パルプンテは最後までとっておく   作:葉虎

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第6話

「時空管理局?」

 

アリサの衝撃的な宣言の後、数日が経過した。

 

俺たちの関係は以前と殆ど変わっていない。お昼ご飯を屋上で一緒に食べ、時間が合う時に一緒に下校する。

 

ただ、幾つか変わった事もある。一つ目は、アリサとの距離が縮まったことだ……物理的に。

 

前はある程度、間隔をあけていたのが今は寄り添うように座っている。最初はドキマギしたものだが、最近は慣れた…。

 

二つ目は会話内容がお互いの過去とか結構深い内容まで話すようになったことだ。俺の秘密である前世の記憶があるという事と、ドラクエの魔法が使えることは普通にアリサに知られてしまった。

 

別に話すつもりはなかったのだが、気が付けば話していたという始末。

 

なんか、どんどんアリサの術中に嵌っていっている気がする。

 

今日も今日とて魔法関連の話をしていて、出てきたのはリリカルなのはでお馴染みの、あの組織の名前だった。

 

「そう、ジャックが色々言ってた。魔法を使うならば知っておくべき組織だって…」

 

ジャック・ヴァルド。アリサを引き取った爺さんの名前。

 

引き取りに応じたアリサの今の名前はアリサ・R(ローウェル)・ヴァルドとなっている。

 

『まぁ、将来は槙原アリサになるし、耕二は普通にアリサって呼べばいいからあまり関係ないけど』

 

とか臆面もなく言い放ったのがつい先日の事である。アリサさん…マジパネッス。なんど思ったことか…

 

「へ、へぇ、どんな組織なんだ?」

 

過去を思い出し、赤面しそうになるのを誤魔化すためにアリサに問いかける。

 

その問いかけでアリサが話してくれたのは、大体原作の管理局と相違ない事だった。

 

「此処は管理外の世界だから管理局の干渉は殆どないけど、まったくないわけじゃない。現にジャックみたいなミッドチルダの出身者が移住してるし、この世界から魔導師になった人も何人かいるみたい。国の上層の方では管理局に繋がっている人とかも居るみたいだし…」

 

……ふむふむ、原作でリンディさんがこの世界の通貨とか住むところとか…つか、戸籍とかを得られたのはその辺に関係があるのかね?

 

「問題は此処から、管理局は慢性的な人手不足。そこに私とか耕二のような高ランクの魔力を持つ人間の事を知られたら…

ましてや、希少な能力を持ってる。」

 

確かに俺もアリサもレアスキル持ちといっても語弊がないからな。特に俺なんて死者蘇生もお茶の子再々だし。

うわっ、嫌な予感しかしない……。

 

「しつこくスカウトとかされそうだよなぁ」

 

「それだけならまだいいわ。中には手柄の為に強引な勧誘を行う人も出てくるみたい。最悪のケースは武力とか…」

 

うわっ、そりゃ確かに最悪だ。色々な人間がいるからなぁ。ましてや出世のために何でもするような奴とかの一人や二人は居るだろう。

 

「だから、私たちには自分を守る術が必要。だから放課後に家に来て」

 

「ん?なんでそうなるんだ?」

 

な、何か嫌な予感が……

 

「ジャック達が鍛えてくれるそうよ。耕二の話をしたら一緒につれてくるように言われたわ」

 

「い、いや~~俺にはこの力があるからいらな…「一緒に来るわよね?耕二」……はい」

 

な、何故だ!!修行とか練習とかしたくないからチート仕様にしたのに…

ジュエルシードとか闇の所とかスカさんとかにも関わる気がなかったのに…

原作組との遭遇も避けたのに…

どうしてこうなった?

 

 

「ほぅ、おぬしがアリサの言っておった小僧か……」

 

アリサに引きずるように連れてこられた一軒家……というかアリサ邸は見た目普通の洋式の家だった。

 

エレベーターなんてものがなければ…

地下室なんてものがなければだが…

 

地下にあるどこぞの研究所のラボのような所で俺たちを出迎えたのは、長い白髪、丸いサングラスの爺さん。

 

……つか、何処のドクターJだよ。

 

見た目、羽根つきの機械人形を作成した。とある科学者を連想させる。

彼こそが、ジャック老。アリサを引き取った爺さんだ。

 

挨拶もそこそこに、爺さんは後に続くように言い放ち、俺たちを置いて歩き始める。

 

このまま付いていかずほっといたら面白そうだと考え、直立する俺を、させじとアリサが手を取り後に続く。

 

連れて行かれた先は、天井も壁も真っ白な部屋だった。

 

だが、俺たちが中に入り、ドクターJ(今後、心の中でこう呼称することにした)ことジャックさんが空間に浮かんだコンソールを物凄いスピードで操作すると……

 

なんということでしょう……

 

一面真っ白な殺風景な部屋が、壁も天井もない……荒野に早変わり。

 

これぞ匠の技……。

 

脳内でやたらカッコいいBGMが流れたのち、やたら心に残る声のナレーションを妄想していると……

 

「ふむ、準備は整ったの。さて…さっそくお主の力を見せて貰おう。なぁに遠慮はいらんよ。此処ならいくら暴れようと問題はない」

 

そんな事を言い出したドクターJ。

 

……マジか!?

 

テンションが上がる。何故なら、今まで攻撃系の呪文は満足に使えなかったのだ。

 

バーン様クラスの魔力の場合、例え最弱の呪文を唱えたとしても、威力が高すぎて練習する環境はなかった。

 

今まで、魔力を抑えに抑え…最高でもガスバーナー程度の炎、バスケットボールクラスの氷塊とかしか出来なかったのだ。

 

だが、此処なら全力で……メラが使える!!

 

「メラ!」

 

全力のメラを唱える。指先には小さい火球。アリサ達が口を開く前に、ピッとその火球を飛ばす。

 

そして…地面に火球が着いた途端に……

 

巨大な火柱が上がった。

 

うぉおおおお!!キタキタキタぁああ!!これがメラだ!いや、違う此処は…

 

「…今のはメラゾーマではない…」

 

「メラだ…」

 

キリッっと告げる。ふっ、決まった。

 

この上ないどや顔で、アリサとドクターJの姿を伺うが……

 

な、何っ!?まさかの無反応だと!?はっ!しまった。こいつら元ネタ知らないじゃん!!うわっ、恥ずかしっ!

 

「ひ、ヒャド!」

 

俺は誤魔化すように呪文を唱えた。

 

一瞬で火柱の上に氷の塊が出来ていき、重力に従って氷は火柱の下に落下。炎と氷で水蒸気が発生する。

 

「バギ」

 

巨大な真空の刃が水蒸気を吹き飛ばす。うぉっ、テンション上がってきたぁ。

 

「デイン!」

 

轟音を立てて雷が降り注ぎ、大地を焦がし…

 

「ギラ!」

 

指先からレーザーの如き閃光が空間を切り裂き……

 

「イオ!」

 

無数の小さな球体が飛んでいき、爆発を起こす。

 

よし、次は中位クラスの……「も、もうよい!!」えぇーーー。こっからなのにぃ…

 

メラミを唱えようかという所でドクターJのちょっと待ったコールが入った。

 

「な、なんという出鱈目な力じゃ…。」

 

「わ、私も驚いたわ……」

 

「各系統への魔力変換資質もさることながら、込められた魔力量は、Sランクに匹敵する……。しかし、驚嘆すべきはその威力もさる事ながら、その若さで力をコントロールできている事じゃ。」

 

ライタークラスの炎からなんでもござれだ。チート能力ですいません……。

 

「他にはどんな事ができるのじゃ?あぁ、試さんでも口頭でよい」

 

ちぇっ。先手を打たれた。でもなぁ、補助系はマジで反則技が多いからなるべく隠して置きたいんだよなぁ。

 

あっ、そうだ……。後あれがあった。

 

「幽霊が見えます」

 

父親譲りの霊力で幽霊が見えること。ただ、莫大な霊力を誇る父さんと比べたら俺はあんまり霊力を持っておらず、とても刀に纏わせて切るなんてことは出来ないらしい。薫さんがそう言ってた。霊丸…ちょっと憧れたんだけどな。

 

いいんだ…いいんだ……。ギラを指先に集中して霊丸もどきなら撃てるから…

それにその分、俺の霊力は見ることに特化し、気配が希薄な幽霊もはっきり見える。

 

幼いうちは能力の制御が出来ず、ずっと霊が見えたり…日常生活に支障が出ることもあるらしいんだが、

俺は自分の意志でオンオフが出来る…。

此れも特典の③転生後、自身の能力を自由自在にコントロールできること。(アフターリスクなし)のお蔭なのだろう。

 

まぁ、薫さんの指導で多少の訓練はしたが……。

 

俺の言葉に二人の反応はというと…

 

「霊?そんなものいるわけないわ」

 

「そうじゃの。心霊現象は大抵科学で説明できるからの」

 

幽霊を信じようとしない。訝しげにこちらを見ている。

 

つか、アリサさんよ。あんたが否定しちゃダメでしょ。とらハ3の幽霊少女め。

 

二人に十六夜さんを引き合わせたら…いや、こんな下らない事で俺の癒し系2トップの片割れである

彼女にご足労頂くのは忍びない……御架月でいいや。どんな反応をするだろう。

 

「あとは…ちょっとだけ剣術をやってるかな…」

 

始めたのは四歳くらいだったろうか…真雪さんに頼んで日門草薙流を教えてもらっている。

気が向いたときに1日5分……真雪さんの戦闘可能時間の分だけ。

 

最近は3分と何処かの宇宙人と同じ時間しか戦えないが…とりあえず技は大体覚えた。

 

きっかけは、知佳さんのノートパソコンを覗き込んだ際に発見した。

仁村妹・人生設計表・恋愛編である。

 

そのステップ12 手を繋ぐの条件は以下の二つ。

・寮のメンツと面談

・仁村姉相手に試合で十本中一本取る

 

このうち面談は問題ないと思うが、問題は二つ目の条件だった。

 

知佳さんに惚れこんでいる俺としては、最大の障害たる真雪さんを剣によって打倒する必要があった。

 

何時の日か真雪さんに勝利し、知佳さんとのんびりゆったりとイチャイチャして過ごす……

その為に真雪さんから剣を学び、敵の技を知れば、後は若さが有利。ドラクエの補助系の呪文も合わせて使用すれば、

同じ技を使うのだ…俺の勝利は揺るがない。

 

その為だったら、嫌いな修行もちょっとの間だけなら、耐えられる。

 

そんな打算から、【さざなみのだらけきった師弟(義姉さん命名)】は誕生したのだ。

 

師匠はあれでも、モシャスにより真雪さんに化け、技を実際に振るい体に覚えさせる + 特典③転生後、

自身の能力を自由自在に以下略……のお蔭でみるみる上達していった。

 

庭で木刀を振るうたびに複雑そうな表情で父さんが見ていたのは少し気にかかったが……。

 

「それとな……多分そこらの奴より運動神経がいいと思う」

 

これは美緒の影響。つかあいつと遊んでいれば嫌でも体力は付く。

 

身体は大人、頭脳は子供?というどこぞの名探偵とは真逆の猫娘は、ガキ相手でも容赦がない。

 

おまけに猫娘パワーなのか分からないが、あいつの身体能力は異常なほど高い。あの戦闘民族のサラブレッドであり、修行をしている美由希と互角以上なのだから相当だ。

 

中でも一番のトラウマは鬼ごっこだ。隠れるの有りの。

 

美緒との鬼ごっこは何時も一対一の勝負なのだが、あいつは猫を使って人の位置を探り、追い掛け回す。

 

隠れるという手段が取れないのだ。

 

奴の『行くのだぁーーー!!』の一声で十匹を超える猫どもに揉みくちゃ…もふもふ地獄……いや天国か?

を味わったのは昨日の事に思えてくる。

 

 

「後は…これでも歌が上手い!」

 

なんせプロ仕込み。ゆうひさん直伝だ。

 

転生前はギターも弾けたんだが、今は分からん。この身体じゃコードが抑えられないし……指が届かん。

 

「あと、料理も覚えるつもりだ」

 

これは危険回避のためである。曲がり間違って、母さんと寮で二人きり…お昼時……なんてシチュになったら…死ねる!!

 

 

「耕二…あなたってなんでもありね……」

 

話を聞き終え、呆れたようにいうアリサ。いや、こうして思うと俺も大概チートだと思うけどさ…。

 

「後半から、段々と話がズレてきておったが…それでもお主が普通の小僧ではないことはよく理解できた」

 

ドクターもアリサと同様の反応……。つかさ…

 

悪いのは俺じゃない!!あの異常な…魔窟であるSAZANAMIが悪いんだ!!

 

あそこに普通と呼べる寮生なんて俺の知る限り一人も居ないんだぞ!!

 

そんな場所に住んでみろ!!普通でなんて居られないから!!

 

 

「んで、いきなり色々やった訳だけど、どういう意図なのさ」

 

俺たちは地下からリビングに場所を写し、アリサが淹れた紅茶を飲んでいる。ふむ…美味い。アリサめ……できる。

 

「アリサから聞いておらんか?お主を鍛えるためじゃよ。もっとも、必要はなさそうじゃが…」

 

呆れたように言うドクターJ。

 

「お主は既にある程度の戦うための土台はありそうじゃからな……。後は実戦経験を積みさえすれば、問題はなかろう」

 

んな…特典に頼り切りで、週に数回の適当な自己訓練とだらけた師匠を持つ俺を過大評価し過ぎじゃないかい?

まぁ、訓練が嫌だから黙ってるが…

 

「実戦訓練はアリサがある程度、戦えるようになるまで待って貰うとして……後はデバイスかの」

 

「そこからは私が……耕二。私は今、ジャックからデバイス作成の技術を学んで、自分のデバイスの作成をしているの……

それでね…」

 

アリサにしては珍しく言いづらそうに、目を伏せつつ…

 

「ジャックのような一流の技術者が居るなら、そっちに頼んだ方が良いとは思ってるんだけど……ね。それでも…

あなたのデバイスは……私が作りたい!あなたの身を守る盾を…あなたの敵を倒す剣を……あなたの半身となる相棒を……」

そこまで言い切ると、アリサはまっすぐに俺の目を見て…

 

「お願いします。私にあなたのデバイスを作らせて下さい」

 

頭を下げた。

 

その返事は…考えるまでもない。

 

「あぁ、頼む…いや、こちらこそお願いします……かな?」

 

技術はドクターJの方が遥かに上だろう。だが、俺の事を此処まで想っている人が何処にいる?

 

俺は確信する。

 

例え、俺がどんなに良い技師に巡り合っても、デバイスを手に入れても……。

 

俺の相棒と呼べるデバイスを作れるのは、やはり相棒と呼べる彼女…アリサだけなのだと。

 

 

 

俺の返事にアリサはしばし俯き、目元を擦ると……

 

「ふぅ~。それじゃ、耕二のデバイスの仕様から考えないとね……何かリクエストはある?」

 

「そうだな……ちょっと、憧れてるのはあるけど…技術的に難しいかも……」

 

「ほうほう…なるほどの、面白い事を思いつく小僧じゃ。既存の技術では不可能じゃの……さて、アリサよどうする?」

 

「作るわ……生涯かけてでも最高の物を作って見せる。ふふ、いい目標が出来たわね」

 

「ふむ…じゃがのぉ。それだけでは折角の小僧が持っておる力が活かせ切れない部分がでてくるのぉ」

 

「だったら、こうするのはどうかしら?」

 

「ほぅ、そうくるか……。じゃが此処は…」

 

「あら、それなら…」

 

えっと…

 

俺が最初の意見を言った直後から、アリサとドクターJの二人はあーでもない、こーでもないと話し合いながら空間に出現したモニター見せ合いつつ、キーボードを高速で打ち込んでいく。

 

かぁ~やぁ~のぉ~そぉ~とぉ~

 

「……お邪魔しました」

 

ぐすん…帰ろっ。

 

そう思って席を立つと

 

「何処に行くの?耕二にはまだ各種データを山のように取ってもらわないといけないわ」

「そうじゃっ!ほれ、行くぞ!!時間がもったいない」

 

先ほどまで放置プレイをしてくれたのは誰だと理不尽な気持ちを抱きつつも、拒否権は無く…

 

ガシッと肩を掴まれ、ずるずると連行されていく……。

 

 

翌日…俺は転生して初めての…

 

朝帰りをした……

 

 

連絡は前もってしていたのだが、帰ると父さんと母さんはからは軽く叱られ……

 

その後、さざなみ寮で初お泊り記念!なるENKAI!が発動され、夜通し喧騒が止むことはなかった。

 

 

願わくば……神よ。

 

俺を寝かせてくれたまえ……。

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