新生紀日本国召喚   作:空気の破壊者

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今回からみなさんにアンケートで聞いていた"あの回"が始まります。


Interlude:Aqua oceanus et Evangelium
第九話『海魔、討伐』


◆◆◆

 

 フィルアデス大陸の南に北海道ほど大きさの島があった。その島を領土とする国、シオス王国は中継貿易により発展しており、第三文明圏やロデニウス大陸とも関係が深い。

 

 しかし、今はバミューダトライアングルの如く船が行方不明になっているようで、あの海域に魔力嵐でもあるのか魔信を介してもシオス王国とは1ヶ月ほど連絡が取れていない。

 

 船が帰ってこない原因は命辛辛逃げ帰った商船によると、シオス近辺の海域には海魔がうじゃうじゃといて、近づいた船に手当たり次第襲っているらしい。

 

 そこで、海魔を討伐することをロデニウス三国は国連会議で提案、海魔にはヒュドラのような巨大個体が多いことから国連はネルフに討伐任務を委託した。

 

 急を要する案件に対応するため、ネルフはちょうど再武装作業が完了したエヴァ最終号機を討伐任務遂行機に選出した。*1

 

◆◆◆

中央暦1639年7月7日

フィルアデス大陸南方海域

 

 箱根の大観山空港から離陸した海魔討伐隊は日本列島の西、シオス王国へと向かって飛行していた。

 

「まったく…ミサトさんはいつになっても人使いが荒いよなぁ。前も新東京島から呼び戻したかと思えばボクを発電機代わりにするし……」

 

 光の翼を展開して海上を飛翔するエヴァ最終号機から上空の超大型輸送機に乗っているトウジに愚痴をこぼす。

 

「まぁそう言うなやシンジ。総司令だって異世界に転移して疲れとるんや」

 

 そう言ってトウジが窓の外に目をやると光の翼を展開して飛翔しているエヴァ最終号機の他にも6機の戦闘機が、この輸送機と同型の日本やクワ・トイネなどの各国代表が搭乗している超大型輸送機を護衛をしているのが見えた。

 

 護衛機の方は現在、国連軍扱いされているユーロ空軍のN2リアクター搭載試作戦闘機だ。

 

 一年前、ユーロが国連軍の名を借りて失敗した、混成航空団のネルフJPN急襲作戦で北海道や北陸の山中に墜落し、生存したパイロットがその機体には乗っている。恐らく、彼らはトウジに助けられた借りを返したいというところだろう。まぁ実際、ユーロ第六軍司令のクラウゼヴィッツに頼み込んで国連軍の総司令に直談判したとの噂もあるほど、義理堅いのだ。

 

「……で、なんでケンスケもついてきてんのや。」

 

 トウジが指を指した先にはおお〜!とか、うわ〜!とか言って目を輝かせた興奮したケンスケがいて、機材を色々と物色していた。……ついでに、こっちに気づいたのか近づいてきた。

 

 「この輸送機すごいよ!航続距離は地球半周はできて、積載量はエヴァを運ぶためにソ連のムリーヤを超える5000t!しかも不整地でも離着陸可能という技術力の結晶!!これを見て…いや、これに乗って興奮するな、と言うのは無理があるよ!」

 

「ケンスケ……そんなに興奮しないでよ……」

 

 シンジはケンスケの超饒舌に画面越しに引いてるが、ケンスケはそれに気付いてないのか話を続ける。

 

「いや〜乗れて良かった!良かった!やっぱ、持つべきはネルフJPN副司令代理…いや、今は海魔討伐隊長でもあるか……とエヴァの友達だな!!」

「……ったく、お前は相変わらずやなぁ」

 

 海魔討伐隊長……正確には国連事務総長特別代表なトウジは昔からちっとも変わらないケンスケに少々呆れていると、オペレーターから報告が入る。

 

「討伐隊長!レーダー、1時の方向に感あり。恐らく例の海魔だと思われます。」

 

 レーダーをよく見るとたしかに、正体不明のエヴァサイズより一回り小さい影がいくつかあった。

 

「おっ、シンジ仕事や。データは送っとくわ。ほな、一発かまして来い!」

「海で戦闘かぁ、ガギエルから…四年ぶりかな?」

 

 シンジはトウジの激励と共に送られたデータを眺めながらかつての戦いを思い出す。ガギエルとの戦いではアスカの弐号機に一緒に搭乗したが、初号機……いや、最終号機で本格的に海上戦闘をするのは今回が初めてだった。

 

「緊張するなぁ……」

 

 シンジがそう呟くと、最終号機は海魔に向かって飛翔していく。

 

 やがて地平線の向こうに様々な海魔が泳いでいるのが見えた。巨大カジキマグロ、巨大プラナリア、巨大ミミズ、巨大カサゴ、巨大イセエビ……まさに多種多様、十人十色だ。

 

「あのマグロ。寿司にして食べようぜ。ねぇ、隊長?」

「脂ノってそうやナァ……シンジ、マグロは捕獲や!」

 

 二人が何を企んでいるのかと思えば、マグロを食べたいらしい。ディスプレイを見るとつぶらな瞳でコチラを見つめていた。

 

「分かったよ……ミサトさんに怒られても知らないけどね」

「おう、ワシが責任取ったるから安心しとけ!」

 

 そして、大きな音を立てて着水した最終号機は腰から取り出したビゼンオサフネ、エヴァサイズの日本刀を振るって海魔を彼ラの咆哮と共に斬り飛ばしていく。

 

「ハァッ!!」

 

 圧倒的なサイズと力量差により、最終号機にとって海魔はそれほどの脅威ではなかった。しかし海が血で染まり、肉塊がゴロゴロと浮いていた。その様子はあまり気持ちの良いものではない。

 

「マグロはコンテナに入れるよー」

 

 その後、今夜の夕食である巨大なカジキマグロ(型の海魔)が最終号機に運ばれ、輸送機のコンテナに搬入されたところで新たな報告が上がる。

 

「討伐隊長!新たに、6時の方向に特大反応を確認!エヴァと同サイズはあると思われます!」

 

「おかしいな。そのサイズ感ならもっと先にレーダー探知できてもいいのに…」

 

 その報告を聞いたケンスケは疑問を抱くが、トウジはシンジに命令する。

 

「シンジ、6時の方向や。カメラ回してくれ」

「分かったよ、トウジ」

 

 振り返った最終号機のカメラに映った海魔は100mほどの大きさもあり、九つの頭を持つ巨大なウミヘビ、という印象だ。

 

「おお!あれはヒュドラ!海魔の中でも強い方の奴だ!」

 

 ケンスケはどこからか手に入れたこの世界の古い書物をペラペラとページを捲って確認している。ヒュドラ……その言葉はシンジの頭の中に神話上の生物のイメージが脳裏をよぎらせた。

 

「デカすぎでしょ……エヴァの2倍はあるんじゃない?」

「シンジ、お前も十分デカ……ってあの海蛇デカすぎんか?!」

 

 巨人と海蛇が対峙しているが、ヒト型の最終号機と比べるとヒュドラはなかなか威圧感がある。長く首を伸ばせばエヴァの2倍ほどの大きさはあるだろう。

 

「ニョロっとしてて気持ち悪!」

「うわぁ……」

「シンジ!キモいからはよ片を付けてくれ!」

 

 ニョロニョロとした気持ち悪い動きで最終号機を精神的に追い詰めている。その様子は外部カメラを共有している輸送機のモニターに映し出される。

 

キイイイイイン!

 

 シンジはビゼンオサフネで攻撃するが、A.T.フィールドにも似たヒュドラの謎の位相差バリアのようなもの……俗に言う魔法障壁で甲高い音を立てながら弾かれてしまう。

 

ギャアアアアアア!!

「ウワァァァァァ?!」

 

 足がつかないほど海底が深いためエヴァ最終号機は踏ん張りが効かないところを咆哮を発するヒュドラに体当たりで突き飛ばされ、血で染まった赤い海に落下する。

 

「大丈夫かぁ、シンジィ!」

 

 それを見たヒュドラは勝った!とでも思ったのか、追撃を仕掛ける。しかし、エヴァ最終号機のその巨体は既にそこにはいなかった。

 

「最終号機、レーダーから消失!」

「何が起こってるんだ?!」

 

 輸送機側も共有カメラの接続やレーダーから最終号機の反応が消失したことで、緊張が広がる。

 

「……ふんっ!」

 

 間を空けて、突如現れた最終号機の右腕にヒュドラが気づいた頃には魔法障壁をA.T.フィールドで包み込むことで中和、そして突破した最終号機の左腕がヒュドラの左側の頸椎を掴んでいた。

 

ガァァァァァァァ?!

 

 ビゼンオサフネにありったけのA.T.フィールドをのせ、首を一気に全て斬り落とすと、傷口から紫色の体液が吹き出し、最終号機の身体にヒュドラの悲鳴と共に降り注ぐ。

 

「うわぁ、最悪……」

 

 ……紫の装甲の最終号機が更に紫になって汚れてしまった。

 

 突如として海中から現れた最終号機に、トウジは唖然としていた。だが、それと同時に疑問も湧いてくる。

 

「シンジどうやったんや。こっちのレーダーにも映っとらんかったぞ………あぁっ!」

 

 トウジが何かに気づいたようだが、ケンスケが間に入って説明を始めた。

 

「ああ、分かったぞ!あの海蛇、魔法障壁でレーダー誤魔化してたろ?それと同じで最終号機もA.T.フィールドを使って相手から見えないようにしたんだ!」

 

 かつて、渚カヲルが弐号機を以ってセントラルドグマに降下した際、光波や電磁波などをA.T.フィールドで遮断していたが、理屈はそれと同じだ。これは、最終号機であるからこそ成せる技であった。

 

「ケンスケせいか〜い。」

「ケンスケ〜、先ィ言うなや」

 

 そうして、ヒュドラの亡き骸を肩に担ぎつつも、最終号機はビゼンオサフネを仕舞う。すると、何かを見つけたのか水平線の向こうに指を指した。

 

「なにあれ?……船?」

「もしかしたら生存者がおるかもしれん。シンジ、念のため確認や!」

「はいはーい」

 

 その指の先には帆船がおり、生存者確認のため最終号機は光の翼を展開する。その姿はまさに神の如き者そのものだ。

 

「トウジ、船の上に人がいる!」

 

 帆船の目の前まで来た最終号機は自らが発生させた突風とその姿に驚きを隠せない人々を見つける。

 

「おう、シンジ。なら外部スピーカーを繋げられるか?」

「できると思うよ」

 

 シンジがコンソールを操作すると最終号機の外部スピーカーからトウジの声が大海原に向かって放たれる。

 

「ワシらは国連合同シオス派遣軍の海魔討伐隊、あんたらを助けに来たんや」

 

 その声と目の前の巨人を前にシオス王国の船員たちは驚きのあまり、呆然と立ち尽くしていた。

*1
ちなみに、0・0エヴァは先の戦闘の損傷を修理中、弐号機は人工衛星を宇宙へと輸送する任務中、F型零号機は近接戦闘に不向き、EUROⅡはダミーシステムの調整中なので、消去法という理由もあった。





次回は10月13日に投稿します。

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