金色のオーラに包まれた大猿パンが更なる変身を始める。
大きかった体が小さくなり、曝しを巻いた体毛のある胴体に、破れたはずのズボンが出現し、超サイヤ人4への変身が完了した。
「今度の私は、ちょっと強いよ?」
パンが目にも留まらぬ速度で俺の背後に移動する。
「……!?」
全く見えなかった。
こ、殺されるかもしれない。
俺はパンに対して恐怖を覚えた。
だが、同時に意地でも乗っ取ろうという、強い思いが芽生えた。
俺は振り返るとパンに乱打を浴びせた。
パンはかわすことなく攻撃をくらい続ける。
いける、いけるぞ!
スピードはあるが防御力はなさそうだ。
パンは、何を考えてるのか、ガードの姿勢を崩し、両手を力なく下にさげた。
「ハハハ」
笑い出すパン。
「何がおかしい?」
「ごめんね。自分のあまりの強さに、正直驚いてるのよ」
「笑うな!」
俺はパンを叩き落した。
パンは瓦礫に突っ込む。
瓦礫をどかし、立ち上がるパン。
ゆっくりと、浮かび上がってくる。
「私とあんたとでは、力の差が付きすぎちゃったみたいね」
「ほざけ!」
俺はギガンティックミーティアをパンに叩き込もうとした。
「ふん」
パンが華麗に攻撃をかわした。
隙がない。何とか隙を作ってその体をいただきたいとろだが。
振り返ると、パンが俺に向けて手のひらを突き出していた。
気合で地面へ突き落とされる俺。
「とどめを刺してあげるわね」
パンが両手を腰の横で構える。
「10倍、かーめーはーめー波ー!」
パンの強力なかめはめ波が接近してくる。
「「「ベビー様!」」」
悟天、トランクス、ブラが俺の盾になろうと、前に飛び出してきた。
「どけ貴様ら!」
俺は三人を薙ぎ払い、かめはめ波を受け止める。
俺の勝ちだ、パン。
俺はジェル状になると、かめはめ波の中をすり抜けるように進み、パンの体へ接近していく。
「その体もらったー!」
俺はパンの傷口から体内に潜り込むことに成功した。
「はあああああ!」
パンの意識を奪い取った俺は、そのエネルギーを一気に吸収し、超サイヤ人4を解いた。
俺はゆっくりと地面に着地する。
「やったじゃねえかパン!」
と、悟空が駆け寄ってきた。
「終わったのね、パン」
ビーデルもやってくる。
俺はパンの体内に卵を産み付けた。
悟天とトランクス、ブラが俺の破片を探す。
俺は三人にテレパシーを送る。
パンは落とした。大丈夫だ。
驚いたような顔をする三人。
「パン、疲れたでしょう? お家に帰って美味しいご飯作るわね」
俺は悟空、ビーデルと共に、パオズ山へと向かう。
その夜、悟空とビーデルが寝静まったころ、俺はこっそり二人の体内に入り込み、卵を産み付けた。
俺は寝室へと移動する。
ベッドではパンが静かに寝息を立てていた。
寝顔も可愛いな、パンは。
「ん?」
気配に気づいたパンが目を開けてこちらを見た。
「まだ起きてたんですか、ベビー様?」
「ああ、ちょっと眠れなくてな」
パンはベッドから立ち上がる。
「ベビー様、ちょっとだけ散歩でもしましょう」
俺はパンと家を出た。
「私、ベビー様だったら絶対に戻してくれると思ってました」
「かなりヘビーだったけどね」
「申し訳ありません、深手を負わせてしまって」
そこへ悟天がやってくる。
「悟天遅いぞ」
「すみません」
悟天は静かに家へ入っていった。
「でもそのおかげで私、超サイヤ人4をものにできました。そういった面では、ベビー様にはとても感謝してるんですよ?」
パンはそう言って、超サイヤ人4に変身した。
その強そうないで立ちは、ただただ美しく、ただただかっこよかった。
俺はパンを抱きしめる。
「ベビー様?」
「パン、俺パンが好きだ。二度と手放したくない。これからは喉が渇いたら俺のところに来い。超神水なんてやばい水飲むな」
「ご、ごめんなさい……」
顔を見合わせる二人。
俺たちは口づけをしようとした。
「ベビー様!」
どこからともなく、ブラが現れた。
「「うわあああああ!?」」
俺とパンはびっくりして飛び上がった。
「ブラか。脅かすなよ」
てへへ、と笑みを浮かべるブラ。
「ところでベビー様。今度、私にも稽古をつけてくださいね。私も、超サイヤ人4になりたいですから」
「あ、ああ。そのうちな」
「やったー。それじゃ」
ブラはそう言って飛び立った。
その時だ。俺の意識レベルが低下し始めた。
「ベビー様、どうしたんですか? ベビー……」
パンの声がだんだんと聞こえなくなってくる。
俺は完全に意識を失い、目の前が真っ暗になった。
ベビーの意識が浮上する。
「やっと出てこれたな」
「ベビー様?」
「貴様は、あの時の雌ザルじゃないか」
パンは戦闘態勢に入る。
「お前、いつものベビー様じゃないわね。誰?」
「俺こそが本物のベビー様だ。今までのやつは俺の体を乗っ取っていただけにすぎない」
「それでも、私にとってのご主人様はあの方だけよ。出ていきなさい!」
「出ていくのはやつの方だ! これは俺様のものだ!」
んあ?
がたがたうるせえなあ。
俺は気合で体からもう一人のベビーを追い出した。
「きゃあああああ!」
未発達のベビーが奇声を上げる。
「こいつだわ!」
「お前は俺には不要だ。地獄に帰れ!」
「ふん」
ベビーは逃げ出した。
「待て!」
俺はベビーを追う。
「きゃあああああ!」
ベビーは奇声を発して眩い光で俺の目をくらませた。
「ど、どこだ!?」
ベビーの気が地球から遠ざかっていく。
「逃げたか」
「あいつ、戻ってくるでしょうね」
「力をつけてな」
「でもベビー様も、私たちの体からがっつりエネルギー吸収してるから、強くなってるでしょう?」
「まあな。もう誰にも負けねえ」
「さあ、もう遅いし、戻りましょう?」
「いや、先に戻ってくれ」
「え?」
「俺はちょっとやりたいことが」
「わかりました。では、終えたら戻ってきてくださいね」
パンは家に入っていく。
俺は人々が寝静まった時間を利用し、地球人全員をツフル人化していった。
こうでもしなきゃ、平和な世界にできねえ。
作業を終えた俺は、パオズ山へと戻る。
家に入ろうとすると、ウイスとビルスが現れた。
「ウイスにビルスじゃないか。なんだ?」
「お前のその口の悪さはなんとかならんのか」
「神様だからって偉そうにしてんじゃねえよ雑魚が」
「何だとお!?」
「まあまあ、落ち着いてください」
「それで、何の用だよ?」
「お前の破壊神就任が正式に決まった」
「マジか」
俺が、破壊の神様だと?
「不服だがお前が第七宇宙の破壊神だ」
「それで、就任式への招待状を持ってきたわけか?」
「話が早くて助かる」
「あ、そういえばこの間、シャンパの使いが地球を破壊しに来たぞ」
「ああ? そのことか。それはお前を偵察に来たんだとよ」
「俺を偵察に? なぜ?」
「お前、俺とのバトルで本気を出さなかっただろう? あいつ、お前が本当に強いのか確認したかっただけなんだとよ」
「ほおう」
「それと、お前がこの世界に来た理由がわかった」
「なに?」
「お前はこの世界の救世主となるべく、異世界での死を利用して呼び出されたんだ。あそこで亡くなってなければ、この世界には来なかっただろうね」
「そうか」
「で、だ」
「まだ何かあるのか?」
「お前はベビーではない」
「だとしたら俺は誰なんだ?」
「それは、僕の口からは言えないよ」
「俺がベビーの姿をしているのは?」
「それはお前にとって必要な姿と能力だからだ」
「頭の整理がつかん」
「まあ、とりあえず必要とあらば吸収しろ。21号の時みたいにな」
「お菓子にして食べろと?」
「やり方は任せるよ。それだけ言いに来た。就任式の前には迎えに来る」
「あ、ああ……」
ウイスとビルスは去っていった。
俺は、いったい何者なのだろうか。
ただ、名前もわからないので、便宜上ではあるが、ベビーと名乗っておく。