◆◆◆
中央暦1639年7月8日 明朝
シオス王国 首都セリオス セリオス・バフォート城
シオス王国は海魔によって海上航路を断絶され、孤立化していた。ちょうど、この島国の主と重臣たちは王城にてその対策会議をしているところだ。
「陛下、海魔の大量発生から一ヶ月が経ちました。貿易船の行き来が寸断されたことにより、経済に多大なる影響が出ています。このままでは我が国は……」
「分かっておる……しかし、我らにはどうすることもできまい」
内務卿からの報告にシオス王国の主、セリオス10世が頭を抱えていると、シャオス提督が不甲斐ない顔で拳を握りしめる。
「陛下……申し訳ありません。我々シオス王国海軍がもっと強ければ……」
「シャオスよ。相手は海魔の大群……それを海軍は沿岸部での被害を最小限に抑えてくれた。余が海軍の予算を増やすよう、財務卿への根回しをしていれば……すまない」
「陛下……!」
セリオス10世の言葉に感銘を受けたシャオス提督が心中で王への絶対的忠誠を誓っていると、息を切らしながら外務卿が玉座の間に入ってくる。
「はぁ……はぁ……陛下、遅れてしまい申し訳ありません。ムーのゴーマ空港職員から緊急の連絡が……」
「ムーの空港から……?どういうことだ。外務卿、申してみよ」
「はっ!陛下、どうやらニホンという国とネルフという組織の飛行機械が空港に着陸したと」
「む?飛行機械だと……?それもムーのではなく?」
この世界において飛行機械といえばムーの名前が真っ先に上がるが、着陸したのが未知の国のものであると聞いたセリオス10世は訝しむ。
「はい、それで彼ら曰く海魔を討伐しに来たらしく……」
「いきなり、国交のない国に着陸とは……何を考えておるのだ?それに、海魔を討伐できるだと??」
海魔の討伐など、列強か上位文明国でなくてはできない。しかもそれを大量にやるとなれば嘘にしてはデタラメがすぎる。
「しかし、彼らは我が国の漂流民を届けているとの報告もあり、かの飛行機械にはロデニウス各国の外交官も搭乗しているらしいので信頼できるかと思われます」
「……とりあえず、話を聞くとするか」
半信半疑ではあるが、セリオス10世は彼らの話を聞くことにした。
◆◆◆
使節団と海魔討伐隊はシオス王国の外務部職員に案内されて、首都まで来た彼らはセリオス・バフォート城に欧州の城の意匠に似た城、という印象を持った。
それもそのはず、近世の欧州に酷似しているパーパルディアから建築技術の影響を受けているので似るのは必然である。
今回の国交交渉は基本的に日本の管轄だが、ネルフと国連の介入……海魔討伐はシオスにとって事後承認という形になるが、その辺りを含めてロデニウスの外交官たちが仲介してくれる手筈となっている。
そんな彼らは王城の応接室に案内されると自己紹介を始めた。
「私はクワ・トイネ公国外務局のキリュウです」
「私はクイラ王国外務部のショールです」
「私は日本国外務省の朝田と言います」
「ワ……私はネルフJPNの鈴原トウジと言います」
「余こそがシオス王国国王、セリオス10世である。遠路はるばるよくぞ来たな。其方らを歓迎しよう」
セリオス10世の丁寧な挨拶に、日本代表の朝田はお辞儀をして謝罪を始める。
「陛下。まず、貴国への領空侵犯を我が国が代表して謝罪させていただきます。貴国への魔信による通信も試みたのですが、繋がらなかったために直接着陸致しました」
「ふむ。そちらの言い分は分かった。我が国の漂流民を届けてくれた恩に免じて、領空侵犯については不問とする。また、必要とあらばゴーマ空港を管理しているムーとの仲介もこちらがやっておこう」
「陛下の寛大な処置、感謝いたします」
外交儀礼もほどほどに、セリオス10世は口元に手を当てて話題を変える。
「……して、早速本題だが、ニホン国とネルフとやらは本当に海魔を倒せるのか?」
「ええ、本当です」
「我々ネルフにかかれば海魔なんて夕飯同然です」
「夕飯同然だと……?」
朝田とトウジの言葉に疑いの目を向けるセリオス10世であったが、クワ・トイネとクイラの外交官が苦笑しながらフォローをする。
「彼らは嘘をついていません。実際、彼らの昨日の夕飯は海魔の寿司でしたし……」
「ロウリア王国を完膚なきまでに叩き潰したのも彼らです。強さについては疑いの余地もありません」
そういえば、先月にロウリア王国が戦争に負けたと外務卿から報告が上がっていたのをセリオス10世は思い出す。正体不明の国家の軍が介入したとの噂を商人から聞いたとかなんとか。それで、調査しようとした矢先に海魔が発生したのでシオス王国側はは知るはずもなかった。
「海魔など食えば、変質魔素で寿命が縮んでしまうではないか?」
「いえ、我々には体内に魔力器官がないので問題ないのです」
海魔を食べることで、寿命と引き換えに海魔を討伐できるほどに強いのかと思ったが、そうでもないらしい。そんなことを思いながらクワ・トイネとクイラの保証もあるので、セリオス10世は彼らの話を信じてみることにした。
「あと国際連合からの支援で輸送機には食糧も積んでありますので、貴国がよろしければ……」
「それはありがたい。是非、ニホン国との国交を締結をしよう。海魔討伐もそちらの裁量でやってもらって構わない」
こうしてシオス王国と日本国の国交締結が完了し、国際連合の海魔討伐決議に関しても承認を得ることができた。
次回は11月8日に投稿します。