ドラゴンボール 転生したらベビーだった件   作:桂ヒナギク

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10.もう一人の転生者

 巷では、人々がお菓子にされ、食い殺される事件が多発していた。

 俺は事件を調べるため、サタンシティに来ていた。

 サタンシティには、サタンの家もある。

 サタンの家はどうでもいい。

 お菓子にされ食べ殺されるというワードで、俺は魔人ブウを想像した。

 しかし、魔人ブウは悟空に倒され、ウーブにという少年に生まれ変わっていたはずである。

 だとしたら、善の方がやっているかとも思ったが、あのブウが何かしたとは思えない。

 とすれば、敵は人造人間21号ではないかと、容易に推測ができた。

 21号はファイターズというゲームオリジナルのキャラクタで、俺はその変身体が好きでよく愛用していた。

「うわああああ!」

 悲鳴が聞こえる。

 駆けつけてみると、魔人ブウのような色をした端正な顔立ちの白髪の尻尾の生えた女の子に遭遇した。

 ビンゴ!

「おい」

 俺はその女の子に声をかけた。

 振り返る女の子。

「人々をお菓子に変えて食べまわっているのは君だね?」

「違います、私ではありません。あなたは誰なんですか?」

「俺はベビーだ」

「ベビーさんですか。私は悲鳴を聞きつけてやってきただけで、誰も殺してません」

「君は?」

「私は21号。人造人間です」

 やばい。その体がほしい。

「けど、本当は別世界の人間で……なんて、信じませんよね?」

「別の世界? そんなの信用す……なんだって?」

「ですから、別の世界の」

「君は、君が元いた国はどこなんだい?」

「日本っていうところなんだけど……言ってもわからないですよね」

「君もそっちの世界で亡くなったのかい?」

「わかるんですか?」

「ああ」

「そうなんです。私、あっちで男に突き飛ばされて、頭を何かにぶつけて、気が付いたらここに。これって死に際に見てる夢……じゃあないか。どう見てもドラゴンボールの世界だし、感覚もリアル」

「実は俺も日本から来たんだ」

「ベビーってのはいつのキャラなんですか? 全然覚えてなくて」

「GTの時のキャラクタだよ。生物に寄生して、その生物を操ることができるんだ」

「ああ、思い出した。さっき、私のことも乗っ取ろうとしませんでした?」

「うん、一瞬だけね。俺の大好きなキャラだったから」

 21号は顔を引きつらせた。

「そ、そうなんですね」

「取って食うつもりなんてないから怯えなくていいよ」

「あなたはいつからこちらに?」

「半年くらいは経ってるかな」

「そうですか。私は、来たばっかりで」

「そっか。話を戻すけど、悲鳴ってのは?」

「そうだった。見たんです。この姿に似たシルエットを」

「どっちに行ったかわかる?」

「閃光のようなものを出されて見逃してしまいました」

 太陽拳か。

「そうか。だけど収穫はあった」

「あなた、その事件を調べてるのですか?」

「ああ、そうだけど」

 そこに、もう一人の21号が現れた。

 傍にいる21号は澄んだ瞳をしているが、もう一人の21号は明らかに悪そうな人物の目をしていた。

「あら、変な者が二人もいるわね」

「お前が犯人だな?」

「さあ、それはどうかしら?」

「とぼけるな」

「どうせあんたたちは私にお菓子にされて食べられるんだから言っても意味ないけど、一応教えておくと、人間たちを食べてるのは私よ」

「そうか。自白してくれて助かるよ」

 俺は猛スピードで悪の21号の背後を取るが、一瞬で距離を取られてしまった。

「おっと?」

 何とか隙を突いて乗っ取りたいが……。

「あなたはどんな味がするのかしら?」

 悪の21号が不思議な光線を放った。

「うわ!」

 ギリギリ紙一重のところでかわす。

「避けちゃダメじゃない」

「あ! あそこのお店でお菓子の大特価セールやってる!」

「え、どこ!?」

 悪の21号がキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 俺はジェル状になって悪の21号に接近した。

「はっ!?」

 悪の21号に覆いかぶさる。

「なにすんのよ!?」

 悪の21号は俺の体を振り払おうとする。

「君はお菓子に目がないんだね」

「ええ。お菓子こそが全てよ」

「取引しないか?」

「取引?」

「金輪際、人間を食べないと約束したら見逃してやる」

「それは無理ね。私は食べないとやってけないから」

「そうか。ならば君の体をいただくしかないね」

「私のことを食べても美味しくないわよ」

「誰が食べるか」

「じゃあ何?」

「こうするんだよ」

 俺は悪の21号の体内にゆくっりと浸透し始めた。

「ぐ! 何よあんた!?」

 俺は悪の21号に気で押し返されてしまう。

「何!?」

「あんたの能力は珍しいわね。私がいただいてあげましょう」

 悪の21号が不思議な光線で俺をお菓子に変えてしまう。

「どんな味がするのかしら」

 悪の21号がお菓子になった俺を口の中に入れ、よく噛み、よく味わって飲み込んだ。

 噛み砕かれてバラバラになった俺は、悪の21号の胃の中で破片を集めて体を再生しつつ、内側から彼女の細胞へと潜り込んだ。

「おかしいわね。能力が身につかないわ」

「罠にかかったね?」

「え?」

 俺は悪の21号の頬に顔を浮かび上がらせた。

「は!?」

 焦りを覚える悪の21号。

「君が俺を気で押し返してお菓子にしてくるのは想定していたよ」

 冷や汗をかき始める悪の21号。

「どうだい? 体の自由が利かないだろう?」

 目線が右手を注視する。

 悪の21号は握り拳を作ろうとするが、俺のバカ力で体の動きを抑え込む。

「くっ!」

「君のことは21号と呼べばいいのかな?」

「出て行ってください」

「あ?」

「出て行ってって言ってんでしょ!?」

「それがご主人様に対する態度なのか?」

「誰がご主人よ。これは私の体よ!」

「じゃあ、今から新しい君が誕生するよ」

「何を言って……!?」

 悪の21号の体内に卵を産み付けた。

「ちょっと、何を置いてるのよ!」

「卵だけど」

「卵? 美味しいの?」

「食べ物じゃねえよ。いずれにせよ今の君には何もできないさ」

 俺は悪の21号の体内に産み落とした卵を孵化させた。

 卵から孵った細胞が、悪の21号の脳を侵食しに上ってくる。

「もう人間を食べるんじゃないぞ」

 無視をする悪の21号。

「ご主人様の命令を無視するのか」

 悪の21号の体が空中に浮きあがる。

「何?」

「私は……21号だ!」

 俺は悪の21号の体から気合で押し出されてしまう。

「ほおう」

 悪の21号がまがまがしい色をした液体を吐き出した。

「私を洗脳しようとしたみたいだけど、無駄だったみたいね」

「厄介な能力だな」

「お互い様よ」

 さて、どうしたものか。

 こいつを乗っ取っても意識が残ったままで、卵で洗脳することもできないときた。

「ベビーさん、私に考えが」

 と、21号が言う。

「ああ、いたのか」

 すっかり存在を忘れていた。

「ひどいわね」

「で、どうするんだ?」

「フュージョン、してください」

「フュージョン?」

「このまま戦っても勝てないのはわかってますよね?」

「初見だけどできるかなあ?」

「なんとかなりますよ」

「わかった」

 悪の21号が口を開く。

「どちらが先に食われるかご相談は終わったのかしら?」

「今から見せてやるよ。俺たちのとっておきを」

 悪の21号が疑問符を浮かべる。

 俺と21号は位置につき、フュージョンのポーズを取る。

「「フュージョン、は!」」

 俺と21号の体が融合し、新たな戦士が誕生した。

「「僕はベビーでも21号でもない。お前を倒す者だ!」」

「おやおや、合体ですって?」

 一発成功だった。ラッキー。

 俺は悪の21号の顔面を殴り飛ばし、追尾して背後に回り込むと、背中を蹴り飛ばし、前方に一瞬で移動し、両手を組んで悪の21号を地面に叩き落とした。

 傷だらけになる悪の21号。

「「ほらほらどうした? 僕を食べるんじゃなかったのか? そんなんじゃ犬死するだけだぞ」」

「う、うるさい!」

 悪の21号が光線を放ってくる。

 俺は光線を跳ね返した。

「……!?」

 悪の21号は自らの技でチョコレートになってしまう。

 俺と21号の体が分裂する。

 俺は地上に降りると、悪の21号の形をしたチョコレートを拾った。

「それ、食べるんですか?」

「もちろん」

 俺はチョコレートを噛み砕いて飲み込む。

 すると、俺の体は光に包まれ、悪の21号の姿に変身した。

「お?」

 元の姿に戻ろうと意識すると、今度はベビーに変身する。

 オゾットになったみたいだった。

 

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