ちょっと短いかも
ついに原作が始まった。
それに気が付いたのは、オコジョからのSOSを受け取った…という訳でもなく。
高町なのはが魔導師となった為、日ごろの態度がおかしくなったから……という訳でもなく。
一本の電話だった。
「めずらしいな……仕事中に母さんが電話なんて…」
しかも用件は呼び出し。
そんな事を呟きながら、俺は母さんの勤務先である動物病院に向かっていた。
さっきまで一緒だった久遠は、俺が動物病院に行く旨を告げると、脱兎の……いや、狐だから脱狐の
如く逃げ出した。
あぁ、注射嫌いだもんね。久遠。
昔……理由は忘れたけど、久遠が注射を受けなきゃいけないって事になって。嫌がる久遠を那美さんが必死で説得し、それでも嫌がった久遠は逃走。
さざなみ包囲網によって、捕縛され。そのまま、病院に連行されたことがあった。
因みにさざなみ包囲網とは、ここいらの猫のボスたる美緒の号令をもとに、数十匹を超える猫たちに、包囲、追跡されるという恐ろしいものだ。
久遠が猫が苦手になったのは、時折いじめられるのもあるが、これが決め手だろう。
そんな訳で、一人さびしく病院へと辿り着き、中に入ると……
「あれ?耕二君なの」
「え?耕二?」
「耕二君?あ、やっぱり槙原って…」
清祥三人娘がおり…。そして……
あぁ、ついに始まったのか……
適当に挨拶をしつつ、母さんの所に行く。案の定、母さんが見ている患畜は……一匹のオコジョだった。
「あ、耕ちゃん。来てくれてありがと~。」
俺に気が付いた母さんがやってくる。なんでも、話を聞くに三人娘が息子と同じクラスだという事を知り、少しでも不安が和らぐようにと俺を呼んだらしい。
「この子は何日か此処に入院する事になってね。私はまだ他の患畜を見なきゃいけないから、耕ちゃん、あの子たちを送ってあげてね」
正直、面倒くさいが…母さんに言われたら断れないなぁ。
「っと言う訳だ。3人とも、このオコジョは母さんに任せて、帰ろうか。」
送ってくよ。と続けようとした所で…
「……そうね。此処でこうしていても仕方がないし。ちょっと、鮫島に連絡してくるわ。なのはも乗って行くでしょ?」
「うん。ありがとう。アリサちゃん」
……あれ?送……
「……あはは、ごめんね。耕二君。」
申し訳なさそうに告げるすずかちゃん。
いらねぇじゃん俺!!
かあさぁ~~ん!って、居ねぇし!!天然!?天然だからか!?
がっくりと項垂れる俺を尻目に、アリサは電話を掛けるために、病院の外へと向かい…
「あのね。耕二君」
「何?」
なのはが俺に声を掛けてくる。若干、威圧的な返事になってしまったが、まぁ、許してほしい。
「あの子はオコジョじゃなくて、フェレットだよ」
「どっちでもえぇわ!!」
ビシッとツッコミをいれる。もう嫌だ……。かぁ~えぇ~るぅ~~。
その日の夜……
『さっきの念話…聞こえた?』
アリサから連絡があった。あぁ、アリサにも聞こえたのね。リンカーコア持ちだし。
『聞こえた』
『……どうするの?』
『ほっとく』
俺たちが出しゃばらなくても、原作主人公がなんとかするだろう。
それに昼間の二の舞はごめんだ。
もう、一歩も動かねぇどーー!!
『いいの?』
『あぁ』
『……発信元、あなたの家の近くだったけど……』
『………』
あ…
『耕二?』
わ、忘れてたー!!。ユーノって今、うちの病院に居るんだった。
あの身体じゃ遠出はできないだろうし。
なにか?初戦はうちの近所で行われるのか?
じ、冗談じゃない。
『と、とりあえず。様子だけ見に行ってみる。あぁ、アリサは来なくていいぞ』
『……どうしてよ』
うわ、不機嫌そうな声…
『い、いや。可愛い女の子がこんな夜に一人で出かけるのは危ないしさ……』
『…可愛い……わかった。今日は家でモニターしてる。でも、耕二に何かあったら絶対に駆けつける。
気を付けてね』
さてっと………
念の為、スカラ、ピオリム……っと…重ねがけはいいか。
あとは…ステルスっと。よし、いくべ。
「道案内は頼むぞローズ……」
指先に光る指輪に話しかける。
俺のデバイス…ローズ。正式名称はヴェアトリス・オディール・ローズヒップなのだが、
あまりに長すぎるため、ローズと呼んでいる。考えるのが面倒なのでこのデバイスの望みどおりの名前を付けてやった。
さて、その俺の相棒たるデバイスはと言えば…
《えぇ~~あと三十分で流浪の菊が始まるんですけど……見てからじゃ駄目です?》
流浪の菊。あの新撰組の天才イケメン剣士沖田総司が明治で全国を流離い、悪人どもを倒す。一部で大人気の明治剣客浪漫譚……一言で言えばアニメである。
「録画してるだろ」
お前に言われてな。俺が何時もセットしてる。
忘れたら拗ねるもんな。お前…
《はぁ~~わかっていませんねお前様。いいですか?録画するのは当たり前。録画しつつ、リアルタイムで見るのが真のファンなので……って、あぁ、お前様!!》
うざく語りだしたローズを尻目にこっそりと外へ出て、現場へと走り出す。
きゃんきゃん聞こえる罵詈雑言は無視する。
しっかし、アリサの声で此処まで喋られるとやっぱ違和感あるな。多少は慣れたが…
つか…
「別に俺が何かする訳じゃないから、見てていいよ。TVの電波が入るならどこでも見れるだろ。」
タッタッタ…というより、シュババッという感じで疾走する。
結構気持ちいい。意味もなく、叫びたい。あぁ、ただただ叫びたい。
そんなノッてきた俺に対して…
《ところでお前様…何処に向かって走っているのです?》
その言葉に、ピタッと止まる。
とりあえず、動物病院に向けて疾走していたが…そうだな。移動しているかもしれない…。
「………ローズ。サーチャーを頼む」
《……これやったら、本当に私はTVを見ますからね》
呆れたようなローズの声……胸が痛かった。
サーチャーを元に現場へと到着。
よりにもよって、本当に寮の身近だった。
Uターンした……。ま、まぁいい。
気を取り直して、物陰に潜みつつ、様子を伺う。
現場は既に緊迫感に包まれていた。
正に一触即発。いつ戦闘になってもおかしくない雰囲気。
相対しているのは…4人…。いや、3人と一匹?で良いのだろうか?
互いの動きに注意しながら牽制し合う三人と、少しずつ遠ざかっていく黒い煙?のような…よく分からない物体。
オコジョは逃走したのか居なかった。
こっそりとサーチャーを飛ばしてみる。
~LIVE~
「死にたくなければ…そこをどけ。そいつは俺の獲物だ」
「はいはい、中二病乙。お前こそ、どっか行けよ。原作組に関わるチャンスなんだから」
「やっぱり二人とも転生者か……まぁ、そうだとは思っていたがな。まぁ悪いが、どちらも役不足だ。」
銀髪が現れた。
金髪が現れた。
アチャ男が現れた。
三人はいがみ合っている。
その隙に、黒い影は少しずつ遠ざかっていく……。
……なんだ?このカオス。
つか、とりあえずだなぁ……。
「…ローズさんや、ローズさんや」
《…何!?喋りかけないでって言ったでしょ!!幸い、CMだったからよかったものの!》
あぁ、怒ってるよ。いつものキャラが……なんかのアニメに触発された大和撫子良妻賢母キャラだっけ?
が崩れてるよ。
「すいませんが、一つ、結界の方をお願いできやせんかねぇ」
《…もう!本当にこれで最後だからね!》
言うや否や、足元に六芒星の魔方陣が敷かれる。
ミッド式でも、ベルカ式でもない術式。まぁ、この術式については、追々語るとして……
六芒星の魔方陣から俺の魔力を惜しみなく使い、結界が展開って……
「ローズさんや、時間がなかったのか知りませんけど、ちょっと雑すぎじゃありませんこと?」
広いよ、この結界。
《……》
返事がない。アニメに見入っているようだ。
ま、まぁいいや。此れで寮の平和は保たれた。
さて、三人はと言えば、結界に気が付いていないのか特に何の反応も見せず。
ただ、睨みあっている。
として、とうとう見えなくなる。黒い影……当初の目的を完全に忘れている。
まぁ、黒い影はほっといても結界内の何処かに居るだろから、いいや。
ってなわけで、今は三人の動向を探る。
まず、最初に動いたのは金髪。
「先手必勝!!食らえ雑種ども!!」
手を振り払う仕草と同時に、空間に穴が開く。
「「!?」」
咄嗟に身構える二人。しかし…何も起こらなかった。
「あれ?なんで?ほ、ほらっ、いけったらっ!!」
テンパる金髪。しかし何も起こらない。
「まさか…お母さん……」
そうか……また、捨てられたんだなぁ。
なんだろう。目から汗が……おかしいな。別に熱くないのに。
止まらないや。
ハーレム?させねぇよ!に対抗して、ひとり勝ち?させねぇよ!!
的な対抗馬を用意しようと思っていたんだが……
既にトップとの差が半端じゃない事に気が付いた。
いったい何馬身離れていることか……
どうすっぺ…
ま、まぁ。とりあえずは次回。銀髪VSアチャ男をお送りいたします。