たった三人の財団職員はキヴォトスで何をするのか?   作:Bar_00

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よく分かんないけどよぉ!!全盛期の財団なら異常な大陸の一つや二つの隠蔽は楽勝なんじゃねえの!?

ほな、現実改変で世界吹き飛ばすね…


「コンテニュー?」章は強力な財団が見たい方にはお勧めできないので、第二章「新しいパーティで始めますか?」から閲覧すると良いかもしれません。


注:本作品に両作品のアンチヘイト要素は存在しません。財団側とキヴォトス側の人物は自らの意思に基づいて動きますが、作者は両者に対して公平です。対立し、戦うこととなったとしてもその勝敗に私のヘイト要素はありません。



コンテニュー?
SCP財団は存在しない


 

 

 

人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。

他に我々を守るものはいない、

我々自身が立ち上がらなければならないのだ。

 

人類が健全で正常な世界で生きていけるように、

他の人類が光の中で暮らす間、

我々は暗闇の中に立ち、

それと戦い、封じ込め、

人々の目から遠ざけなければならない。

 

 

 

確保、収容、保護。

— ”管理者”

 

 

 


 

 

朝野博士はサイト-8142の職員生活棟の一室で、薄暗い部屋に一人静かに座っていた。部屋はただの一室、マンションの一室のような、穏やかな家具が並んでいる場所だ。食事をするであろう場所に彼は財団製のパソコンを開く。

 

外からは時折、遠くの銃撃音と風の音が微かに聞こえるだけだ。本来そのような銃撃音は起こることがないのだが。

 

起動したデバイスの画面に、警告の文字が表示されているのを見つめながら、朝野博士は深いため息をついた。その息は、何の反響もなく部屋の中に消えていった。

 

 

 

 

 

警告:

本デバイスはガニメデプログラム*1が所有者によって起動されたことにより全てのネットワークから独立・隔離されています。

 

稼働サイト: 1

活動職員: 1

活動AIC: 0

収容下にあるアノマリー: 0

 

 

 

"一人…" それが彼の心の中で反響する。周囲のすべてが静まり返り、彼一人だけが取り残されている。本来ならばどの項目も四、五桁はある筈なのだ。この異常事態に、彼一人が立ち向かわなければならないという現実が、無意識のうちに彼の胸を圧迫していた。ここから出る術はなく、誰も来ない。それは、まるで死んだような静寂の中にいるかのようだった。

 

朝野博士は思わず手のひらを顔に当て、目を閉じる。目を開ければ、その現実が、目の前に広がるのだから。

 

 

 

ログインにはパスコードが必要です。本デバイスはレベル4職員の所有物であり、証明の失敗は保安用情報災害による意識シャットダウン処理と機動部隊アルファ1("レッド・ライト・ハンド")の動員をもたらします.続行しますか?

 

input.続行.

 

無表情でキーボードを打ち込みながら、派遣する機動部隊などもう存在しないだろうと自嘲する。結局は、彼一人でこの世界を見届けなければならない。そのことに心のどこかで諦めのようなものを感じていた。

 

 

 

"自分は何をしているんだろう?" という、かすかな自問が浮かぶが、それすらもすぐに飲み込んでしまう。

 

 

黒き月は吠えているか?

 

 

input.ただ衰えるのみ.

 

朝野博士はその問いに答えるように、淡々と入力を続けた。もはやその問いにさえ、何の感情も湧かなかった。何もかもが崩れていった。彼が知っていた世界、あの時間、あの人々はもういない。何もかもが虚無に飲み込まれて、消え去ったような感覚だ。

 

現実改変、それがこの世界を歪めた。だから、何もかもが終わった。終わったんだ。

 

 

アクセス承認。ようこそ朝野博士。

 

ご希望のファイルを選択してください。

 

 

その通知音が響く。報告書を開く。これから書かねばならない。必要がないにしろ。

 

 

input.SCP-001-JPにアクセス.

 

了解しました!要求されたファイルを開いています……

 

どの提言にアクセスしますか?

 

input.新規作成。コードネーム:朝野.

 

 

 

全てが終わった世界の中で、何かを記録することに、どれほどの意味があるのだろうか。しかし、やらなければならない。財団らしく。

 

次々とキーボードを叩き続ける。デバイスがデータを読み込んでいく。

 

 

 

 

アイテム番号:SCP-001-JP

 

オブジェクトクラス:Keter。クソ野郎。Apollyonになんてしてやるか。

 

特別収容プロトコル:

現在の財団における実質的な資産がサイト-8142の職員生活棟と倉庫、レベル4職員*2一名のみであるため、現時点での収容行為は不可能です。

 

 

 

「クソ野郎」誰が、何が、こんなこと(再構築シナリオ)をしやがった。朝野博士は言葉を呟く。誰も聞いていない、誰もいないこの部屋で。彼の心の中には、怒りが湧き上がるが、それもまた虚しさにすぐに飲み込まれていく。自分がしていることに、果たして意味があるのだろうか。SCP-001-JPの収容も、もうできるはずがない。だからこそ、この報告書を書いても、誰が読むのか、それすら分からない。

 

彼はキーボードに向かって黙々と入力を続ける。その手は震えていないが、心の中では、何かが壊れていく音がしていた。

 

 

 

担当職員である朝野博士はSCP-001-JP文明への適応、CKクラス:「再構築」シナリオであるE(イベント) -001-JPの被害状況と文化•地理•歴史の把握が任務として割り当てられます。

 

 

「割り当てられるなんて、冗談じゃない。」 朝野博士は苦笑する。一体私以外の誰が割り当てているんだ?しかし、その笑顔はどこか空虚で、心から出ているものではない。もう、何をしても無駄だと思っている自分がいる。が、やらなければならない。報告書を仕上げなければならない。それが唯一の義務だと、心に言い聞かせている。

 

彼の手は再び動き、説明欄が画面に映し出される。

 

 

 

説明:

SCP-001-JPは後述のE(イベント)-001-JPによって発生した「キヴォトス」と称される大陸です。E-001-JPによって発生したSCP-001-JPの大きさは不明ですが、SCP-001-JPに存在する知性体の証言と書籍から大陸の直径は約3000〜4000kmと推定されています。

 

測定機器が存在しないため朝野博士の証言に基づきますが、SCP-001-JPの大気はEVE*3粒子濃度は霊地レベルほどに高く、環境アキヴァ*4も聖地レベルであると考えられています。

 

 

キヴォトス。この異常な大陸の話。近代的都市と社会を形成し、人々が生活している。この世界で生きる者たちは、どんな気持ちで毎日を過ごしているのだろうか。朝野博士の脳裏に、そんな疑問が一瞬浮かぶが、それを深く考えることはなかった。

 

 

 

「終わったんだ。」 彼は心の中で繰り返す。世界が変わり、すべてが崩れていった。自分が知っていたものはもうない。残されたのは、ただの虚無だけだ。

 

 

 

 

SCP-001-JP-S、SCP-001-JP-A、SCP-001-JP-Rの三種族によってSCP-001-JPの社会は構成されています。

これら三種族は「タイプブルー/魔術師」に分類されます。無意識的な奇跡論*5の行使を行うことで現実歪曲*6を発生させ、銃撃等の攻撃に対して強力な耐性を持ちます。そのため喧嘩道具として威力の高い武装を積極的に使用する傾向にあります。

 

 

 

SCP-001-JP-Sは「生徒」と称される人類の少女期の形をとった人型実体です。朝野博士により後頭部から不可視•非実体のアキヴァ放射体が観測されています。このアキヴァ放射体がEVEを肉体に供給していると思われます。

 

SCP-001-JP-Aは「獣人」と称される既知の動物の特徴を持った二足歩行生物です。人間と同程度の知能を有します。脳が存在すると思われる頭部からEVEが発生しています。

 

SCP-001-JP-Rは「ロボット市民」と称される人型の機械です。人間と同程度の知能を有します。人体における心臓部からEVEが発生しています。

 

SCP-001-JP-Sの一部は政治活動を、SCP-001-JP-A、Rは経済活動を行うことで社会として成立しています。

 

行動観察に基づき、SCP-001-JP知性体がヒトと極めて類似した知能構造と、一部の認識を除いて一般的な日本人と極めて類似した感情構造をもつという仮説が立てられています。

 

SCP-001-JPでは現代日本語が唯一の実用言語として使用されています。しかしながら看板や装飾などにはラテン語や英語が部分的に使用されていることがあります。

 

 

 

 

我々の「異常」がここでは当たり前なのだ。もう、何を信じればいいのか分からない。それでも、彼は手を動かし続けるしかない。誰も来ない、何も起こらない、この部屋の中で。

 

 

 

E-001-JP:

E-001-JPは20██/██/██の日本標準時██:██に発生した現実改変事象です。サイト-8142のKant-Nets*7、EVE-Nets*8警報が作動していなかったため、「瞬間的に発生した」、「警戒網に引っかからないほど小規模に行われた」、「過去改変」の可能性が挙げられています。その規模は少なくとも太陽系です。

 

 

 

太陽系規模の現実改変。この事象の影響を受けた人々、世界。すべてが変わった。そして、もう元には戻れない。

 

朝野博士はその一行を見つめながら、心の中でそれを受け入れている自分を感じていた。彼の目は、ただの虚無を見つめているようだった。もう、何もできない。ただ、報告書を完了させる。それだけ。

 

 

 

メモ:

これを誰が読むというんだ? -朝野博士

 

 

その言葉が、すべてを物語っていた。書いても、誰が読むのか。何のためにこれを続けるのか。朝野博士の心は、とうに無力感と虚無に支配されていた。終わりのないループのように。

 

 

 

 

ふと窓の外をみた。雨が降っていた。窓の外は暗く、そしてコンクリート舗装の道路に突如として花が咲く様子などはない。朝野博士はベットに倒れ伏した。

 

どうやら宇宙はまだ終わらない(Noと言わない)らしい。

 

「いい天気だ」

 

とりあえず彼はポテトチップスを開けることにした。

おやつでも食べてから考えよう。もう滅んだなら時間はいくらでもあるわけだ。

 

 

*1
財団における電子的な防疫処置のことです。サイトごと、もしくは個人のデバイスを独立化し、財団ネットワークから排除することでミーム汚染/認識災害/情報災害から所有者、もしくはネットワークに接続されているデバイス保持者を保護します。

*2
朝野博士

*3
魔術に使用されるエネルギー

*4
環境における神聖度

*5
いわゆる「魔術」の財団における名称です。

*6
現実の法則を捻じ曲げること。

*7
全世界に設置されたカント計数機によって現実改変の予兆を発見することを目的とした監視網です。

*8
全世界に設置された奇跡量測定器によって大規模な魔術の予兆を発見することを目的とした監視網です。




「SCP財団とは」
読んでおくと後々の役に立つかもしれません。
http://scp-jp.wikidot.com/about-the-scp-foundation

「ミーム汚染/情報災害/認識災害」
認識するとヤバいものです。例えばその画像を見ると文字通り死ぬまで笑わせられたり、心停止が発生したりします。記憶を消したり、それぞれの「対抗ミーム」なるものを摂取することで対策可能です。そのため財団ネットワークの機密保護のために使用されることもあります。

「機動部隊」
財団におけるSWATやSAT、特殊作戦群的な立ち位置です。異常存在に対する戦闘など様々な任務がそれぞれに割り振られています。
本作品に登場した機動部隊アルファ-1(“レッド•ライト•ハンド”)は財団のトップたち直下の部隊であり、最も厳格に機密性を有する時に使用されます。ちなみにこちらも再構築シナリオで吹き飛んでます。
http://scp-jp.wikidot.com/task-forces

「オブジェクトクラス」

Apollyon:捕まえられないし世界が滅びそう。このクラスは滅多に使われない。
Keter:捕まえられない。世界が大丈夫な時もあるし大丈夫じゃないときもある。

これだけ覚えてくだされば問題ないです。

本来Pending(調査中)だとTiconderoga(収容の必要無し)などが割り当てられるべきですが、あくまで「Keter」なのは朝野博士の僅かに残った意地です。

こちらが参考になるかもしれません。
http://scp-jp.wikidot.com/object-classes


「SCP-001-JP - 機密解除待ち[アクセス禁止]」
SCP財団知らない人だとこれ何言ってんのというか感じになると思うので見なくても良いと思います。財団の根源に関わる特殊な文書が複数存在します。その大体がダミーで本物はどれか一つといった感じです。朝野博士は登録されていないナンバリングを知らないのでとりあえず001-JPに登録しました。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-001-jp




次回「日誌エントリ」


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