あの出来事から数年が経った、少女2人は聖堂教会に預けられたらしいがどうなったかは知らない。まぁ、幸せになっていることを願うだけだ。
数日後、俺は聖堂教会本部に呼び出された。
「う〜ん…俺何かしたかな?、まぁ…叱られることは無いだろうけど、呼び出されるのって怖いな…」
「ねぇ?」
ッ!いつからいた!?気配にさえ気付けなかったとは..…この人は相当の実力者なのか?
「まぁまぁそうビビらないでよ、それよりも君が壱輝君かい?」
「はぁ?…まぁ、そうですけど…」
「私は埋葬機関第1位であり局長のナルバレック、君をスカウトしに来た、呼び出させたのは私だよ。」
「こういうのって、会ってやるやつなんですか?」
「うん、そうだよ、機関ついては知ってる?」
「はい、大丈夫です、おじさんがよく聞いてましたから。」
「まさかあいつがあんな最後を迎えるとはね…まぁそれは置いておいて…君はこのスカウトを受ける?受けない?ま、選択権は無いんだけどね!」
「教会にとって不都合な存在を消せれば誰でもいいんですよね?」
「そ…だから手の空いてそうな君…」
「俺は受けますよ」
「だから、選択権は無…って、返答早いんだね、なんでかな?理由とかある?」
「はい…おじさんを、恩人を殺した死徒を…死徒と言う存在を、絶対この手で殺戮の限りを尽してやるためです」
「お〜怖い怖い…ま、よろしくね!」
「ちなみに、僕は何位なるんですか?」
「ん〜っとね、君は候補だよ、この仕事どう考えてもいつ命を失うか分からないでしょ?その為だし、もう全部埋まってるしね」
「ということは他にも候補が?」
「いや…君が初だよ、さすがにそこまで埋葬機関は甘くない、そう簡単にコロっとやられないさ」
「ですよね…」
「ま…あいつはやられちゃったけど…、君を位にさせることは出来ない、もうあいつの後釜には座ってる奴がいるからね。」
「それは誰なんですか?」
「最近入ってきた子なんだけどね、名前はシエル、これは洗礼名で本名はエレイシア、ロアの転生体でって…そういえば、この子と別の一人の子って、君が助けたらしいね。」
俺は嫌な予感がした、幸せを願っていたはずの子供がこんな命を失うかもしれない、戦いの最前線に立つことになっているとは…
「ナルバレックさん…それは本当なんですか!」
「うん、本当だよ」
「何故!?なんであの子が埋葬機関にいるんですか!?」
「あ〜…それはね、あの子は逸材だったのよ」
俺は正直に言ってナルバレックさんの言っている事の言いみがよく分からなかった。
「逸材?どういうことですか!?」
「なんでかって言われてもな…あの子は、先ず遺体をサンプルとして保存されてたんだけど、何と3年後に自力で蘇生、そのまま身柄を拘束されて、審問と称したあらゆる種類の殺戮を受けても死ねない特性で蘇り続けたのよ、そして、私はその不死の特性に目をつけてスカウトしたってこと」
「...」
「あ〜ちなみに、不死の特性って言うのはね、あの子の魂のラベルがエレイシアからロアに書き換わっちゃったから、本来のロアが転生をし続けている限り、死ぬがおかしいってことになっちゃって、世界の修正力によって蘇らせられちゃうってことなのよ」
…ロアの転生体になって、辛い思いをしたあの子が、魂のラベルがロアになっちゃったら死ねない?世界の修正力によって蘇らせられる?ふざけるな!!あの子が一体何をしたって言うんだ!ただ何気ない日常を過ごし、将来の夢のために頑張っていただけだろうに!こんな理不尽が、絶望が、あっていいものか!!
「……そうなんですね」
「もしかして…怒ってる?」
「いえ、怒ってなんかないですよ、自分が信じていた協会の裏を知ったからって、こんな程度で…こんな程度で!キレてたまるものですか!」
「怒ってるじゃん」
「いえ…怒ってないです、ナルバレックさん話は終わりですか?だったら俺は帰ります」
「あ、ちょっと待って、話はまだあるのよ、君使ってる武装が黒鍵だけらしいじゃない?」
「まぁ、そうですが…」
「ということで!」
ナルバレックさんはそう言うと、何処からともなく、自分より数十cm大きい鎌を取り出してきた。
「教会から君に新たな武装をあげよう」
「あれ?パイルバンカーじゃないんですか?」
「あ〜あれは、なしになったの、本当はパイルバンカーじゃなくて、全くの別物だったんだけど…シエルちゃんがもう取っちゃったから」
「…なるほど」
「この鎌の名前は第8聖鎌、総重量1.5t!教会が持ってる切り札の中でも謎が多い且つ1番古いヤツなんだ、でも、切れ味は落ちてないからスパスパ切れると思うよ!、ちなみに、教会の切り札には精霊が着いていて、この第8聖鎌にはエイトという精霊がいてね、なんと機能は法衣の自動装着と第8聖鎌本体の現出などをしてくれるよ!」
なんかすっごくテンション高くなってるな…ナルバレックさん。
「お、意外に軽いんですね」
「あれまだ秘蹟はしてないけど、持てるの?」
「はい、持てますよこの程度、血の滲むような訓練をしてきましたし、身体能力には自信があります、それに軽量化の魔術を使っているので」
「あ…そう、ならいいんだけどね、再度だけど、よろしくね、壱輝君」
「候補ですけどね…ナルバレックさん…突然ですが1つやらせて欲しいことがあるんです」
「ん、なんだい?壱輝君」
「次のシエルの任務に俺も行かせてくれませんか?」
「別にいいけど…理由とかってある?さすがに無いってことはないよね?」
「理由はありますよ、ただ単に顔を見たいだけです」
「それだったら、プライベートで会いに行けばいいだけじゃないのかい?」
「いえ、あの子には自分の人生を歩んで欲しいんです…しかも俺は男ですから、そんな気軽に近づく訳にも行かないですよ」
「フゥン…そ、わかった…じゃ、明日もまた来てね」
翌日、俺は昨日ナルバレックさんに言われた通りに、聖堂協会本部へと来た。
「来たのはいいんだけど…肝心の少女はっと…」
「あなたが壱輝さんですか?」
声がした方を向く、法衣を見に纏っている青髪の少女がいた。
「あぁ、俺が壱輝だよ」
「この前はどうも…ありがとうございました!」
彼女はそう言うと、頭を下げてきた。
「いやいや、いいんだよシエルちゃん、頭を上げて、別に頭を下げてもらうほど、偉いことはやってないよ、人を助ける事なんて、尚更子供となれば助けるに決まってるさ」
「いや私もお礼をしなければ気が済まなくて…あっ、ちゃんは要りませんよ、呼び捨てでも大丈夫です」
「そう?わかったよ、シエル…礼はいいんだ、当然のことをしただけだし」
と、話をしていると、玄関口から茶髪の少女が入ってきた。
「ちょ…ちょっとシエル!先に行くのは酷くない!?って、もしかして…貴方があの時のお兄ちゃん!?」
「うん…久しぶりだね、元気だった?ノエルちゃん?」
「うん!元気だったよ!お兄ちゃんこそ元気だった?」
俺は幸せを願っていた子の笑顔が見れて安心した反面、何故ノエルもここにいるのか不安を抱くしかなかった。
「あぁ、元気だったさ、今日はシエルの任務について行くんだ、ノエルもどうだ?」
「あ…あの壱輝さん、シスターノエルと私はあまり仲が…」
「ん〜…2人きりじゃないのは嫌だけど、お兄ちゃんがいるならいいや!」
「シ…シスターノエルがそれでいいなら…まぁ…わかりました、それでは行きましょうか」
シエルが俺とノエルに今日の任務について話してくれるそうだ。
「今日の任務はある町に現れた一般死徒の掃討です…数はそこそこで中には強い個体もいるとの報告が入っているそういます。」
「なぁ、シエル」
「なんですか?壱輝さん...まさかなにか戦略でも?」
「今日は俺を前に出してくれないか?」
「…理由はありますか?、理由なしで危険な前線に出すことはできませんし、なにか有効な手段でも?」
「あぁ…エイト!」
俺が「エイト」と呟くと、体に法衣が装着され、手元に第8聖鎌が姿を現す。
「「!?」」
シエルとノエルどちらも、驚いているようだ…シエル、君は第7聖典を持っているんだし、そこまで驚かなくてもいいんじゃないか?
「これだよ、有効な手段は…第8聖鎌って言うらしい、シエルも似たようなものを持ってるだろ?」
「はい、持ってますよ、第7聖典のことですね」
「そうそう、それと同じ教会の切り札だって、ナルバレックさんが言ってた」
ナルバレックの名を聞いた瞬間にシエルの顔が青ざめたような気がした。
「ナ…ナルバレックですか…手厚い歓迎を受けたんですね…壱輝さん…あはは…」
「もしかして、聞きたくなかった?ごめんね」
「い…いえいえ!、そんなことないです!寧ろ壱輝さんの話ならどんどん聞き…コホン!すみません、少々取り乱してしまいました」
「シ…シエルさすがに今のは無理があると思うわよ…」
「言わないでくださいシスターノエル、では行きましょうか」
俺達は本部から退出し目的地へと向かった、その道中に俺は気になることを2人に聞いていた。
「なぁ…シエル…審問と称して、あらゆる種類の殺戮を受けたって本当か?、言いたくなかったら言わなくてもいいからな」
「……それは本当です、私はあらゆる種類の殺戮を受けました、ですが、私は決して教会を恨むことなどしてはいません、通常人が死から自力で蘇れば、誰もが恐れ・攻撃をすることでしょう、けど1つ許せないことがありました」
「それはなんなんだ?」
「貴方に…すぐ会えなかったことです…ずっとお礼が言いたかったんです、しかし…教会側からそれを停められてしまい、審問やら色々あって、結局3年もかかってしまいました…」
「いや…いいんだシエル、君は何も悪くないし、それはしょうがない事だ、お礼を言おうとしてくれてありがとう…シエル」
「はい!早く任務を終わらせましょう!話したいことが色々あるので!」
横から不機嫌そうなノエルの声が聞こえてくる。
「ちょっと!〜、何2人でイチャイチャしてんのよ!私も混ぜなさいよ!シエル卑怯よ!独り占めなんて!」
「あなたはそれよりも足を動かしてくださいシスターノエル、目的地はまだまだ先ですよ」
「分かってるわよ!とっとと行けばいいんでしょ?、あ、後で私にもお話させてよね!」
そう言ってノエルはスピードを上げ、一足先に目的地に向かっていった…ノエルとシエルってこんなに仲が悪いの!?
そうやってワイワイしている内に目的地が見えてきた、ノエルはもう戦闘に入っているようだ。
俺は第8聖鎌を手元に出現させ死徒に向かって薙ぎ払い、死徒遠ざけて隙を作り一気に首を刎ねた、繰り返す程に鎌が血で彩られていく。
「チッ!意外に数が多いな!」
いくら倒しても死徒共はわらわらと湧いてくる、微かに苛立ちを覚えながら出てきた死徒の首を刎る、刎る...一体これを後何回繰り返せばいいのだろうか。
「これじゃキリがねぇな…シエル!ノエル!離れて!」
ここは魔力を込めて大きな一撃でッ…!
何だこの体の奥から湧いてくる禍々しい魔力はッ...!?抑えきれないッ!あああぁぁああ!!!
視界は全て、赤…朱…紅…全て肉塊!成れの果て!、どれだけ殺し!どれだけ殺戮しようとまた戻る!これほど楽しいことは無い!これほど心踊ることは無い!、全て殺し全て葬り去る!、飽きるまで飽きるまで全て殺す!!さぁ死徒共!この私を楽しませてみせろ!アハハハハハ!!!
──────────────────────
シエルside
ッ!?何なんですかこの魔力の流れは!私と同等の魔力量を感じる…!しかも、彼からは正気を感じられない!これはまずいです!シスターノエルや壱輝さんは無事でしょうか…!?
「壱輝さん、無事…え?」
私が前の方向を見ると、そこにはとても赤々しい法衣に身を包まれて真っ赤な目をしている彼がいた。
「え、あ…何なんですかッその姿は…!?」
私は彼に語り掛けたが…返事は帰ってこなかった。声が届いていないのか、それともただ無視しているだけなのか。あの時のような自らの無力さを感じた気がした。
──────────────────────
ノエルside
な…何よ!?この禍々しい魔力は!1点に集まってる!?こんな規模で出力の物だともう死徒討伐より需要じゃ…え?
「お…お兄ちゃん?な…何?その禍々しい姿は、まるで…私が憎んだ…吸血鬼…」
嘘よ嘘よ嘘よ…お兄ちゃんは吸血鬼!?違う…!絶対違う!吸血鬼じゃない!代行者なの!絶対そうよ!そうだよね…お兄ちゃん?…ねぇ?
──────────────────────
なんとも今日は気分がいい、足元を見れば屍の山!辺りを眺めれば血液の海!まさに絶景!
手死徒共の手足を剥ぎ取り!首を刎ね!細切れにする!この圧倒的な殺戮!
「アハハハハハ!楽しい!こんなに楽しくなれたのは久しぶりだァ!この高揚感!これを求めていたんだ!心の奥から溢れ出る感情を!この場には戦いの真価!真髄がある!素晴らしいなァ!」
彼の笑みに健全な感情になど入ってはおらず、あるのは邪なモノだけだろう…ただ目の前の物を殺戮し悦に浸る…単純明快ながらも最も恐ろしいものだ。
「シスターノエル」
「何!?シエル!?」
「彼を一時的に封印して本部に連れて帰ります、なのでシスターノエルはアシストを」
「ちょっと!?訳を説明してよ!なんでお兄ちゃんはあぁなってるのよ!?」
「あれはおそらく彼の中に抑えられていた感情が増幅し、魔術回路に干渉して暴走を起こしているのでしょう、法衣に影響しているのはそういうことです」
「あぁ…もう!わかったわよ!やればいいんでしょ!?」
「その意気です、シスターノエル…では、行きますよ」
私は彼のいる範囲5メートルに対吸血用の拘束術式を展開し発動させた、しかし──彼は無言で第8聖鎌に魔力を纏わせ──大きく振り薙ぎ払うように拘束術式を斬り裂いてみせた。
「ッ──これでもダメですかッ!…仕方ありません、原理血戒使うしかないようですね…」
「原理血戒22番──クロムクレイ・ペタストラクチャ」
別名クロムクレイ大聖堂──Ⅸ階梯の死徒を封じ込めるためにシエルがクロムクレイ・ペタストラクチャの『城、即ち王国』原理を用いて、開発した相転移式隔絶型結界である。
私は彼の周りに結界を貼り、周りへの被害を最小にさせた後…接近に腹部に第8聖典の死因の一つであるブレイクを打ち込んだ…
「フッ!」
激しい衝撃に耐えられなかったのか、彼は声も挙げずに苦痛の表情を示した後…バタリと意識を手放した…終わったことを察知したのかシスターノエルが近づいてくる。
「シエル…お疲れ様、えっとお兄ちゃんは…どうなるんだっけ?」
「教会に連れていき、今後代行者を続行できるかの審判、異常が残っていないかの検査を受けるになるでしょう…」
その後、私は壱輝さんを担ぎ…シスターノエルと共に聖堂教会へと帰還しました。
「やぁ…久しぶり、シエル…元気だったかい?」
「まさかあなたがいるとは意外でしたね…ナルバレック…普段は執務室に幽閉される形で閉じこもっているというのに…」
「今日は訳ありでね…それは君が今担いでいる彼だよ…」
「壱輝さん?この方が何かあなたにとって気になる点でもありましたか?」
「あるに決まってるじゃないか?…それに彼について聖堂教会の上層部から気になる情報を手に入れてね…?」
「…それはなんですか」
「彼がミハイル・ロア・バルダムヨォンの転生体である可能性が出てきたらしいよ?」
「それがなんですか?あくまで可能性なら殺す必要は無いはずです」
「でも…いくら可能性だからと言って、ならない訳じゃないんでしょ?その時に責任は取れるのかな?埋葬機関第7位…「弓」のシエルさん?」
「ッ…!?黙って聞いていれば好き勝手に言ってくれますね…」
私は恩人をバカにされたようで気が気ではなかった。
「アッハッハッハッハッ…そうそう!私が見たかったのはその顔だよ!あぁ!今すぐに殺したくなってきた!あ…まだ彼は殺さないでおいてあげるから安心してね!」
「ついに完璧に気が狂いましたか!ナルバレック!だから私はあなたが苦手なのです!」
「な〜んて、冗談だよ…シエル、私が本気で殺す訳ないでしょ?、今は彼の活躍に目を向けたいんだよね…」
「笑えない冗談はやめてください、後、あなたのような戦闘狂が他の事柄に興味を向けるなんて珍しいことも起きるものですね」
「酷いなぁ!シエル!でも…あながち間違ってもないかも…、まぁ…それより、シエルがホントに気になってるのは彼のあの赤い姿でしょ?」
「はいはい、そこが1番気になっていますよ…」
「まぁそう不貞腐れないですよシエル〜!……まぁ、私も感情と魔力が関係しているとは思っている、あれはまず暴走という形でしか現れないようにしか見えない、彼が意識を失う際に言っていた禍々しい魔力…これは彼の中に封印されていた物が、今まで抑え込められていた感情と言うをキーにして、外側に漏れてしまったんだろうね」
私はふと、『抑え込められていた感情』というワードが気になった。
「その『抑えられていた感情』とは何ですか?」
「あぁ…もう検討は着いている、罪悪感と言うやつだろうね」
「罪悪感…ですか?」
「そう、罪悪感ね…シエルは知らないかもだけど、彼は君の一つ前の第7位を師匠として持っていたんだ…だが、壱輝君が代行者見習いになった時の初任務で、不運な事に死徒二十七祖に遭遇…そして、戦闘により死亡してしまった…、彼はその死なせてしまったことによる感情…つまり罪悪感を発散できずにいたんだろう、そのせいで今回のようになってしまったと、言うのが1番説得力があると思うよ」
「壱輝さん…まさかそんなことがあったなんて…」
「でも、シエルよりはましなんじゃないかな?君はなんの前触れもなくロアの転生体に選ばれ、死ねなくなり、教会からは審判というあらゆる種類の殺戮を受け、はたまた命を張るこの代行者をやっているんだからさ?」
「いえ…悲劇に優劣などありません、酷いものはどんな小さなことでもダメージを負うのですよ?」
「本人がそう言うならいいよ…あ、彼は置いていってね…この後早速『審問』を受けるらしいから、彼…耐えられるかな?」
私はその発言に煽っているような印象しか抱くことか出来なかった。
ナルバレックの口調とか話し方考えんのムズい…