たった三人の財団職員はキヴォトスで何をするのか? 作:Bar_00
貴方のよく知る「かの博士」とは別人です。
生徒→日本人名
機械人→欧州圏名
獣人→”あだ名”(本当の名前とは別に)
なんか投稿ミスって同時投稿になっちまったがまぁいいかぁ!よろしくなぁ!
(教室。講師の生徒が教壇に足をかけ、数歩だけ歩き、机にたどり着く。彼女は頭を机に強打し、気絶する)
「おやすみなさいと、こんにちは」
「まずは自己紹介だ」
「講師らしき生徒がぶっ倒れ、教壇とは真逆の席にいる一人の生徒が話し始めたことに疑問を抱いているかもしれないね。ひとまず聞きたまえ」
「私は“ブライト”博士。財団から一時的に貸し出されている、親切で有能な教育者であり、ヒト神経科学(Human Neuroscience)とヒト分子遺伝学(Human Molecular Genetics)の権威だ」
「そしてある意味では亡霊。魂だけが残っていると言ってもいいし、システムバグのような存在と言ってもいい。」
「君たちは幸運だ。“ブライト”博士の講義が聞けるというのは、ある意味では名誉だ。ある意味ではな。なにせ前回の講師用ホストはサルだった。意味ある言葉を出すのに毎回パソコンの合成音声を使わなきゃいけなかった。めんどくさいったらありゃしない」
「だが、やはりサルの体で行った講義は実に愉快だったよ。ウホウホ言いながらも、君たちの先輩たちは真面目に話を聞いてくれた。」
(生徒たち無言。彼女は満足げに頷く。そして頭を机に強打し、意識を失う)
(教壇で倒れていた講師は突然起き上がり、黒板にチョークで“意識ドリフト症候群”と書く)
「さて、続けようか」
「私の異常性について、ちょっとだけ」
「私の異常性は、意識消失時に発動する。倒れる、寝る、頭を撃たれる、いずれにせよ——。」
(チョークをくるりと回しながら)
「私は“適切な人型の脳”にスライドする。オプションは問わない」
「“適切”って何だ?簡単さ、人型生命体であること、脳があること、そしてちょっと運が悪いこと。それだけで十分だ。サルでも、チンパンジーでも、機械人でもいい。言語機能があれば、こうやってオリエンテーションもできる」
(聴講者の一人が小さく息を呑む)
「もっとシンプルに言うと、『これがオリジナルの私の体か?』と聞かれれば……」
(両手を広げて、生徒たちに問いかける)
「答えは“No”だ。これは植物状態の生徒の体だ。見た目はまあまあだろ?結構いい拾い物だった」
「ある研究チームがね、“この体を動かし続ければ脳が刺激されて、もしかしたら意識が戻るかもしれない”っていう訳でね。おっと、話が逸れたな。君たちにはそこまで関係ない。まだね」
「いいかい?これは“選ばれる”ものじゃない。“私が選ぶ”んだ。君たちが無防備で、眠っていて、私がカフェインを切らしたせいで意識を失っていて、君の隣にいたら——それだけで、私の次の授業は君の口から始まるかもしれない」
(前列の生徒一人がビクリと肩を揺らす。彼女はその反応をじっと見て、にやりと笑う)
「だから私の講義は、ちょっとスリリングだろう?次に誰が講義するか、わからないんだ。君たちの一人が、明日、私になるかもしれない」
「まあ、私が抜け出して数分もすれば君の記憶と意識が戻ってきて、『なんで私は講義を40分もやっていたんだ!?』ってなるだけだから、大した問題じゃない」
「さて、本題に入ろうか」
「君たちは、いわゆる“パラヒューマン”と分類される存在だ。人類三種族から逸脱した、ある種のエラーだ。もっと言えば、“正常な世界”が想定していない余分な変数」
「君たちが『自分が人間である』と信じていること。それは社会からすれば、ただの誤差だ」
「だが——それがどうした?」
(彼女は歩き出す。教壇を降りて、生徒たちの列のあいだを静かに歩く)
「この学院は、その”逸脱”を矯正する場ではない。ましてや消し去る場でもない。君たちが“どのように”逸脱したかを知り、それと共に生きる方法を模索する場だ」
「以前、あるパラヒューマンが“自分は普通だ”と強く信じていた。実験の最中、その子は異常性を無意識に使い、財団スタッフを消し飛ばした」
「…だがね、彼女は最後まで“自分は普通の人間だ”って言い続けてた。自分がやったのにも関わらず、取り返しのつかない逸脱が起きたのにね」
「私もまた、自身が
「君たちは正常ではなく、異常である」
「だが、それを正常に見せることが可能なら、その価値は同じだ。」
(彼は静かに、手を広げる)
「例えるなら、制御されていない嵐は——ただの最悪な自然現象だ。街を焼き、命を奪う」
「だが、制御された“都合の良い嵐”は——」
「『神風』と呼ばれる」
「だからこそ、自分を知ること、自分を制御することが——この場所の意味なんだ」
(彼女は唐突に、講義室の隅に置かれた椅子に座る。まるで授業を受ける側に回るかのように)
「例えば、君が炎を放つ異常を持っているとする。学校は君に“炎を出すな”とは言わない」
「だが、“
「君たちに求められること」
「君たちは、君に潜む異常を制御しなければならない。君たち自身の手で、自分の“逸脱”と折り合いをつける。それがこの学院の意味であり、我々パラヒューマンが生き残る方法だ」
「異常存在とは失敗の産物だ。財団に閉じ込められている異常存在は多くの命を奪っている。今も誰かが死んでいるかもしれない。だが、同時に、私はここで他の人間の肉体を通して教育を継続している。…どうだい、皮肉だろう?」
「君たちはまだ選べる。君たちにはまだ、意志がある。だからこそ問う」
「自分の異常とどう向き合う?どう折り合いをつける?それが、君たちの“生き残り方”だ」
(静かに立ち上がる。講義室の照明がふたたびちらつき、時計の秒針の音が響く)
「もし——もし君が、自分の異常を制御できなかったなら」
(目を細め、冷たい声で続ける)
「そのときは私が君を使わせてもらう。実験は——継続されなければならないからね」
(背後のスクリーンが勝手に切り替わり、「講義終了」の文字が浮かぶ)
「それと——忘れないこと。“The Big Brother is watching you.”財団が、君たちを。君たちが、君たち自身を」
「では、またどこかで」
(そう言って、“ブライト”博士は廊下に姿を消した。)