パルプンテは最後までとっておく   作:葉虎

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第10話

 

どうしてこうなった?

 

最近、同じような事ばっかり思ってる気がするが…思ってしまったもんは仕方がない…

 

あのクロノ執務官も言ってたっけ…

 

世界は、いつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ!!

 

あの言葉は真理だ……。

 

《どうしたのですか?そんな暗い空気を纏って……冴えないあなたが余計に冴えなくなっていますよ?》

 

呆れたように脳内に響く声……。

 

忌々しく左手を見れば、そこには諸悪の根源たる銀の輝きを放つ物体が薬指にへばり付いていた。

 

とぼとぼと…家路を急ぐ。

 

はぁ、また寮のみんなが五月蠅いんだろうなぁ…と、アンニュイな気分を感じながら、俺はこうなった

状況を思い返していた。

 

 

 

本日の放課後、デバイス作成の進捗状況を聞くべく帰宅前のアリサを捕まえ、共に帰宅しながら話をする事になったのだが…。

 

 

「それで…デバイスの作成状況はどんな感じなんだ?」

 

「私のは出来上がっているわよ。とはいっても、スタンダードな物なのだけどね」

 

「?前に言っていたプランはどうしたんだよ?なんか特殊な形状と機能を持つオーダーメイドにするって」

 

「あれは、一朝一夕にできるものじゃないわ。私はあなたと違って、戦う力を持っていない。だから、とりあえず基本的な魔術を一通り使ってみて、自分の適性と熟練度を挙げたつつ、随時デバイスをカスタマイズ…もしくは作り変えて行くつもりよ。」

 

材料も特殊だしね…とアリサは言葉を締めくくる。

 

「んで、お前のデバイスは何処にあるんだよ?待機状態で持ち歩いてるんじゃないだろ?」

 

「いいえ、今は家にあるわ。ちょっと事情があってね……まだ持ち歩けないの」

 

アリサにしては歯切れが悪いな…。まぁいいや。本題に入ろう。

 

「それで……俺のは?」

 

「耕二のデバイスは全体の……6割程度かしら。基本的な機能は実装済み。だけど…決めたわ…耕二、今から私の家に来て」

 

そう告げて、俺の手を取り、そのまま家に連れて行くのだった。

 

 

 

家に着き、地下のデバイス作成の研究室に通され、椅子に座らされると…

 

アリサはタオルを渡し…

 

「耕二、これで目隠しをして…」

 

目隠しをするように言われた。

 

「いやいや…なんでさ?」

 

「これからデバイスのお披露目をしようかと思うの。驚かせたいからその演出…」

 

なんだ?こんなのアリサのキャラじゃないと思うのだが…あれか?自分のデバイスが出来て

テンションが上がってるのか?

 

ふふ、子供っぽいというか…可愛い所もあるじゃないか…

 

そんなアリサを微笑ましく思いながら、言われた通り、タオルを頭の後ろで結び、目隠しをする。

 

「…耕二。左手を前に出して……」

 

は?い、意味が分からんが…まぁ、言われた通りにしよう…

 

「違うわ。手のひらは下に…手の甲が上に向くように…」

 

なんだ?いよいよもって何をするつもりなんだ?アリサさんは…

 

怪訝に思いながらも、手の甲を上に向ける。

 

すると…アリサの手だろうか?手を取られ、俺の指先を数回撫でたかと思うと

 

「うぉっ!なんだ、今、薬指が冷やっとしたぞ!?」

 

「ふふ…ふふふ♪耕二♪もうタオルを取っていいわよ」

 

な、なんだ?

 

タオルを取る。最初に視界に入ったのは珍しい微笑を浮かべたアリサの顔。

 

その顔に若干見惚れそうになるも、違和感の正体を確認すべく左手に視線を向け…

 

ありえないものが目に入った。

 

ゴシゴシと目を擦り…

 

「耕二、目は擦っちゃだめよ。目が悪くなるわ。」

 

アリサに怒られて中断し、再度左手を見る。

 

正確には左手薬指を…

 

其処には…先ほどまでは無かった銀の輝きが…

 

「アノ…アリササン。コレハ?」

 

「指輪ね。それが耕二のデバイス。その待機状態。ちなみに…私とお揃い」

 

アリサが自分の左手を見せるとそこには…俺のと同じ銀の輝きを放つ指輪が薬指に嵌っていた。

 

……ふぅ。びーくーる。

 

冷静に……冷静にだ。

 

たまたま。そう、たまたま指輪を左薬指に嵌めているだけさ。特別な意味なんてない。

 

でも。勘違いをする奴もいるからな。主に家の寮のお姉さん方とか…

 

せめて…右手に…いや、リングにチェーン通してネックレスにすれば…

 

「って、は、外れないんだが!?」

 

ひねったりしてみても、ビクともしないぞ!?

 

「…一度つけたら、その子の意思がないと外れないわよ。あくまで、私じゃなくてその子の意思だから…」

 

「その子?」

 

《不本意ながら…冴えないあなたのデバイスをやることになってしまった……悲劇の少女……名前はまだないわ。まぁ、よろしく。》

 

脳内に響く声。これって…

 

「インテリジェントデバイス……そのデバイスに組み込んだAIが念話で語りかけているのよ」

 

名前はあなたが付けてあげて。とアリサ。

 

《希望は、ヴェアトリス・オディール・ローズヒップでお願いします。世界最強の魔女である彼女の名前こそ、私に相応しい。

そして共に世界を制しようではりませんか》

 

なんか…深夜枠にやってるアニメに出てくるキャラクターの名前にしろと言い、物騒な事を言い出す指輪。

 

あ~なんだ。

 

「色々ありすぎて…ツッコミが追い付かん……」

 

まぁ、一つ一つ行こう。

 

「とりあえず、最初の疑問だ。外れないってのはどういうこった?」

 

《私が外せないようにしているのですよ。捉えた獲物は逃がさない。誰であっても……ふふふ…あっはっは!!これが私の数百ある奥義の一つ…束縛する運命!!》

 

……この五月蠅いのは無視しよう。視線をアリサに向ける。このデバイスは奥義とか言ってるが、実際にこの機能を付けたのはアリサだろう。

 

「それは…あれよ。戦闘中に万が一にも外れないようにロック機能を…」

 

「ふむ。アリサさんよ。人と話す時は目を見て話そうか?」

 

目をそむけながら言われても説得力皆無だ。もっとも、こんな反応をするアリサを見たのは初めてなので、表面上冷静を装っては居るが、俺も内心ドキドキだ…

 

俺の言葉にふぅ~っと、ため息を付くと。アリサはそのまま視線を逸らしたまま……若干頬を染めて…

 

「……その指に着けていて欲しかったから…」

 

くぁwせdrftgyふじこlp;!?

 

何だこれ?なんだこのアリサ…。

 

滅茶苦茶可愛いんだが……

 

普段、表情を変えない鉄面皮なところがあるくせになんだ今の表情は……

 

「……そ、そっか…」

 

「え…ええ」

 

ど、どうしよう。

 

やっとそう言葉を返したが、互いに沈黙。いや…どうしていいか分からなくて……

 

「……」

 

「……」

 

結局、何時もの俺たちに戻るためにはもう暫く時間が必要だった。

 

 

 

「……は、話を戻すわね。耕二のデバイスの機能だけど、そうね。耕二。セットアップしてみて…」

 

「セットアップか…」

 

なのはみたいに詠唱をしなければならないのだろうか?

 

なんだっけ、天が何たら……

 

天よ叫べ!!地よ!!唸れ!!今ここに!!魔の時代来たる!!

 

リリカルマジカルるるるるる~♪だっけ?さすがに覚えとらん…

 

《ふっ、私の後に続きなさい。心は熱く…頭は冷ややかに…》

 

呟きだした俺のデバイスに沿って、俺も台詞を紡ぐ…

 

《左手には焔の剣を。右手には凍てつく剣を。胸には燃え滾る熱き魂を》

 

……紡ぐ…

 

《……中略………祖は雷光。祖は疾風。否。祖は雷光より疾風より疾く駆けるもの》

 

紡…って、

 

「長ぇよ!!」

 

こんなの…覚えられん。つか、覚えたくない。

 

《あぁ…なんという事を……もう!最初からやり直しじゃない。今度は最後まで言い切りなさいよ。

我は漆黒の闇を総べる王…》

 

「嫌だよ!つか、最初と台詞違うだろ!!」

 

「耕二。別に念じればセットアップできるわよ?」

 

「早く言えよ!!真面目に繰り返していた俺が馬鹿みたいじゃないか!!」

 

「傍からみたら、中二病を患っている人のようだったわ。でも大丈夫。

どんなあなたでも私は愛せるから」

 

さらっと言うアリサだが。顔は真っ赤だ。つか俺の顔も真っ赤だ。あぁ、もういいや。

 

セットアップ…

 

《時の狭間を垣間見て……って、あぁっ!?》

 

一瞬、光が辺りを包む……なんて事はなく、何時の間にか俺の服装は変わっていた。

 

まぁ、そりゃそうか。毎度あんな目立つ変身シーンがあったら時間がもったいないし。

 

……で、改めて俺の恰好を見る。

 

服装は制服から和服…藍色の着流しに、緋色と白で彩られた外套。

 

腰には刀。

 

お侍さん風です。はい……

 

「バリアジャケットのデザインはジャックが考えたの。私は燕尾服の方がよかったのだけど…」

 

《ふふ、私の一票でこれに決まりましたわ。あの、伝説の剣豪。柳生景虎様風に色合いをアレンジした……まさに最高傑作ですわ》

 

……あぁ、もう何でもいいよ。

 

因みに柳生景虎とは婦女子に大人気な剣豪漫画の主人公である。

 

「刀はこの世界の……井関というお店からジャックが買ってきて………その形状をベースに作成したの」

 

ふむ。確かに…鞘から刀を抜刀してみれば、日本刀のような形状はしていても、見た目は機械的だ。

 

「基本的な魔法は既に組み込んであるわ。

適性があれば使えるはずだから…あとはデバイスに聞きながら試してみて」

 

「分かった。んで、此処までできているのにまだ6割なのか?」

 

デバイスの必要な機能は一通り実装されていると思うのだが…

 

「二つほど。まだ完成していない機能があるのよ。一つはあなたが使う魔法に関しての非殺傷設定の付与。これは、とりあえず現時点で仮実装済み。テストは耕二じゃないと出来ないから、後でお願い。そこで問題点があったら都度修正していく」

 

「なるほど……テストは分かった。んで、もう一つは?」

 

 

「問題はもう一つ……あなたのデバイスのワンオフアビリティ……構想は出来ているのだけど、現在の材料、技術での実現は不可能なの…」

 

俯くアリサ……いやいや……

 

「十分すぎるだろ。ありがとな…」

 

そんなアリサの頭を撫でながらお礼を告げる。

 

アリサと言えば、気持ちよさそうに目を細めて頭を撫でられていた。ふふ、久遠で磨き上げた俺の撫でテクを存分に味わうがよい。でだ…

 

「機能に関しては本当に文句ないんだが……」

 

「?」

 

「この待機状態が指輪っていうのはどうにか……いや、それはいいや。その……外れないっていうのだけ、どうにかして貰えないだろうか?」

 

そんな俺の頼みは…

 

「嫌♪」

 

滅多に見る事の出来ない…満面の笑みを浮かべたアリサによって却下されたのだった。

 

 

「話は変わるが……此処までできていて、渡すのを渋っていたのは何でだ?」

 

「……それは…」

 

ポツリポツリとアリサが語りだす。

 

言葉の端々には怒りが滲み出ている。

 

話を纏めるとこうだ。

 

デバイスを作成するに当たって使用していた端末に対してクラッキングを受けたらしい。

 

犯人はネット上で噂になっている天才クラッカー……『天使妖精』なる人物。年齢性別不詳。

 

防衛には成功したものの、置き土産にばら撒かれたウイルスによって、AIの性格が変動してしまったらしい。

 

俺のデバイスのAIにはアリサを、アリサのデバイスには俺の性格をベースにしたAIが組み込まれる筈だったのだが……

 

ウイルスの効果により、俺のデバイスは中二病に染まり、アリサのは…

 

「アクセル、セットアップ。」

 

《ふっ、だが断……ひぃ!?じ、冗談だよお、お嬢。お、おしおきは勘弁…》

 

へたれとなった。

 

「だから、性格を直してから渡そうかとも思ったんだけれど…」

 

《…やはりグランドマスターには逆らえない運命にあるのかしら……でも、此処で私が死んでもいずれ

第2、第3の私が現れて》

 

《ひぃ!?ご、ごめんなさい!ごめんなさい!》

 

「ちょと。それも可哀想になって……」

 

なんだかんだで優しいからなぁ。アリサは……

 

「別に俺は気にしないよ。アリサの方も…まぁ、それはそれでいいデバイスだと思うし」

 

何故ならば…

 

「そのバリアジャケット。凄い似合ってるな。なんていうか……安着な言い回しになるけど…可愛いと思うぞ」

 

アリサの姿は白を基調とし、桜の花びらが散らされた着物。

 

どこぞのお姫様のようだったから…

 

《当然だよ。何故なら僕が見立てたんだからね!!》

 

「急に得意げになったな……だが、いい。お前はいい仕事をした」

 

相手に身体はないが、男同士互いに心の中でサムスアップをする。

 

「な、何を言うのよ……」

 

若干顔を赤くするアリサ。ふふ、やられっ放しだからな。偶には反撃に出るもの悪くない。

 

それに嘘は吐いてないしな。

 

そんなやり取りの後、日も落ちてきたのでお暇することになり…

 

 

 

現在に至ると…

 

「もう…いいや、諦めた……というより、覚悟を決めたよ俺は…」

 

帰宅後にめざとく指輪を発見され、どんちゃん騒ぎとなったのは言うまでもない。

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