ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第28話:復讐の騎士〈ナイト〉

元士郎との試合を終えて、昼休み。

 

あの後、八雲は元士郎と交わした契約書で『何でも1回だけ命令を聞く権利』を得たのだが、八雲はすぐに権利を使わず、何時か使うと言ってはリアス達の所へ行ってしまったのだ。

 

その際、元士郎はホッとしたと同時に権利がどのタイミングで使われる心配に駆られてしまったが、その権利が数日後に使われる事をまだ知らない。

 

そして現在、オカルト研究部メンバーは部活対抗戦の為に集合していたのだが、アーシアが何処かに行ってしまい、未だに集合していない状況になっていた。

 

「お、お待たせしました……」

 

「アーシア。何処に行って……」

 

刹那、やって来たアーシアを見た一誠は固まってしまった。

 

「……何故にブルマ?」

 

そう……。八雲の言葉通り、アーシアは学園指定のハーフパンツからブルマに変わっていたのだ。

 

「ア、アーシア!? その格好は一体……」

 

固まっていた一誠が口を開くと、アーシアは恥じらう様に体を動かし、顔を真っ赤にしては言った。

 

「……あ、あの、桐生さんから聞いたんです。ドッジボールの正装はブルマだって……。ダメ、ですか?」

 

ズキューーン!!

 

すると、恥ずかしそうに上目遣いで訊いてくるアーシアの姿に、一誠の心は弾丸を撃たれた様な衝撃を受けては萌えたのだった。

 

「ううん、最高だよ、アーシア。ありがとうございます。そして、ありがとうございます!」

 

一誠がアーシアに感謝する中、八雲はそんなアーシアの格好を見ては思う。

 

(さすが桐生()と言ったところか。しかし、後でアーシアには誤解を解いておかないと……)

 

だが、アーシアをジッと見ていたのがまずかった。

 

「あらあら、八雲くんもブルマに興味がありますの?」

 

「いや、ブルマはくぅろが鍛練時に着てるので……って、朱乃先輩!?」

 

何故なら、反応しては振り向こうとした瞬間、朱乃が八雲を背中から抱き付いたからだ。そのせいか、背中に伝わる朱乃の胸の柔らかさに八雲は顔を赤くした。

 

「えええ、えっと……何故に抱き付くんですか?」

 

「うふふ。いえ、別に深い意味はありませんわ。ただ、興味があるのなら、私も着替えてあげようかと思いましたの」

 

「マジですか!?」

 

朱乃の言葉に反応する一誠。だが、その直後に膨れっ面のアーシアに足を踏まれたのだった。

 

「それで、八雲くんはありますか? ブルマ」

 

「え、えっと、興味はその……」

 

『八雲も思春期男子だもんねー。でも、興味としてはチャイナミニが――』

 

「おいナナヤァァァァァッ!!」

 

抱き付かれたまま八雲は困惑する。何故、朱乃がこの様な行動をするのか分からないからだ。

 

後に度々起こす朱乃の行動が、自分を振り向かせる為の小さな嫉妬心だと理解するのは2人が付き合ってからなのだが、それはまだ長い先のお話……。

 

「朱乃さん! 御主人様が困ってますから離してください!」

 

「もう少しだけいいじゃないですか」

 

「私が嫌なんです!」

 

「はいはい。そろそろ始めるわよ」

 

くぅろが朱乃を剥がそうとする中、リアスは注目させる様に手を叩いた。しかし、未だに朱乃とくぅろが止めなかったので、最終的に小猫が『戦車』の怪力で2人を八雲から離したのだった。

 

「あなた達、気合いを入れなさい。ドッジボールと言えど、チーム一丸となって勝ちにいくわよ!」

 

『『『はい!』』』

 

気合いを込めた返事をする八雲達。すると、一誠が何かを取り出した。

 

「皆! これを巻いてくれ! 夜なべして作ったんだ!」

 

取り出したのはハチマキ。その中央には『オカルト研究部』と刺繍された、一誠のお手製だった。

 

「イッセーって意外に器用ね。上手く出来てるわ」

 

「はい。イッセーさんが皆さんと一丸となって勝負に挑もうとして作ってくれたのです」

 

「……予想外の出来映え」

 

「確かに、他の部活動ではチーム一丸になる為の物を着用してますね」

 

「うふふ、そうですわね。帽子だったり、ユニフォームだったり」

 

リアス、アーシア、小猫、くぅろ、朱乃と順にハチマキが渡される中、八雲もハチマキの出来映えに感心しては羨ましく感じた。

 

「凄いなイッセー。簡単な裁縫でも、俺はダメダメだから羨ましいぜ。なぁ、祐斗」

 

「……え。う、うん。そうだね」

 

しかし、祐斗は未だにボーッとしてた様で、八雲は肩に手を置いては言う。

 

「しっかりしろよ。試合に集中しないと、負けちまうぞ」

 

「……そうだね。負けると全てが無駄になる……。勝つ事が大事だ……」

 

意味ありげな口調で祐斗はハチマキを巻くと、ちょうどアナウンスが流れてはリアス達はグラウンドへと向かった。

 

初戦は野球部。オカルト研究部の戦いの幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

それから時間が経過し、球技大会が終了した放課後。

 

あれからリアス達オカルト研究部は、途中一誠の負傷でメンバーが少なくなる事態もあったが、リアス達悪魔の強力な投球や八雲の投げた変化球等で一方的に攻め、途中から一誠も復帰し、結果はオカルト研究部の優勝となり球技大会は終わりを迎えたのだ。

 

そして現在。球技大会の片付けを終えて八雲達は部室に集合していた。

 

外は予報通りに雨が降り、雨音と一緒に無数の雨粒が部室の窓ガラスを叩く中、パンッと外の雨音に混じって部室に乾いた音が響いた。

 

リアスが祐斗の頬を叩いたからだ。

 

「どう? これで少しは目が覚めたかしら?」

 

ドッジボールには優勝出来た。だが、祐斗だけは非協力的な所が目立ち、試合中もリアスは怒っていた。もしリアスが怒っていなければ、八雲や一誠が怒っていただろう。

 

「……」

 

リアスに頬を叩かれた祐斗は何も返さなかった。だが唐突に、先程まで無表情と無言で通していた祐斗がニコニコ顔になった。

 

久方振りに見た八雲は懐かしく思うと同時に、何故かその笑顔にナニかを覚えた。

 

「もういいですか? 球技大会も終わりました。もう練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね? それと、少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした」

 

「木場、お前マジで最近変だぞ?」

 

「キミには関係ないよ」

 

さすがに祐斗の変貌ぶりを無視する事に限界を感じた一誠が訊くが、祐斗は作り笑顔で冷たく一蹴した。

 

「関係ないって……さすがに俺だって心配しちまうよ」

 

一誠の言葉に祐斗は苦笑する。

 

「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔の生き方だよ? まあ、主に従わなかった僕が今回悪かったと思っているよ」

 

祐斗の言葉に一誠は立場が完全に逆転している事に戸惑いを覚えた。

 

「チーム一丸で纏まっていこうとしていた矢先でこんな調子じゃダメだろ。これからもお互い足りない部分を補う様にしなきゃダメなんじゃねぇか? 仲間なんだからさ」

 

その言葉を聞いた祐斗は、今度は表情を陰らせた。

 

「仲間か……。相変わらずキミは熱いね。――イッセーくん、僕はね、ここのところ、基本的な事を思い出していたんだよ」

 

「基本的な事……?」

 

「ああ、そうさ。僕が何の為に戦っているのかを、ね……」

 

「部長の為じゃないのか?」

 

「違うよ」

 

祐斗から笑顔が消えて、地の底から響くような声色が室内に木霊した。

 

「僕は復讐の為に生きている。『聖剣エクスカリバー』……それを破壊するのが僕の戦う意味だ」

 

祐斗の決意を秘めた表情。その姿を見て、誰も何も言えなくなっていた。

 

『一体どうしたんだ? 祐斗の奴……』

 

コゲンタは部室の扉に目を向けては疑問を口にする。

 

あの後、祐斗は皆に背を向けて部室を出て行ったのだ。八雲は後を追おうとしたのだが、辺りを見渡しては雰囲気の沈んだメンバーを放っておけず、部室に残る事を選んだ。

 

沈黙を破る様に、リアスが溜め息をつく。

 

「ようやく忘れてくれたと思ってたけど、そうでもなかったみたいね」

 

『ん?』

 

「リアス部長は、祐斗が聖剣に拘る理由に心当たりがあるんですか?」

 

コゲンタの反応と同時に八雲がリアスに声を掛けると、リアスは瞑目しては静かに口を開いた。

 

「……聖剣計画」

 

「聖剣計画?」

 

その単語を鸚鵡返しに言った八雲の言葉に、リアスは静かに頷いた。

 

「そう。祐斗はその計画の生き残りなのよ」

 

そして、八雲達は祐斗の過去の一部を知る事となった。

 

「数年前まで、キリスト教内で聖剣が扱える者を育てる計画が存在したの」

 

「……初めて知りました」

 

どうやら、聖女として一時祭られていたアーシアにすら知らされていない極秘の計画らしい。

 

「聖剣は対悪魔にとって最大の武器。聖剣に触れればたちまち身を焦がし、斬られればなす術もなく消滅させられる。神を信仰し、悪魔を敵視する使徒にとっては究極とも言える兵器ですわ」

 

「ゲームや漫画みたいですね」

 

八雲はリアスの隣にいた朱乃が聖剣について説明を入れてくれて納得した。勿論、一誠も八雲と同じ考えをしていた様で理解した。

 

「そして、祐斗は聖剣……特にエクスカリバーと適応する為、人為的に養成を受けた者の1人なの」

 

「じゃあ、木場は聖剣を使えるんですか?」

 

一誠の質問にリアスは首を横に振っては答えた。

 

「残念ながら、祐斗は聖剣に適応出来なかった。それどころか、祐斗と同時期に養成された者達も全員適応出来な様だけど……」

 

あれほど剣に精通し、数多くの魔剣を扱う祐斗ですら聖剣は扱えなかったらしい。しかし、あれほど聖剣に憎悪を抱いている姿を見ると返って納得出来た。

 

「適応出来なかったと知った教会関係者は、祐斗を含む被験者を『不良品』と決めつけ、処分に至った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で……」

 

「っ!?」

 

『……何だよ、それ!?』

 

処分の言葉が心に重くのし掛かっては八雲とコゲンタは驚愕し、リアス達も不快に思ったのか目を細めている。

 

「そ、そんな……主に使える者がその様な事をしていい筈がありません」

 

アーシアに至っては真実を知り、瞳を涙で潤ませていた。信頼していたモノに何度も裏切られれば、当然の反応だろう。

 

「教会の者達は私達(悪魔)を邪悪な存在だと言うけれど、人間の悪意こそが、この世で最も邪悪だと思うわ」

 

そう呟くリアスの瞳は憂いを帯びていた。

 

「私が祐斗を悪魔に転生させた時、あの子は瀕死の中でも強烈な復讐を誓っていたわ。生まれた時から聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔として生きる事を有意義に使ってもらいたかった。祐斗の持つ剣の才能は、聖剣に拘るには勿体無いもの」

 

聖剣によって無惨な人生にされた祐斗を、悪魔に転生させる事で少しでも救いたい。それがリアスの細やかな願いであり、生来の優しさだった。

 

「でも、あの子は忘れられなかった。聖剣を、聖剣に関わった者達を、教会の者達を……」

 

「……………」

 

リアスが溜め息をつく中、八雲は腕を組みながら天井を見つめて考える。

 

祐斗の過去。聖剣計画。教会の人間の悪意。様々な事柄が、数日前のクラダユウの占いと一致した。

 

(壮大な過去を持ってたんだな……)

 

だが、それだけで十分だ。

 

(でも、復讐だけで生きるのはしんどいぞ、祐斗……)

 

それらを踏まえ、八雲は祐斗の本心を聞きたくなった。

 

苦しみを少しでも理解したかった。

 

「御主人様?」

 

くぅろは反応する中、静かにソファーから立ち上がった八雲は部室の扉に手を掛けていた。

 

突然の八雲の行動にリアスが問い掛ける。

 

「八雲、どこ行くの?」

 

「あー、少しお手洗いに……。それじゃあ……」

 

戸惑いながら八雲は部室から出ると、リアスと朱乃は察した様に言葉にした。

 

「部長。八雲くんだけで大丈夫でしょうか?」

 

「……今は信じましょう。今の祐斗に近付けるのは、このメンバーの中では八雲だけだと思うわ……」

 

 

 

 

 

 

祐斗は土砂降りの中を傘もささずに歩いていた。

 

冷たい雨が熱で上がった思考をいい感じに冷やしてくれている。

 

祐斗は激しく後悔していた。『木場祐斗』の名を与えてくれた恩人に、救ってくれた主に反抗した事に……。

 

だが、聖剣エクスカリバーへの復讐を忘れる事は出来なかった。

 

今でもあの時の悪夢を思い出せる。

 

(想いを果たすまで、皆の分を生きていいなんて……)

 

犠牲になった同志達の事を思うと、これ以上の幸せを得る事を自ら拒んでは自身を戒めている中、それは聞こえた。

 

ぴちゃ

 

「あれは……」

 

雨とは違う水の音を祐斗の耳が捉えた。

 

視線を向けると眼前に神父がいた。十字架を胸に付け、神の名のもとに聖を語るその人物は、今の状態の祐斗に接触させてはいけない存在である。

 

ここで牽制しても構わないとさえ祐斗は思ったが、それは起こらなかった。よく見ると神父の腹部は血で滲ませ、口から血反吐を吐き出してはその場で倒れ伏した。

 

「ッ!」

 

何が起こったのか分からないでいると、祐斗は異常な気配を察知し、瞬時に魔剣を創り出した。

 

ギィィィイインッ!!

 

雨の中で銀光が走り、火花が散った。

 

殺気を向けた者は、眼前で死んだ聖職者と同じ格好をした神父だった。

 

「やっほ。おひさだね」

 

嫌悪を覚える笑みを見せる神父を見た瞬間、祐斗は不快な表情を見せた。

 

「……まだこの町に潜伏していたようだね?今日は何の用かな? 悪いけど、今の僕は至極機嫌が悪くてね」

 

祐斗は眼前の神父……フリード・セルゼンに怒気を含んだ口調で告げるが、フリード本人は嘲笑うだけで軽く流した。

 

「そりゃまた都合がいいねぇ。俺っちとしてはキミとの再会劇に涙涙でございますよ!」

 

相変わらずのふざけた口調が神経を逆撫でする中、祐斗は気付いた。

 

「その剣……まさか!」

 

フリードの持つ長剣が聖なる光を発し、その光を目にした祐斗はさらに憎しみの色を濃くした。

 

「神父狩りも飽きてたところでさ、丁度いいや……」

 

フリードが足元に転がる神父の死体を踏みにじり、蹴飛ばしては笑みを浮かべた。

 

殺気で歪んだ、狂気の笑みを……。

 

「お前さんの魔剣と俺様のエクスカリバー、どちらが上か試させてくれないかな? もちろん、お礼は殺して返すからさ! ヒャハハハハ!」

 

瞬間、フリードは駆け出しては手に持つエクスカリバーを振るおうとしたが、それは出来なかった。

 

バコンッ!

 

「うぉっ!?」

 

「なっ!」

 

何故なら、祐斗とフリードの間からアスファルトの壁が飛び出してきたのだ。

 

「誰だよ、俺の勢いヤった奴は……」

 

咄嗟に足を止めたフリードは辺りを見渡すと、祐斗の後ろに人がしゃがんでいるのが見えた。

 

そして祐斗もフリードの視線を追い、眼前に捉えては驚いた。

 

「大丈夫か、祐斗」

 

「八雲くん! どうしてここに……」

 

そこにいたのは、傘を差した八雲だった。

 

八雲は部室を出ては祐斗を探して見つけたが、フリードがエクスカリバーに手を伸ばした瞬間、八雲の勘で【壁】と【地】の2枚による統合符を発動し、祐斗を守る様に発動させたのだ。

 

因みに、今回使用した統合符は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持っており、一定の距離でも壁を作り出せるのだ。

 

「お前を探していたけど、何やら不穏な雰囲気だったから急いで来てみれば……。それで、あれは知り合いなのか?」

 

祐斗に近付く八雲が訊ねた。

 

「嫌な意味でね……。名前はフリード・セルゼン。堕天使レイナーレの配下にいた、はぐれエクソシストだよ」

 

簡単な説明だったが、八雲は以前レイナーレ達との一戦で祐斗と剣を交えた神父だと理解出来たと同時に、敵意を込めた視線をむけた。

 

すると、フリードが八雲に視線を向けてきた。

 

「……話で聞いた通り、嫌な程に殺気を感じる危険人物だな」

 

「おんやぁ? そちら様は初めて見る顔だね? もしかしてもしかなくても、その悪魔くんの知り合いなのかな?」

 

「同じ部員で、ダチだ」

 

目の前のイカれた神父に警戒しながら八雲は拳を構え、祐斗は魔剣を創り出した。

 

「なるほどねぇ。つまり、キミはそっちの人間って事かぁ~。なら……ここで殺っちゃっても問題ナッシングって事だよねぇぇぇぇぇ!」

 

発狂するフリードが祐斗に駆け出しては聖剣を振るう。

 

甲高い音と共に魔剣は聖剣を受け止めるが、たった数秒後に魔剣の刀身が折れてしまった。

 

聖剣の刃が祐斗に迫る寸前、祐斗は後ろに跳んで斬撃を避けた。さすがに聖剣の脅威を理解する程の冷静さは残っている様だ。

 

「ヒャッハー!」

 

すかさずフリードが聖剣で横凪ぎに斬り掛かってくる。

 

「はぁっ!」

 

その瞬間、八雲はフリードの横を狙い素早く拳を突き出し、その隙を新たな魔剣を創り出した祐斗が一閃を繰り出した。

 

「甘い甘い甘いんだよぉぉぉぉ!」

 

だが、そのコンビネーションをフリードは聖剣の大回転斬りに起きた衝撃により防ぎ、八雲と祐斗は弾き飛ばされてしまった。

 

「祐斗!」

 

瞬時に神器を出しては着地に成功した八雲は祐斗を見ると、立ち上がるがすぐに膝から崩れてしまっていた。

 

祐斗は体の内側から力が抜けていく感覚に襲われ、衝撃だけの威力に畏怖を覚える中、それでも憎悪に染まった表情は崩さない。

 

「ヒューッ! さすがは聖剣エクスカリバー。くそ悪魔の魔剣もざっくり折っちゃうなんて、伝承に伝わる力は伊達じゃないね!」

 

聖剣の光がフリードの異常な笑みに狂気の影を映し出す中、フリードは祐斗に向かって再び走り出す。

 

「させるかよ!」

 

しかし、フリードが走り出した瞬間、八雲は【巨】の闘神符を自身の腕に当てた。その結果、八雲の右腕が巨大化し、フリードを捕まえる為に勢いよく伸ばした。

 

「はぁっ!? 何だよそりゃあっ!?」

 

背後に気配を感じたフリードが振り向いた瞬間、巨大な獣の口の如く開かれた手に捕まってしまった。

 

「八雲くん! これは僕の戦いなんだ!」

 

「だからって、ダチを放っておけないだろ!」

 

祐斗の避難に八雲は声を荒げて言い返す中、フリードは思い出す様に笑った。

 

「キャハハハ……まさか、あのくそ生意気なイッセーくんがした一撃は、キミの力って訳か! だったら余計に殺らないとねぇ! だ・か・ら・放せゴルァッ!」

 

逃れようと盛大に暴れるフリードだが、首と両腕を指と指の間で固定され、完全に自由を奪われている。

 

取り敢えず、このままフリードの手から聖剣を奪えば問題は解決する筈……。

 

丁度、八雲がその後の処理について考えていた時だった。

 

『っ、上だ!』

 

「っ!?」

 

コゲンタの声と自身の勘で察知した八雲はフリードを投げ飛ばし、【巨】の闘神符を解除した瞬間、フリードと八雲の間に閃光が落ちては甲高い音が鳴り響く。

 

「……………」

 

そして、飛来してきたモノを見て八雲は漸く口を開いた。

 

「……………女の子?」

 

現れたのは、フリードの持つ聖剣と同じ長さの剣を持った、エメラルドグリーンの長髪をした少女。

 

左手に剣、右手にコンビニの袋、そして何より服装がロングスカートのメイド服といった、とても違和感を放つ存在だった。

 

そんなメイド姿の少女は姿勢を正すと、八雲に立ち塞がる様にフリードの前に立ち、エメラルドの瞳をフリードに向けた。

 

雇主(こしゅ)の所を出てはこんな所で油を売っていたのですか?」

 

少女が無表情のままに呆れ気味の声色で嘆息する中、フリードはやれやれと手を振った。

 

「いやいや、助かっちゃましたねぇ。いやね? じいさんが聖剣に慣れろと命令したもんだから、こっちなりに努力してた訳なんですわ、はい」

 

調子の良さそうな事を言うフリードをよそに、少女は興味なさげに溜め息を吐いた。

 

「……とにかく一度戻ってください。雇主の方々が待ってますよ」

 

「あいさ了解! そんじゃまぁ、こっちはこれで失敬させてもらうぜ。けど、また機会があれば正々堂々……存分に殺し合おうさ!」

 

そう言い残し、フリードは足早にその場から去って行った。

 

「待て! フリード!」

 

フリードの行為に声を荒げたのは祐斗だった。どうやら既に聖剣の毒気は抜けており、立ち上がっては“騎士”のスピードで駆け出した。

 

「ちょ、祐斗!」

 

残念ながら、八雲の叫びは届かなかった。

 

「逃がしてしまいましたか……………まぁ、いいでしょう」

 

少女が呟き、無表情の視線を残った八雲に向けながら剣を構えた。

 

「雇主の方々の命令では、計画を知る者に生きていられるといろいろと面倒だから消す様にと言われてますが、マスターからは殺生を行うなと言われています。よって、アナタに恨みはありませんが、記憶を消す為に気絶させてもらいます」

 

刹那、少女は人間離れした速度で駆け出しては剣を振るった。その必殺の一閃から逃れられる者はまずいないだろう。

 

「ふんっ」

 

パキン

 

だが、八雲は違った。『二十四気の神操機』の効力で身体機能が強化されており、少女の一撃は八雲の動体視力に見切られた挙げ句、剣を捕まれては砕かれてしまった。

 

「!?」

 

少女の瞳が大きく開く。だが、それも一瞬。すぐに少女は無表情となるが、その一瞬を突かれてしまった。

 

「はぁっ!!」

 

八雲から繰り出されるは両腕を突き出しての掌低。

 

腹部に直撃した掌低から衝撃が発せられ、少女は大きく弾き飛ばされるが、塀に激突する寸前で少女は踏ん張り、激突する事はなかった。

 

ビリィィィィッ!!

 

しかし、踏ん張りで止まった瞬間、スカートと袖部分、更には掌低を喰らった部分が大きく破かれてしまい、少女の肌が露になってしまった。

 

これぞ真終牙黄流拳法が技の一つ。掌低による衝撃を相手の外面に与え、皮膚に衣類、装飾品だけに衝撃によるダメージを与える技……『身勝鬼(みかづき)』だ。

 

(今の感触は……)

 

『おい八雲。あの女、まだ立ってるぞ』

 

八雲が自身の腕に視線を向けている中、コゲンタの声に促されては視線を少女に向けた。

 

「……なるほど、そう言う理由か」

 

そして今の少女の姿を見て、先程の違和感の正体を知った。

 

露になった少女の肌。八雲は少女を相当な実力者と認めて響を手加減せずに放ったのだが、肌には傷が全く出来ていなかった。

 

だが、メイド服が破れた結果、少女の正体が判明した。

 

人間の肌にはない光沢。袖が露になって見えた関節。そして、各部分に見える模型特有の合わせ目の数々。

 

その結果、八雲は口に出した。

 

「あんた、人間じゃないのか……」

 

「……………」

 

沈黙。

 

だが、暫くして少女は姿勢を正しては口を開いた。

 

「はい。ワタシはマスターに作られた人形の第一号です。数ある中から高性能に作られたので、マスターから『オートマータ』の形式名称を貰い受けました」

 

「オートマータ? 確か、自動人形の意味だったか。それで、あんた達はこの町で何するつもりだ?」

 

「機密を言う訳にはいけません」

 

すると、人形少女は持っていたコンビニ袋を光の粒子と化して消すと、別の光の粒子が人形少女の右腕を包み込んだ。

 

その結果、光の粒子が形作り前腕部を纏い、大きな銃口を備えたロボットの腕となった。

 

「アナタの存在は雇主の計画に支障を起こす可能が高いと再確認致します。完全勝利の後、アナタの記憶消去を行います」

 

人形少女は語りながらロボットの様なブーツも装着する中、八雲は闘神符を取り出した。

 

「記憶消去は勘弁してもらいたいね。それに、ここで戦ったら辺りに被害が及んでしまう。だから――」

 

刹那、新たに会得していた【場】の闘神符を2枚使用。その結果、八雲と人形少女は光に包まれていく中、2人を包んだ光の球体が空高く浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは一体?」

 

視界が回復した人形少女は辺りを見る。

 

襖障子が浮かぶ空。大岩が転がる草原。先程いた住宅街から別の場所に連れて来られたのか疑問に思う中、目の前に立つ八雲が語り出す。

 

「俺達が編み出した闘神符の疑似空間だ。この空間は殆どの奴が認識しないから、これで心置き無く戦えるだろ」

 

これが【場】の闘神符の効力。八雲が行う激しい鍛練の為、何時もの公園に損害を与えない様に編み出した闘神符である。その際、【火】や【水】等の五行の闘神符を【場】の統合符に加える事により、各属性が高まる戦闘空間も作り出せる。

 

そんな中、人形少女は納得した様に頷いた。

 

「なるほど。住民を巻き込まない様にしたのですか。お優しい方ですね。アナタとは、もっと別の出会いをしたかった」

 

初めて見せる人形少女の微笑。

 

だが、すぐに両者は対峙しては構えた。

 

「駒王学園2年。闘神士、吉川八雲。参る!」

 

「KCーAM00、マルフ。行きます」

 

そして、両者は激突した。




三章によるオリキャラ登場。

容姿のモデルは『ネギま』の『茶々丸』。手足の変化は『カスタムロボ』参考です、はい。
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