ダンジョンに呪術師が転生するのは間違っているだろうか 作:矢瑠気雑子
原作とは違い、ヘスティアがこの頃には下界に降りてヘファイストスの紐になっています。
原作改変しているところが多々あると思うので、注意して読んでいただけると幸いです!
それと評価や感想が来ていて凄い驚きました!ありがとうございます!
めちゃくちゃモチベになりますので、これからも引き続きよろしくお願いします!
どこまでも深く暗い闇が目の前を支配している。
どこまでも冷たく重い負の感情がこの世界を支配している。
身体の奥底から人ではないナニカに作り替えられていく感触が、心から徐々に喰い尽くされ犯されていく感覚がこの身を侵食し、人ならざるモノへと生まれ変わっていく。
─助けて─
その言葉がついぞ出ることはなく。ただ終わりがくるのをじっと待つだけだった。
これはうちの、平安の世から続く露月家の儀式だ。
露月家とは、現代まで様々な呪術家系がいる中で呪術師の人数が最多を誇る家だ。呪術師としての活動はもちろん、独自の縛りや誓約を用いて高品質の呪具の生成など多岐にわたっている。
そんな露月は、この家に生まれた男は皆が生まれた瞬間、自らの名前は与えられず、ただその肉体に個々に与えられた生き物の柄が施された、家独自の縛りが課された呪印が刻まれる。
そして、専用の部屋にて平安時代からの呪霊や露月家で受けた任務により厳選した呪霊と呪印の一部効果によって強制的に発動できる反転術式を利用して己の四肢を切り落としたモノ、それぞれを濾して凝縮した〈浴〉を生まれてから15歳までの間、毎日浸かるのである。
呪術師として最高品質を目指すために。
だが、当然全員が才能を持って生まれてくるわけではない。才能がなく術式を持てぬ者は必ず生まれてくる。
そして古くから呪術師として繁栄してきた家系には歪んだ思想や家訓がある。
最たる例は現代で御三家と呼ばれる家の一つである〈禪院家〉だろうか。
【禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず】
呪術師でなければ人ですらなれない。この考えが露月家にもある。なんならこの考えはどの家系よりも露月家が強い。その理由はこの家が行っている儀式に関係している。
─蠱毒─
古代中国に起源を持つ呪術の一種であり、内容は簡単に言うと毒を持つ生物を壺に入れて互いに殺し合わせ、最後に残った一匹の毒を抽出し、呪具として用いられるというもの。
これを露月家は
平安時代の成人を表す元服年齢15歳になった子どもで呪術適正のない、または力があっても目覚め切れていないものを様々な呪符や呪具、呪印で呪術効果が極限まで上げられた特殊な部屋に監禁する。
そして行われるのは、血で血を洗う殺し合いである。
人数は毎回違うが、少なくとも20以上は必ずおり、その大人数が最後の一人になるまで決して開かず、生き残った最後の一人に初めて名前が与えられる。
部屋の中は最早血の匂いしかせず、五感で感じる全ての情報が血でしかない。
殺さなければ殺されるだけ、そんな殺伐とした地獄絵図を再現する儀式。
これが露月家が行う、人間になるための儀式─蠱獨。
ハッキリ言って正気の沙汰ではない。生まれてすぐに、おそらく大半の呪術師ですら耐えられない高濃度の呪力溜まりである浴を行って生き残れる子などほぼいない。
だがそれを可能にしているのが露月家オリジナルの呪印なのだが、この話はまたいつか。
ああ、なぜらしくもなく昔の家のことなんか思い出しているのだろうか。
分からない。俺は一体何をしている。
俺は宿儺に敗れ、硝子の幸せを願い、悟に全てを託した。
そうだ、俺は死んだんだ。
だからか、身体は動かず意識も朦朧としている。
浴の時と同じだ。身体が奥底からナニカに喰われ犯され人ならざるモノへと作り替えられていく。
落ちていく。墜ちていく。堕ちていく。
深い深い果てもない闇の底へ。
なにも感じられない。
いや、冷たい。どこまでも冷たく悲しく孤独な世界が広がっている。
仕方ない。受け入れるしかない。大丈夫だ。あいつらに出会うまではいつもこうだったではないか。
ただ戻るだけだ。生まれ変わり、また孤独を受け入れればいいだけの話だ。
簡単だ。
…なんだ?
…何かが光っている
…これは、燈か
…暖かい
…そして、眩しい
まるで陽だまりにいるような、どこまでも優しく暖かい、道を照らしてくれるような燈が目の前にある。
ふよふよと漂うそれは、まるで慰めるようにそっと俺の傍へと近寄ってきた。
ああ、これは不味い。
俺はこれを知っている。
この暖かさを、優しさを、美しさを知っている。いつまでも、どこまでも、ただずっと傍にいたいと思ってしまう。
そうだこれは、
いいのだろうか、生まれ変わってもこれを求めてしまって。
どこまでも堕ちていく今の俺に彼女らと同じような存在を求めていいのだろうか。
数々の命の上に立っていたこの俺を、全てを捨てる選択をしてしまったこの俺を、許されるのだろうか。
そっと燈を両手で抱えて身に寄せると、その輝きはさらに眩しく暖かさが増した気がした。
喜んでいるのだろうか。どこか愛おしくさえ感じるそれに優しく微笑む。
大切にしたい。素直にそう思った。
その瞬間、まるで闇夜でしかなかったこの底がまるで雫が落ちた水面のように波紋が生じた。
雫が落ちた場所を中心に闇は少しずつだが光を灯した。
なんだろうか、これは。
もう一回、もう一回と雫は落ちていき光が闇夜を照らしていった。
この光は、この燈は俺から離れない、それどころかどこまでも俺を独りにしないらしい。
…声が聞こえる。俺を呼ぶ声が
…それはまるで迷子の子どもを導くような、そんな声だった。
俺はその声に向かって歩きはじめる。ついさっきまで暗闇で何もわからなかったのに、今の俺は歩くべき方向が分かる。
この先に進んで何があるかは分からないが、とりあえず、歩もう。止まらずただひたすらに前へ。
闇の柱が下界に降りてきて三日が経った。
現在ヘスティアはヘファイストスと共に彼女のホームで青年が目覚めるのを今か今かと待ちわびていた。
身体は彼女らが綺麗にしたのだろうか、出会った時より綺麗になっており、その美しさはより増している。
「うーん、もうそろそろ起きてもいいと思うんだけどなぁ」
「そうね、ケガもないしあれから三日経ったからもうすぐじゃないかしら。ただ…」
「ただ?」
「あなたがそうやって同じベットで密着しているから、起きたくても起きられないんじゃないかしら?初めての運命というか子どもができるかもしれないってことで楽しみなのはわかるけど、身体を拭いたりするのも一緒に寝たりするのもほどほどにね…。この子の人生はこの子が決めるものだってのはちゃんと分かっているのかしら」
「わ、わかってるやい!ただ、なんか色々してあげたくなっちゃうんだよ!」
「ほんとあれからずっとそれ言ってるけどなんなの?ハッキリ言って意味が分からないんだけど」
「ぼ、僕だってわからないんだけど、あの日にも言ったけど、なんか傍にいたくなるんだよ。そばにいるだけでなんか胸がぽかぽかして、心地いいんだ」
「…まさかあなたがここまでちょろいとは思わなかったわ…。なんかもう飽きれを通り過ぎて心配だわ」
「ち、ちょろい!?べ、別に誰にでもこうなるわけじゃないよっ!?当たり前じゃないか!これはこの子限定の感情だからっ!」
「…うーん、うるさい…」
「悪かったねうるさくて!でも君の発言は訂正してほしいというか、勘違いしてほしくないんだよ!?」
キリッと鋭い眼差しをヘファイストスに向けるヘスティア。だが、向けられている彼女はまるで意味が分からないというような冷酷な目をヘスティアに向けていた。
なぜ私がそのような目を向けられねばならんのだと。
別に私は
そこでようやくヘスティアも彼女の心意に気づいたのか、慌てて謝罪する。
が、今度は誰がその言葉を発したのかが彼女らの疑問に残った。
この部屋にいるのは自分たち以外には
青年
まさかっ!と彼女らはまるで双子のように息ぴったりに視線を青年に写した。
先ほどまで仰向けで安らかに眠っていた青年は、頭が痛いのか手で目元を覆いながらも険しい表情を浮かべていた。
「…ここは、どこだ?」
「お、おお起きたのかい!?」
ゆっくりと手をどけ視界に入る情報をなんとか分析する青年。
彼の瞳はまるで綺麗なアメジストのように、キラキラと輝いており、どこか異質な雰囲気が出ていた。
そんな彼をやや緊張した顔で見るヘスティアは、初めてちゃんと彼の容姿を見たことでかその顔はどこか赤みがかっており惚けていた。
そんな彼女の様子に、話が進まないと察したヘファイストスはここまでの状況を説明しつつ、青年の情報を聞き出そうとしていた。
「ここは私のホームよ。あなたは路地裏で気絶していたところを私たちが運んだの」
「…そうか。それは苦労を掛けたな。すまなかった」
「それは別にいいのよ。好きでやったことだから。…それより、貴方は何者でどこから来たのかしら?」
「俺は…」
ヘファイストスの質問に黙り込む青年。時折、掌を開いたり握ったりと繰り返しながらどうにか考えをまとめようとしていた。
(どういうことだ…先ほどまで俺は魂だけの存在で肉体はなかった。だが今確認したところ、この身体は俺の意思で動いている。そしてなによりこの身体には呪力が流れている。しかもおそらく生前の俺と同じ呪力の質。まさか蘇生の術式か、または降霊術の一種か…。
それに彼女らの存在。服装は眼帯の方はまともだが、俺の隣でぼーっとしている彼女は明らかおかしい恰好だ。明らかに変態のそれ。というかなぜ俺は彼女と同じベットにいる?情報が全くまとまらん。こんなこと、葵のペンダントの中を見てしまった時以来だ…とりあえず、まずは情報を集めるか。)
「…質問を質問で返して悪いが、まずここはどこで貴方たちは誰なのか聞いてもいいか。あと、良ければ鏡か何かを貸してもらえると助かる」
「そりゃ混乱もするわよね、ちょっと待ってて…はいこれ手鏡。それで答えだけど、ここはオラリオ。そして私の名前がヘファイストスでそこで固まっているのがヘスティアよ」
「…ヘファイストスにヘスティア…そしてオラリオ…か」
赤髪眼帯の女性がヘファイストス。そして隣の変態がヘスティア。青年はその二人の名前に聞き覚えがあるのか、小さくその名をつぶやいた。
(…オラリオという地名は日本は愚か海外でも聞いたことがない。そしてなにより、彼女らの名前…ヘファイストスとヘスティア、確かどちらもギリシャ神話に出てくる神の名前だったか。神…ただの偶然か。いや、だが彼女らが発する異質な雰囲気、そしてなにより、彼女らからは呪力が
二人が真希や甚爾さんと同じ天与呪縛という可能性は…いや、ないな。そんな簡単に呪力が全くない人間がいるはずがない。考えられるとしたら、あまり考えたくはないが、ここが俺の知る世界ではない可能性…。
そして今の俺の姿、高専時代に戻っている。転生の類とみて間違いないか。そう仮定すると彼女らの正体は…)
「続けてですまないが、貴方たちはもしかして、神…という存在か?」
「ええ、もしかしなくても私たちは下界に降りてきた神で間違いないわ。見るのは初めて?」
「…ああ、初めてだ。それにしてもそうか、俺は異世界に転生でもしたってことか」
青年は己の状況がまとまったのか、深い溜息を吐いては頭を抱えた。
なぜこうなったのか、あの時変に抵抗をしてしまったからなのか、理由はわからないがとりあえずそう仮定するほかない。
「それで、なにやら混乱しているところ悪いんだけど、いい加減あなたの事を聞かせてくれるかしら?」
「…名前は世蓮、露月世蓮だ。それ以外は覚えていない」
「…悪いけど、私たち神に嘘は通じないわ。あまり話たくないのかもしれないけど、あなたの身元が安全であると保障できない場合、あなたを憲兵に渡さないといけないの。だから悪いけど、わかる範囲の事は教えてくれるかしら?私たちも可能な限り話すし、できることなら協力もするわ」
「…そうか、わかった。俺が分かっていることを仮定も含めて全て話す」
「ありがと、その前に…ちょっとヘスティア!いつまで惚けてるの!あなたが彼をここまで連れてきたいって言ったんでしょ!だったら最後まで責任取ってシャキッとしなさい!」
「…アラツキ・セレン…君」
「…はぁー。いい加減にしなっさい!」
「ふぎゅっ!ちょっと痛いよヘファイストス!」
「あんたがいつまでたっても惚けてるからでしょっ!話が進まないのよ!今セレンが話をしてくれるからあんたはちゃんと聞く!いいわね!?」
「う、うん分かった。…ごめんねセレン君」
「…いやいい。それじゃ話すぞ」
それから世蓮は自身の前世からあの死後の世界の事、そしてこの異世界に転生してきたであろう仮定の話まで全て話た。
神相手に嘘は通じないのは先ほどので理解したのか、全て正直に話ていた世蓮。
生前、そこまですぐに他人を信用することはなかった世蓮だったが、なぜか彼女らはすんなりと受け入れられていたことに自分自身ですら驚いていた。
「…なるほど。嘘はなかったし、本当に別の世界から生まれ変わったのね」
「ああ。だからこっちの事は何も知らん。言葉が通じている時点で言語は問題なさそうだ」
「確かにそれはそうね。それじゃ今度はこの世界について説明するわ。わからないことがあったらその時聞いてね」
「わかった。よろしく頼む」
それからヘファイストスは世蓮にこのオラリオについて説明した。馴染みのない単語に関してはしっかりと質問し、それに対してヘファイストスだけでなくヘスティアも答えてくれたことにより、世蓮はしっかりとこの世界に対しての理解を深めていた。
…なるほど、彼女らの説明で概ねこの世界の事が分かった。
1、この世界には人間のほかにエルフや獣人など様々な人種がいる。
2、下界に降りてきた神から力を得ることでその神の眷属となり、ファミリアという組織となって様々な仕事を行うこと。
3、そのファミリアがする仕事の中でも、オラリオでは冒険者という主に戦闘をしたりダンジョンという迷宮に探索をしたりする仕事が人気だということ。
4、眷属となった者はレベルという強さの階級のようなものが発生し、偉業を成し遂げることでレベルを上げることが出来る。
5、現在オラリオは暗黒期で闇派閥といういわば呪詛師みたいな者たちが跋扈しているらしい。
他にも色々聞いたが、大体はこれさえ覚えておけばいい。
異常の事を聞いて、俺の今後の動きだが…
「それでセレンは今後どうするつもりなの?」
「今少し悩んでる」
「…せ、セレン君」
「…ん?どうした神ヘスティア」
なにやらもじもじした様子でこっちを呼ぶヘスティア。手元をしどろもどろさせながらチラチラとこちらを見るその姿はどこか小動物を連想させられる。
「…あ、あのさ」
「うん?」
「も、もしよかったら、僕のファミリアに入らないかい?」
覚悟を決めたヘスティアのその眼は、どこか見たことがあるような、俺はその眼を知っているような気がした
中途半端に終わってしまいました…
話の辞め時みたいなのがなかなか見つけられないですがなんとか次をすぐに公開できるように頑張っていきたいのでよろしくお願いします!