなりの負傷に駆け寄るミラ。シュリヤーの傷口に視線をやると、脛には銃創があった。

 

「っ!」

 

瞬間、ミラ達の耳に辺りの茂みからざわざわと音が届く。ミラ、ネル、イルはシュリヤーに近付いて辺りを警戒するが、相手の姿はない。

 

「ミラ、イル、ネル。私を置いて、あなた達だけでも行って」

 

「そんな!?」

 

ミラは否定する様に悲しむ様な表情をするが、シュリヤーは背中を押す様に強めて言う。

 

「これはライザー様の結婚が掛かった大事な試合……。一刻も早く抜け出して、一気に相手を蹴散らすのよ」

 

主の願いを叶えさせる為、そして確実に相手の戦力を削ぐ為、シュリヤーは自分を犠牲にすると決断した。

 

本当なら、ライザー()と共に勝ち残りたかったのだが、確実に勝つと考え、シュリヤーは私情を挟まず決めたのだ。

 

そして、ミラもシュリヤーの覚悟を悟り、苦渋の決断を言う。

 

「……………分かった――」

 

ズドン!

 

「キャインっ!?」

 

しかし、ミラの言葉はシュリヤーには届かなかった。野球ボール程の大きさがあった“何か”がミラのすぐ横を通り、シュリヤーの顔面に当てたからだ。

 

そのせいか、シュリヤーは鈍い衝撃が顔に直撃した後、何処かの顔の骨が折れると共に気絶し、体が光に包まれては消えてしまった。

 

『ライザー・フェニックス様の“兵士”1名、リタイア』

 

審判のアナウンスが鳴り響く。それが聞こえた瞬間、グレモリー眷属は歓喜し、ライザー眷属は驚愕した。

 

それも束の間、再びミラ達に矢と銃弾が乱射された。

 

「くっ……! イル、ネル! すぐに敵本陣へ向かうわよ!」

 

「は、はいぃぃぃっ!」

 

「きゃあぁぁぁっ!」

 

前方の魔力の矢に、後方の矢と銃弾の雨を掻い潜りながら、ミラ達は旧校舎へと向かうのだった。

 

「……………ふぅ」

 

そんな中、丁度シュリヤーが消えた場所に八卦の魔方陣が現れ、そこからくぅろが姿を現してはミラ達の背中を見つめていた。どうやら、【隠】の闘神符で姿を消していた様だ。

 

「こちらくぅろ。“兵士”1名を撃破。尚、残りの“兵士”をそちらへと誘導させました、御主人様……」

 

 

 

 

 

 

『先程向かわせたシキガミ達も、距離を取りながら“兵士”達を追い掛けています。もうすぐ抜ける頃ですので、作戦通りに……』

 

イヤホンマイクタイプの通信機器から聞こえるくぅろの言葉に、八雲は微笑む。

 

「そうか、分かった。――引き続き、くぅろは作戦通りに“各ポイント”へ向かってくれ。先程、祐斗も“兵士”2人と戦闘に入った。俺も“兵士”を倒し次第、敵本陣に向かう」

 

そして八雲の声にくぅろは「了解」と言い通信を切ると、八雲は前を見据える。

 

森を抜けたミラ達が現れた。

 

「あれが敵本陣ね……」

 

そびえ立つ旧校舎を目前に捉えたミラ、ネル、イル。すぐに“昇格”しようと近付いた瞬間、それは起きた。

 

「え……?」

 

「なっ!?」

 

「嘘っ!?」

 

チャンスと思った直後だった。旧校舎全体が歪みだし、ミラ達の目の前で溶ける様に姿を消したのだ。

 

「上手く誘われたみたいね……」

 

「その通り」

 

戸惑うミラの言葉に答える様に、八雲は霧に紛れ歩み寄り、【隠】の闘神符を解除しては姿を現した。

 

「っ! あなたは確か……」

 

敵意を増した視線を向けるミラ達に対し、何時もの様に敬礼の様なポーズをして八雲は名乗る。

 

「改めまして、吉川八雲だ。――それと、あんた達の行動は森に入った時点で気付いたよ」

 

言い続けながら、八雲は【壁】の闘神符を出す。

 

「既にここは俺達の領域でね。祐斗がいる場所同様、閉じ込めさせてもらう」

 

そう言って八雲は【壁】の闘神符を頭上へ投げると、八雲とミラ達を閉じ込める様に四方から一筋の光が走り、障壁が完成された。闘神符による結界だ。

 

これがリアス達が立てた作戦の1つ。

 

分断した敵を八雲か祐斗がいる場所までおびき寄せる様にトラップを仕掛け、各自で倒す狙いなのだ。

 

「くっ、トラップに気を取られすぎた……」

 

初歩的なミスを犯した事に歯噛みをするミラ。だが、結界に閉じ込められては手遅れだ。

 

「リアス部長の眷属はただでさえ人数が少ないからな。足らない部分は(ここ)で補った」

 

八雲が人差し指でこめかみを叩く行為が癇に障ったのか、ミラ達が目を細めた瞬間、それに気付く。

 

「ミラ。お姉ちゃん。あいつの手に着けてるのって……」

 

「神器……!」

 

「そうか……そういう事だったのね……」

 

八雲の“二十四気の神操機”を見てミラは納得した。自身の棍を破壊したのは、神器の力によるものだと……。

 

だが、棍の破壊が神器によるものではない事を、後にミラは知る事となる。

 

「さて、と。それじゃあ()ろうか。さっさと終わらせて、前に行きたいんでね」

 

戦う気満々の視線を向ける八雲にイルとネルは言う。

 

「もしかして、3対1で勝てると思ってるの?」

 

「舐めちゃダメだよ。私達、人間のあなたより強いもん」

 

「……確かに、1人じゃ辛いな。だから……」

 

右腕を突き出しながら、八雲は闘神符を1枚前に投げた。

 

「シキガミ、降神!」

 

そして、警戒を強めるミラ達の前に、2つの“窓”が現れては同じ数のシキガミが現れた。

 

「白虎のコゲンタ、見参!」

 

1人目。西海道虎鉄を構えるコゲンタ。

 

そして2人目の登場が、これまた異質だった。

 

鋼鉄の“窓”から現れたのは、カブトムシに似た機械人的な外見のシキガミ。ロボットアニメのカタパルト発艦シーンの様に飛び出し、“某自由の機動戦士”と同じ決めポーズで堂々と名乗る。

 

「赤銅のイソロク、見参!」

 

現れたシキガミ……コゲンタとイソロクを見た3人は驚愕する。

 

「召喚獣!?」

 

「“竜の手”だと思ったけど、全く違うの?」

 

「イル、ネル、落ち着きなさい。相手が誰であろうと、私達が相手よ!」

 

改めて棍を構えるミラに言われてイルとネルも愛用のチェーンソーを出す中、八雲達はそれぞれの敵と対峙しようとした。

 

「これで同等だ。2人共、気を付けろよ」

 

コゲンタとイソロクに言葉を掛けながら、ミラに対峙する八雲。

 

「分かってるでごわす」

 

「八雲も頑張れよ」

 

八雲の言葉に答える様に、コゲンタとイソロクはネルとイルに対峙した。

 

「……そういや、こうして戦うのは初めてだな。前はあんたがイッセーに一撃入れようとして、俺が邪魔したからな」

 

「あなたはここで倒す。この前ダメになった私の棍の礼、返してもらう!」

 

「棍の礼? あぁ、あの時の……か!」

 

それを皮切りに、八雲とミラは各々拳と棍を構え、同時に駆け出した。

 

目前の敵に向かい、己の持つ力で倒す為に……。

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