たった三人の財団職員はキヴォトスで何をするのか? 作:Bar_00
原作キャラ?ちゃんと出ますよ。
倫理のオリエンテーション
これは新人職員の君に読むように言われた報告書の一つ、会議録になっているだろうが、読んでくれてありがとう。
私たちO5評議会は、君に伝えたい重要なメッセージがある。これから君が目にするこの会議録の内容は、財団の冷徹な部分と、それに伴う判断の一貫性についてのものだ。会議記録の1、2、3は大した内容じゃないが、4、5だけはよく見ておいてくれ。
O5評議会議事録 日時: [編集済み]
会議記録1: O5-1への昇格
状況:
全てのO5評議会員が応答を停止し、その所在および状況が不明のままとなった。朝野博士によってO5評議会-AIが起動され、議論を行うことになった。
参加者:
•オンライン:O5-AIの13体。
•オフライン:O5-1,O5-2,O5-3,O5-4,O5-5,O5-6,O5-7, O5-8, O5-9, O5-10, O5-11, O5-12, O5-13
結果:これにより、朝野博士が正式にO5-1へ昇格し、O5-1の役割を引き継ぐことが決定された。朝野博士の特殊な前歴のため、これは満場一致で決定された。並びにO5評議会-AIはCKクラス:”再構築”シナリオとSKクラス:支配シフトシナリオの発生を宣言。前O5-1,O5-2,O5-3,O5-4,O5-5,O5-6,O5-7, O5-8, O5-9, O5-10, O5-11, O5-12, O5-13の推定ロストを宣言する。
会議記録2:
議題: 残存職員のO5評議会員昇格の是非
状況:
朝野博士は、O5-1の権限を継承し、新たな議題を提起するため緊急会議を招集。
参加者:
•オンライン: O5-1、その他O5-AIの13体。
•オフライン:
提案:O5-1
以下の二名をO5評議会員に昇格させること。
1.Lisa.aic
2.高坂管理官
目的:
O5評議会の指導体制を維持し、人類再興の戦略を迅速に遂行するため。
決定:
•高坂管理官を O5-2 に昇格。
•Lisa.aicを O5-3に昇格。
投票結果:[検閲済み]
結果:
支配シフト先の種と財団AIをO5に昇進するという内容は長時間議論されたが、高坂管理官の意識の一致とLisa.aicが死蔵されていたO5-AIとは違い、最新型であることによって提案は9:5で承認された。
新任O5評議会員への歓迎:
O5-1: 「ようこそ、O5-2、O5-3。人類の最高司令部へ」
会議記録3: 今後の方針
状況:
O5-1が再度緊急会議を招集。
参加者:
•オンライン: O5-1, O5-2, O5-3
•オフライン:
議題:
今後の方針の決定
提案:O5-1
「我々は人類を再興し、日常を取り戻す。」
投票結果:
•賛成: 全会一致
O5-1デスク:
「我々は日常に回帰する。例えどんな手段を使おうとも。」
結果:
全会一致で提案は承認され、人類再興への全力を尽くす方針が採択された。
会議記録2、3の内容として、キヴォトスに存在する異常存在に対処するため、財団を再創設することが決定された。
会議記録4:職員雇用方針
参加者:
•オンライン: O5-1, O5-2, O5-3
•オフライン:
議題:職員の補充について
提案:O5-2
新規職員はSCP-001-JP知性体からミーム暴露手順-06-Aを行ったうえで雇用する。
投票結果:
•賛成: O5-2
•反対: O5-1
•棄権: O5-3
決定:同票であったが、O5-1の議長権限により否決。
会議記録5:職員雇用方針-2
参加者:
•オンライン: O5-1, O5-2, O5-3
•オフライン:
議題:職員の補充について
提案:O5-1
新規職員はSCP-001-JP知性体からミーム暴露手順-06-A*1を行ったうえで雇用する。ミームへ耐性のある知性体は記憶処理をした上で財団フロント企業で雇用する。将来的にではあるが、Dクラス職員は重犯罪を犯した犯罪者から雇用される。
投票結果:
•賛成: O5-1,O5-2,O5-3
•反対:
•棄権:
決定:全会一致で賛成
忘れるな。我々は悪ではない。
我々は世界のために
忘れるな。
「
そして、我々はだれかを「
サイト-8142 オリエンテーションルーム
新人職員たちの大半が集められたオリエンテーションルームには、静寂と緊張が漂っていた。室内は無機質な白い壁で覆われ、大型のスクリーンには「財団の倫理」という文字が表示されている。座っているのは、新規に財団職員として雇用された生徒、獣人、ロボットたち。それぞれの表情には、興味と一抹の不安が交錯していた。彼らは教壇に講師が立つ前に、席に置かれていた会議録を読み込んでいた。
講師として教壇に立つのは、対話部門*2のとある生徒だ。大学生程度の年齢である彼女の目は冷静さを保ちながらも、顔は緊張で少しこわばっている。このオリエンテーションは彼ら新人の倫理観を決定づけるものであって、失敗は許されない。渡された台本と台本内の行うべき振る舞いの内容を再度思い出すために少し目をつむった後、フッと息を吐いて自身の緊張をほぐした。
彼女は手元の端末を操作すると、スクリーンに「O5評議会会議録」という文字を映し出した。
「あなたたちが読むように言われたこの会議録は、財団の根幹となる理念と、それを守るために必要な冷酷さについて記されたものです。あなたたちが読むために、これは機密ではなくなっています」
講師の声が部屋に響いた。
「財団で働く以上、これを理解する必要があります。ですが、これはただ読むだけでは身につきません。今日はこれを元に、君たち自身に考えてもらうことになっています」
議題1: 偶然ミーム耐性を持つ知性体をDクラスにするべきか?
「まずは、最も簡単な問いから始めましょう」
講師は次のスライドに移ったスクリーンに目を向け、O5-2の提案内容を指差した。
”ミーム耐性のある新規職員をDクラスとして雇用するとする”
「財団職員はミーム暴露手順06-Aを受けたうえで雇用されます。これは情報漏洩に備えて行われるものであります」
「これは『精神的自由』の観点から見て財団に部分的に思考の誘導を受け入れると同意です」
「そしてあなた方はそれに了承したはずです」
「その際に、ミーム耐性を持つ人物が発見される場合があります。ミーム暴露手順-06-Aは効かず、情報漏洩の観点からすれば財団職員として雇用することはできません。偶然ミーム耐性を持つだけの人物をDクラスとして扱うべきだと思いますか?」
生徒の一人が手を挙げた。
「それは……やはり間違っていると思います。ただ耐性があるだけで、危険視されるのはおかしいです」
「そうですね…」
講師は議論を促すために曖昧に返しながら少し頷き、今度は別の参加者に視線を向ける。
「他の人はどうですか?」
ロボットの一人が冷たい声で答えた。
「だが、リスクの排除という観点では正しいだろう。万が一、財団を知り、耐性を持つ者が団結して財団に反抗すれば、制御不能な事態を招く可能性がある。終了してもいいぐらいかもしれない」
オリエンテーションルームにいくつかのざわめきが起こる。ほとんどが否定する声だが、いくつかそれに賛同する声もまたある。なかなか過激な意見だ。だけど意見の対立からの議論が発生することは組織として喜ばしいことだ。彼女は台本に記されたベテランしぐさと思考を完璧に再現することができていた。
講師はしばらく話させるために沈黙し、自然とざわめきが収まるのを待った。
「いい議論です!皆さんが積極的でうれしいですよ。しかし、O5-1はこの提案を否決しました。その理由を理解するために、もう一つの議題を考えてみましょう」
議題2: 財団はなぜ彼らを記憶処理してフロント企業に送るのか?
スクリーンが切り替わり、次の提案、O5-1が挙げた案が映し出される。
「ミーム耐性のある新規職員は記憶処理を施し、フロント企業に雇用する」
「さて、なぜ記憶処理をしてフロント企業に送り出すのだと思いますか?」
猫耳を持つ中年の獣人が答える。
「……財団内でのリスクを避けつつ、社会の中で彼らが貢献できるようにするためでは?」
講師は微笑み、肯定するように頷いた。
「その通り。『
彼女は一呼吸置いて、続けた。
議題3: なぜ市民を拉致してDクラスにしてはいけないのか?
次にスクリーンには、参加者全員の目を引くような過激な問いが表示された。
「なぜ辺りの市民を拉致し、記憶処理をしてDクラスとして雇用しないのか?」
教室がざわめく。ある一人が怯えたように口を開いた。自分がそうなったらと想像したのだ。
「科学には犠牲が付き物です。薬の臨床実験だって人体実験が必要です。それならばDクラス職員は多くいた方が良いのではないでしょうか?」
「そ、それは……恐怖政治に近いからじゃないでしょうか?」
「財団による独裁。他の意見も考えてみましょう」
講師は教壇を歩きながら続ける。
「”市民を無差別に拉致することは、社会の安定を崩す。”という意見もあると思います。しかしながら、”倫理”と言うモノが一番の理由です」
「…ただの効率を追求し、無意味に人の幸福を破壊すれば、それは
「……「
新人職員たちは無意識的にうなずいていた。
議題4: 刑務所と交渉して犯罪者をDクラスにする意味
次に、講師は最後の問いを投げかけた。
「これには
ロボットが冷静に答える。
「犯罪者はすでに社会から切り離され、財団の任務に従事することによる社会への悪影響も最小限に抑えられる。そして倫理的な問題はあれど、許容できる範囲だ」
講師は満足げに頷いた。
「そうですね。財団は必要な冷酷さを持ちながらも、社会の倫理を完全に無視することはない。これが財団の思考です」
議題5: 財団における倫理とは何か?
講師はスクリーンに映るO5-1の言葉を指差す。
”忘れるな。我々は悪ではない”
「財団における倫理とは何か?それは、世界を救うために
彼女は教室を見渡し、最後に語りかけた。
「世界を守るためには、時に残酷な決断を下さなければならない。それでも、我々は残酷になってはならない。冷酷でなくてはならない。Dクラス職員を生体実験に用いても、それで世界が救えるのならば
最後の問い: 財団は拷問を行うのか?
「さて、最後にあなたたちに考えてもらいます。『財団は拷問を行うのか?』どう思いますか?」
講師は真剣な表情で尋ねた。
「必要に応じて行うが、
「素晴らしい。その通りです。財団は必要がない限り拷問を行いません。情報を得る手段としても、まずは他の選択肢を尽くす。拷問というのも残酷な行為だからです」
彼女は再びO5-1の言葉を引用した。
「”我々は誰かを『
「まとめましょう。あなた方は、エージェントだろうと、研究職だろうと、財団職員である以上は不必要な残忍さと戦わなければならない。そして、決して忘れることがないように。私たちの冷酷さは、倫理に基づかなければならない。『必要な冷酷さ』と『無意味な残酷さ』を見極める。それが、あなたたちがこれから背負う責務です」
講師は静かに教壇に戻り、最後に全員を見渡して言った。
「以上で講義を終了します。今から10分後、別の講師が来て講義しますのでしっかりと準備を整えておいてください」
新人たちは深く頷き、それぞれの胸に財団の冷酷さと倫理を刻みつけながら、静かに、もしくは知人と話して理解を深めようとしている。財団は悪の結社ではないこと、冷酷であること、しかし決して残酷にならないこと。その重みを理解し始めていた。
財団対話部門
「やぁ、終わったようだね。」
教授席から、獣人の男が静かに声をかけた。彼の鋭い耳と尻尾が、どこか優雅に動いているが、その視線は冷徹だ。先ほどオリエンテーションを行った女性は少し息をついて振り返る。
「あぁ、██博士。お疲れ様です!!いつ噛むか分からなくて緊張しましたよ…」
彼女の目はまだ少し不安そうだった。膝ほどまであるロングヘアーで緑がかった薄い水色の髪が揺れ、目元を隠すように前髪が落ちている。学んできた内容を、新人の前で試すのは、決して簡単なことではない。
「忘れたセリフにいくつかアドリブを入れてしまいましたし…」
彼女は照れ笑いを浮かべるが、目の奥には一抹の不安が残っていた。
その声に、██博士は軽く肩をすくめて答える。
「アレはセリフを全部覚えるようなモノじゃないが…いや、うまく演じられていたよ。」
彼の言葉は、いつも冷静で無駄がない。それはまるで、理論だけでなく現場の空気をも読む経験則に基づいているようだった。
「しっかりとベテランの風格を出すことができていた。」
「そうですかね?」
「もちろんだとも」
女性はこわばっていた目を緩ませ、安堵した様子を見せる。
「少し心配だったんだ。」
██博士の言葉に、彼女はすっと顔をあげる。
「君はいつも善性に富んでいる。どんな重犯罪者のDクラスにさえ、同情することができる。」
その言葉に、女性は少し目を伏せた。Dクラス職員――つまり、SCP財団が管理している、最も危険で倫理的に問われる存在たち。その人々に対する思い入れは、確かに彼女の心の中にあった。だが、財団の規律と使命はそれを許さない。
「だから、突然新人に向けてDクラスを廃止するべきだと言い出さないかと思ってね。」
彼女は黙って耳を傾ける。██博士の眼差しは鋭く、まるで彼女の心の中を見透かしているかのようだ。
「…財団がDクラス職員を殺害することは…必要な残酷さです。さっきも言ったとおりに。」
女性は言葉を絞り出した。財団の目的を達成するためには、時として無慈悲な決断を下す必要がある。それは冷徹であり、非情であるが、理論的に正しいと彼女は信じていた。
その答えを聞いた██博士は、少し安堵した表情を浮かべた。彼の顔には複雑な感情が走ったが、すぐにそれを隠した。
「それが聞けてよかったよ。」
彼は穏やかな声で言う。「おめでとう、昇進だ。」
「はい…?」
彼女は思わず声を上げた。昇進?自分がそのような立場になるなんて、夢にも思わなかった。まだ、SCP財団で働き始めて一年たったばかりだというのに。
「一年間、
██博士の言葉に、彼女は驚きと共に混乱が広がった。昇進の条件がこんな条件だったとは知らなかった。昇進がまさかこんなにも早く訪れるとは思っていなかった。
「君はこれから独立して、"博士"として対応していくことになる。」
女性は思わず口を開ける。まるで現実が追いついていないかのように、言葉が出ない。
「ありがとうございます。しかし…いいんですか?Dクラス職員についてこんな意見を持っている私が昇進だなんて。」
彼女はその言葉を発した後、しばし黙った。心の中では、疑念と不安が渦巻いていた。昇進して本当に良いのだろうか?自分の倫理観はこの役職にふさわしいのだろうか?
「いいんだよ。」
██博士は静かに言った。その目は、どこか温かみを帯びていた。
「多様性さ。その善性が必要になることもあるし、前言った通り、君の視点はカウンセリング相手へのアドバンテージともなる。」
彼女はその言葉をじっくりと噛みしめる。これから先、どんな困難が待ち受けているのか分からない。しかし、彼女は決意を固めた。
「分かりました。私、頑張りますね!!」
その言葉は、自分を奮い立たせるためのものであった。昇進という新しい責任が彼女に重くのしかかるが、それでも彼女は歩みを進める決意をした。
「そうか。」
██博士は静かに頷く。「これからも同僚として、よろしく頼むよ。
彼女はゆっくりと深呼吸をした。そして、新しい役職、新しい任務に向けて一歩踏み出す覚悟を決めた。
「はい!」