パルプンテは最後までとっておく   作:葉虎

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更~新。自分的にはハイペース。

理由は暑くて家……というか部屋に立て籠もっているからという点が挙げられる。

後はマジ恋A-2が出る前で時間があったから


いい加減、無印を終わらさなければ…


第22話

 

思わず息を呑む。

 

目の前で起こっている一つの奇跡に…。

 

洋服を着て眠っているのは私の愛しい娘。

 

アリシア。

 

永久に目覚める事のない眠りについてしまった娘。

 

それを認めたくなくて…。あらゆる手を尽くしてきた。

 

そんな私の願いがもうじき叶おうとしている。

 

半信半疑だったが、あの莫大な魔力といま彼の両手で輝いている光を見ていると、それが現実を帯びてくる。

 

彼の手がゆっくりと動く。

 

描かれるのは十字架。アリシアの身体の上をなぞるように彼の両手で輝く光は十字架を描き。

 

そして…

 

「…ザオリク」

 

その十字架を描き終え、その上から手を翳しながら彼はそう呟いた。

 

「あ…あぁ…」

 

言葉にならない。

 

彼が言葉を呟いて暫くすると…

 

真っ白だった愛娘の肉体に赤みがさしていく。

 

そして…

 

「ん…ううん…」

 

瞼が動き…

 

まるで普通に朝、眠りから覚めたように。

 

「…えっと…お、おはよう」

 

身体を起こしたアリシアは、はにかみながらそう言った。

 

 

 

 

 

「アリシア!!」

 

ダッと駆け寄るプレシアさん。

 

それに気を使うようにサッとフェードアウトして、脇で見ていたクロの所へ向かう。

 

「ついにおにいちゃんは…神となった」

 

「何を訳の分からん事を…」

 

妙な事を口走るクロ。

 

「いや、だって死者蘇生だよ?おにいちゃんはどれだけ凄い事をしたか自覚あるの?」

 

「っていってもなぁ。あれは色々条件付けが居るし、肉体がある事とか、幽霊の状態である事とか…真に死者蘇生というなれば、いかなる条件下でも…肉体が無くても既に成仏していてもそれがきないとな。俺がやったのは単に霊体を肉体に戻して、つながりを復活させただけだ」

 

「いやいや、十分凄いから…」

 

呆れたように言うクロ。

 

そんなクロを横目にシアの状態を伺う。

 

無事成功してよかった。

 

シアにすがりつき涙を流すプレシアと困ったようにそれを宥めるシアを見てそう思う。

 

しかし、プレシアさんは凄いな。蘇生した後普通に動いてる。

 

肉体の劣化がまるでない。筋肉すらも衰えていないようだ。

 

そこに凄まじい母の愛を感じる。

 

「あの子…大丈夫かな」

 

そうクロが告げる。

 

視線の先にはジッとシアとプレシアさんの二人を見つめるフェイトとそんなフェイトにどう声を掛けていいか分からず困惑しているアルフの二人。

 

「大丈夫だろ。ほら」

 

指をさす。その先にはフェイトの視線に気が付いたのか…分からないが手招きをしてフェイトを呼ぶシア。

 

呼ばれるままにシアの近くに寄って行ったフェイトはそのままプレシアさんに腕を引かれ、アリシアと一緒に抱きしめられている。

 

そのまま何やら三人で言葉を交わし…

 

フェイトの目から涙があふれ、ギュッとプレシアさんに抱き着いた。

 

そんなフェイトの頭をプレシアさんは優しく微笑み、ゆっくりと撫でていた。

 

「……変わりすぎな気がするけど…あれ…誰?」

 

「あれが素の…アリシアが死ぬ前のあの人の姿だったとか…まぁ、演技には見えないし、いいんじゃね?当人が幸せそうなら」

 

クロとそんな話をしていると…

 

「よがった…よがったねぇ…フェイトぉ」

 

号泣するアルフが何時の間にやら近くに居た。

 

まぁ、何はともあれ…

 

「おにいちゃん。お疲れ様」

 

「あぁ…」

 

まだ色々と問題はあるが、この光景が見れただけで良しとしよう。

 

 

 

 

「…そう」

 

あの後、号泣しているアルフに帰る旨を告げ、海鳴に帰ってきた。

 

そのまま家に帰ろうかとも思ったが、その前に一人、事の次第を告げておく人物がいる。

 

そして洗いざらい経緯を説明したのだが…

 

「……ちょ、ちょっとおにいちゃん私まで巻き込まないでよ」

 

「……いや、お前が居た方が何時もの能天気スキルで場の空気が和むかと…」

 

「…どこが!?むしろ悪化しちゃってるじゃない!」

 

場の空気が重い。

 

それは不機嫌そうな顔をした一人の少女。

 

アリサから出ているものだ。

 

そして…

 

「……話は分かったわ。まぁ、私の知らないところでこれだけの事をしていたことに関しては…色々と言いたいことがあるけど、まぁ、耕二に言った所で無駄だものね。」

 

はぁっとため息を吐くアリサ。ふぅ、ようやく解放されると思いきや…

 

「……ちょっと来なさい」

 

「え?私!?ちょ、ちょっと…」

 

アリサは俺に待っているようにだけ言うとクロを連れて部屋を出た。そして待つことしばし…

 

「誤解して悪かったわね。これからもあなたとは良い関係を築いていきたいわ」

 

「も、もちろんです。末永くお願いします。ねえさま!」

 

……は?

 

ねえさま?

 

「……今まであなたの事を色々と勘違いしていた部分があったかもしれないわ。ごめんなさい」

 

「い、いいえ、そんな事…ねえさまにはいつも優しくしてもらって…じ、自慢の姉です」

 

……な、何が起こっている?

 

「ふふ、ねぇ。困ったことがあれば何でも言いなさい。大事な妹だもの…力になるわ」

 

……聞こえた話からすると二人は姉と妹と呼び合っているようだ。

 

あの退出の間にロザリオの授与でも行われたのだろうか?

 

まぁ、互いに金髪という事もあり、姉妹に見えなくもない。欠片も似てない2人だが。

 

ま、まぁいい。怖いからあまり深入りはすまい。話題を逸らすことにする

 

「と、所でさ、アリサはシアが生き返った事についてはどう思っているんだ?ほら、いつものありえないみたいな反応はしないのか?」

 

「えぇ、耕二がやる事に関して自分の常識に当てはめるのは正直バカみたいだもの。考えても無駄よ。結果だけ受け止めるわ。じゃないと私はノイローゼになるわよ」

 

呆れたようにそんな事を言われる。まぁ、気にしてないならいいや。

 

「で、私は良いけど…団長にはどうやって説明するの?」

 

「「あっ…」」

 

俺とクロの声が揃う。

 

結果的にだがアスターズで団長だけが何も知らない状態だ。

 

まぁ、魔法に関してもそうなのだが…

 

「……いまさら説明かぁ」

 

「…うん、絶対にイジけるよね?」

 

「かといってこのままずっと隠していてもバレた時、余計にショックを受けるわ。言うならこういうのは早い方が良い。」

 

そうだな…。

 

今まで幽霊だったシアが今度から生身で会うのだ。

 

シアが成仏したという良い訳をしてもいいが、その場合はもう二度とシアとは会えなくなる。

 

そんなものは誰も望んでいない。

 

「なんか…どんどん広まってるよな。魔法の事」

 

「耕二、あなたの力の事もね。後悔しているの?」

 

「いいや」

 

それはない。あのシアの嬉しそうな顔を見れたんだ。

 

「大丈夫だよ。何かあっても、みんなでおにいちゃんを護ってあげる。ね?ねぇさま」

 

「そうね。耕二の力に目を付けた有象無象が沸いてきたとしても…私達…いいえ、私があなたを護るわ」

 

「…あぁ、さんきゅ。だけど、事態はそんなに切迫してないから大丈夫……だと思う」

 

大丈夫だよね?

 

プレシアさんの研究者としての本能とか…

 

シアの何処か抜けている部分とか…

 

フェイトの嘘とかつけそうにない純真な部分とか…

 

不安要素はあるけど……だ、大丈夫なはずだ。

 

 

 

シアが復活してから数日が経った。

 

俺達はと言えば…

 

「え~それでは、僭越ながらアスターズの団長たる……俺が乾杯の音頭を取らせていただきます。このたびは~」

 

シア復活パーティーを時の庭園で開催していた。

 

かんぺを見ながらどもりながらもそんな事を言っているだんちょ~。

 

ちなみにカンペの内容は俺が考えた。

 

数々の宴会をこなしてきた俺だ。乾杯のあいさつなどお手の物。

 

やりたいと言うのでだんちょ~に任せてはいるけど…。

 

プレシアさんやフェイト、アルフからはあの子誰?的な視線になっているが、流石は団長。まったく気にしていない。

 

気が付いていないだけかもしれないけど。

 

参加者はアスターズの面々。プレシアファミリーといった少数なもの。酒も大人なのはプレシアさんだけという事もあり、置いていない。

 

こっそり紛れ込まそうとしたのだが、アリサに見つかってしまった。久しぶりに飲みたかったのになぁ。

 

魔法についてだが、事の経緯を告げ、隠していたことを団長に詫びたのだが、最初は確かにいじけていたものの、魔法を見せて欲しいとの願いに幾つか見せると…どうでもよくなったのか、直ぐにきらきらとした瞳で食いついてきた。

 

その結果、まぁ仲が悪くなくこともなく、アスターズの面々は良好な関係が築けている。

 

それどころかパーティを発案したのもだんちょーだ。

 

日取りは、シアが生き返った後、念の為、プレシアさんが様々な検査を行い問題ない事を確認したのち、行われる事となり…

 

今日、この日に開催されることになった。

 

「あっはっは、お疲れ様だね、耕二!」

 

バシバシッと俺の背中を叩きながら笑いかけてくるのはアルフ。

 

ここ最近、俺とアルフはかなり仲良くなった。というのも…

 

「あぁ、しっかし美味いな。これ…今まで食べた事のない味付けだ。今度作り方教えてくれないか?」

 

「いいよ!その代わりに耕二の作ったこの料理のレシピを教えておくれよ」

 

このパーティの料理各種を用意したのが俺とアルフなのだ。

 

最初は買おうとも思ったのだが、うちの義妹が猛反対し、折角なら手作りで祝いたいとかほざいた。

 

自分は料理が出来ないくせにだ。

 

んで、参加者…とはいっても主賓のシアは除いて、料理が作れるやつを募った所…

 

結果は俺とアルフのみ。

 

俺が料理を出来る理由は…まぁ、自衛のためだ。

 

父さんに何かあった時、母さんが動く。

 

すると…さざなみ寮に未曾有のバイオハザードが発生する可能性が出てきてしまうのだ。

 

それを事前に阻止するため、俺は父さんから料理教わったのだ。

 

なので、作れる料理のメインは洋食だったりする。

 

まぁ、普段はあまり作らせてもらえないが…それでも…

 

「がるるぅう。おにいちゃんのデザートは死守する。プリンに杏仁豆腐に…アンコ・ド・カンテーヌ!!さ、三種の神器がそろい踏み…ぜ、全部食べるぅうううう!!」

 

偶にデザートは作ったりする。

 

どういう訳か俺が作るデザートは寮のみんなに好評だ。

 

なかでも、プリン、杏仁豆腐、餡蜜は三種の神器とも呼ばれているらしい。なんか、その美味さは鬼神のごとし…なんたらとか講釈をクロが述べていたが…

 

普通に作っているだけなのだが、そん所そこらの店の者とは比べ物にならない程美味いらしい。俺にしてみれば普通だと思うけど…

 

作った際、一個でも余ると寮で女性陣を中心とした喧嘩が発生する。

 

人数分作って、余らないようにはしているのだが、何らかの事情で寮に帰れない人の分とかが余ってしまう。取っておくという選択肢は彼女らにはない。

 

あれば喰う。それが摂理だとか…

 

「ひっ…」

 

「ちょ、ちょっとクロがおかしいわよ。耕二、何とかして!!」

 

「あはは~♪そんなに美味しいの?じゃぁ、私も……って、クロちゃん。痛い、痛いよ!!」

 

早速、揉めているようだ。まぁ、

 

フェイトは怯えているし、

 

アリサは困惑。

 

実害はクロに噛みつかれているシアだけで、結局…クロが暴走しているだけだが。

 

やれやれ…

 

「やめぃ。一人一個ずつだ。三種類からどれか一個選べ!」

 

「ふ、ふぎゅっ!」

 

シアからクロを引っぺがして、説教をする。

 

「なっ、この三種からどれか…一個…だと!お、鬼の所業だよ!!選べるわけない!!」

 

「じゃぁ、喰うな!」

 

「嫌だ!!って、あぁああ、シア、何勝手に食べてるの!」

 

俺とクロがそんなやり取りをしていると、何時の間にかシアが杏仁豆腐を取って食べており…

 

「………うへぇ~♪」

 

締まりのない顔で何処かに旅立っていた。

 

「あぁ…おにいちゃんの毒牙にまた一人…」

 

「人聞きの悪い事を言うな。大体言う程のもんじゃないだろ」

 

俺も隣にあった餡蜜を一口食べる。ふむ…美味い。

 

美味いが別にそこまでいう程じゃないと思う。だが…

 

「黙れ!この味覚異常者め!!」

 

「…お前はいらないみたいだな」

 

その言葉に反応し、物凄い速さでプリンをひとつ手に取ると、フィンを展開し、離れたところへテレポートするクロ。そこまで必死にならんでも…

 

「確かに美味しいわね…というか……これは……耕二、何か麻薬とかそういう中毒性のあるものは入れてないわよね?」

 

「入れてねーよ。失礼な…」

 

アリサもプリンを手に取り食べている。だが、クロのように取り乱したりは…いいや、お前誰だ?なんか見た事もないほど頬が緩んでいるんだが…

 

そんなやり取りがありつつ…皆、パーティーを楽しんでいるようだ。

 

アルフとだんちょーは欠食児童のように料理を平らげ、

 

シア、クロ、アリサは女の子同士で集まり何やらお喋りに興じている。

 

俺は一歩離れたところからそれらを見つつ、飲み物を飲んでいると…

 

「……あなたにはお礼を言っても言い足りないわね」

 

同じようにその光景を見ていたプレシアさんに話しかけられた。

 

「別にいいよ。シアの為にやった事だから」

 

「…そう。でもね。それでもね。ありがとう。アリシアを生き返らせてくれて」

 

やめてくれ、そう面と向かって言われるとどう反応して良いか分からん。

 

「ふふ、照れているの?可愛い所もあるじゃない」

 

「からかわないでくれ」

 

さて……それよりもだ。

 

「これからどうするんだ?」

 

「……そうね。とりあえず此れはいらなくなったわね…」

 

プレシアさんが取り出したのはジュエルシード。

 

「それは、フェイトちゃんに集めさせていたロストロギアだな」

 

「そう。アリシアが蘇った今、これは必要ない。不法所持してたら管理局に捕まる恐れもある。だから、これは管理外世界に落ちた危険な物だからフェイトに集めさせて管理局に届けようとしていた…そういう方向に持っていけたらいいと思っているの」

 

「それでいいのか?あんたの身体の事は?」

 

「……気づいていたのね?」

 

「まぁな。霊感が強いせいか、死期が近い人間は見てて分かるんだよ。あいにく、俺の力じゃ外傷は治せても病は治せない。」

 

「……そうなの…当てが外れたわね」

 

言いつつ、ちっとも残念そうではないプレシアさん。その態度に少しイラつく。

 

「なんで思い残すことは無いみたいな顔してるんだよ。あんたはいいよ。目的であったシアが無事生き返ったんだから。だけどな、親を失ったあの二人はどうする?」

 

「……だからジュエルシードで私の身体を治せって?」

 

「あぁ、それも手段の一つだろうよ」

 

だが、プレシアさんはその気はないようだ。

 

ただ穏やかな顔でシアの様子を眺めている。そして…

 

「か、母さん…」

 

「フェイト…聞いていたの?」

 

迂闊にも…俺達は近くに来ていたフェイトの事に気が付かなかった。

 

そして…

 

「――っ!?」

 

「フェイト!待ちなさい!」

 

プレシアさんの制止を振り切り、フェイトは駆け出す。そしてそのまま転移してしまった。

 

 

 

 

 

 

フェイトが転移した後、集まっていた面々に事情を説明する。

 

聞き終え、真っ先にフェイトぉ~~と叫びながらアルフが転移した。

 

「って、何処探す気なんだあいつは…」

 

呆れたように言う。そんな俺の態度に…

 

「何を呑気な…私たちもフェイトを探しに行くよ!!ほら、耕二君!!」

 

シアが怒り、急かす。とはいっても…

 

「やみくもに探しても見つからないわよ?少し冷静になりなさい。」

 

そんなシアをアリサが諫めたところで…

 

「お、おい…大丈……って、うぉっ!?」

 

だんちょ~が慌てた声を出し、視線を向ければ

 

「お、お母さん!!」

 

意識を失い、倒れかけたプレシアさんを支えていた。

 

 

あの後、治療設備が整っているという事で、アリサの自宅兼ドクターJのいる研究室にプレシアさんを運んだ。

 

「一通りの処置は施したが…正直、生きているのが奇跡じゃな。あまり長くは持たんぞ」

 

ドクターの名は伊達では無かったらしい、てきぱきと処置を施し、プレシアさんの容態をそう告げた。

 

けど、この人…デバイスの技師だよね?やっぱりあれか?頭のいい連中は医学とかさまざまな方面に通じているのか?それとも年の功?ま、まぁ、処置してくれるならいいや。

 

「クロ、シアを頼む」

 

「う、うん。」

 

フェイトが居なくなり、プレシアさんまで倒れた事で憔悴しているシアをクロに任せて…

 

「さて、どうするか…だな」

 

俺、アリサ、だんちょ~で今後の事を話し合う事になる…

 

「な、なぁ!お前の魔法でプレシアさんは何とかならないのか!?」

 

「無理だな。治療魔法は病気には効かない。その他にもう一つ、治す見込みのある方法は…ある事にはあるが…現状ではその手も使えないんだよ」

 

「その理由は?」

 

アリサの問いに、俺はポケットに仕舞っていた小瓶を取り出す。

 

「それは?見たところ中身は空……いいえ、よく見ると底の方に光ってる砂があるわね」

 

「あぁ、これは時の砂。プレシアさんを助けるにはこの砂がある程度必要なんだ」

 

時の砂の呪文。サンズ・オブ・タイムを使用するのに必要なアイテムだ。

 

この呪文の効果は時間を操り、若返ったり、元に戻したりすることが出来る。記憶はそのままでだ。

 

なので、この呪文で病気になる前の状態に戻してしまえばよいという訳だ。幸い、先天的な病気ではないし。

 

「その砂は何処で手に入るの?」

 

「破邪の迷宮……だが、確実という訳じゃない。現に今の今まで見つけた砂を集めてまだ、これだけだからな」

 

「……前に空の宝箱の前でごそごそやってたのはそれを集めていたからなのね」

 

呆れたようにそう言うと、顎に指を添えるようにして考えるアリサ。だが、それも一瞬の事で…

 

「……取りあえず、フェイトは身の危険が迫っているという訳でもないし、シアのお母さんを優先した方が良いわね。とは言っても、場所は破邪の迷宮……耕二、明日から学校を休める?」

 

「あぁ大丈夫だ」

 

多分、細かい事情を話さなくても、人助けという事だけ伝われば平気。本当に良い両親に恵まれたもんだ。

 

「それじゃ、私と耕二は至急、時の砂を集めるわ。ジャックはシアの母親の容態を…シアはお母さんに付いていなさい。クロはシアの事をお願い。そして、団長…一人になってしまうけど……フェイトの捜索をお願いできるかしら?」

 

「え?お、俺一人でか…」

 

ふむ、確かにだんちょ~一人ではきつい物があるな……。

 

それに暴走したジュエルシードともし遭遇したら身を守る術は無い。

 

調べたところ団長にも魔力はあるらしい。それもAAという結構高い魔力ランクだ。

 

しかし、デバイスが無い。ストレージならあるが、ぶっつけ本番。ジュエルシードの暴走から身を護れるのかが不安だ。インテリジェンスならある程度カバーしてくれるのだが…

作っている暇は無く。貸そうにも俺とアリサは迷宮に行くので当然デバイスは使う。

 

それに一人で探したところでたかが…って、あっ!?

 

「大丈夫だ。強力な助っ人を用意する」

 

「助っ人?」

 

そうだ。俺には頼りになるアイツらが居た。

 

「話は今日中に通しておく。動くのは明日からだ」

 

取りあえずこの方針でアスターズは動くことになる。あ、そうそう…

 

「あと、だんちょ~。金は渡すから明日集まる際にKAL ○AN買っといてくれ」

 

明日からだんちょ~の指揮下に入る予定の頼もしい助っ人だ。直々に労ってやってくれ。

 

 

 

 

翌日

 

再びアリサの家に集まった面々。学校は皆サボりのようだ。

 

「それで、助っ人っていうのは?」

 

「あぁ、大多数にはもう動いて貰っている。そしてこの子が通訳兼護衛の…」

 

「…くおん」

 

昨日とは違い一人メンバーが追加されている。

 

それは協力をお願いした久遠(幼女ver)。

 

本来人見知りなこの子に頼むのは気が引けたんだがけど…

 

「こうじ、くおんたすけてくれた。だからこんどはくおんがたすける。がんばる」

 

……こんな事言われたら…言われたらさぁああ!

 

マジで欲しい…久遠。那美さんと本気で交渉しようかな。

 

話が逸れた。と、ともかくだ。

 

だんちょ~にこれだけは言っておかないと

 

「俺はこれからアリサと迷宮に行くわけだが…だんちょ~、もし…もし久遠に手を出したら……斬るから」

 

久遠を見て、若干だんちょ~の頬が赤くなったのを俺は見過ごしてはいない。

 

俺も男だ。この愛くるしさにそういう反応するのは…まぁ分かる。

 

だからこそだ。警告はしておかないと。

 

デバイスを展開し、鯉口を切りながら脅す。

 

コクコクと凄い速さで頷いてくれた。頼むぞ?俺に友を斬らせないでくれ…




デザートですが、神様から貰った能力は関係なし。耕二の生まれながらの力です。

さざなみ寮のサラブレットは伊達じゃない。

さて、よいよ無印がクライマックスに突入しつつありますが、いまだ管理局の姿は見えず(笑)

もうそろそろ介入予定です。でも書くかどうかは……。だって、主人公…迷宮に潜っちゃってるし。

書くとしたら別サイドですかね。

後、書き方を最初プレシアさん視点で、次に耕二視点で書いてますが、特に○○viewとか書かなかったんですけど、分かりますよね?分かりづらかったら直します。

金髪君、銀髪君は体調不良により、学校を休んでいる状態なので出しませんでした。

後、感想で時折話題のサンズ・オブ・タイムをとうとう出しましたが、発動に枷を設けてみた。そうじゃないとあっさり無印が終わっちゃう上に、万能すぎちゃうんで……。

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