アークナイツRTA『理不尽のエゴ』取得   作:忘れん棒

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アルゴくんの掘り下げ話。mp1の小説パート的な。
ほんの数行ですがちょっと痛い表現があります
少し書いて没にするか迷ってたやつなので短いです

ガバ追記:誤字脱字修正。一部の文が欠落していたので、繋げば読めないこともなかったですが繋ぎ直しました。


日のはざまに.txt

アルゴノートには家族が三人いた。

父と母と妹。アルゴノートが幼いころは叔母もともに暮らしていたが、父と折り合いが悪かったためにアルゴノートが物心ついてから数年したころには出ていった。

いつも背筋が伸びている父は戦いを生業としていて、笑顔を絶やさない母は確たる芯のある強い女性だった。

 

アルゴノートはまっすぐな生き方をする父に憧れを抱いていた。

上と食い違った主張のために真っ向からぶつかったことも多いと聞く。

やや不器用な生き方ともいえるだろう。しかし、家に遊びに来た部下から教えてもらったそれはアルゴノートにとってとてもきらめいて聞こえた。

おれも一緒に戦いたい、と父に言ったときは一瞬渋い顔をされたが、アルゴノートの目を見た父は「なら修行が必要だな」とニカッと笑っていろいろな訓練を用意した。

基礎体力に持久力。荷物持ちや武器そのものの取り回し、何をするにも必須な重量上げもやった。

小さいころから筋肉をつけすぎると将来的にあまり背が伸びないという。低身長の親戚を持つ父は『背の低い男は舐められる』と繰り返し告げ、オーバーワークをしようとすれば殴ってでも止めた。

父は長く戦いの場に身を置いているために体を鍛えることに関しては厳しかったが、激務の中でもちょくちょく顔を出すくらい家族思いで、部下に諦観すら見える苦笑を浮かべられるほどには愛妻家だった。

 

生家はいわゆる田舎ではあったが、父がいない間日々の鍛錬のあと母に教わったため読み書きはできる。

母は教養のある女性だった。

アルゴノートは田舎育ちにしては訛りもなく、くせのない字を書き、少しなら他国の風俗*1も記憶している。勤勉に育ったのも母の教育のおかげだったのだろう。

歌はあまりうまくなかったが家事の合間によく口ずさんでいて、アルゴノートは母の歌が好きだった。

夜眠れないときに聞いた子守歌は今でも自身の深いところに刻まれている。

 

 

ある夜、アルゴノートの実力が一定のラインに達したと判断した父に「来週から入隊できるよう話をつけた」と伝えられた。

アルゴノートは驚いたが、ようやく認められたことを理解すると父にハグをして感謝を伝えた。

これからは父と共に戦えるのだ。

配属は違うかもしれないが、同じ組織に属するという一体感は想像するだけで胸が躍った。

いつか背を預け合いながら戦う日が来るのだろうと、その夜は浮かれて一睡もできなかった。

 

かくしてアルゴノートは志願という形で入隊した。

希望兵科を聞かれ、重装兵として配属された。

訓練は厳しかったが命を守るため訓練であることを理解していたし、教本を読み漁るなどして自主的に自身を高めていくのは苦ではなかった。

国のため人のため、そういった大した動機ではなかったが、アルゴノートは数ある兵士の一人として戦うことにおおむね満足していた。

人と関わることがあまり上手でないアルゴノートだが、所属部隊は皆おおらかで、アルゴノートが居心地の悪さを感じることはなかった。

彼らとならどこまでも戦える気がしていた。

 

その意志に亀裂が入ったのは入隊からしばらくしたあとである。

アルゴノートはもともと、仲間を守りつつも盾の内側から敵に攻撃をする、というスタイルで戦っていた。

それを聞きつけた上官がアルゴノートを怒鳴りつけたのだ。

朝から嫌に底冷えのする日だった。

戦況も苦しい時分で、次の戦闘に向けてできることをほかの隊を交えて話し合っていた最中の呼び出しだ。

上官が気分屋で気難しいのは皆知るところで、同情とともに送り出され辟易としながら上官のテントに向かえば、開口一番浴びせられたのは罵倒だった。

よくもまあ語彙が尽きないものだと感心すら覚える罵詈雑言を直立不動で聞き流すも、何か言えと言われてしまってはあとで酷い目に合わされるのを覚悟で口を開くしかない。

上官が気に食わないのは重装兵である自分が攻撃を行ったことのようだったので、味方のために戦い方を選ぶことはできなかったと順序だてて説明したつもりだ。

しかし、それに対する答えもまた、品のない罵倒だった。

 

「お前たち重装兵は何のためにいると思ってる?攻撃手という最も貢献度の高い戦力が削られんよう守るためだ。お前は前に立つだけ!肉壁を勤め上げろ!攻撃は期待するところじゃない。余計な世話を焼いて愚かに死ぬより貴重な攻撃ソースを立派に守り上げて死ね!」

 

理解が──できなかった。

唾とともに飛ばされた言葉が衝撃でならなかった。

そんなことを言っていられる状況にないだろう。戦場は生死が身近で──完全な分担は戦法としても古すぎて、正しいときもあるが、それは防御に対し絶対的な信頼を置ける者のみがしていいことのはずで、任せきりは非常に危険で。

うまくまとめられなかった主張が喉で詰まる。

何も言わないことにすら激昂した上官はアルゴノートを手酷く『教育』し、テントの外に立っているよう言い渡した。

ステレオタイプのような懲罰だ。古く非効率的な慣習が根強く残った組織だった。

歯向かっていいことはない。アルゴノートはじくじくと走る全身の痛みに歯を食いしばりながら指示に従った。

足や肋骨にヒビが入っているだろうが、座ることも姿勢を崩すことも許されない。

誤魔化しも避けるべきだ。懲罰を受ける兵士が上官の目を盗んで楽をしていれば、通りすがりでそれを見た兵士が嬉々として報告するからである。

報告が事実とわかれば少しばかりの便宜をはかってもらえることもあるので、よほど国に忠実な兵士でもない限り、懲罰が起こっていると聞いた大体の兵士は用もないのに何度も前を通ったりした。

留飲を下げた上官から許可が出るまで、アルゴノートは頭の中でぐるぐると不満を煮詰めた。

 

アルゴノートが孤立し始めたのはそこからだ。

くだらない組織だった。

功を焦った上官に部隊を囮にされたことに気づいたときには遅かった。

 

仲間をすべて失った。

戦うなと攻撃手段に繋がる刃物を奪われていたせいで、何もできなかった。

経験が浅かったために敵の武器を拾って使うことも思い浮かばなかった。

 

アーツが手に入った。

感染者であるにも関わらず今まで少しも使えなかった自分だけのアーツが。

だからなんだというのか。誰も守れなかったのに。

 

死に物狂いで戦って、隊員たちの識別票をかき集めて一人で生還したときも、上官はねぎらうことはなく嫌そうな顔をしただけだった。

いわく、『全滅の方があとが綺麗だった』、と。

隊長を疎ましく思っていた上官のせいではあったのだが、上官にしてみれば自身の指示に従わなかった部下に従った者はすべて『死んでいいもの』とひとくくりになるらしかった。アルゴノートのように目を付けられていたのであればなおさら。

 

思えば、上官に決定的な怒りを抱いたあの日、先に呼び出されていたらしい隊長が苦い顔をしてすれ違うように退室していた。

アルゴノートの戦い方を隊長に咎められたことはなかった。ともに戦った部隊内の攻撃手たちにも、助かったと感謝されたことはあれど余計なことをするなと責められたことはなかった。

あの全滅した部隊は隊長をはじめとする『上に都合の悪くなりそうな兵士』を集めたものだったのだとは誰が言ったのだったか。

アルゴノートにとっては居心地がよかったが、上官にとってあの部隊は戦闘能力こそ高かったが捨て駒としてはちょうどよく、使い潰したにも関わらず上層部からは注意を受けただけでお咎めはなかった。

 

上と現地の判断が著しく異なる場所ではいつ命を落としても不思議ではないし、次の配属先では明らかに扱いの差があって、愛想も尽きていた。

これ以上消費されてはたまらないと考えたアルゴノートは機を見計らって民兵を捨てた。

父に一言伝えたかったが、急がなければならない以上それは叶わなかった。

 

自身の命を守るための、宛先もない逃亡になる。

生きていればいつかどこかで会えるはずだ。

父の無事と再会を祈りながら、アルゴノートは奪った馬に乗って戦地を駆けた。

*1
風俗:ある時代やある社会における生活上のしきたりやならわし。また、身振りや態度、身のこなし。




アルゴくんが目をつけられたのは本人が優秀で頭がよかったのもありますが父親のせいでもあります。
父親もまたかなり優秀で、頭のキレのよさと適応力をお偉いさんの一人が非常に気に入っていたので、納得のいかない指示に対して真っ向からぶつかる性格でもそのお偉いさんの機嫌を損ねないために目をつぶるしかありませんでした。
お前の子が逃げたぞ!連帯責任だ!というのも、父親を排除したかった一部の勢力がお偉いさんをハメつつ排除を強硬した結果だったりします
クーデターみたいなものでしたが詰めが甘く、お偉いさんは無事に戻りお気に入りの処刑に対して非常にお怒りになったのでいたずらに戦力を失っただけの結果となり、関係者は降格処分が下りました

以上、ふわっとした展開裏でした
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