俺はその日、車にはねられて、死んだ。
いや、死んだかに思えた。
気が付けば、俺はドラゴンボールの世界にいた。
(ここは……)
周囲を見渡す。
どうやら、俺は宇宙船の中にいるようだった。
隣には首が胴体から切り離されたドクターミューの残骸。
「なるほど、俺はベビーになったわけか」
飲み込みが早かった。
原作だと、確か悟空にかめはめ波で太陽に宇宙船ごと落とされて消滅したはず。
ならば違う時間軸にしたらどうなるのだろうか。
「ん?」
俺の乗った宇宙船が、別の宇宙船とすれ違う。
(あれは!)
見覚えのある宇宙船。確か、アニメで太陽に落ちそうになっていた宇宙船で、ベビーが生き残りの少年に寄生して悟空たちに惑星ピタルへ運ばれた時のものか。
俺はミューの体から出てきたドラゴンボールを手に、その宇宙船へと移動した。
警備システムを突破し、寝室でぐっすりと眠っている少年に、ジェル状になって体内へ入り込んだ。
「う……」
苦しそうにする少年。
やはり取りつかれる瞬間は苦しいのか。
小一時間ほどして、宇宙船が太陽に接近する。
重力で宇宙船が太陽に引っ張られ始める。
そこへ、悟空、パン、トランクスの三人が現れる。
俺は少年の体ごと、三人の手で惑星ピタルに運ばれた。
ピタルの病院で治療を受けた俺は、屋外へと出てみた。
アニメだと気を開放して悟空たちに気づかれていたからな。ここはおとなしくしておこう。
外を探索していると、荷物を整理しているパンを見つけた。
「ん?」
振り返るパン。
「あら、もう大丈夫なの?」
「おかげ様で」
(可愛いな、パン)
パンは荷物の方へ向き直ると、再び整理を始めた。
俺は少年の体から抜け出すと、物陰に身を潜めた。
少年の体が倒れる。
「大丈夫!?」
パンが振り返り、少年に近づく。
俺はパンに背後から接近し、体をジェル状に広げた。
「え?」
こちらを振り向くパン。
「きゃああああ!」
悲鳴を上げるパン。
俺は他の二人が来る前に、パンの体内へと入り込んだ。
「どうしたんだ、パン!」
パンの悲鳴を聞きつけてやってくる悟空。
「なんでもないわ。それより、おじいちゃん、その子を運んでくれる?」
「なんでこんなところで倒れてんだ?」
「目を覚ましたからお礼を言いに来たみたいなんだけど、まだまだだったみたいね」
「そっか」
悟空が少年を病室へと運んでいく。
入れ替わりにトランクスがやってきた。
「この辺でベビーの気を感じたんだけど、何か見てないかい?」
「べ、ベビーですって? 何も見てないわよ」
「そっか。ならいいんだけど」
「もしかして、あの男の子の中に入ってるんじゃない?」
「悟空さんが危ない!」
トランクスが悟空を追って走り出した。
俺はここにいるのだがな。
「さて」
俺はパンの体から抜け出した。
「あら? 今のは……」
「久しぶりだな、雌ザル」
「え?」
振り返ったパンが俺を見て驚いた。
「べ、ベビー!」
パンが攻撃態勢に入る。
「無駄だよ。君の体内には俺の卵を産み付けてある」
「卵?」
「その卵が
「そ、そんな……」
恐怖に顔を引きつらせて後ずさるパン。
「いや!」
パンの体内で孵化する卵。
「う!」
両手で頭を押さえるパンだったが、すぐに放した。
「ギルルルルル! パン危険、パン危険!」
ドラゴンレーダーを飲み込んだギルがやってくる。
「うるさい!」
パンはギルを殴り飛ばした。
「パン、早速だが、二人を監視しながら地球へ戻れ。俺も後から行く」
「かしこまりました、ベビー様」
俺はパンに指示をすると、その場を後にした。