たった三人の財団職員はキヴォトスで何をするのか? 作:Bar_00
クラスZ記憶補強剤ですが、接種者の忘却能力を恒久的に破壊します。
結果として、完全な映像記憶と任意強度の反ミーム妨害に対する完全な耐性が得られるます。
しかし人間の感覚器官は日常的に膨大な量の情報を取り込み、脳はその殆ど全てを瞬時に廃棄するように適応しているため、情報を保存するように脳の挙動を改変するのは極めて危険な行為です。つまり人類の接種者は必ず脳が耐えられずに死亡します。
ですが、生命エネルギー(EVE)を多く持つキヴォトス人なら…?
機動部隊あ-3("立ち鳥")
現在、部隊は敵部隊と交戦していると"思われる"。
設置された遮蔽物に張り付いた機動部隊あ-3("立ち鳥")A班の新人隊員は、戦場の異常性を肌で感じていた。銃声が、何か不自然で空虚な音を響かせている。戦闘音が一方的に飛び交っている。だが、他の隊員たちは敵を発見し、すぐに発砲しようとするものの、すぐに疑問符を浮かべ、元の位置に戻ってしまう。一部発砲している者も、撃たれている者もいるが、誰も決してその方向に正確な意識を向けない。
明らかにおかしい。敵がいるのは間違いない。それなのに、なぜか誰も戦闘を始めようとしない。指揮官も、他の隊員も、認識していない…なぜなんだ?
新人隊員は、自分だけがこの異常な状況を理解していることに気づく。
思考を止めるな。
考えろ。何が起こっている?自分と他の違いは?なぜ?頭を回せ。自分たちは正真正銘の"最後の砦"なんだ!!
頭よ、回れ。
認識災害?
それなら認識した時点で自分もアウトだ。
情報災害?
情報自体が異常性を有している。それなら、異常な情報に対する耐性?
他の人と自分の違いは?種族じゃない。自分は一般的な
自分にそんなものは――
諦めるな。
逆説的に考えろ。
恐らく身体的特徴ではない。そうだとしても現時点で分かりようがない。では何が要因か?
「外部からの身体的影響」
こちらへの有益性を考えるに、相手方からではなく、恐らく財団の何らかの措置だ。
カチリ。ピースは当てはまる。
外部からの薬剤投与。これが答えだ。
――自分は
敵は、"反ミーム"だ。敵部隊は、部隊の存在そのものを、我々の脳から消しさっている。
敵は我々の薄い弾幕に対して、さらに前進している。
「敵は『反ミーム』!!全員!記憶補強剤を接種!!!!」
叫ぶと同時に、すぐ近くの遮蔽物の隙間から手榴弾が飛び込んできた。
新人隊員は即座に反応した。飛び込んできた手榴弾を目で追い、何も考えずに身体を動かす。
遮蔽物を蹴り飛ばし、手榴弾の上に覆い被さる。その瞬間、炸裂音がホール全体に響いた。
爆風が遮蔽物の背後に伏せていた隊員たちに衝撃を与える。だが、それ以上の被害はなかった。
新人隊員の肉体は、反ミームの効果によりその場から存在すら消える。誰も彼の行動を覚えていない。
――反ミームによって「
隊長の命令じゃない。反ミームによって誰かすら分からなくなった部隊員からの伝達に、全員が「
各自、遮蔽物の陰に隠れながら首元に注射器を当て、Wクラス記憶補強剤を打ち込む音が次々と響いた。
数秒の静寂。補強剤が脳に巡ると、目の前に敵の姿が浮かび上がった。遮蔽物の陰に隠れ、統制の取れた動きで射撃を繰り返す
指揮官が冷徹な声で命じた。
「敵部隊確認。敵は反ミーム。全員、応戦態勢に移れ。」
隊員たちは即座に応答した。
「了解」
遮蔽物の向こうからさらに弾幕が張られる。
「第一班、右へ回り込め。第二班、敵の火力を押さえろ。第三班、準備が整い次第、グレネードで牽制する!」
指示が飛ぶたびに隊員たちが迅速に動く。訓練で培われた動きには迷いがない。
「了解!」
隊員たちは一糸乱れぬ動きで命令を実行する。
「クソッ、なんであいつらコッチを"認識"できるんだ?今までうまくいってただろ?」
督戦隊の一人が毒づく。
「ひとまず認識できることが分かっていればいい!!それは気にするな!戦闘継続!!」
グレネードが投擲され、敵の遮蔽物が一部崩壊する。隊員たちはその隙を突いて進軍を開始する。中央突破を狙う部隊と、側面を制圧する部隊が連携し、アリウス督戦隊を徐々に追い詰めていく。
次第に、敵の火力が鈍り始める。
隊員たちは最後の弾丸を撃ち込み、戦場は再び静寂に包まれた。
「状況確認、負傷者の搬送を最優先とする」
隊長の声がホールに響く。数人の隊員が倒れているが、彼らは全員助かる見込みが立った。仲間のため、グレネードに飛び込んだ
アイテム番号: SCP-006-KV
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル:
SCP-006-KVは、サイト-8142の物品収容区画の中・高脅威度物品ゾーンに保管され、常時クラスW記憶補強剤を摂取した機動部隊あ-3("立ち鳥")が監視しています。
SCP-006-KVの実験・研究には朝野管理官と記録・情報管理局*1の両方の許可が必要であり、認証された職員は可能な限り認証された職員が含まれないグループの職員とクラスZ記憶補強剤*2を摂取したDクラス職員に監視されます。
これ以上の実験と研究は得られるものが薄いとして中止されています。補遺2の実験記録をレベル3クリアランスで開示できます。
説明:
SCP-006-KVは、起動者が所属するグループの情報に対して反ミーム現象を発生させる異常な装置です。GoI-NM("無名の司祭")由来のパラテクノロジーが使用されたアーティファクトであり、軍事目的で使用されていたとされています。
SCP-006-KVは起動時に、「起動者が属するグループ(以下"対象グループ")の情報」を対象外の人物から忘却を発生させる能力を有します。オブジェクトは、他者から対象グループの存在そのものと付随行為を記憶から消去し、そのグループへの認識を不完全にします。
影響範囲は無制限で、発動から1秒以内にその範囲にいるすべての対象が記憶もしくは記録した情報を失い、非対象グループの人間はその状況を認識できなくなります。反ミーム現象の効果は機械に対する情報消去も含まれます。特に、非対象グループの人間がクラスW記憶補強剤を使用していない場合、この影響が解除されることはありません。
補遺1:
SCP-006-KVは財団の軍事目的に使用されることはありません。
EVE保有量が一定以上のSCP-001-JP-SはSCP-006-KVが発する反ミーム性に対して耐性があることが発見されているため、軍事目的で使用するメリットは薄いものです。
補遺2:
実験-006-KV-5の結果として、すべての関連実験は即時に中止され、今後の実施は認められないことが決定されました。
クリアランスレベル2以下の職員のため、特別収容プロトコルにはカバーストーリーが適応され、研究の中止が偽装されます。
研究を行う担当職員は、機械工学部門のレベル3以上職員であり、ミルグラム忠誠度テストの結果が██点以上である職員から選抜されます。担当職員は二週間に一度、対話部門のカウンセリングを義務付けられます。
過去の実験記録は別書「実験ログ-006-KV」を確認してください。
朝野管理官*3の管理下にて、複数のDクラス職員によって起動し、そのグループの選定基準を検証することを目的に行われ、D-006-KV-5がSCP-006-KVを使用しました。
結果として、朝野管理官を除く担当研究グループはD-006-KV-5を忘却しました。
クラスZ記憶補強剤を摂取したDクラス職員も監視に割り当てられていましたが、D-006-KV-5を認識できませんでした。
朝野管理官がSCP-006-KVを停止することでD-006-KV-5は他者からの自己情報に対する認識性を回復しました。しかしながらSCP-006-KVを起動していた時間のD-006-KV-5への認識は回復しませんでした。
実験記録は認識されなくなりました。朝野管理官が再入力することで実験記録として認識できるようになっています。
補遺結論:
D-006-KV-5を使用した実験において、反ミーム性の強度は非常に強力であり、特にD-006-KV-5の精神的状態(軽度の鬱状態と孤立)により、その影響は顕著に現れたと考えられています。
通常、精神的に健常な人物は複数のコミュニティに所属し、その中で対象グループを選択しますが、D-006-KV-5のような孤立した人物は自分一人を「対象グループ」と見なす可能性が高いと推測されます。
他の実験ログからの推測ですが、選択された「対象グループ」に所属する人数が少数であるほど、SCP-006-KVが発する反ミーム性が強化されるものとされています。
この点が、反ミーム効果を強化した要因であると考えられます。
注意:
朝野管理官は、このような事態を防ぐために以後の実験を中止しました。