たった三人の財団職員はキヴォトスで何をするのか?   作:Bar_00

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年が終わる前に二連チャンで投稿。

なんか一万字超えてて草。


機動部隊アルファ-1

 

 

 

 

魔術師/タイプブルー

 

財団には多数のタイプブルー(魔術師)が在籍しています。これはキヴォトス人特有のEVEの多さから来るものです。しかしながらキヴォトス人のEVE(魔素)のピッチ(Pitch)に個々に偏りが存在し、相性が存在するため、使用可能な奇跡論は一部である場合があります。しかしながら相性が良く、使用可能な奇跡論は強力に行使することが可能です。

 

キヴォトス人の多くは儀式的に奇跡論を発動させることが可能ですが、現場の戦術行動として強力な奇跡論を行使できる人間は極めて希少です。そのような人間は一部の機動部隊に配備されるか、奇跡論部門の職員として配属されます。

 

 

奇跡論の財団外部への漏洩を防ぐため、その知識は思考検査を通り抜けた職員に制限されています。また、技術漏洩を防ぐために奇跡論を肉体に刻印すること*1と、発動補助装置としての「EVE溶液保管容器」の身体埋め込みは一部の機動部隊のみに制限されています。

 

 

 

 

「ふむ、アルファ-1?中々期待されている部隊のようですが…調べてみましょうか」

 

 

機動部隊アルファ-1(“レッド・ライト・ハンド”)

 

機動部隊アルファ-1はO5評議会に直接報告を行う部隊で、作戦上最も厳格に機密性を要する状況で投入されます。この部隊は財団の中でも最も忠誠心のある隊員で構成されています。

 

 

アルファ-1は財団が再創設されて以来、初めて結成された部隊らの一つであり、全員がSCP-001-JP-S(生徒)タイプブルー(魔術師)で構成されるとともに、部隊員4名中の2名が奇跡論の精密な行使が可能です。

 

 

人員名簿:

 


 

コードネーム:"アルファ"

 

機動部隊アルファ-1の指揮官。

肉体強化奇跡論の精密行使が可能であり、瞬間的に一部分を強化することも可能。

 

得意技能:近接格闘/小隊戦術指揮

 

使用武器:FN SCAR-H(トリジコンACOG搭載)/12mmショックブラスター(Gen+技術使用)

 

肉体刻印奇跡論主軸:肉体強化奇跡論(全身)

肉体刻印奇跡論副軸:防御奇跡論

 

 


 

コードネーム:"ベータ"

 

運転役。スナイパー。

 

得意技能:四輪車両、機体の運転や操縦/スナイプ

 

使用武器:Remington 700(M24)/12mmショックブラスター(Gen+技術使用)

 

肉体刻印奇跡論主軸:一部肉体強化奇跡論(視神経)

肉体刻印奇跡論副軸:防御奇跡論

 

 


 

コードネーム:"シータ"

 

初見殺し。魔術師。

 

得意技能:生成した水の精密操作/奇跡論

 

使用武器:H&K MP5A5(ホロサイトとマグニファイア搭載)/12mmショックブラスター(Gen+技術使用)

 

肉体刻印奇跡論主軸:水生成/操作奇跡論

肉体刻印奇跡論副軸:防御奇跡論

 

 


 

コードネーム:"デルタ"

 

オールラウンダー。

 

得意技能:タンク/バイクの運転/ロッククライミング

 

使用武器:MPS AA-12(32連ドラムマガジン搭載)/12mmショックブラスター(Gen+技術使用)

 

肉体刻印奇跡論主軸:防御奇跡論

肉体刻印奇跡論副軸:肉体強化奇跡論(全身)

 

 

 

 

財団の報道系フロント企業のカラフルなヘリが、臨時で接収されて空へと舞い上がっていた。

 

内部には、ただ一つの目的があった。サイト-8142を襲撃している敵特殊部隊に機動部隊アルファ-1を運ぶことだ。

 

報道ヘリには武装(ミサイル)もセンサーもない。ただ、任務にあたる部隊のメンバーが頼れる唯一の武器だ。それぞれが持ち場に立ち、迅速に状況を分析し、行動を開始する。目を強化することができるアルファとベータが索敵していた。

 

「アルファよりベータ。動きあり。目標(敵特殊部隊)4名は進行方向より2時の200m先。おそらく射線は通っていないものと思われる。」

 

アルファの冷静な声が、ベータの耳に届く。ベータは、この状況下で自らの最も重要な武器を駆使する───視力だ。センサーのない機体内から、目視だけで周囲の動きを的確に捉えることができる。アルファも似たようなことはできるが、そこまで強力には見ることができない。

 

「ベータ了解。こちらでも確認した。敵スナイパーの射線確認。閃光弾(フラッシュグレネード)で牽制したい。アルファ頼む」

 

ベータの指示が飛ぶ。正しい情報(敵射線あり)と無言の無力化要請を理解したアルファは即座に頷く。

 

「アルファ了解」

 

彼女の体はすでに戦闘モードに入っている。

 

EVEを肉体に刻まれた魔方陣に流し込み、瞬間的に筋肉を引き締め、物理的な限界を超えて右側乗降扉から閃光弾を放った。

 

目に見えない矢のように投げられ、途中で一瞬発光した閃光弾(フラッシュグレネード)は、あくまでスナイパーを盲目にするためのものだ。しかし、いくら身体強化されたとはいえ、物理的にはビルの遥か遠くに届くことはない。その閃光の波動は、ただ暗闇に慣れたスナイパーの目を狙った。

 

数秒後、アルファが無言で報告を始めた。

 

「アルファよりデルタ。敵スナイパーの視線沈黙」

 

その瞬間、ヘリの周囲が一気に静寂に包まれる。誰もがその身体的感覚に基づく情報を疑わない。

 

スナイパーの視界が奪われ、部隊にとって貴重な時間が生まれた。アルファは冷徹に次の命令を出す。

 

「デルタは10時方向のビルに着陸せよ」

 

デルタはその指示をすぐに受け入れた。オールラウンダーであるデルタは、もはやアルファ-1に不可欠と言っていい存在だ。バイクやヘリの運転技術はもちろんのこと、ロッククライミングや戦闘技術も兼ね備えている。ベータ無しでの操縦が必要な今、ヘリを安定して操縦するのは彼女の役目だった。その技術は、仲間よりも奇跡論を精密に行使できないデルタが、いつでも仲間をフォローできるように努力の末に習得されたものだった。

 

 

「デルタ了解。その後、遠隔運転権限を司令部に移行する」

 

デルタが機体の操縦桿を握り直すと、ヘリは急激に方向を変え、10時方向に向かって下降を始めた。その間も、彼女の指先は落ち着いており、周囲の状況に敏感に反応している。まるで風のように、ヘリは軽やかに廃ビルに接近していく。

 

ベータがその動きを確認し、周囲の警戒を強化する。すべての視線は、今やビルの上へと集中していた。アルファは指揮を執り、仲間たちを守るべく準備を進める。

 

ヘリがビルの屋上に着陸し、デルタが迅速に機体を固定し、すぐさま遠隔操作を司令部に移行した。

 

 

「行動開始。事前ブリーフィング通り、これより先は高坂管理官に指揮権を移行する」

 

アルファの声が響いた。

 

 

 

直前ブリーフィング:機動部隊あ-3("立ち鳥")S班が残した情報をもとに。

 

 

敵特殊部隊(アリウススクワッド)はスナイパーが孤立している。そのため、

 

アルファ、ベータ、シータは高坂管理官の指揮のもと、敵サブマシンガン(秤アツコ)、敵アサルトライフル(錠前サオリ)、敵ロケットランチャー(戒野ミサキ)と戦闘。

 

近接戦闘に長けている敵アサルトライフル(錠前サオリ)にアルファを、

サブマシンガン(秤アツコ)、敵ロケットランチャー(戒野ミサキ)ベータ(スナイパー)シータ(魔法使い)と高坂管理官で対処。

 

その間にデルタ(タンク)は単独でスナイパー(槌永ヒヨリ)を無力化する。無力化後、合流。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デルタ、ですか?」

 

「そうですねぇ、彼女は(アルファ)とシータのように奇跡論が精密に行使できるわけでもありませんし、スナイプが上手いわけではありません。しかし防御奇跡論の適性はバッチリであり、根性があります。タンクとして、そして努力家で多才ですから、オールラウンダーとして非常に有用です」

 

「デルタはアルファ-1に必要な人間です」

 

 

 

 

 

 

スクワッドの三人から少し離れた廃ビルの屋上で、アリウス分校の狙撃手、槌永ヒヨリは先ほどの閃光弾の直視から回復した目を使って、着陸したであろう敵部隊(アルファ-1)を見つけることに注視していた。ヒヨリの心中には「財団」という未知の敵への恐怖と、失敗した時の叱責があったが、理性でなんとかそれを抑えていた。

 

一方、アルファ-1のデルタは、飛ばしていたドローンからの情報を元に敵狙撃手(ヒヨリ)の正確な位置を特定し、慎重に接近していた。キヴォトス人特有の身体能力を駆使し、音もなくビルの壁面をロッククライミングの要領で登り、ヒヨリの背後に迫る。

 

集中するヒヨリは微かな物音にかろうじて気付き、振り向いた瞬間、デルタが飛びかかってきた。

 

 

 

しかしヒヨリの顔は極めて冷静で、相手の動きを見極めることに集中している。デルタのフルバイザー越しの視線は不明だが、その姿勢から、ヒヨリの一歩先を行くかのように感じられる。

 

(時間稼ぎ…)

 

ヒヨリは近接戦闘で邪魔になるNTW-20(メインアーム)を放りつつ、心の中で呟く。

 

私はサオリ姉さんのように近接では強くない。私のこの状況の仕事は、仲間(スクワッド3名)が戦闘で勝利し、駆けつけるまでの時間を作ること。

 

デルタは静かに足を踏み出す。反射的にヒヨリがサイドアーム(拳銃)を何発か撃つと、デルタはその動きに合わせて素早く身をかわし、ヒヨリの腹部に鋭い一撃を繰り出す。

 

(だけどサオリ姉さんよりかは少し遅い…!)

 

ヒヨリはそれをかろうじて避けるものの、デルタの手のひらから放たれた強力な一撃がヒヨリの肩を掠め、衝撃が走る。

 

 

しかしながらサオリの教えはそれだけでは無い。拳銃から一度片手を離し、抜くのはナイフ───。そのままデルタのプロテクターで守られていない部分を探して刺すか、切るかしようとする。

 

だが、財団はそんなことお見通しだ。

我らの機動部隊エージェントの柔肌が何度突き破られたか。我々が何度装備を改善し、化け物(アノマリー)相手に実践投入し、改善してきたか。

 

簡単に刺突物(ナイフ)が刺さるような箇所は存在しない。

 

ヒヨリは一か八か、顔面のフルバイザーに対して攻撃しようとする。しかし遅かった。デルタはバックステップで華麗に回避する。

 

一瞬の膠着が生まれるが、その瞬間、デルタが腰から取り出したのは「12mmショックブラスター」。Gen+の財団最新技術が使われており、並大抵の部隊には配備されない超一級品拳銃である。そのため、メインアーム(MPS AA-12)よりも威力は高く、取り回しも行いやすい。欠点は拳銃故、装弾数が少ないことだろうか。

 

そのため、大体の配備部隊がこれ(ショックブラスター)()()()として扱う。

 

ヒヨリの目の前でその巨大な拳銃(ショックブラスター)が放たれる瞬間、音が屋上を震わせた。ヒヨリは本能的に身を低くし、持っていた大容量のバックパックを盾にする。

 

デルタはその瞬間に命中しないことを悟ったが、脳味噌の信号は既に送信されている。彼女は敵に威力の程を知らせてしまうことを悔やんだ。

 

バックパックから伝わる衝撃は、バックパックがあることを抜きにしても凄まじいものだ。

 

「こんな武器を…」

 

ヒヨリは内心驚きながらも、冷静に動きを再開する。バックパックを盾にするため握り直して立ち上がり、ナイフとともに再度デルタに向かって突進した。

 

デルタはまた一歩後退し、再びショックブラスターを構える。

 

だが、ヒヨリはその間隙をついて、26kgあるスナイパーライフルを携帯できるほどの怪力によってバックパックを投擲、瞬時に接近戦に持ち込んだ。

デルタはバックパックを避けきれず、その重量は彼女の脚部に鈍い痛みが走らせ、バイザーの向こうの顔を歪めさせる。

 

ヒヨリはナイフを振るって、デルタの装甲の隙間を狙おうとする。しかし、デルタは予想以上に冷静で、迅速に反応する。

 

ヒヨリのナイフがデルタの腕をかすっても、デルタが表情を見せることすらない。

 

その目には確固たる意志が宿っている。しかし、それがヒヨリの気持ちを揺るがすことはない。彼女の任務は、仲間を守ること。どんなに強力な武器を持っていても、どんなに格闘技が上手くても、今は時間を稼ぐだけだ。

 

ヒヨリは引き続き、デルタとの間合いを取る。デルタはその一撃一撃に力を込めてくるが、ヒヨリはその間隙をつかみ続ける。二人の戦いは、まるで決着がつかないかのように続いていた。

 

だが、その食糧事情の違いにより、体力切れはヒヨリの方が早い。プロテクターや装備の差も防御性能さもデルタの方が優秀だった。ヒヨリの心には自己嫌悪が広がる。

 

最後の力を振り絞って抵抗するも、デルタの鋭い蹴りでヒヨリは地面に倒れ込んだ。息を切らしながらも、彼女は薄ら笑いを浮かべ、「痛いですよね…苦しいですよね…」と呟く。

 

デルタが止めを刺そうと近づいた瞬間、ヒヨリは隠し持っていたC4の起爆装置を握り締めた。

 

「どうせ、これが私の運命…」そう呟くと同時に、彼女は起爆スイッチを押し、爆発が屋上を包み込んだ。こうしてあの人を無力化しても、サオリ姉さんは喜ばないだろうな。でも私はここで死んでもいいので、姉さんは上手くやってください。

 

爆煙が晴れると、そこにはヒヨリとデルタの姿はなく、瓦礫だけが残されていた。ヒヨリの自己犠牲的な行動は、彼女なりの最後の抵抗であり、悲観主義に囚われながらも、仲間のために最期まで戦った証であった。

 

だが───

 

 

「クソッ」

 

デルタは戦闘不能になっていない。肉体を塞いでいたコンクリートを振り払ったデルタは自身の肉体の疲労を省み、戦闘方針を格闘戦を控え、銃撃による援護に変えなければならないと感じた。アレ(ヒヨリ)はスナイパーにしては格闘が出来すぎていた。

 

「スクワッド、面倒だ…」

 

 


 

 

 

 

アルファは、無表情な顔で静かに立っていた。彼女の体は筋肉と鋼鉄のようにプレートで包まれており、その強化された身体能力は圧倒的だ。右肩にはトリジコンACOGを搭載したFN SCAR-Hがぶら下げており、冷徹な目でサオリを見ている。

 

「お前、何を考えている?」 アルファは低い声で言った。

 

一歩一歩踏み込むごとに圧力が高まる。鍛え上げられたその体は、まるで鉄壁のように硬く、無駄な動きが一切ない。サオリに対する圧倒的な自信を隠すことなく放つ。

 

()()()()()()、かつてトリニティが追放した学園だと聞いている。こんなこと(財団襲撃)をして何になる?」

 

対する錠前サオリは、冷徹な表情を保ちながらも、その姿勢は柔軟だ。黒いキャップと白いコートが風に揺れ、長い黒髪がなびく。彼女の持ち物は、SIG516 Patrol、サイドアームのP226、そして何よりナイフだ。その鋭い視線から、彼女の戦闘スタイルが如何に冷静か、そして攻撃的かが伝わってくる。

 

「トリニティを滅ぼすことに繋がる」サオリの声は低い。「ただ、目的を果たすだけだ」

 

「そうじゃない。復讐する必要があるのか?」

 

「あるさ」

 

「いいや、ないね。少なくとも、アンタは()()()()()()()()()()()。アンタに…、それ(復讐)は必要ないだろ?自分の周囲を守るためだけに戦───」

 

 

サオリが動いた。アルファの言葉を否定するように。

 

彼女はSIG516を構え、すぐに連射を放つ。その弾丸は、空気を切り裂き、アルファの頭部を狙った。しかし、アルファは瞬時に肉体強化奇跡論を発動させ、全身の反応速度を引き上げる。

 

「遅い」

 

アルファはそのままサオリに向けて非直線的に走るだけで、すべてかわしきった。

 

 

 

サオリは反応した。引き金を引くのではなく、ナイフを抜き取ると同時にその身をひねって距離を詰め、アルファの攻撃をかわしつつ一撃を放つ。彼女のナイフがアルファの腹部に向かって飛んだ。

 

だが、アルファはその動きも計算していた。

 

装備に刺突物(ナイフ)が刺さるような箇所は存在しない。サオリは自身の技量ならばそれを貫けるものと考えたが、残念ながらそれはイメージの域を出ない。

 

ナイフはアルファに傷をつけない。

 

アルファはそれを利用し、顔面にその強化された拳を叩き込もうとする。

 

サオリはその装備と拳の強力さを同時に理解し、頭を少し傾けることで拳を避ける。

 

つづけてアルファの一瞬の隙を突くように、今度はSIG516 Patrolをもってして、入り込んだアルファの懐から引き金を引いた。

 

サオリの強力な神秘によって強化と発射を行われた弾丸4発程度がアルファの防護装備とフルバイザーの一部をひどく歪ませた。その威力に、アルファは反射的に一歩引いた。アルファはサオリを少し強い生徒と同レベルの神秘(奇跡量)であると無意識に誤解していたことによる致命的な油断を理解した。

 

感覚的に銃弾に神秘(EVE)を込めることは、一般人には難しくとも、一定レベルの強者にとって簡単なものだ。どうやら、彼女あ-3(立ち鳥)のS班に対して本気を出していなかったらしい。

 

「やるな」アルファは後方に倒れながら言った。しかしそれはアルファが倒れることを意味しない。強化した腕筋肉と脚筋肉をもってしてバク転し、サオリから20mほどの距離をとる。続けて見にくくなってしまったフルバイザー付きのヘルメットを放ろうとした。

 

サオリはナイフ(サイドアーム)を腰から取り出しつつ、ヘルメットに手をかけているアルファに突進する。

 

サオリは全力で駆け出し、アルファとの距離を瞬時に詰めた。サオリの力強い一撃が、アルファの無防備の首に迫る。

 

「終わりだ」サオリは長年の経験から確信して言った。アルファは死ぬ。

 

その瞬間、アルファはサオリの胸元に強烈な一撃を叩き込んだ。その隙は意図的に作られた隙だった。サオリの体が吹き飛び、ある住宅の壁に激しくぶつかる音が響く。

 

「終わりだ」アルファは意趣返しに言った。

 

だが、サオリは両膝をつくが、意識を失うことなく、むしろその痛みにもかかわらず立ち上がる。彼女の目にはあきらめはない。

 

「終わりじゃない」

 

サオリは全身の力を振り絞り、再度アルファにメインアームを構える。

 

アルファはもはや彼女の土俵(近接格闘)で戦う気はなかった。認めよう。彼女の戦闘センスは素晴らしい。そして()()()()()()()()

 

彼女の全力神秘の銃撃がアルファに迫る。

 

アルファはそれを受け止めるが、無視する。アルファは周囲の破壊された拳大のコンクリート片を拾い上げ、肉体に刻まれた身体強化奇跡論にEVEを込め、綺麗なフォームでサオリに砲撃(投擲)した。

 

サオリは面食らう。

 

「な───!」

 

「終わりだ」

 

意識消失。脳震盪。ブラックアウト。

暗転。

 

 


 

 

 

財団機動部隊(Mobile Task Forces)の運用における朝野博士の役割

 

 

背景

 

サイト-8142初期防衛時における機動部隊あ-1の配備に伴い、以下の現象が確認されました:

•朝野博士/高坂管理官が指揮官として任命された際、部隊全体の戦闘効率が顕著に向上。

•朝野博士/高坂管理官不在時に別の指揮官が指揮を執った場合、武器威力や装備性能の低下、および戦術的連携の混乱が発生。

 

この現象の調査により、朝野博士/高坂管理官が指揮官として関与することで、SCP-001-JP知性体のEVE活性化が確認されました。朝野博士/高坂管理官の「ヒト、もしくは大人」としての特性と、EVEを多く持つ実体との象徴的な関係が「人と神との契約」に類似すると仮定され、EVE活性化が促進されているとされています。

 

 


 

効果

 

 

朝野博士/高坂管理官を名目上の司令官とすることで、以下の恩恵が確認されています:

1.武器・装備性能の向上

•威力、精度、耐久性が強化。

 

2.部隊員の精神安定と恐怖耐性の向上

•パニック状態や士気低下の抑制。

 

3.チーム全体の連携および戦術判断力の向上

•一体感の強化と即応能力の向上。

 

4.奇跡論能力の向上

•奇跡量の一時増加、精密操作能力の向上

 

 

1~3の強化幅は朝野博士の方が高くなる傾向になります。

高坂管理官の1~3の強化幅は朝野博士ほどではありませんが、項目4の向上幅は高坂管理官の方が高くなります。

 

 


 

運用方針

 

•朝野博士は名目上の司令官として全機動部隊に配置されます。

•実質的な現場指揮はSCP-001-JP由来の知性体が担当し、効率的な指揮を実現。

•朝野博士の存在がEVE活性化を促し、機動部隊全体の戦闘力を向上させるため、この配置を標準化。

 

 


 

注意事項

 

•現象が能力向上に留まらず、未確認の影響を及ぼす可能性があるため、他部門や全職員への適用は現時点で保留されています。

 

 


 

結論

 

朝野博士を名目上の司令官とするシステムは、財団機動部隊の運用効率を飛躍的に高めるものであり、戦略的優位性を確保する重要な手段です。同時に、この現象の詳細な調査を継続し、潜在的リスクを監視する必要があります。

 

 

 

 

 

 

"私が指揮する。任せて"

 

 

大人(高坂管理官)は言った。大人というテキストは朝野管理官と比べて微弱ではあるが、キヴォトス人としての肉体強度と奇跡論能力の向上はそのデメリットを帳消しするものだった。アルファ-1は高坂管理官の指揮によって120%の力を発揮することができる。

 

 

『ベータ了解』

「シータ了解」

 

既に銃撃戦は開始されている。どうやら相手はリーダー(サオリ)と分散して我々に対応するつもりらしい。

 

 

"ベータの狙撃が当たり次第、シータと私が前進する"

 

 

相手からロケットランチャーが発射される。シータは奇跡論の使用を試みようとするが、隠れているミサキの姿を正確にイメージできずに失敗する。ロケットランチャー弾頭はシータと管理官が隠れていた建物の壁を吹き飛ばす。

 

シータは管理官の後に続けて路地裏の奥に退避する。

 

ミサキとアツコは追いかけるために路地裏に向かおうとするが、ベータの狙撃に阻止される。少し強い程度の生徒では一撃で倒れ伏すその一撃はアツコの頭部に命中するが、神秘がスクワッドの誰よりも高い彼女には効果が薄い。

 

「嘘だろ?」ベータは唖然とするが、直ちに狙いをミサキに変更する。

 

ミサキは煙幕弾を展開する。キヴォトス特性の煙幕弾は人類が生み出したものよりも素早く広がり、ベータは視認できなくなる。ミサキは数秒間の静寂の間に次の一手を考え、急いで位置を変える。

 

夜間でも夜目が効くベータはサーマルスコープを必要としないが、このような状況(煙幕)では付ける必要があった。

 

サーマルスコープ(AN/PVS-10)を自身のM24に取り付け、発砲を再開しようとするが、反応は存在しない。ベータは場所を変える必要があること、敵が訓練されたかなりの手練れであることを理解した。

 

 

 


 

 

路地裏での遭遇戦は財団側が先行した。

 

 

"シータ、()()"

 

「了解」

 

「赤血操術」

 

奇跡論第二法則「部分は全体に影響を及ぼす」。これは魔法使いがローブと魔女帽子をつける理由だ。イメージが奇跡論に影響を及ぼす。

 

あの漫画のアニメーションのイメージはシータによく理解された。

 

 

百斂(びゃくれん)

 

生成した水を加圧して限界まで圧縮する。これをイメージすることは難しい。できると意識することも。イメージを鵜呑みにできることはシータの才能そのものだった。

 

穿血(せんけつ)

 

百斂(びゃくれん)」により固めた水の塊を両手で挟み、一点から解放することで鉄をも切り裂くウォーターカッターを発射する。

 

「姫!悪いけど防御頼んだ!私は指揮官を狙う!!」

 

アツコは手話の手間を惜しんで反応しないが、ミサキはそれでヨシとした。

 

 

 

 

ふと、気配に気が付き上を向く。

 

 

"デルタ!ロケットランチャー持ちに!!"

 

路地裏に隣接する3階建てのビルの屋上から飛び出てきたデルタは、指示に従い、ミサキに向かって着地しようとする。激しい格闘はできないだろうが、意識を向けさせる程度はできる。

 

ミサキは冷や汗をかきながら、飛び込んでくる攻撃を避けるが、心の中でひときわ強い恐怖が胸を締め付ける。

 

 

なんでこんなに頑張ってるんだろう。

 

 

デルタは転がり、落下の衝撃を減らす。

アツコはミサキの支援を考えるが、シータと指揮官の相手をして留めなければならないことを理解する。

 

前進し、デルタの相手を避けながら、ベアトリーチェも認める強力な神秘を込めて手榴弾を放つ。

シータは魔術師感性によって()()()()()を認識し、すぐさま下がる。

 

 

手榴弾が爆発するまでの数秒間でデルタを鎮圧する必要がある。

 

 

デルタは当てが外れてしまったことを悟った。

 

アツコは消費した神秘をすぐさま回復し、デルタに対して全力で射撃する。

 

デルタはミサキを盾にしようとするが、ヒヨリの自爆の影響で上手く体が動かずに銃弾を受け止める。

 

明らかにバックパックよりも強い衝撃。

 

 

だが、肉体に刻まれた防御奇跡論に全力で神秘(EVE)を込めることで気絶を防ぐ。

 

爆発。

 

 

高坂管理官とシータは、路地裏で拾った木材と水の膜によって分散する破片を防いでいた。

 

 

穿血(せんけつ)

 

 

狙われたミサキはなんとかそれを避けるが、発射され続けたウォーターカッターによって服を両断される。キヴォトス人の肉体強度はそれを"激痛"程度で済ませる。

 

 

デルタはシータに向けて"限界だ"というジェスチャーを送る。

 

シータは頷いた。

 

彼女(シータ)は全力の神秘(EVE)を込めた手榴弾をデルタごと二人を無力化するために投げ込んだ。

 

 

ミサキは冷静に、そして悲観的に考えても、もう無理だという結論に至った。

 

 

だけど、こんな私だけど、これだけはやらなきゃいけないな。

 

マダムもアツコ()を悪いようには扱わないだろう。

 

 

「姫、逃げて」

 

 

───コクリ。

 

 

 


 

 

 

「姫、こちらに」

アリウス督戦隊の一人がアツコに声をかける。先ほどまでアツコも彼女らを認識できなかった。

 

……(うん)………(分かった)

手話で会話し、彼女らと合流する。

 

(ごめんね。みんな、ありがとう)

 

 

 

 

「ベータより全員。追跡していた敵サブマシンガン(秤アツコ)がロスト。出現した不明な勢力が接触した後、こちらから認識できない」

 

"反ミーム性を展開している可能性がある"

 

"司令部?監視カメラの音感センサー(機械)はどうか?"

 

『こちらからも認識できない。アルファ-1は敵サブマシンガンが逃亡したものと考えてもらって構わない。奇跡量からして、おそらくアリウス分校の重要人物だと考えられる。アルファ-1は捕縛をせずにライン-C西方面の援軍に向かってくれ』

 

"了解"

 

 

 

 

 

*1
肉体にあらかじめ魔方陣を刻印しておくことで、魔方陣を書かずに奇跡論を発動させることができます。






スクワッドは分断されなければかなり強いですし、個々も強いのですが、「士気が高い」かつ「技術的に未知の敵」、「キヴォトス人らしからぬ防護装備」という差によって敗北します。
同装備と同環境なら勝っていたかもしれません。

財団が長年要注意団体やアノマリーとドンパチやってきた成果です。これでトントンレベルなんですから財団世界は怖いですね。
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