新生紀日本国召喚   作:空気の破壊者

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第拾壱話『皇国、出撃』

◆◆◆

中央暦1639年 7月1日

パーパルディア皇国 第3外務局

 

 シンジたちが海魔討伐に向かう少し前に遡る。

 

「ロウリアが戦争に敗北しただと?!どういうことだ?」

「目下調査中ですが、どうやらニホンやコクレンなる軍が介入したようで……」

 

 第3外務局群島担当主任であるメンソルからの報告を聞いたカイオスは頭を悩ませていた。

 

 その理由は『ロウリア王国によるロデニウス大陸征服の失敗』である。しかも、未知の国家の軍の介入のオマケつきだ。

 

「ニホンとコクレンか……ロウリアを下した国々だ。注意して調査を進めておけ。ロウリアについては借金の取り立ては絶対に怠るんじゃないぞ?」

「はっ、了解致しました」

 

「……はぁ、最近は厄介事が多いな。そう言えばシオスの件はどうなっている?」

 

「魔信不通のシオスですが、ムー経由で連絡がつきました。外1からの報告によれば、どうやらシオス周辺に海魔が大量発生しているようです」

 

 ムーから報告を貰うにも、こちらから連絡するにも、わざわざ外1を経由しないといけない辺り、皇国の外交システムは不便だとカイオスは思った。

 

「ああ……そう言えば、シオスにはムーの空港があったな。それにしても海魔が原因とはな……もしや、魔法帝国の差し金じゃないだろうな?」

 

 先進兵器開発研究所、通称"兵研"からの研究報告によれば魔法帝国ほどの技術力があれば海魔の大量使役も可能である。との結論が出ている。つまり、海魔は魔法帝国に与する者の差し金という線もなくはないだろう。

 

「魔法帝国については兵研に任せましょう……話を進めますが、中にはヒュドラやクラーケンなどの危険な海魔も多数いるようで、このままでは我が国の商船にも被害が出るかと……」

 

 最近、『ニホン国と国交を結んでいるから』『コクレンに加盟しているから』と言ってパーパルディア皇国に反抗的な態度を取る国が増えていた。外3としてはこれ以上舐められぬよう、海魔を多数討伐して皇国の軍事力を誇示する必要もある。

 

「そうか。では、監察軍の東洋艦隊と南洋艦隊で海魔討伐連合艦隊を組織し、海魔討伐のためにシオス周辺海域に派遣せよ」

「はっ!」

 

 そんなカイオスの考えから、海魔討伐連合艦隊が派遣されることとなった。

 

◆◆◆

中央暦1639年 7月8日

フィルアデス大陸南方 シオス周辺海域

 

◯監察軍東洋艦隊

魔導戦列艦22隻

ワイバーンロード20騎

◯監察軍南洋艦隊

魔導戦列艦31隻

竜母5隻

ワイバーンロード30騎

 

総勢58隻と50騎の大艦隊だ。

 

 所詮は旧式艦隊の寄せ集めなので、単なる烏合の集とも取れるが、列強であるパーパルディア皇国の船だ。そんじょそこらの文明国の主力艦隊よりは強いはずである。

 

「偵察の竜騎士より報告!海魔を多数発見したとのことです」

「総員!第一種戦闘配置!繰り返す!第一種戦闘配置!」

 

 甲板はこの異常事態に騒然となるが、すぐに冷静を取り戻して鎮まりかえる。なぜなら、栄えあるパーパルディアの艦隊が海魔如きに負けるはずないからだ。そうして、司令官シウスの命令を聞いた各員はそれぞれの持ち場について戦闘態勢を整えていく。

 

「怯むなァ!戦列艦隊は魔導砲撃てぇー!!飛竜隊は発艦次第、魔導火炎弾で小型海魔に集中攻撃だ!」

 

 戦列艦が射程に入った海魔に向けて、一斉に魔導砲を撃ち放った。魔導砲弾が炸裂し、海魔の巨体が吹き飛ぶ。また、竜母から発艦したワイバーンロードたちが上空で旋回しながら魔導火炎弾を投下する。

 

「第一波着弾!水上に海魔の肉塊を確認!」

「よし、第二次攻撃の準備急げ!」

「はっ!」

 

 第二次攻撃が完了した頃には海魔討伐任務が完了したも同然の、十分すぎる戦果であった。

 

「多数の海魔の撃退が完了しました。殲滅戦に移行します」

「これでひと段落つくな。あとは……殲滅戦か」

 

 しかし、その安堵もつかの間だった。海面が大きく波打ち、巨大な影が浮上してきたのだ。

 

「あれは……?!」

「水龍か……?!直ちに撤退だ!」

 

 シウスの瞳には、伝説の存在が映っていた。凛々しい瞳、勇ましい鱗、鋭い鉤爪、水属性が特徴的な龍種。

 

 そう、相手は水龍だ。皇国の精鋭艦隊でなければ勝てないだろう。監察軍の烏合の衆では勝ち目がないのは明白だった。

 

 だから司令シウスは迅速に撤退命令を下した。だが、すでに遅かった。瞬く間に、水龍の放つ強大な水魔法が次々と魔導戦列艦を貫いていく。頑丈な装甲を誇る船体も、水龍の攻撃の前には紙くず同然だった。

 

 ギャアアアアアア!!

 

「こっちに来るぞ?!」

「来るなァァァァ?!」

 

 ワイバーンロードの飛竜隊は悲鳴を上げながらも水龍に噛み砕かれ、竜母ですら引き裂かれる。攻撃の暇すら与えない、まさに神の如き力。

 

「なっ……?!」

 

 その光景を信じられないシウスは思わず嗚咽を漏らしてしまう。

 

 パーパルディア皇国監察軍の誇る大艦隊はかつてない暴力の前に、なすすべもなく壊走していった。

 





次回は12月13日に投稿します。
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