パンのことで胸騒ぎを覚えた俺は、パオズ山に向かって飛行していた。
「パン!」
悟空の家に着き、扉を開けて中に飛び込んだ。
だが、パンの姿は見えない。
床には大量の液体が零れている。
俺は水を指で触れてみた。
「ぐっ!」
指先がピリピリと痺れる。
液体が入っていたと思われる割れた瓶を見つける。
破片に描かれた字の特徴から。
「超神水か!?」
パンはこれを飲んで正気に戻ってしまったのだろう。
恐れていたことが起きてしまった。
パンが正気に戻る。それは共に俺の死亡フラグでもある可能性。
まだそう遠くへは行ってないはずだ。
俺はパンが残留させた気を察知した。
俺の気に気づいて、家を飛び出したか。
俺は玄関から外に出る。
パン。
俺はパンの気配を追った。
パンが行くとしたら、父親が働く学会か。
俺は悟飯が務める学術研究院に向かった。
学術研究院からパンの気を感じる。
俺は施設に飛び込んだ。
警備員が俺を止める。
「許可証のないものは通せません」
「どけ!」
俺が払いのけた警備員が、壁に頭から激突して死んでしまう。
「おい、貴様!」
もう一人の警備員が、俺を取り押さえようとする。
「放せ!」
振りほどいた警備員の腕がもぎ取れた。
「ぎゃあああああ!」
俺はそんなのはお構いなしに、悟飯の部屋に飛び込んだ。
「悟飯、パン見てないか?」
「ぱ、パンですか? 見てないですよ」
悟飯が冷や汗をかきながら、机の後ろに目を向けた。
「どけ」
俺は悟飯を後方に放り投げ、机を破壊した。
怯えたパンの姿が露わになる。
「こんなところにいたのか」
「い、いや……」
パンは立ち上がり、恐怖心を覚えながら後ずさる。
「お前、ついに本性を現したな!」
悟飯が超サイヤ人に変身して襲ってくる。
「邪魔をするなあ!」
俺は悟飯に気功弾を放った。
悟飯はギリギリ紙一重のところでかわした。
「パン、逃げろ!」
パンが窓ガラスを突き破り、逃げ出してしまう。
「待ってくれ! 話を聞いてくれ!」
俺が追いかけようとすると、悟飯に足を掴まれてしまう。
「鬱陶しい!」
俺は悟飯の首を掴んで持ち上げた。
やはり、俺はパンのそばにいるべきだったんだ。
悟飯は苦しそうにしていたが、やがて意識を失い、超サイヤ人が解けた。
「ふん!」
俺は悟飯を真横に投げ飛ばす。
悟飯がもらった数々の賞が彼の体がぶつかって落下する。
そこへ、悟天、トランクス、ブラが駆けつける。
「何があったんですか?」
「お前たち、パンを探して連れてくるんだ! もしも取り逃がしたら処刑してやる!」
三人は慌てて研究院を飛び出していく。
悟飯のことは嫌いだが、今は人手が欲しい。
俺は悟飯に入り込むと、卵を産み落として孵化させて離脱した。
「おい、悟飯。起きろ」
「う……」
頭を押さえながら起き上がる悟飯。
「ああ! 僕の部屋が!」
「この部屋の荒れようは貴様が原因だぞ」
悟飯は先ほどのことを思い出す。
「申し訳ありません。僕、気がおかしくなって、ベビー様にとんだ無礼を」
俺は悟飯の胸倉を掴んで引き寄せた。
「お、お許しくださいベビー様!」
「お前もパンを探してこい!」
俺は悟飯を窓の外に向かって投げ飛ばした。
「一時間経っても見つからなかったら貴様を殺す!」
悟飯は猛スピードでパンを追った。
小一時間が経ち、悟飯、悟天、トランクス、ブラが戻ってきた。
「申し訳ありません。見つけられませんでした」
俺は気を練って作り上げた剣で悟飯の首を跳ね飛ばした。
悟飯の頭部が床に転がり、遺体と化して倒れる肉塊。
「に、兄ちゃん!?」
「ベビー様、いくらなんでもやりすぎだと思います」
トランクスの言葉に俺は言い返す。
「下僕ごときが口答えをするな!」
狼狽えるトランクス。
「べ、ベビー様、いったん落ち着きましょう?」
「ふん!」
ブラの言葉に俺は冷静さを取り戻す。
やはり地球人を全員ツフル化しておくべきだったか。
いや、考えるべきことはそこではない。
「うん? そういえば緊急事態なのにビーデルがおらんな?」
「ビーデルさんなら、兄ちゃんが超神水を飲ませてましたよ」
俺は足元に転がってる悟飯の頭を踏み潰した。
そうか、悟飯が全ての現況だったか。
その時、悟飯であった肉塊が消え去った。
「消えた?」
まあいい。
刹那、悟天とトランクスの間をすり抜けてきた気功波のビームが、俺の頬を掠めた。
俺の頬の表皮が裂け、内側の機械が露出した。
「貴様、よくも悟飯を殺してくれたな!」
ピッコロというナメック星人が、窓の外から俺を睨みつけている。
俺は敗れた表皮を再生させる。
悟天、トランクス、ブラの三人が窓から外へ出ていく。
「ピッコロか」
俺も窓から徐に外へ出た。
よく見ると、オレンジ色だった。
差し詰め、オレンジピッコロというところか。
「貴様、ぶっ殺してやるぞ!」
怒り狂ったピッコロが俺に襲い掛かってきた。
俺は攻撃をかわそうとしたが、避ける間もなく吹っ飛ばされ、先回りをされて地面に叩き落とされる。
地面に墜落する直前、俺は舞空術で停止した。
パンの体があれば、あんな奴瞬殺なんだがなあ。
「ん?」
俺は、映画のスラッグ戦を思い出した。
「ピッコロくん、君には弱点があったね?」
「この俺にそんなものあるわけがない」
俺は無言を回答に、口笛を吹き始めた。
「な、なに!?」
ピッコロが、俺の口笛に苦しみ悶え始めた。
「く、くそ! 口笛のことを知っていたか……!」
俺は口笛を吹き続けながら、ピッコロへと歩み寄る。
「ぐっ!」
苦しそうに地面をのたうち回るピッコロ。
「さっきまでの威勢はどうした?」
ピッコロが俺に命乞いをする。
「や、やめてくれ! 俺が悪かった! だから、口笛は吹かないでくれ!」
それでも俺は、会話を挟みつつ口笛を吹き続ける。
「無駄だピッコロ。ベビー様がブチ切れたら誰にも止められない」
後ろで悟天が言い放つ。
「運が悪かったと思って諦めるんだな」
と、トランクス。
俺はピッコロの頭を掴み持ち上げた。
「ピッコロ、お前に選ばせててやる。会心して俺の舎弟になるか、潔く死を選ぶか、どちらか選べ」
「こ、殺せ……! 悟飯のいないこの世など、俺には意味がない……!」
俺がピッコロの首を掻っ切ろうとすると、トランクスが言った。
「待ってください、ベビー様。ピッコロが死んでしまったら、僕やパンちゃん、悟空さんとで集めたドラゴンボールが使えなくなってしまいますよ?」
「構わん。地球のドラゴンボールで補うさ」
「ですが、それだとマイナスエネルギーが溜まってまた邪悪龍たちが」
「そんな奴らまた倒せばいいだけだ」
俺はピッコロの首を浅く掻っ切る。
「ぐ! なぜ一思いにやらない?」
ニヤリとほくそ笑む。
俺はジェル状になって、ピッコロの首の傷口から体内に流れ込んだ。
「う!」
苦痛に顔を歪めるピッコロ。
「殺さないんですか?」
「殺されるよりも、もっと屈辱的なことを味わわせてやろうと思ってな」
「うわあ、陰湿……」
「何か言ったか?」
「いえ、何も?」
「陰湿と聞こえた気がするが」
「聞こえてるじゃないですかベビー様!」
「ナメック星人は聴覚に優れてるからな」
俺は立ち上がる。
パンが次に行くとしたら、ビーデルのところか?
俺は、ビーデルの気を探す。
サタンシティのサタンの家にいるのか。いや、匿われているというべきだな。
「行くぞ」
俺は手下どもを連れて、サタンシティのサタンの家を訪ねた。
「おやおや、皆さんお揃いでどうしました?」
「ビーデルさん、いますよね?」
そう訊ねるのは悟天だ。
「皆さん、ビーデルとパンを守るためにお越しいただいたのですね?」
家の中で気の移動があった。
二つの気が家の裏手へ向かっている。
「悟天、トランクス、裏へ回れ!」
「「はい!」」
二人が裏手に先回りした。
「え? ピッコロさん、一体どうしたんで?」
俺はピッコロの腹部から自分の顔を出して見せた。
「俺はピッコロじゃない。ベビー様だ」
この俺から逃げ切れると思うな。
「ぶ、ブウさん!」
「ブウ!」
どこからともなく、魔人ブウが姿を現した。
「ほおう。魔人ブウか」
俺はピッコロから飛び出すと、21号に変身した。
「お前、俺と同じ種族か?」
「そうよ」
嘘である。
「俺、仲間大切。仲間とは喧嘩しない」
「ぶ、ブウさん?」
ブウはそう言ってどこかへ行ってしまった。
サタンは冷や汗をかきながらプルプル震え始める。
今はこんなやつの相手をしている暇はない。
俺は家の中に入り、裏手へ先回りした二人と共にビーデルとパンを挟み撃ちにするべく、奥へと進んだ。
「パンちゃーん、出てきてー」
ブラが優し声でパンを呼ぶ。
「別に取って食おうなんて考えてないからさー」
ある部屋の中で、気の動きが止まる。
俺は扉を開け、中に入った。
先回りした悟天とトランクスに行く手を阻まれているビーデルとパン。
二人は振り返り、逃げようとするが、満面な笑みで仁王立ちを決めている俺を見て立ち止まった。
「つぁ!」
ピッコロが俺を攻撃する。
「何!? 貴様、卵を孵化させておいたはずだぞ!」
「俺は元々魔族なんでな。そういうのは効かないんだ」
「ピッコロさん!」
「悟天、口笛を吹け」
ピッコロが咄嗟に両耳を引きちぎった。
口笛を吹く悟天だが、ピッコロは平然としている。
「何度も同じ手は食わん」
ブラがピッコロの背中から腹部の向こうに風穴を開けた。
「ぐわ!」
倒れるピッコロ。
「多勢に無勢。四対一で勝てるわけないだろう? いや、六対一か?」
俺はビーデルとパンを見る。
「に、逃げろビーデル、パン……!」
俺はピッコロの頭を踏み潰して肉塊に変えてやった。
「ぴ、ピッコロさーん!」
あまりの惨さにショックを受けるパン。
「ビーデル、お前、超神水を飲んだな?」
「ええ、悟飯くんが飲ませてくれたわ。悟飯くんは?」
「悟飯兄ちゃんならベビー様が首を跳ね飛ばして殺したよ」
「はっ!」
パンの堪忍袋の緒が切れた。
「ゆ、赦さない……よくも、よくも……!」
パンが超サイヤ人に変身してこちらに襲い掛かってきた。
「どわ!」
不意打ちを食らった俺は廊下側の壁にめり込んだ。
「パン!」
悟天、トランクス、ブラが超サイヤ人に変身する。
「ベビー、表に出なさい」
「いいだろう」
俺はパンに誘われて表に出た。
「ベビー様、加勢します」
「お前たちは下がってろ」
「ベビー様?」
悟天たちが超サイヤ人を解いて一歩下がった。
「みんなをおかしくさせて……私は怒ったわ、ベビー!」
怒ったパンも可愛いな。
俺はつい含み笑いをしてしまう。
「何がおかしいのよ?」
「君の怒った顔も可愛いなと思って」
「キモい」
俺は眉間に青筋を立てた。
「言ってくれるね。昨日まではあんなに懐いてくれてたのに」
「それはあんたの卵のせいだわ」
そこへ、悟空が現れる。
「おじいちゃん、パパがベビーに殺されたわ」
「なんだって?」
悟空が俺を見る。
「ベビー、おめえやっぱ悪いやつだったんか! オラ、おめえのこと信頼してたのに……!」
「俺は俺のやりたいようにやってるだけだ!」
パンが動き出した。
俺はパンの乱打を難なくかわしていく。
「攻撃は当たらなきゃ意味がないよ」
俺はパンをサタンハウスの屋根に向かって叩き落した。
屋根を突き破り、屋内に落下するパン。
「くっ!」
ゆっくりと浮き上がってくるパン。
「パン、代わろうか?」
「おじいちゃんは手を出さないで」
「パン……」
俺は右手のひらを上に向けて手招きをする。
パンが接近してくる。
俺はパンの乱打をかわす。
「俺に当てたら遊園地へ連れてってやろう」
「誰があんたなんかと!」
パンの拳が俺の腹部に当たりそうになる。
「おっと!」
俺は腹部を掠めたパンの拳を避けきってみせた。
そのままパンの背後に回り、エルボーで吹っ飛ばす。
パンは態勢を立て直し、気功弾を連射してくる。
「パン、お前は俺のものだ!」
「あんたなんかに操られながら生きていくくらいなら殺された方がマシよ!」
「気の強い子は嫌いじゃない」
俺はパンの連射気功弾を縫うようにすり抜け、その肉体めがけて突っ込む。
「かかったわね!」
気功波が飛んでくる。
「うお!」
俺はすんでのところで気功波をかわす。
調子に乗った雌ザルが。
振り返るが、パンの姿がない。
「どこだ!?」
背後から後頭部に打撃。
振り返るとパンの蹴りを浴びていた。
「当ててんじゃねえ!」
俺は両手を組み、地面に叩き落とした。
パンは受け身を取って態勢を整える。
「やるなあ、パンのやつ」
悟空が戦いを見ながら感心していた。
「くらいな!」
俺はかめはめ波をパンめがけて放った。
パンはかめはめ波をまともに食らって体がボロボロになる。
楽しくなってきたぜ。
パンの
「うん?」
見間違いか?
俺は目をこする。
いや、確かに蠢いている。
「なんかお尻がくすぐったいわ」
パンは自分の臀部を見た。
「え、尻尾?」
茶色い物体は尻尾だった。
パンは尻尾を抜こうとする。
「パン、抜くんじゃない!」
悟空の声に、パンは尻尾を抜くのをやめた。
パンのやつ、大猿にでもなる気か?
悟空が気功弾を上空に投げ上げた。
「弾けて、混ざれ!」
悟空の放った気功弾がパワーボールに変わる。
「パン、あれを見るんだ!」
悟空の言葉にパンはパワーボールを見上げる。
「は!」
パンの鼓動が加速し、体の筋肉が膨張を始める。
「……………………」
パンを注視していると、その体を覆う服が破れて全裸になり、体毛が生えてきて巨大化し、大猿へと変身を遂げた。
茶色の大猿は黄金のオーラを身にまとうと、体毛が金色色に染まった。
「ぐぎゃあああああ!」
咆哮する大猿パン。
この展開はもしや。
俺はパンの超サイヤ人4化を想像。
ここまで来たら絶対に覚醒してもらわなきゃ困る。そうでなければ、パンの体を乗っ取る意味がないからな。
「ぐあ!」
大猿パンが俺を叩いてくる。
俺は素早くかわし、様子を見る。
「あんぎゃあんぎゃ!」
大猿パンは見境なく大暴れを始めた。
「パン……!」
大猿パンは悟空を両手で掴み上げた。
だんだんと握りこむ力が強くなる。
「やめろパン! オラだ!」
大猿パンの目が一瞬だけ光り輝いた。
「おじいちゃん……、この私が大猿なんかのパワーに飲み込まれるわけないでしょ?」
「パン?」
大猿パンは黄金のオーラを身にまとい、さらなる変身を始める。