ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第8話:悪魔のお仕事・討伐編

一誠が決意を改めた次の日の放課後。八雲と一誠は表向きの部活も終わり、ともに下校していた。

 

「はぁ……」

 

しかし昨日張り切っていた一誠だが、溜め息をして気持ちが沈んでいた。

 

「……そろそろ気持ちを切り替えろよ、な?」

 

「でもなぁ……部長があれだけ応援してくれたのに、昨日も契約が破談したんだぞ。部長に申し訳ないぜ……」

 

そう言って、一誠は再び溜め息をした。

 

昨晩、一誠は契約を取る為の仕事を行ったのだが、前回同様に契約は破談。しかし、アンケートには最大級の賛辞を貰うのだが、リアスは微妙な表情をして苦笑いしていたのが八雲の記憶に新しい。

 

「まあ、同じ人と何度も紹介されれば、何時かは契約は取れると思うぞ。根気よく頑張れ」

 

「そう簡単に言うなよ。……ってか、何で俺の依頼者は変態ばかりなんだよ! 木場の奴は美人のお姉さんに呼ばれる率が相当高いって朱乃さんに聞いたぞ、ちくしょう!」

 

『日頃の態度と気持ちの関係じゃねえの?』

 

聞こえない事を利用しコゲンタは突っ込むと、それを聞いた八雲が苦笑した時だった。

 

「はわう!」

 

突然、八雲と一誠の後ろから声が聞こえ、同時にボスンと何かが転がる音がした。

 

「ん?」

 

「何だ?」

 

2人は気になり振り向くと、そこには手を大きく広げ、顔面から地面に突っ伏しているシスターの姿があった。正直、間抜けな転び方だ。

 

「……えっと」

 

「大丈夫っスか?」

 

2人はシスターに近寄ると、一誠は起き上がれる様に手を差し出した。

 

「あうぅ。何で転んでしまうんでしょうか……? ああ、すみません。ありがとうございますぅ……」

 

声からして八雲達と同年代の少女。一誠は手を引いて起き上がらせると同時に、風でシスターのヴェールがずり落ちてヴェールの中で束ねていたであろう金色の長髪が露になった。腰まであるストレートのブロンドが夕日に照らされ、キラキラと光っていた。

 

「……っ」

 

一瞬、一誠はシスターの素顔に心を奪われた。金髪美少女が持つグリーンの双眸があまりにも綺麗で、一誠が理想する女の子像(金髪美少女版)に合致していたのだ。

 

「大丈夫か? はい、これ」

 

そんな中、八雲は落ちたヴェールを手に取り、シスターに差し出した。

 

「ありがとうございます!」

 

ヴェールを受け取ったシスターは満面の笑みでお礼を述べると、一誠はさらに心を奪われてしまい、暫しの間シスターに見入ってしまった。

 

「あ、あの……どうかしたんですか……?」

 

シスターが訝しげな表情で一誠の顔を覗き込むと、一誠は我に返った。

 

「あっ、ご、ごめん! えっと……」

 

言葉が続かない。見惚れていたなどと言える訳もない中、八雲は視界に映るシスターの持ち物を見て質問する。

 

「ここへは旅行かい?」

 

八雲の質問にシスターは首を横に振る。

 

「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任することとなりまして……あなたたちもこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

 

ペコリとシスターは頭を下げると同様に、2人も頭を下げた。

 

「この町に来てから困っていたんです。その……私って、日本語が上手く喋れないので……道に迷ってしまい、道行く人皆さんとも言葉が通じず困っていたんです……」

 

胸元で手を合わせる困惑顔のシスター。どうやら日本語が喋れないらしい。

 

なのに何故、一誠と八雲がシスターの言葉が通じているのか?

 

一誠の場合、悪魔になった特典の1つに『言語』という能力が追加され、全世界の言葉の壁を越えることが出来るのだ。

 

一方、八雲の場合は神器に宿る()()()()()()()が目覚めて以来、悪魔の『言語』と同じ能力が備わったのだ。

 

「教会……………知ってるか、兵藤?」

 

引っ越して初めて教会の存在を知った八雲。すると、一誠は頷いてシスターに提案する。

 

「教会なら知っているかも。よかったら案内しようか?」

 

「本当ですか! あ、ありがとうございますぅぅ! これも主のお導きのおかげですね!」

 

涙を浮かべながらシスターが一誠に微笑む。

 

可愛らしい笑顔を浮かべるが、シスターの胸元でロザリオが光り、一誠がそれを見た瞬間に最大級の拒否反応を覚えてしまう。

 

そう……悪魔にとってロザリオ等々、神の祝福を得た聖なる力を放つ類の物に極端に弱い。

 

本来、悪魔とシスターは相いれない関係。しかし、それでも困っている女の子を放っておけないのが一誠の性分であり、困っている人を放っておけないのが八雲の性分だ。

 

こうして、一誠は美少女シスターを引き連れて教会に足を向け、八雲もそれに同行するのだった。

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁん」

 

3人が教会へ向かう途中、公園の前を横切ると、どこからか子供の泣き声が聞こえてきた。

 

「大丈夫、よしくん?」

 

どうやら、公園で男の子が転んで膝を擦りむいたようだ。

 

一誠は男の子の近くに母親もいるから大丈夫だろうと思っていた矢先、一誠の後ろに付いていたシスターが歩く方向を変えた。

 

「おいおい」

 

一誠が止めるのも聞かず、シスターはまっすぐ子供の側に近寄っていく。

 

「大丈夫? 男の子がこれぐらいのケガで泣いてはダメですよ」

 

そう言い、シスターが子供の頭を優しく撫でる。言葉は通じていないだろうが、シスターの表情は優しさで満ち溢れていた。

 

すると、シスターがおもむろに自身の手のひらを怪我した男の子の膝に当てる。次の瞬間、シスターの手のひらから淡い緑色の光が発せられ、男の子の膝を照らした。

 

「へぇ……」

 

その光景に一誠は驚く中、八雲はシスターの発する光とその正体に心当たりがあった。

 

『神器か……』

 

コゲンタの呟きに八雲は頷くと、一誠の反応にも気付いて辺りに聞こえない様に話し掛ける。

 

「どうした?」

 

「いや、何だか左腕が疼いてよ……」

 

「疼いてる? もしかして、シスターの神器に共鳴してるんじゃないのか?」

 

そんなやり取りをしていると、いつの間にか男の子の傷は塞がり、怪我の痕は完全に消えてしまった。

 

男の子も、その母親もきょとんとしている。信じがたい現象が目の前で起これば、誰でもそうなるはずだ。

 

「はい、傷は無くなりましたよ。もう大丈夫です」

 

シスターは男の子の頭をひとなですると、一誠と八雲の方に顔を向ける。

 

「すみません、つい」

 

舌を出して小さく笑うシスター。そんな中、きょとんとしていた母親は頭を垂れると、子供を連れてその場をそそくさと去ってしまった。

 

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 

その際、子供がシスターに感謝の言葉を送っていた。

 

「ありがとう、お姉ちゃん……だってさ」

 

一誠がシスターに通訳すると、シスターは嬉しそうに微笑んだ。

 

「その力は……」

 

「はい、治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんですよ」

 

八雲の微笑むシスターだったが、その表情はどこか寂しげで影を落としており、それだけで彼女が苦労人であることが八雲と一誠は感じた。

 

「……………」

 

すると一誠はそんなシスターの姿が見ていられなくなり、一誠は視線を自分の左手に移していた。

 

神器……。異質な力……。

 

一誠も初めて神器が装着された瞬間に酷く驚き、人によっては苦労しているのではないのかと一誠は思った。

 

そして黙って左手を握りしめ、気持ちを切り替える様にシスターへと声を掛けた。

 

「さ、行こうか! こっちだよ」

 

「あ、はいっ! お願いします!」

 

そして、一誠は教会への案内を再開させた。

 

「……………」

 

『どうしたんだよ?』

 

そんな中、黙ってシスターを見つめる八雲にコゲンタは訊く。

 

「確かに神器(コレ)は、人によっては不思議で奇妙な力だよな。さっきの母親も、彼女を気味悪がる視線をしてたし……」

 

『……八雲は、神器(オレ達)を持って――』

 

後悔してるのか?

 

そう言おうとした瞬間、八雲はコゲンタの言葉を遮る様に言った。

 

「してねえよ。――何度も言うが、神器(コレ)のおかげで助かったし、俺の手が届く範囲が広がった。本当に感謝してる……」

 

そう言った八雲は夕日に向けて右手をかざした。その時の表情はどこか誇らしげで、穏やかな笑みだった。

 

『……そうか』

 

そしてコゲンタも微笑むと、八雲は一誠たちの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、ここです! よかったぁ」

 

「……………」

 

暫くして、3人は古ぼけた教会の前に到着した。地図の描かれたメモと照らし合わせながらシスターが安堵の息を吐く一方、一誠は全身を伝う嫌な汗と悪寒で体が震えていた。

 

それは悪魔としての純粋な拒否反応であり、神社や教会に近づくなと、以前リアスに特に強く説明されたのを思い出す。

 

一誠は長居は出来ないことを悟り、厄介事に巻き込まれる前に退散することにすると、八雲も一誠の状況を悟ってともに行動した。

 

「じゃあ、俺はこれで…」

 

「待ってください! ここまで連れてきてくださったお礼をさせてください!」

 

別れを告げて教会から去ろうとした一誠と八雲を、シスターが呼び止めた。

 

「いや、俺らは急いでいるもんでね。気持ちだけ受け取るよ」

 

「……でも、それでは」

 

八雲の言葉に困った表情を浮かべるシスター。しかし、悪魔である一誠は彼女の言葉を受け入れる事が出来ない。

 

「俺は兵藤一誠。みんなからはイッセーって呼ばれてるから、イッセーでいいよ」

 

「吉川八雲。俺も八雲でいいよ」

 

せめてもの2人は名前を名乗ると、シスターは笑顔で応えてくれた。

 

「私はアーシア・アルジェントと言います! アーシアと呼んでください!」

 

「じゃあ、シスターアーシア。また会えたらいいね」

 

「はい! イッセーさん、八雲さん、必ずまたお会いしましょう!」

 

「バイス。シスターアーシア」

 

深々と頭を下げるアーシアに、一誠と八雲が手を振って別れを告げると、アーシアは2人の姿が見えなくなるまで、ずっと見守っていてくれた。

 

そしてこの出会いが、一誠とアーシア・アルジェントの数奇な運命の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

「二度と教会に近づいちゃだめよ!」

 

一誠と八雲がアーシアを教会へ送り届けたその日の夜、一誠は部室でリアスに怒られていた。

 

「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題になるわ。今回はあちらもシスターを送ってあげたあなたの厚意を素直に受け止めてくれたみたいだけれど、天使たちはいつも監視しているわ。いつ、光の槍が飛んでくるか分からなかったのよ?」

 

「……マジですか?」

 

一誠の状況の危機感をさらに煽るように、リアスは紅の髪を揺らしながら、青い双眸で一誠を直視する。

 

「教会の関係者にも関わってはダメよ。特に『悪魔祓い(エクソシスト)』は我々の仇敵。神の祝福を受けた彼らの力は私達を滅ぼせるほどよ。神器所有者がエクソシストなら尚更。それは死と隣り合わせることを意味するわ。……イッセー」

 

「は、はい」

 

「人間としての死は悪魔への転生で免れるかもしれない。けれど、悪魔祓いを受けた悪魔は完全に消滅する。無に帰すの。それがどれだけのことか分かる?」

 

「……………」

 

正直、そのことに一誠は分からない。そんな一誠の反応を見たリアスはハッと気づいたように首を横に振った。

 

「ごめんなさい、熱くなりすぎたわね。とにかく、今後は気を付けて頂戴」

 

「はい」

 

「あらあら。お説教は済みましたか?」

 

「おわっ」

 

一誠とリアスの会話が終わった途端、いつの間にか一誠の背後にニコニコ顔の朱乃が立っていた。

 

「朱乃、どうかしたの?」

 

リアスの問いに朱乃は少しだけ顔を曇らせた。

 

「討伐の依頼が大公から来ました」

 

 

 

 

 

 

『はぐれ悪魔』。

 

爵位持ちの眷属悪魔が主を裏切り、または主を殺して野良犬と化した悪魔のことを言う。はぐれ悪魔を見つけ次第、主人、もしくは他の悪魔が消滅させる。これも悪魔のルールの1つであり、天使側、堕天使側も見つけ次第殺すようにしている。

 

「ここね……」

 

現在、町外れの廃屋近くにリアスたちグレモリー眷属が魔方陣から現れると、一誠が口を開く。

 

「あの、部長。吉川はどうするんですか?」

 

八雲は人間である為、魔方陣ジャンプが出来ない。そのことを知っている一誠は心配そうに言うと、リアスは微笑む。

 

「心配いらないわ。そろそろ――」

 

瞬間、一誠はリアスを見て驚愕した。

 

「ぶ、部長!? おっぱいが光ってますよ!?」

 

そう……一誠の言う通り、リアスの胸――正確には胸ポケット――が青く光っているのだが、リアスは驚く素振りを見せずにポケットから【転】の闘神符を取り出しては目の前に投げ付けた。

 

そして、一誠は初めて目にする青く輝く八卦の陣が現れた瞬間、一誠たちと同じように八雲が現れたのだった。

 

「こんばんは、リアス部長」

 

「吉川!? え……吉川っていつもそうやって来るのか?」

 

「ええ。はぐれ悪魔討伐の時は私の使い魔で八雲に連絡して、独自で魔方陣ジャンプしてもらうの」

 

「まあ、出入口として【転】の闘神符が最低2枚いるけどな」

 

「へぇ……」

 

未だに自分で魔方陣ジャンプが出来ない一誠は羨ましそうに八雲を見つめると、八雲はリアスに訊いた。

 

「それで、リアス部長。今回の仕事は……」

 

「こちらですわ」

 

リアスの代わりに朱乃が大公の依頼状を見せる。

 

毎晩、この廃屋ではぐれ悪魔が人間を誘き寄せて食らっているらしい。今回はそのはぐれ悪魔を討伐するよう、上級悪魔からの依頼内容だった。

 

そして八雲は依頼状を読み終えると、リアスたちとともに廃屋へと近付いた。

 

「……血の臭い」

 

背の高い草木が生い茂る不気味な雰囲気の中、小猫が呟いて制服の袖で鼻を覆った。

 

周囲は静まり返っているが、廃屋から敵意と殺意がはっきりと感じられる。どうやら敵もこちらの存在に気づいているようで、それを感じた一誠は足をガクガクと震わしていた。

 

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

 

そんな中、堂々と腰に手を当てて立っているリアスが言う。

 

「マ、マジっスか!? お、俺、戦力にならないと思いますけど!」

 

「そうね、それはまだ無理ね。でも、悪魔の戦闘を見ることは出来るわ。今日は私たちの闘いをよく見ておきなさい。ついでに下僕の特性を説明してあげるわ」

 

「下僕の特性? 説明?」

 

怪訝な一誠にリアスが悪魔の現状を語り始める。

 

「悪魔・天使・堕天使の三つ巴の関係は前に説明したわね? 長い戦いの期間争い合った結果、どの勢力も酷く疲弊し、やがて勝利する者もいないまま数百年前に戦争が終結したの」

 

リアスの言葉に祐斗、朱乃と続く。

 

「悪魔側も大きな打撃を受けてしまった。爵位を持った大悪魔の方々も、最早軍団を保てない程の大半の部下を長い戦争で失ってしまったんだ」

 

「純粋な悪魔はその時に多く亡くなったと聞きます。しかし、戦争は終わっても各勢力との睨み合いは現在でも続いてます。幾ら各勢力が大半の部下を失ったとはいえ、少しでも隙を見せれば危うくなります」

 

そして再びリアスは語る。

 

「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取ることにしたの。それが『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』……」

 

「イーヴィル・ピース?」

 

「爵位を持った悪魔は人間界のチェスの特性を下僕悪魔に取り入れたの。 ――主となる悪魔が『(キング)』。私たちの間で言うなら私ね。そして、そこから『女王(クイーン)』、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』、『兵士(ポーン)』と5つの特性を作り出したわ。 軍団を持てなくなった代わりに少数の下僕に強大な力を分け与えることにしたのよ」

 

リアスが説明する中、八雲とグレモリー眷属は各部屋の探索を続け、コゲンタも霊体で辺りを警戒する。

 

「この制度が出来たのはここ数百年。これが爵位持ちの悪魔に好評して、今では下僕を駒にして強さを競う大掛かりなチェス……『レーティングゲーム』を行うようになったのよ。これが地位や爵位に影響するようになり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。優秀な下僕はステータスになるから」

 

「……なるほど。じゃあ、俺もいずれはそのゲームに駆り出されて戦うことになるんですか?」

 

様々な用語と小難しい内容を何とか理解した一誠は訊ねるが、リアスは顔を横に振る。

 

「いいえ。私はまだ成熟した悪魔ではないから、公式の大会には出場出来ないの。それに、出場するにも色々な条件があるの。まずそれをクリアしないといけないから、当分の間はイッセーやここにいる私の下僕がゲームをすることはないわ」

 

「……………」

 

リアスの説明に一誠は想像していた悪魔の世界観が崩れつつあったが、それよりも気になることを訊いた。

 

「じゃあ部長。結局、俺の駒の役割や特性って何ですか?」

 

「そうね、イッセーは――」

 

『リアスのねーちゃん』

 

そこまで言うと同時に、リアスはコゲンタの発言前に歩みと言葉を止めた。

 

理由はすぐに分かった。目の前の暗闇から今まで立ち込めていた敵意や殺意がいっそう濃くなり、何かがリアスたちに近付いていた。それはもう、悪魔歴の浅い一誠でもすぐに理解出来る程の……。

 

「不味そうな臭いがするぞ? でも美味そうな臭いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 

地の底から聞こえるような不気味な声が聞こえてくる。

 

「うっ! 何だよこの臭い!?」

 

周囲に立ち込める血腥い臭いに顔を顰めてしまう一誠だったが、リアスは一切臆さず声の主に言い渡す。

 

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しに来たわ!」

 

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……!!」

 

異様な笑い声が辺りに響くと同時に、何かがリアス達の方に飛んできた。

 

ドシャリッ!

 

最初は敵の攻撃かと思ったが違った。気持ち悪い音とともに一誠の足元へ転がってきたそれは、肉塊と成り果てた死体だった。

 

既に胸から下の体の部位がない死体。無造作に食い千切られたであろう断面からは鮮血が滴り落ち、内臓や肉片が零れ落ち掛けている。

 

「うっ……!」

 

「……………」

 

死体を視界に入れてしまった一誠は胃から逆流してくるモノを抑えるのに精一杯であり、同じく八雲も吐き気を抑えながら死体が投げられた場所を注視した。

 

「ぶひゃひゃひゃひゃ……!!」

 

そして、暗闇からはぐれ悪魔『バイザー』の本体が姿を現す。

 

それは上半身裸の女性であり、そして巨大な獣の下半身を合わせた全長約5メートル以上はある異形の存在であり、両手には槍らしき得物を1本ずつ所持していた。

 

「主の下を逃げ、己の欲求を満たす為だけに暴れ回るその行為……万死に値するわ。グレモリー公爵の名に於いて、あなたを消滅させてあげる」

 

「ぶひゃひゃひゃひゃ……………小賢しい小娘如きがぁぁぁ! その紅の髪の様に、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁぁ!」

 

吠えるバケモノだが、リアスは鼻で笑うだけだ。

 

「雑魚ほど洒落の利いた台詞を吐くものね。祐斗!」

 

「はい!」

 

まずはリアスに指示を受けた祐斗が飛び出す。

 

「イッセー、さっきの続きをレクチャーするわ」

 

祐斗とバイザーが戦闘している中、リアスが先ほど中断した説明を再開させた。

 

「祐斗の役割は『騎士』。特性はスピード。『騎士』となった者は速度が増すの」

 

リアスの言う通り、祐斗の動きは徐々に速度を増していき、遂には常人では目で追えなくなる程の速度まで到達していた。バイサーも槍を振るって攻撃するが、全然当たる気配がない。

 

「そして、祐斗の最大の武器は剣」

 

一度足を止めた祐斗の手には、いつの間にか手に西洋剣が握られていた。それを鞘から抜き放ち、長剣が抜き身となると。祐斗が再びその場から消えた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!」

 

瞬間、バイザーの悲鳴が木霊する。見れば、銀光を放つ祐斗の長剣が、バイザーの両腕を切断して槍と共に葬ったのだ。

 

「これが祐斗の力。目では捉えきれない速力と、達人級の剣捌き。2つが合わさる事で、あの子を最速の『騎士』となれるの」

 

「この……小虫めぇぇぇぇぇぇっっ!」

 

両腕の傷口から血を噴き出しながらも、バイザーは巨大な足を振り上げる。すると、パフォーマンスを終えて背を向ける祐斗と入れ替わる形で、1つの小さな影が前に出る。

 

「……………」

 

小猫だ。

 

「小猫ちゃん!?」

 

ズズンッ!

 

小猫はそのままバイザーに踏み潰されてしまい、辺りに砂塵が舞う。

 

「大丈夫」

 

しかし、リアスはただ一言呟くだけ。

 

「なっ!?」

 

そして砂塵が晴れると、一誠は瞳に映る光景に驚愕した。なぜなら、そこには小さな体でバイザーの足を持ち上げる小猫の姿があったからだ。

 

「小猫の役割は『戦車』。特性はバカげた力と屈強なまでの防御力。あの程度の攻撃では小猫は沈まない。潰せないわ」

 

グンッ!

 

バイザーの足を完全に持ち上げた小猫は、そのまま体勢を崩させる。

 

「……吹っ飛べ」

 

そして空高く跳び上がり、その土手っ腹に拳を鋭く打ち込むと、バイザーの巨体が後方へ大きく吹っ飛んだ。

 

「いいパンチだ。組み手が楽しみだな……」

 

「……………」

 

八雲の素直な感想の呟きに、小猫は若干頬を染めた。

 

(超怪力少女。恐るべし……)

 

そんな中、埃を払うように手を叩く小猫を見ながら、一誠は絶対に小猫に逆らわないでおこうと心に誓った。

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。――あらあら、どうようかしら?」

 

朱乃はいつもの笑顔で倒れこんでいるバイザーのもとへ歩み出す。

 

「朱乃は『女王』。私の次に強い最強の者。『兵士』、『騎士』、『僧侶』、『戦車』。全ての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

「ぐぅぅぅぅ……こんな者たちに……!」

 

朱乃を睨み付けるバイザー。しかし、朱乃はそれを見て不敵な笑みを浮かべる。

 

「あらあら、まだ元気みたいですね? それなら、これはどうでしょうか?」

 

朱乃が天に向かって手を翳す。刹那、天空が光り輝き、バイザーに雷が落ちた。

 

「ガガガガッガガガガッガガガッッ!」

 

激しく感電するバイザー。上手に焼けましたと言わんばかりに、バイザーは煙を上げて全身丸焦げとなってしまった。

 

「あらあら。まだ元気そうね? まだまだいけそうですわね」

 

再び雷がバイザーを襲う。

 

「ギャァァッァァァァァッァ!」

 

再び感電するバイザー。既に断末魔に近い声を上げているにもかかわらず、朱乃の雷が止むことはなかった。

 

「あら、まだ元気そうですわね? それでは次行ってみましょうか」

 

「グァァァァァァアアアアアッッ!」

 

3発目の雷を繰り出し、3度悲鳴を上げるバイザー。

 

(……あれ? 朱乃さん……)

 

すると、一誠はあることに気付いた。

 

よく見ると、雷を落とす朱乃の表情は冷徹で怖い程の嘲笑を作り出しており、頬は興奮で紅潮し、瞳は快感で煌めき、心の底からこの状況を楽しんでいた。

 

「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。雷や氷、炎等の自然現象を魔力で起こす力ね。そして何より――」

 

今の姿の朱乃を見て、リアスはさらりと言う。

 

「彼女は究極の『S』よ」

 

「Sゥ!? いや、Sってレベルじゃないんですけど!? ってかあれ、本当にあの朱乃さんですか!?」

 

「ええ。――普段は優しいけれど、一旦戦闘となれば相手が敗北を認めても自分の興奮が収まるまで決して手を止めないわ」

 

「……うぅ、朱乃さん。俺、怖いっス」

 

「怯える必要はないわ、イッセー。朱乃は味方にはとても優しいから問題ないし、あなたのこともとても可愛いと言ってたわ。今度甘えてお上げなさい。きっと優しく抱き締めてくれるわよ」

 

「あらあら、うふふ……。どこまで私の雷に耐えられるのかしらね? ねぇ、バケモノさん。まだ死んではダメよ? トドメは私の主なのですから。オホホホホホホッ!」

 

相変わらず、目の前で朱乃は高笑いをして雷を放ちながら絶頂していた。

 

(……いや、すいません。やっぱり心底怖いです……)

 

一誠が内心で怯える中、朱乃による雷が続いた…………………………かに見えた。

 

フシュゥゥゥゥゥッ!

 

「あらあら?」

 

「あ、朱乃さん!?」

 

バイザーの戦意が失いそうになる直前、粘り気のある糸が朱乃の両腕に巻き付いたからだ。

 

「シャッシャッシャッ!」

 

すると、暗闇の奥から別の不気味な笑い声を発しながら、それは現れた。

 

背丈はバイザーより小さいの2メートル程の人型の怪物。しかも背中からはカサカサと動く細い何かがが生えており、怪物の口からは朱乃に巻き付いている糸が繋がっていた。

 

「まるで蜘蛛だな……」

 

八雲の呟きに朱乃は確信すると、リアスに言う。

 

「部長。確かあれは……」

 

「ええ。もう1体のはぐれ悪魔……タランスね」

 

「シャッシャッシャッ! その通りッショ!」

 

新たに現れた蜘蛛人間のはぐれ悪魔『タランス』はバイザーを一見するが、すぐに視線をリアス達に戻す。

 

「出掛けてる間に随分と知り合いを痛め付けてくれたッショ。あちしが代わりに、全員食ってやるッショ!」

 

憎しみを込めた瞳で睨むが、リアスは余裕な笑みを崩さなかった。それが気に食わなかったタランスは口の糸を引き寄せ、見せしめに朱乃を食らおうとした瞬間だった。

 

シュッ!

 

「ッショ!?」

 

刹那、一筋の白い軌道が糸を切断し、タランスは驚き後ろへ下がった。

 

「はぐれ野郎め……。朱乃先輩に手を出すな」

 

「吉川!? いつの間に移動してたんだ!?」

 

そして、朱乃を守るように上から八雲が降りて来た。どうやら八雲はタランスや一誠に気付かれずに跳躍し、右腕の手刀で糸を切断したのだ。

 

「大丈夫ですか、朱乃先輩」

 

「うふふ。ありがとう、八雲くん」

 

「イッセー、よく見ておきなさい。あれが八雲たちの力よ……」

 

リアスに言われた通りに一誠は八雲を見つめると、八雲は右腕を前に突き出した。

 

「行くぞ、コゲンタ」

 

『おうよ!』

 

「シキガミ、降神!」

 

八雲が言葉を叫んだ後、右手の宝玉が光り輝くと同時に襖障子……外と『二十四気の神操機』を繋ぐ『窓』が現れては開かれ、飛び出して来た。

 

「白虎のコゲンタ、見参!」

 

「ね、猫の悪魔!?」

 

「ちげぇよ!!」

 

一誠は目の前の光景に驚きの声を上げ、コゲンタはそれに突っ込んだ。

 

「あれが八雲の神器に宿る精霊……シキガミよ」

 

「シキガミ……ってか、神器に宿ってるんですか!?」

 

「ええ。そして、シキガミたちと共に闘う八雲を私達はこう言うわ」

 

八雲とコゲンタはタランスを睨み付ける中、リアスは言った。

 

「『闘神士』と……」

 

「闘神士……?」

 

一誠が八雲の背中を見つめて言うと、朱乃は言った。

 

「八雲くん、コゲンタちゃん。あなた方はそちらの相手をしてもらえますか?」

 

「分かりました!」

 

「おうっ! 行っくぜええええっ!」

 

朱乃の提案を八雲は受け入れると、コゲンタは西海道虎鉄を構えて突き進んだ。

 

「そんな攻撃、効かないッショ!」

 

しかし、タランスはコゲンタの斬撃を回避すると同時に口から糸を吐くが、吐かれた糸をコゲンタは切り刻んでいった。

 

「震坎兌離!」

 

タランスが糸を止めた瞬間、八雲は印を切った。その速度は鍛練の賜物か、以前よりも早くて正確で力強かった。

 

「必殺、弧月拳舞!!」

 

そして発動するコゲンタの技。無数の三日月の刃となり、タランスを切り刻んでは拳を叩き込んだ。

 

「ギァン! なかなかやるッショね……」

 

「効いてないのか?」

 

八雲の疑問にコゲンタは首を横に振った。

 

「いや、手応えはあった。どうやらコイツの体の再生機能が強いみたいだな」

 

「その通りッショ! あちしの背中の再生器官全部を一瞬で破らない限り、すぐに癒えるッショ!」

 

そう言ってタランスは背中の突起物を動かすと、八雲に向けて駆け出した。

 

「召喚獣が相手なら、その術者を狙うのが基本ッショ! シャッシャッシャッ!」

 

「吉川!?」

 

タランスの凶刃な爪が八雲に迫る中、一誠は叫ぶ。だが八雲は微動だにせず、その場でタランスの攻撃に備えて構えた。

 

「シャァッ!」

 

「ふん」

 

ドン!!

 

「ッショ!?」

 

タランスの攻撃は空を切った。八雲が最低限の動きでタランスの攻撃を回避し、懐へと飛び込んでは拳をタランスの土手っ腹に小猫よりも鋭く打ち込み、タランスに膝を付かせた。

 

すると、リアスが八雲の説明を始めた。

 

「私が知る限り、八雲の身体能力は出会ってきた人間の中でも上位に値するわ。恐らく、下級悪魔なら1人で渡り合える程の力……………いえ、戦いの中で彼は少しずつ強くなっていき、力の枷が外れたはぐれ悪魔とも渡り合えてるわ」

 

「マジっスか!?」

 

「そして、シキガミたちとの連携で戦闘バリエーションは無限と言っていいわ。正に、シキガミたちと闘う士ね……」

 

「すげぇ……」

 

リアスの言葉通り、八雲が徒手空拳でタランスを怯ませながら、八雲が離れた瞬間にコゲンタが西海道虎鉄の一撃を浴びせている。一誠から見ても息の合うコンビネーションであり、次第に胸が熱くなるのを感じていた。

 

そんな中、八雲とコゲンタは一旦タランスと距離を取った。

 

「どうする八雲。オレの持つ技じゃあ一瞬では無理だぞ」

 

「そうだな。だから……」

 

そう言いながら、八雲はシキガミを交代させる【窓】の闘神符を出した。

 

「『アイツ』を呼ぶ。いいか、コゲンタ」

 

「それしかないんだろ? 構わないぞ」

 

「ありがとう。――交代するぞ、フジ!」

 

すると、八雲は闘神符をコゲンタへ投げると、コゲンタの目前に『窓』が現れ、コゲンタは臆する事なく通過した。

 

「ハアアアアアッ!」

 

すると、現れたのはコゲンタではなく、別のシキガミだった。

 

ニホンクワガタに似た機械人的な外見を持ち、背中に2本の大剣を背負ったシキガミがタランスに突撃して大きく吹き飛ばし、高らかに名乗る。

 

「黒鉄のフジ、見参!」

 

「シキガミの姿が変わった!?」

 

一誠の驚きにリアスは否定する。

 

「いいえ。八雲の神器には72体ものシキガミが宿っているの。その内の1体が、コゲンタと交代したのよ」

 

「なな……ッ!? そんなにいるんですか!?」

 

「ええ。でも、あのシキガミは私も初めて見るわ。ふふっ……一体どんな力があるのかしら」

 

まるで八雲とシキガミたちの戦いを楽しむようにリアスが微笑む中、八雲はフジに指示していた。

 

「……と言う訳だ。いいか、フジ?」

 

「人を食らう下種には丁度いい、か……。あい分かった!」

 

「それじゃあ……………行くぞ!」

 

そして、合図とともに八雲だけがタランスに向かい走り出した。

 

「舐められっぱなしは好かんッショ!」

 

そう言い、タランスは背中に生えた細い突起物の先から粘液を飛ばした。無論、八雲は回避するが、粘液に触れた床が次第に腐食していくのを目の当たりにした。

 

「毒か……。だけど!」

 

臆することなく、八雲は軽快なフットワークで粘液を回避し、遂にタランスの懐に飛び込んだ。

 

「しまっ――」

 

そこまでだった。気付いた時にはタランスの体が宙に浮いていた。八雲がタランスの懐に飛び込み、巴投げの要領で投げ飛ばしたからだ。

 

「来い!」

 

その方向には『陰陽大剣・右兵衛(うひょうえ)左兵衛(さひょうえ)』を構えたフジが待ち構え、八雲は瞬時に体勢を立て直した。

 

「震離兌離!」

 

透かさず印を切る八雲。タランスが宙に舞う中、フジは右兵衛と左兵衛を回し始め、次第に速度を増していった。

 

「必殺、逆手下克上(さかてげこくじょう)!!」

 

常人では捉えきれない速度の回転に達した右兵衛と左兵衛。そしてフジは器用に使い、投げ飛ばされたタランスを天高く弾き飛ばした。

 

「そんな攻撃、あちしには――」

 

ドン!!

 

「グベェ!」

 

弾き飛ばされたタランスに待っていたのは、腹部に響く衝撃と急降下だった。

 

「もう1回受けな!」

 

落下しながらタランスは見た。【壁】を空中の足場代わりにし、見下す八雲の姿が……。そして――

 

ガキン!!

 

「ギャア!」

 

ドン!!

 

「グベェ!」

 

ガキン!!

 

「ギャア!」

 

ドン!!

 

「グベェ!」

 

フジに弾き飛ばされては八雲に叩き込まれ、また弾き飛ばされてはまた叩き込まれ、その行為が幾重にもされたことで、タランスの再生機能を持つ突起物が1度の斬撃で切り落とされた。

 

「そろそろいいか。――フジ!」

 

「応っ!」

 

八雲の最後の指示。フジは了承すると、タランスをある方向へと弾き飛ばした。この時、既にタランスの体は傷だらけで片腕も斬り落とされていた。

 

「……や……やっと、終わった――」

 

「あらあら。満足したんですけどね……」

 

「ッショ!?!?」

 

ある方向……………バイザーがいる地点に飛ばされたタランスに待ち受けていたのは、あらあらうふふとSな笑みを浮かべた朱乃だった。

 

「朱乃先輩。おかわりはどうですか?」

 

「うーん……………そうね。八雲くんがせっかく用意してくれたし……それじゃあ」

 

「ま、待って――」

 

刹那、タランスに雷が連続で落ちた……。

 

暫くして、Sの衝動が収まった朱乃は雷を止めた。

 

「それでは、トドメは部長にお任せしますわ」

 

ようやくトドメということで、リアスは既に炭と化したバイザーの上に伏す、完全に戦意喪失のタランスに手をかざす。

 

「……最後に言い残すことは?」

 

「……殺せ……ッショ……」

 

タランスの答えはその一言だった。

 

「そう、ならば消し飛びなさい」

 

ドンッ!

 

冷徹な一言と共にリアスの手から巨大な黒い魔力の塊が撃ち出され、タランスの全身を余裕で包み込んでいく。

 

そしてリアスの放った魔力が宙に消えると、2体のはぐれ悪魔の姿も完全に消え、確認したリアスは息をつく。

 

「終わりね。皆、お疲れ様」

 

「ふぅ……。ご苦労様、フジ」

 

「いえ、これも八雲の為だ。ともに戦えてよかった」

 

「凄いね、その剣術。僕には真似出来そうにないよ」

 

「『騎士』の木場か。こちらも1度、お手合わせ願いたいものだな」

 

「あらあら。祐斗くんが他の剣術に興味を持つのは、なかなか無いですわね」

 

「……珍しいです」

 

リアスの言葉に一誠以外のメンバーはいつもの陽気な雰囲気を放っていた。そして暫くオカルト研究部員たちの戦いの凄まじさに驚愕していた一誠だが、ここであることを思い出した。

 

「そういえば部長。聞きそびれてたんですけど」

 

「何かしら?」

 

リアスは一誠に笑顔で応じる。

 

「俺の駒……というか、下僕としての俺の役割は何ですか?」

 

「ああ、イッセーの役割は……」

 

一誠の疑問に、微笑みながらリアスは言った。

 

「『兵士』よ」

 

一番下っ端の駒と知り、一誠はガックリと頭を下げた。

 

こうして、一誠の初めてのはぐれ悪魔討伐は幕を降ろした。

 

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