ダンジョンに呪術師が転生するのは間違っているだろうか   作:矢瑠気雑子

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最初に比べてだいぶ文字数が減りました!
書いてみて分かりましたが、私は台詞が多いかもしれないので読みにくかったら申し訳ございません!
それではどうぞ!


1話 ─転生─

死んだらどうなるのだろうか。

意識はあるのに、何も視えず、発せず、聴こえず、匂いもせず、そしてなにも感じないのだろうか。

無限の闇の中をただ孤独に意識だけが彷徨い続けるのだろうか。

それとも、この体のように、徐々に崩れ、いずれ消えてなくなり俺ではないオレへと魂が再構成されるのだろうか。

俺は別に天国とかそういうのは信じていないから死後のイメージが湧かない。

故に分からない。当たり前だ。死んだことが無いのだから。

…いや、あいつらは死んでたのにあんなところで屯ってたな

じゃあ今の俺の状況は一体何なのだろうか。

身体は光の粒子となって消えて、おそらく今の俺は露月世蓮としての魂が剥き出しになっている状態だ。

 

視えてはいる。

ただ動かない。いや、動けないか。

手足もなければ胴体もない。まるでドローンを操縦している時のモニターの様だ。

まあ視えているだけましか。

まあ全て真っ白の─まるで純白の大地のような─そんな綺麗ではあるが殺風景な景色だが。

 

 

…意味が分からない。

まさかここが死の世界か、にしても俺以外の魂が視えない時点で違いそうだ。

ならばここはどこなのか。全く分からないし、正直暇だ。

呪いが廻るように人の魂もまた輪廻の輪を廻るはず。

…もしかしたら俺はその輪から外れているのではないだろうか。

もしそうだとしたら、俺はこれからどうしたら…ん?

 

 

 

突如、魂のみになった世蓮は自身の真下が光りだしていることに気づいた。

その光は徐々に輝きを増していき、やがて光の柱となって世蓮の魂を包み込んだ。

その光の柱に飲み込まれた世蓮は、不思議にも自身の意識が遠のいていく感覚に襲われていた。

 

 

 

…な、るほど。この意識を手放したら俺も輪廻の輪にのり、生まれ変わる準備に入るわけか。

…このまま意識を手放して、果たして俺は悟たちと会えるのだろうか

試しに抵抗して…無理だな、そんな意識が出来ないようになっているのか、感情が削がれる。これは諦めるしかないか…

 

 

 

と、このまま流れに身を任せようとした次の瞬間、世蓮は無理やり己の魂に刻まれているだろう術式を発動させた。

感情が剝がされるというのなら、その剥がす速度が追い付かないほどの感情を─術式を発動させるために必要な負の感情─を一気に溢れだした。

 

 

 

あいつらに会いたい。もう一度、4人でまたバカやって笑えるあの光景を、あの綺麗な青い景色を。

この光の柱がなんなのかは知らない。もしかしたら神とやらが操っているのかもしれないが、そんなのどうでもいい。

約束(・・)したんだ。もう一度あいつらの話を聞くって。あいつらが来るのを待ってるって誓ったんだ。

それを邪魔するって言うのなら俺は……たとえ神だろうが呪い殺す(・・・・)

 

 

 

瞬間、とてつもない量の呪力が世蓮の魂から溢れ出した。

まるで決壊したダムの暴流のように、ドス黒い呪力が光の柱をジワジワと侵蝕していく。

黒く黑くどこまでも虚無(くろ)く染める呪いは、やがて柱のみならず純白の大地をも染めていった

だがそれでも、意識を維持するのは難しいのか、世蓮の抵抗は虚しくも失敗に終わった。

 

 

 

……クソ。ここ…ま…で……か……

 

 

 

元は光の柱だったその黒い柱は黒く染まった漆黒の大地を物凄い勢いで吸い込むと、意識がない世蓮の魂事消えてなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

【オラリオ】そこはこの世界で唯一迷宮(・・)が存在する円形の都市。

この都市には様々な種族が存在する。

人間(ヒューマン)や容姿端麗で精霊に次ぐ魔法の使い手とされている─エルフ、少し背丈が低いが筋肉質な体格で力に優れるとされる─ドワーフ、体術よる高い戦闘技術と強い闘争心を持ち強い男尾を好むとされる、褐色の肌の女性のみの種族が特徴のアマゾネス、成人しても100C程度しか伸びない小柄な種族─小人族(パルゥム)、動物のような身体的特徴を持ち、各種族によって固有の能力を持っている─獣人がいる。

そして天界より未知と娯楽を求めて下界に降臨した不変不滅の超越存在─神。

全員漏れなく外見が容姿端麗であるが、下界に降りる条件として神の力を封印され、一般人と同等の身体能力に下がってしまう。

 

そんな多種多様な種族が集まるオラリオは現在、暗黒期という悪の台頭を許し、秩序は混沌に塗り替えられ、血が血で洗われる。

多くの子が泣き、多くの者が傷付き、多くの悪が嗤った最悪の時世だった。

そんな最悪の真っ只中なある日、この大都市に新たな未知が降り注いだ。

分厚い雲が天に蓋をし、決して下界に希望の明りを灯さないその天に、一本の柱が天地を繋いだ。

その柱はどこまでも黒く深く、どこまでも闇そのものだった。

その柱を目にした下界にいる神たちは、その瞬間だけは皆が同じ感情を抱いた。

その感情とは、─恐怖─

あの柱はダメだと、触れてはならぬ禁忌に近いものだと。

あれは、我々を犯すことができる猛毒だと。

この日、この瞬間オラリオにいる全ての神が、あの黒い柱に等しく恐怖した。

 

だが、ただ一柱だけ、その黒い柱の下へ向かっている神がいた。

闇派閥という見境なしに命を奪う殺戮集団が蔓延る中、本神自身もなぜ自分があの危険な臭いがプンプンしているところに向かっているのかもわからないでいた。

ただ、あの柱を見たその瞬間に足が動いていたのだ。

 

「な、なんで僕はあんな怖いところに勝手に向かってるんだぁぁぁ!?」

 

「ちょ、ちょっとヘスティア!あなたなんであんな見るからに危険ですって言ってるような場所に一目散に向かってるのよ!」

 

「僕だってあそこが危険だってわかってるけどなんか身体が勝手に動いてるんだよ!これなに!?下界怖い!未知が怖いよぉぉぉ!!」

 

「絶対危険よ!あなたまだ下界に降りてまだ数日でしょ!?なんでこう降りてくるタイミングといいめんどくさいことに首突っ込むのよぉ!」

 

「…わ、わからないけど、でもなんか行かなきゃいけない気がしてるんだ!それはわかるんだよ!」

 

「な、なんなのよそれえぇぇぇ!!」

 

今現在、柱に向かって全力疾走中の少女、身長の低さや黒髪ツインテールという髪型からかやや子供っぽい印象を持つが、その彼女の体格に見合わないサイズの胸が彼女をただのロリではないことを物語っている。所謂、ロリ巨乳系美少女の称号をもつ神─ヘスティア。

そしてそんな彼女をこれまた全力疾走で追いかけている美女、深く熱く燃えるようなイメージをさせる美しい赤髪に、その美しい容姿の右目には眼帯が付いており、それがまた彼女の妖艶さを引き出している。

彼女は〈神匠〉と呼ばれている鍛冶神─ヘファイストス。

 

彼女らは只今、あの神々が恐れる黒い柱へと向かっている。

といっても向かっているのはヘスティアであり、ヘファイストスはそんな危険な場所に何も考えず突っ込もうとしている神友をなんとか止めようとしているのである。

まだ柱の下まで距離にして数百Mあるが、向かっている途中で柱は消失してしまった。

 

「うーん、ここら辺だったと思うんだけどな」

 

「あまり離れないようにねヘスティア。人通りの少ない路地裏の奥地なんて闇派閥が潜んでいてもおかしくないんだから」

 

現在二柱がいるのは柱の反応が消失した地点である路地裏の奥地である。人の気配がなく、街灯がないことから暗さで足元があまり見えていない。

お互いがお互いを視認できる範囲で柱の発生源を探していたが、数分慎重にだが周囲を探していたがなかなか見つからなかった。

 

「ヘスティア、もうそろそろ帰りましょ。もうすぐ憲兵とかが調査でこっちに向かってくるわよ。何があるかわからないし、これ以上は危険よ」

 

「…ああ、僕も君になにかあっても責任はとれないし諦めるよ。付き合ってくれてありがとうヘファイストス」

 

「どういたしまして。ほら、さっさと行くわよ」

 

「ち、ちょっと待って置いてかないでくぎゃっ!」

 

「へ、ヘスティア!?あなた大丈夫!?」

 

へファイストスを追いかけようとしたとき、何かに躓き転ぶヘスティア。その彼女のあまりのドジさに心配の眼差しを向けながら彼女の下へ駆け寄ったヘファイストス。

 

「う、ううぅ…いたた、大丈夫だけど今なにか…え!?ち、ちょっとヘファイストス来て!」

 

「どうしたのよ…これって!?」

 

「「に、人間!?」」

 

 

 

二柱の目の前には、泥で汚れてはいるものの傷とかはなく気絶しているのか眠っている人間がいた。

状況的にかなり怪しい人物だからかヘファイストスはやや警戒気味に、それとは逆にどこかソワソワと落ち着きなのない様子のヘスティア、各々全く違う感情を持って件の人間を注視していた。

身体のラインが強調されるようピチッとした服から見える鍛え抜かれた戦士のような肉体。その背丈は190Cはあるだろう。長く綺麗な白銀色の髪は高級な絹のようで、その容姿は先に肉体を見ていないと思わず女性と間違えてしまうのではないかと思うほどには中性的な顔をしていた。幼さが残るその顔は年齢的に17~20さいぐらいか。非常に整った顔はそこらの神よりも、いや、もしかしたらあの美を司る女神以上の端麗さを誇るのではないかと二柱は思った。

 

「…わかってるのかしらヘスティア。あの柱の発生源下で気絶している人間なんて、あまりにも怪しすぎるわ。あなたの性格的に心苦しいかもしれないけどここは憲兵たちに任せましょう。目が覚めて襲われても、今の私たちじゃ抵抗もできないわよ」

 

「う、うん。それはわかってるんだけど…」

 

「…まさかあなた、その子を連れて行こうとしてないわよね?」

 

「ギクッ!そ、そんなこと!」

 

「…わかりやすすぎでしょあなた。その姿を見たら誰でもわかるわよ…」

 

ジトッとヘスティアの事を見るヘファイストス。

そんな親神からの視線を受けているヘスティアは現在、件の青年を自身の膝の上に乗せ、その綺麗な頬をどこか愛おしそうに優しく撫でていた。

恐らくその行動は無意識だったのかヘファイストスの視線で初めて自身のしている行動に気づいたのか頬を赤らめるヘスティア。

 

「気持ちはわからなくはないけど、さすがにその子は得体が知れなさすぎるわ。正直、安全が確認できるまでは離れた方が身のためよ」

 

「うん、僕もそれはわかってるよ。わかってはいるんだけど、どうしてかほっとけないんだ」

 

「それはどうして?知っている子でもないんでしょ?」

 

「そうだね、今初めて会ったよ。なのにどうしてかわからないんだけど、僕はこの子と一緒にいたいって思ったんだ。離れたくないって、離れちゃダメだって」

 

「…例えあなたがそう思っても、この子はおそらくあの柱と関係しているわよ。あれは私たち神にとって悪い影響を与える可能性がある。あの柱が発生した時に感じた恐怖は、はっきり言って確かよ。普段、未知に対して面白半分で突っ込むのが神だけど、あの未知は確実に身を亡ぼすわ。やめておきなさいヘスティア」

 

ヘファイストスの真剣な説得に、だんだんと表情が曇るヘスティア。どこか切なそうな悲しんでそうな表情を浮かべながら、彼女は青年を撫でる手を止めない。そうしてしばらく沈黙が続いたが、なにか考えがまとまったのかヘスティアは重々しくもその口を開いた。

 

「…ありがとう、ヘファイストス僕を心配してくれて。…でもなんだかね、僕はこの子が放っておけないんだよ」

 

「…それはどうして?」

 

「わからないんだ。でも僕はあの黒い柱を見た時、確かにみんなと同じように怖いと思ったんだけど、でもそれ以上に行かなきゃって思ったんだ、あの柱の下へ。そしてこの子を見て、なんだか胸が苦しくなったんだ。この子は危険じゃない。あの柱と関係していたとしても全く怖くないんだ。ただ不思議と、傍にいたいって、できれば家族になりたいってそう思っちゃったんだ…」

 

僕どうかしちゃったのかな…と困り顔で笑うヘスティアを見てか、その美しい顔を歪めてなにやら眉間に指をあて唸るヘファイストスはしばらくして考えがまとまったのか、深い溜息を吐き出し口を開いた。

 

「はぁ~。…わかった、わかったわよ。あなたがそこまでなにかに夢中というか真剣になるのも天界からの付き合いだけど初めてだしね」

 

「へ…ヘファイストス…い、良いのかい?」

 

「良いも何もそうしたいんでしょ?ならもうやれるだけの事はやって見なさい」

 

「あ、ありがとうヘファイストス!君と神友になれて僕は「そのかわり!」…ひゃい!?」

 

「住む場所は私が手配するからもう私のところで居候はやめて自立すること。三日に一度、彼の事を私に話しに来ること。そして念のため、彼が信頼に値する人間であると確信できるまでは護身用としてナイフでも持っておきなさい。手ごろなやつをあげるから。それがその子を引き取るうえでの条件よ」

 

「わ、わかったよ!本当にありがとうヘファイストス!僕頑張るよ!ちゃんと自立してみせる!」

 

「…はいはい頑張ってね。なんか堕落した我が子を送り出すみたいだわ」

 

「そんなことないやいっ!それよりヘファイストス」

 

「ん?なにかしら」

 

「この子を運ぶの…手伝ってくれないかな?」

 

「…はぁー…先が思いやられるわ」

 

 

この後、二柱はなんとか憲兵にバレずに協力して青年をヘファイストスのホームに連れて帰ったのであった。

 

 

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