「ここがコソット様のいた世界なんですか?」
パンが見たこともない街並みの様子に驚いている。
ここは俺が元いた世界の地球だ。
ゼニス王が言う通り、確かに違う歴史を辿っているようだった。
「しかし、この体は目立つなあ」
俺は成体ベビーの姿だった。
そしてパンもこの地球にそぐわ無い体をしている。
「コソット様、私の体の中に入りますか?」
「いや、それでも目立つ」
ドン!
鈍い音と共に見覚えのある男性が落下してくる。
左方には車が止まっている。
どうやらこの男性は撥ねられたらしい。
俺は地面に転がった男性を見る。
男性は、あっちの世界へ行く前の、車に撥ねられた俺だった。
俺の体は光り輝き、男性の体へと引っ張られていく。
倒れる男性の体に重なると、その体は不思議なことに傷が回復し、何事もなかったかのうように立ち上がることができた。
「コソット様?」
「うん?」
「その体に乗り移ったんですか?」
「いや、これは俺の意思ではない」
「君、大丈夫か?」
車の運転手が降りて駆け寄ってくる。
「あんた、なんていう運転をしているんだ?」
「すまん。そこにいる子がGTのパンちゃんにそっくりだったんで見惚れちゃって。流石に着ぐるみ……だよね?」
「とりあえず何ともないからとっとと行け」
「はい。ありがとうございます」
運転手は車に戻って走り去って行った。
よいこのみんなはマネするなよ。
さて、この体でも行けるか。
俺は舞空術で浮いてみた。
問題なし。
もちろん、ジェル化もできる。
もし、あれと同じ世界なら、レックはこちらの世界にいるはずだ。
「行くぞ」
「行くってどこにですか?」
「帰るんだよ」
「どこに帰るんですか?」
「俺の本当の家だ」
俺は本当の家へと向かう。
そう言えば、撥ねられ前も家に帰ろうとしてたっけ。
「ただいまー」
家に帰り着く。
「お帰り、兄ちゃん」
弟がやってくる。
「あれ? パンちゃん?」
「え、何で?」
パンが疑問符を浮かべる。
「この世界の住人は皆お前を知っている」
「そうなんですか? 不思議なこともあるんですね」
弟が訊ねる。
「それ、着ぐるみだよね?」
「いや、本物だ」
「何言ってんだよ兄ちゃん。紙から二次元のキャラクタが出て来れるわけないでしょ」
「そうでもないみたいだぞ」
「そんなバカな?」
俺は弟の頬をつねる。
「いでででで!」
「夢じゃないだろう?」
「うん」
「パン、舞空術を見せてやれ」
俺はパンの方を向いて言った。
パンが舞空術で浮かび上がる。
「すげえ、手品だ!」
「だから違うって」
「どうやって浮いてんの!?」
弟がパンの周りを調べる。
「ワイヤーもない! 支えもない!」
「本当に浮いてるんだよ」
「そんなバカな! 物理的にあり得ない! きっと何か仕掛けがあるはずだ!」
「そんなもんねえよ」
「嘘だ! 僕は信じない!」
「はいはい」
俺は階段を上がり、部屋へと向かう。
パンが後ろから付いてくる。
階段を上り切ると、俺はパンと共に部屋に入った。
外はすっかり暗くなっていた。
「パン、今日はここで寝ろ」
「ベッドでですか? でもコソット様の寝る場所が」
「そんなこと気にするな。俺は床で寝る」
「ダメですコソット様。シモベの私が床で寝ます」
「じゃあ、一緒にベッドで寝るか」
「え……」
パンが頬を赤る。
「そんな、コソット様。気が早いです。私、まだ十歳です」
「何を考えているんだお前は?」
「違うんですか?」
「え?」
俺はパンとあんなことをしているところを考える。
「コソット様がしたいと言うなら、その……」
人間とアニメキャラが交わるとどうなるのか。ちょっと興味が湧いた。
「そろそろ両親が帰ってくるころだな」
「コソット様のご両親ですか? 私、挨拶しないと」
「いや、お前はいい。両親がひっくり返る」
「どう言うことですか?」
「お前はこの世界には存在しないはずの紙の上に書かれた二次元のキャラクターだ。両親が見たら腰を抜かす」
「何だかよくわからないけど、私は会わない方がいいんですね?」
「そういうことだ。飯なら持ってきてやる」
俺は部屋を出ると、階下で帰宅した両親を出迎えた。
父は風呂に入り、母は夕飯の支度をする。
何だか久しぶりの我が家という感じだった。
「龍、そんなところでボーッとしてどうしたの?」
母さんが訊ねる。
「いや、何でもないよ。ちょっと疲れてるだけ」
「そう。ご飯食べたら早く寝なさい。明日も早いんでしょ?」
「いや、明日は何もないよ」
「そうなの?」
「うん」
この時の俺は、車の免許を取るために教習所に通っていた。
「よし、夕ご飯の準備オッケーよ」
母さんがテーブルに晩ご飯を並べる。
「俺、部屋で食べるわ」
「あら、そうお?」
俺は晩ご飯を手に部屋へ戻った。
「パン、食事だぞ」
「でもそれ、コソット様のでは?」
「俺はいい。お前にやる」
「それではコソット様が空腹になってしまいます。シモベとしてそれは看過できません」
「食え。命令だ」
「そう仰るなら」
パンは晩ご飯を口に運んだ。
「見たこともない食べ物ですけど、美味しいです」
俺はベッドに横たわる。
「ご馳走様でした」
食べ終わったパンがベッドに潜り込んでくる。
「コソット様」
「や、やらないよ?」
「え?」
「パン、それはもうちょっと大きくなってからしようか」
「でも、ブラちゃんは経験してるみたいですよ」
マセガキめ。
まあ、いいか。サイヤ人だし、普通の人間よりは体力はある。もしできても負担はかかりにくいだろう。
その夜、俺とパンは交わった。
何をしたかはご想像にお任せするとして、俺たちは一夜を明かした。