ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第23話:発動、禁手〈バランスブレイカー〉

新校舎に侵入した一誠は、リアスとアーシアのいる屋上へと目指し、廊下を走っていた。

 

「“昇格”! “女王”!」

 

“昇格”し、一誠の体に“女王”の力がみなぎる。

 

『ライザー・フェニックス様の“僧侶”1名、リタイヤ』

 

廊下を一気に走り抜いていると、最後のライザー眷属であるレイヴェルの脱落を知らせるアナウンスが聞こえた。

 

……実は、レイヴェルはグレモリー眷属に倒された訳でもなく、自らリタイアしたのだ。

 

理由は勿論、ライザーが負ける訳がないと自信を持っており、観戦だけでは何なので最後はライザーに任せたのだ。

 

その際、くぅろに弄られて縦ロールから強制的にツインテールにさせられた髪に、若干頬を染めて戸惑いながらもその場から消えたのだが、そんな姿は祐斗にしか分からない。

 

話を戻そう。

 

「あがっ!」

 

唐突に足の感覚が無くなり、激しく転けてしまった一誠はある事に気付く。

 

体力の限界が、近付いているのだ。

 

「くっ……」

 

しかし、今の一誠に休む暇もない。

 

「……そぉぉぉぉぉっ!!」

 

気合いで立ち上がり、上へ上へと駆け上る。

 

(待ってください……部長!)

 

やがて、屋上の扉が見えてきた。止まる事なく一誠は勢いに任せて扉を開け放つ。

 

眼前で対峙するリアスとライザー。そんな2人と少し離れた場所で、オロオロとしながらアーシアが見守っている。

 

「イッセーさん!」

 

一誠の登場に気付いたアーシアの歓喜の声で、リアスとライザーの視線が一誠に集中する。

 

「ドラゴンの小僧か? ここまで来るとはな。レイヴェルの奴、見逃したのか」

 

舌打ちするライザー。だが、すぐに嫌らしい笑みをリアスに向ける。

 

「リアス。いい加減、投了(リザイン)したらどうだい? これ以上は他の場所で見ているキミのお父上にも、サーゼクス様にも格好がつかないだろう。キミが俺を倒す事なんてありえない」

 

数ではリアス達が勝るにもかかわらず、余裕の表情を浮かべるライザーが諭してくる。

 

「黙りなさい、ライザー。私は決して諦めたりしない! “王”である私が倒れない限り、何度でもあなたを消し飛ばすわ!」

 

激高したリアスが魔力の弾をライザーの顔面に目がけて放つ。避ける素振りを見せないライザーはそのまま直撃を食らい、頭部が消し飛んだ。

 

「やった!」

 

しかし、一誠が喜んだのもつかの間、消し飛んだ部分から炎が立ち上ぼり、形を成していく。

 

炎が次第に顔となり、髪となり、ライザーの頭部は元の状態に戻り、何事もなかったかのように首をコキコキと鳴らすライザーを見て、一誠の脳裏にひとつの単語が浮かび上がる。

 

“不死身”。

 

初めて目撃するフェニックスの再生能力に戦慄を覚えるが、一誠はリアスの下に走り、ライザーとの間に入った。

 

「アーシア!」

 

一誠が呼ぶと、アーシアが恐る恐る近づいてくる。

 

その時、ライザーは移動するアーシアを狙い撃ちすらしなかった。余裕な態度に一誠は歯噛みするが、同時にその余裕がありがたく思えたのも事実だった。

 

アーシアの手がリアスと一誠に触れると、緑の淡い光が、優しく2人を包み込む。すぐに体から痛みが消えていくのが分かった。

 

体中の傷が引いていき、失い掛けていた感覚が戻ってくるが、傷は癒えても体力は戻らなかった。

 

(それでも、動ける分マシだ!)

 

立ち上がり、一誠はアーシアに言う。

 

「俺を治療したらアーシアは下がってろ」

 

「っ!」

 

驚愕するアーシア。一誠にその様な事を言われると思わなかったと分かる表情だ。

 

「アーシアが残っていれば、俺と部長、後からくる皆を癒す事が出来る。アーシアは俺達の生命線なんだ」

 

沈痛な面持ちで何かを言いたげなアーシア。だが、すぐに口を閉ざしては後ろへ下がった瞬間だった。

 

アーシアの悲鳴と共に、見知らぬ魔方陣がアーシアの足元に出現したのを一誠は見た。そして魔方陣から変化が起こり、赤い結界がアーシアを捕縛した。

 

「悪いな。あまり長引いてもキミらがかわいそうだ。取り敢えず、回復役の“僧侶”を封じさせてもらった。その魔方陣は並大抵の力じゃ壊れない」

 

ライザーが淡々と言う中、一誠は捕らわれたアーシアを見て悔しむ。

 

だが、文句を思っていられない。

 

「部長。もうすぐ木場と朱乃さん、吉川、くぅろちゃんも来てくれる筈です。でも、アーシアは捕らわれてしまった。長期戦に入ったら、そんな状況は最悪です。でも……」

 

一誠は口の端を吊り上げ、高々と言う。

 

「諦めないっス。拳が握れる限り、部長と一緒に最後まで戦います!」

 

「よく言ったわ! イッセー、一緒にライザーを倒すわよ!」

 

「はい、部長!」

 

「あらあら。お二人だけで、ですか?」

 

「「っ!?」」

 

言葉を掛けられるリアス達の目の前に、極太な雷が轟音と共にライザーへと直撃した。

 

「くっ、この技は――」

 

雷に意識が向いた直後、ライザーは背後から斬り付けられて右腕を奪われた。

 

そして、ライザーに傷を負わせた者達が、リアス達の前に現れる。

 

「部長、イッセーくん。僕達抜きで戦おうなんて水臭いよ」

 

「相手はフェニックス。微力ながら、私も力を貸しますわ」

 

「木場!? 朱乃さん!?」

 

「あなた達……」

 

祐斗と朱乃。2人の眷属の登場により、リアスは喜びの涙を流しそうになった。

 

だが、それを流すのは今ではない。このラストバトルに勝利しなければいけないのだから。

 

涙を堪えて、リアスは高らかに命令する。

 

「ええ! 皆でライザーを倒すわよ!」

 

「「「はい!!」」」

 

主の命令に眷属達も戦意を高揚する直後、それは起こった。

 

【Burst】

 

「イッセー!?」

 

「「イッセーくん!?」」

 

“赤龍帝の籠手”からの音声と共に、一誠は全身が鉛のように重くなるのを感じ、宝玉も機能が停止した様に光が消える。

 

「お前はとっくに限界だったんだよ。リアスの“兵士”」

 

その場で崩れ落ちる一誠に、腕を再生させたライザーが声を掛けた。

 

“赤龍帝の籠手”の能力は、想像以上に宿主を疲弊させる。今になって強化した反動が返ってきたのだ。

 

ライザーを目前に、血反吐を吐きながら遂に崩れ落ちる一誠。一瞬だけ、ライザーがこちらを嘲笑う様に見下すのが見えた。

 

「イッセー!」

 

リアスの声がぼやけて聞こえてくる。

 

立ち上がろうとしても、体が全く動かせず、そのまま疲労による睡魔が一誠の意識を奪った。

 

 

 

 

 

 

一誠は赤い夢を見ていた。

 

周りに灼熱の炎が揺れている。

 

「ここ、は……?」

 

『十数日振りだな、小僧』

 

何者かの声が響く。

 

だが、一誠は声の主の正体がすぐに分かった。

 

燃え盛る炎に紛れ、目の前に現れたのは巨大な怪物。

 

全身を覆う鱗はマグマを彷彿とさせ、広げた翼が圧倒的な存在感を一層引き立たせている。

 

「お前は……あの時のドラゴン!」

 

目の前の怪物……ドラゴンが、口の端を釣り上げて話し掛ける。

 

『今回はよく頑張った方だが、今のままじゃお前は何時まで経っても強くなれない』

 

本質を突かれた正論。一誠は言い返せない。

 

『お前はドラゴンを身に宿した異常なる存在。無様な姿を見せるなよ。そんなんじゃ、“白い奴”に笑われちまう』

 

「白い奴?」

 

『負けるのはいい。死ななければ敗北も力の糧になる。だが、それは次に勝ってこそ意味のあるものだ。これから勝って勝って勝ち続ければ……いずれ、奴はお前の前に現れる。そうさ、俺とあいつは戦う運命にあるからな』

 

語る内容がいまいち理解出来ない中、ドラゴンは問い掛ける。

 

『兵藤一誠。お前に問う。何を望む?』

 

「……どういう意味だ?」

 

『言葉通りの意味だ。お前は今、何を欲する?』

 

唐突な問い掛けだが、すぐに答えは出た。

 

「部長と仲間達が、こんなどうしようもない俺を信じてくれてるんだ。――俺は、そんな皆を……部長を助けたい! フェニックスだろうが何だろうが関係ない。俺が欲しいのは……目の前に立ちはだかる敵をぶっ飛ばす力だ! だから……………俺に力を貸しやがれ!」

 

思った事をそのまま目の前のドラゴンにぶつけた一誠。お互い沈黙が続いたが、ドラゴンは向けられる鋭い視線を見つめ返しては全てを悟った。

 

『いい覚悟だ。合格だ。俺の力、その本来の使い方をお前に教えてやる』

 

すると突然、一誠の左手に“赤龍帝の籠手”が現れた。

 

ドラゴンが翼を羽ばたかせては炎の勢いが増すと同時に、それに反応する様に籠手の宝玉から強烈な光を放った。

 

「こ、これは……?」

 

籠手の変化に戸惑いを見せる一誠に、ドラゴンが語り掛ける。

 

『お前が望めば俺は何時如何なる時でも力を分け与える。だが、力を手に入れるにはそれ相応の代償を払う事になる。なに、犠牲に似合うだけの価値は与えてやるさ。お前を嘲笑った連中に見せつけてやればいい。“ドラゴン”って存在をな』

 

ドラゴンが不気味な笑みを向けてくる。

 

「お前は一体……?」

 

『ああ、まだ名を名乗ってなかったな。いいだろう……』

 

不気味な笑みから一変、目の前のドラゴンが勇ましく、高らかに言い放った。

 

『我が名は『赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグ。来るべき日の為に強くなれよ、相棒』

 

目の前でドラゴン……ドライグが含み笑いを向けたのを最後に、燃え盛る炎の流動が一誠の意識を夢から現実に引き戻した。

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

フィールド全体に一誠の咆哮が轟いた。その叫びと呼応する様に、“赤龍帝の籠手”の宝玉から赤い閃光が放たれた。

 

「な、なんだ…!?」

 

「イッセー?」

 

「イッセーくん?」

 

「あらあら……?」

 

倒れたと思った矢先の突然の変化に、その場にいた者達が驚愕を露にする。

 

対する一誠は体中に力が駆け巡るのが分かり、そのまま立ち上がると閃光を放つ籠手を天高く掲げる。

 

【Dragon booster second Liberation!!】

 

初めて聞く音声が籠手から発せられ、左腕に変化が訪れる。

 

甲の部分にあった宝玉の他に、もう1つの宝玉が肘の部分に現れ、全体のフォルムも赤い装甲が追加された事により少しばかり変わっている。

 

しかし、それでも変化は止まらなかった。

 

「もっとだ! もっと、輝きやがれぇぇぇぇぇッッ!! オーバーブーストォッ!!」

 

【Welsh Dragon over booster!!!!】

 

フィールド全体が赤い光に覆われ、一誠の体が真紅のオーラに包まれる。

 

そして現れたのは、ドラゴンの姿を模した赤い全身鎧(プレートアーマー)を纏った一誠。

 

左手の籠手と同じものが右手にも装着されている。

 

頭部すら覆う鋭角的なフォルム。

 

左手と同じ右手にも装着された籠手。

 

両手の甲の他、両腕、両肩、両膝、胴体中央に出現した宝玉が輝く。

 

背中にはロケットブースターの様な推進装置が付いている。

 

『どうやら上手くいった様だな』

 

一誠の脳裏にドライグの声が響いた。

 

『先に言っておくが、この姿でいられるのは10秒だけだ。それ以上はお前の体が保てん』

 

「十分だ! それだけあれば、俺は……俺達はあいつをぶん殴れるっ!」

 

赤いオーラを振り払い、一誠がライザーを睨み付ける。

 

「鎧だと!? まさか、赤龍帝の力を鎧に具現化させたのか!?」

 

赤い兜を通してライザーがさらに驚愕をあらわにしていた。

 

「これが龍帝の力! “禁 手(バランスブレイカー)”、『赤 龍 帝 の 鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』! 俺を止めたきゃ魔王様に頼み込め! 何しろ、“禁じられし忌々しい外法”らしいからな!」

 

【Ⅹ】

 

発せらた10秒間の無敵モードのカウントダウンに、一誠が動き出した。

 

両の掌の間に生み出した魔力の塊を一気にライザーに撃ち放つ途端、魔力の塊が巨大な帯状に肥大化してライザーに迫る。

 

「デカい!」

 

「っ!?」

 

その量の魔力に一誠自身も驚き、ライザーも受け止めることをやめて避ける体勢を作り出していた。その威力は先程グラウンドで放ったドラゴンショットの比ではなかった。

 

【Ⅸ】

 

一誠はライザーが避けるであろう先に向かって飛び出す。鎧の背部にある噴出口から魔力が噴き出し、一誠に爆発的な速度を与えた。

 

「ぐ……っ!」

 

体に掛かるGの影響でまともに動けないまま、ライザーとの距離を一気に詰めていく。

 

避ける先に一誠が猛スピードで迫ってきたせいか、ライザーは驚き、対応も出来ない状態で身構えていた。

 

(チャンス!)

 

そう思った一誠は攻撃しようとしたのだが制御が効かず、一誠は気が付くとライザーの遥か頭上にいた。

 

「なんだ、この力とスピードは!? 本当に不愉快な小僧だぜ!」

 

【Ⅷ】

 

一誠を見上げるライザーが警戒を強める。

 

「赤龍帝の小僧! 悪いが手加減しないぜ! 認めたくないが、今のお前はバケモノだ! 主であるリアスの前で散れぇぇぇぇぇっ!」

 

凄まじい魔力のオーラを覆い、咆哮を上げるライザーの背中に巨大な炎の両翼が出現する。ライザーの全身に炎が渦巻き、周辺を激しい熱気が包み込む。

 

眼下でリアスと朱乃がアーシアと祐斗を庇う様に障壁を産み出していたのが見え、その危険度を察した。

 

「火の鳥と鳳凰! そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火! その身で受けて燃え尽きろッッ!」

 

眼前に広がるあり得ない質量の炎。そのシルエットは宛ら火の鳥そのものだ。

 

『フェニックスの炎はドラゴンの鱗にも傷を残す。食らい続けるのは得策じゃない』

 

その言葉に小さく頷く一誠。だが、リアスが見ている目の前で、一誠は決意した。

 

【Ⅶ】

 

「てめぇのチンケな炎で、俺が消える訳ねぇだろぉぉぉぉぉっ!」

 

吼えながら背中の噴出口から魔力の火を出す一誠と火炎に包まれたライザーが、お互い目掛けて距離を詰める。

 

そして、全力を込めたお互いの拳がお互いの顔面に鋭く入り込んだ瞬間、力と力が生み出した波動がフィールド全体を振動させた。

 

新校舎の上空、一誠とライザーの力比べが始まった。

 

一撃一撃を食らう度に、一誠の全身へ重い衝撃が響き渡る。ライザーの拳から伝わる業火の炎熱と本来の実力差を感じてしまい、恐怖を感じてしまった。

 

「怖いか! 俺が怖いか! 当たり前だ! お前はその鎧が無ければ、俺の拳が届く以前に業火の熱で消失している! お前からその籠手を取ったら、お前は何の価値もないクズだ!」

 

【Ⅵ】

 

「ゴバッ!」

 

クロスカウンターの要領でお互いの顔面に鋭く入り込んだ瞬間、一誠の口から鎧の隙間を縫い、大量の血が吐き出された。

 

その様子を見てライザーがにやける中、同時に一誠も兜の下でにやけ、見せつける様にライザーの眼前で握った拳を開く。

 

「っ!?」

 

掌にあったソレを見た途端、ライザーの表情が余裕から戦慄に変わった。

 

一誠の掌にあったのは、米粒大の魔力の塊。

 

すぐに回避行動を取ろうとするが、先程の一撃で体が大きく仰け反っていた為、間に合わなかった。

 

「ドラゴン……ショットォォォォォッ!!」

 

巨大化したドラゴンショットが一瞬でライザーを飲み込み、そのまま直下する魔力の塊がグラウンドを大きく抉った。

 

肩で息をしながら、一旦着地して様子を窺う一誠。

 

すると、煙の中で睨み付けるライザーと目が合った瞬間、ライザーは一誠の変化に気付く。

 

「貴様……!」

 

無機質の質感に見える全身鎧。

 

その一部が……左腕が、まるで生きているかの様な脈動を続けていた。

 

「籠手に宿るドラゴンに、自分の腕を支払ったのか!?」

 

「ああ、そうだ」

 

“相応の代償”。

 

ドライグの絶大な力を使う代償として……禁手をする代償に、一誠は自身の左腕を売り払ったのだ。

 

「そんな事をすれば、もう2度と元の腕には戻らない! それが分かっているのか、お前は!?」

 

「それがどうした」

 

【Ⅴ】

 

カウントが迫る中、一誠は言う。

 

「俺みたいな奴の腕1本で、部長を勝たせてあげられるんだぜ? こんなに安い取り引きは無いだろう? その為なら……」

 

ドラゴンの腕を突き出し、一誠は叫ぶ。

 

「部長の為なら、俺はどんな奴だってぶっ倒してみせる! このブーステッド・ギアで! 俺の唯一の武器で! 部長を守ってみせる! 俺は部長の……最強の“兵士”になるんだ!!」

 

それは誓い。

 

その発言にリアスは人知れず頬を染め、ライザーは目元を引きつらせていた。

 

「イカれてるな……。“兵士”の力でよくここまでやったと褒めてやろう。本当によくやったよ、お前は。正直、ここまでやれるとは思わなかった」

 

飛翔しては賞賛を送るライザー。その表情は真剣なもので、すぐに冗談ではないと分かった。

 

「怖いな。初めて俺はお前に心底畏怖した。――だから! ドラゴンの恐ろしさを教えてくれた事に敬意を表して、俺は全力でお前を倒すっ!」

 

ライザーが叫び、圧倒的質量の熱気が集まると、頭上に巨大な火の玉を形成する。

 

距離が離れているにもかかわらず、その熱気が伝わってくる。

 

【Ⅳ】

 

「いくぞ! ライザー・フェニックス!」

 

これで決着を付けようと、一誠は残った魔力全てを込めた拳を握り締めては一気に駆け出した瞬間、それが起こった。

 

【Count over】

 

一誠の体にかつてない程の脱力感が押し寄せ、盛大に転倒した。

 

何が起きたか分からないでいると,一誠は自分の変化に驚愕を露わにした。

 

「よ、鎧が消えた……!?」

 

一誠の全身を覆っていた鎧が消えており、抜き身の姿と左腕の“赤龍帝の籠手”だけが残されている。

 

「まだ時間じゃないのに、どうしてだ!?」

 

『残念ながら、今のお前の基礎能力ではこれが限界だ』

 

一誠の精神世界でドライグの声が響いた。

 

「俺が弱いからか? 何で俺は、肝心な場面で……!」

 

自分の不甲斐なさに悔やんでも悔やみきれない一誠を、ドライグが語り掛ける。

 

『鎧が解除される瞬間、僅かだがドラゴンの力を宝玉に移せた。だがそれでも、フェニックスの再生能力に対抗するには及ばないだろう』

 

「それでも、俺は……………絶対に、諦めない!」

 

意識を現実に戻し、震える足に踏ん張りを利かせて立ち上がる。

 

「どうやらこのゲーム、勝利は俺の様だな!」

 

ぼやける視界にライザーが作り出した業火の火炎弾が映る。

 

「終わりだ、小僧っ!」

 

ライザーが放った火炎弾が迫るが、今の一誠に攻撃を避ける余力はなかった。

 

(くそっ! ここまで――)

 

内心、諦めを抱いた一誠。だが――

 

ドオオオオオオオオンッ!

 

「え……?」

 

後ろから放たれた赤黒い巨大な魔力の塊が火炎弾と衝突し、激しい爆音と共に相殺という結末を迎えては消え、代わりに辺りに吹き荒れる暴風が一誠に迫って来た。

 

「イッセーくん!」

 

耐え切れず倒れそうになる。だが、駆け付けた祐斗が一誠の体を受け止めた。

 

「木場……?」

 

見上げると、先程の魔力で自分を助けた人物が誰なのか自ずと予想出来た。

 

紅の髪をなびかせて優雅に舞い降りるリアス。先程の魔力は、リアスによるものだ。

 

静かに歩み寄ったリアスは一誠の頬に手を当てた。

 

「イッセー、大丈夫?」

 

「部長……」

 

リアスの顔を見る。今、リアスは慈しむような視線を一誠に向けていた。

 

「すいません。もう少しで……あいつを倒せそう、だったのに、俺……」

 

「いいのよ。よく頑張ったわ、イッセー。ありがとう……」

 

一誠に優しい笑顔を向けた後、リアスは立ち上がり眼前の敵を鋭く睨み付ける。

 

「後は、私達に任せなさい!」

 

仲間に、そして自分に誓いを立てる様に、高らかに叫んだ。

 

しかし、その様な光景をライザーは鋭い視線を向けて言った。

 

「これで決着としよう、リアス! この業火で、キミ達を一気に消し炭にしてやろう!!」

 

今ある魔力の全てを、一撃で仕留める為に作り上げた炎の波動としてライザーは放った。

 

「俺の……勝ちだぁぁぁぁぁっ!!」

 

例え魔剣が貫こうと、雷が起きようと、滅びの魔力が来ようとも、その波動は止まる事なく迫る中、“ソレ”は起こった。

 

「っ!?」

 

「これって……!」

 

突如、フィールドに立ち上がる青い光の柱。

 

5本の光がそれぞれ繋がり、新校舎を中心に“五芒星の青い結界”が作られた。

 

「やっと来たわね!」

 

「なっ、何だこの光は!?」

 

結果、リアス達は歓喜の表情を浮かべ、ライザーは驚愕の表情を浮かべた。自分が持つ最強の一撃の波動……フェニックスを模した炎が徐々に小さくなり、遂にはリアス達の目前で消えてしまったのだ。

 

そして、ライザーも異変に気付く。

 

ライザー自身が持つ魔力が発揮出来ず、遂には炎の翼も消えてしまい、ライザーは着地した。

 

「俺の翼が!? この光、まさか――」

 

しかし、ライザーは最後まで喋る事はなかった。

 

「「どりゃあああああっ!!!!」」

 

何故なら、八雲とくぅろが落下しながら真下にいるライザーに向けて、八雲はバンテージ状態の拳で殴り、くぅろは闘神銃と同じ要領で創り上げたナイフで背中を切り付けたからだ。

 

「ウボァァァァァッ!?!?」

 

聖書の力が付加された拳。“二十四気の神操機”が装着されていないので拳の威力は小さいが、それでも聖書の力はライザーに高い力を発揮させ、殴られた箇所を押さえながら悶え苦しんでいた。

 

あまりの展開に目を丸くするリアス達。

 

「八雲くん。もう体は……」

 

そんな中、朱乃が心配する様に話し掛けると、八雲は笑みを浮かべては腕を掲げ、天を指差しながら宣言する。

 

「符力共々完全回復! 俺は今、戦いたい思いが爆発しそうでヤバい位です!!」

 

その表情からリアス達が今まで見た事のない程に、八雲の戦意が高揚しているのが分かった。

 

そんな中、苦しみから解放されては立ち上がっているライザーが八雲を睨み付ける。

 

「くっ! 貴様には、数日前の借りを返さないとな……下等種族が!!」

 

「上級悪魔には効果が薄いか。でもまあ……」

 

そう言い、八雲は“二十四気の神操機”を出現させては笑った。

 

「ここからは俺達の戦舞台(ステージ)だ! シキガミ、降神!」

 

降神させたのは、八雲の相棒とも言ってもいいシキガミ。

 

「白虎のコゲンタ、見参!」

 

コゲンタの登場にライザーは一瞬驚くが、すぐに憎悪を込めた視線を向けては、八雲と同時に言った。

 

「叩きのめす!!」

 

「思う存分、()()合おうか!!」

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇ!!」

 

瞬間、3人は同時に走り出した。




さーてとっ、次で2章終わるかな?
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