俺は魔人である。名前はまだない。
目の前には大魔女マーバ。彼女は俺の生みの親だ。
「オゾットは失敗だったが、今度はどうなんだ?」
マーバの隣に立っているアリンスが彼女に訊ねる。
「さあ?」
「さあ? じゃないんだよ」
「とりあえず、コソットとでも名付けておこうかのう」
「コソット?」
疑問符を浮かべるアリンス。
「お前さんはコソットじゃ」
マーバが俺に向かって言う。
「コソット……」
「コソットよ、外の世界へ行き、ベビーというやつを退治してくれはせぬか? 放っておけば、いずれこの大魔界にも来るじゃろう。そうなればこの世界は終わりじゃ」
「わかった」
俺は飛び上がると、大魔界を発ち、宇宙へと繰り出した。
邪悪な気を感じ取った俺は、その場所へと向かう。
そこは、ドクターミューの研究施設。
そこで悟空、トランクス、パンの三人が、ベビーと戦っていた。
三人に圧倒され、破壊されたベビーの破片が、逃げ出すミューの中へ入り込んだ。
俺はミューを追い、宇宙船に潜り込んだ。
「何がベビーだ? 誰が主人かもわからなくなった愚か者め」
ミューの首が吹っ飛び、ベビーが飛び出してくる。
俺はベビーを狙ってビームを放った。
「なんだ!?」
ビームをくらったベビーはチョコレートになった。
俺はチョコレートベビーを拾うと、口に放りこんで噛み砕き、飲み込んだ。
俺の姿がベビーへと変わり、意識を失った。
そして、次に目を覚すと、コソットとしての全ての記憶が吹き飛んでいた。
「は!?」
我に返ると、そこは大魔界だった。
「思い出したようじゃな」
「コソットとしての記憶は戻ったが、外の世界の記憶はなんだ?」
「……?」
「この世界はドラゴンボールというテレビ番組の中だ」
「何を言っておる? 夢でも見ていたんじゃないか?」
「夢?」
言われてみれば、車に撥ねられる直前の記憶がない。
だが、俺は大魔界以外の世界の話を知っている。
「不思議そうな顔じゃな。じゃがそれは意図的なものじゃて。私がお前さんにベビーに関する記憶を植え付けるために、時の巻物をお前さんを作る時に混ぜたからのう」
と、時の巻物だと?
「そういうことだったのか」
「よくぞ戻ってきてくれたな」
「ただいま」
「それで、また行くのか?」
「ああ。俺には破壊神としての役割もあるからな」
「破壊神?」
「ビルスの後継」
「なんだってえ!?」
驚き飛び上がるマーバ。
「お、お前さん、どれだけ力をつけたのじゃ?」
「それは聞かない方がいい」
「そうか? なら聞かんよ」
そこへグロリオがやってくる。
「おい、行くぞ」
「あ、ああ」
じゃあな、と俺はマーバに言い残すと、グロリオの操縦する飛行機で地球へと帰還した。
天界にはパンの姿があった。
「おかえりなさい、ベビー様」
「コソットだ」
「コソット……様?」
「俺はベビーじゃない。コソットだ」
「じゃあ、次からはそう呼びますね」
俺はパンを抱きしめる。
「俺がいなくて寂しくなかったか?」
「寂しくないわけがないじゃないですか。赤ちゃんにはなってしまうし……」
あ!——と、何かを思い出したように、パンは口を開いた。
「ママがパパを生き返らせてほしいみたいで」
「けどドラゴンボールは使われちゃってるぞ」
「ナメック星ってところのドラゴンボールなら、何度でも同じ願いを叶えられるって聞きましたよ」
確かにその通りではあるのだが、ドラゴンボールを使うと、マイナスエネルギーが溜まり、邪悪龍が現れかねない。
「ダメだ。邪悪龍が現れかねん」
「……そうですよね」
パンは悲しそうな表情を見せた。
「パン、もしかして悟飯がいないと困る?」
「私も、パパにはいてもらいたいです」
致し方ない。なにかの折に悟飯を生き返らせるとするか。
パンを放した俺は、神殿に向かって歩き出した。
「どうしたんですか?」
「疲れたから寝る」
俺は神殿の寝室に移動し、ベッドにダイブするのだった。