スレイブエミヤと英霊エミヤ   作:晃晃

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新たな運命の夜

「覚悟しろ、醜鬼ども!屈服の時間だ!」

 

「っ…セイバー!?」

 

一瞬、セイバーかと思った。でも違った。凛々しく、力強い声が響く。白く長い髪、そして剣で戦う姿。それはまるであのセイバーを彷彿させ、この岩石と夜と剣の響きに包まれた異世界でも俺はまた運命に出会った。その少女は見たこともない、岩石で出来た2~3mもある仮面をつけた怪物を乗りこなし、それと似たような化け物を蹂躙する。

 

彼女は誇り高く、いや騎士王とは違い、何十年も洗練された剣の重みがあり、手元の動きはまるで桜のように流麗。そして、棘があるような目つきで。俺はそんな彼女に見惚れてしまった。俺は明らかに危機的な状況にあるにも関わらず、セイバーとのあの運命の夜を思い出す。

 

 

 

「問おう、あなたが私のマスターか?」

 

 

 

 

俺が全身青タイツの男と家で戦っていた時のこと。俺は家で土蔵でセイバーと会い、誰も傷つけないと誓い、自分の信念を貫くために、聖杯戦争に参加すると決めたんだ。

 

「うっ...」

 

さっきまで柳洞寺に潜むキャスターに攫われ、キャスターに俺は令呪を奪われた。そのはずなのに、意識を失ってから、ブラックホールに吸い込まれるような感覚と、この大量の怪物が漂浪として逃げたことは覚えている。あの後、どうなったのだろうか?不安だけが頭によぎる。

 

「シャアアあ!!」

 

 

怪物の雄たけびにも怯まない姿。戦うと決めた後に、イリヤのサーバント、バーサーカーとセイバーの戦いが記憶として重なる。

巨体に乗った少女から打ち出される剣。その風圧がこの異質な世界で一撃一撃の重さを感じさせる。しかし、少女の体は軽々とその巨体をこの月夜で照らされた剣で両断する。

 

「はあぁ!!」

 

最後の叫びと共にすべての巨体を狩りつくした。誰もがこれを見て少女とは思えないほど、彼女の目は戦うことに囚われている。初めて会うのに、それはデジャブのような感覚で、そう感じた。そして、彼女が間髪入れず話しかけて来た。

 

「大丈夫か?」

 

唐突な言葉に、度惑いながらも「ああ、ありがとう。」と軽く返事を返す。彼女は倒れた俺に手を差し伸べてくれた。さっきの棘のような目つきはなく、温かな表情だった。

 

やっぱり、少女なんだ。心の中で安堵を取り戻しながらも、すぐに危機が訪れる。――化け物の気配が。

俺は条件反射でもうすでに足が動いていた。

 

切りつけた化け物が合体しようとさらに巨大で禍々しい生命体に変化した。怪物の巨大な質量が倒れまいとしていたときにバーサーカー戦のように咄嗟に体が前に動いていた。

 

「逃げろ!あんた!」

 

 

スパーん!

 

 

音だけが脳に響いた。最後の最後の瞬間まで俺はあの怪物を捉えていたつもりなのに、切断音だけを残して、あの刹那に怪物は少女に狩られたと本能的に理解した。

 

「つ、強い。」

 

「ふっ、私は魔防隊7番組組長羽前京香だ。」

 

「まぼうたい…?」

 

何なんだ。そしてここはどこなんだ。まさにこの分からない状況は、あの聖杯戦争の運命の夜を思い出す。

 

だが俺はこのとき明らかに彼女のしなやかな体から振るわれる剣技が好きになっていた。

 

「まだ醜鬼どもがいるようだ。私の後ろに下がっていろ。」

 

「でも、あんた、女の子じゃないか!?女の子は戦うもんじゃない。」

 

そうだ。見たところ、セイバーと変わらないじゃないか。

 

「は?何を言う。私は組長だぞ。この程度の危機なんども乗り越えた。」

 

凄い形相で睨まれる。でも、俺は、

 

「女の子をこんな戦場で戦わせるなんて、俺には耐えられない。だから俺が戦う――いや、守るんだ。たとえ、今の俺にできることが何もなくても。」

 

「お前は何を言っている。お前は災害に巻き込まれたんだぞ。ましてやお前のような一般人が戦える場所じゃない。下がれ!」

 

「後ろ!」

 

彼女の背後にまた怪物が。そうだ、こんなところで女の子を戦わせるわけにはいかない。

 

強い武器が。強い武器が要る。それこそが俺にできる最大の魔術。頭の中で失敗が過るが、出来なければ死ぬ。彼女を救うために―

 

その時、心の中では剣のイメージはセイバーの持っていた剣でもなく、アーチャー持っていた双剣でもない。

 

俺は彼女が握っていた剣。いや、咄嗟に月夜に照らされた彼女の刀をイメージし、唱える。

 

投影開始(トレース オン)!」

 

巨体から振り出される幾つもの拳を、作り出した彼女の刀で捌き切る。刀。剣よりも切れ味がすさまじい。

 

「うおぉぉ!!」

 

最後のとどめを。と、思っていた時、俺の刀の刀身に稻妻のような亀裂が走った。

 

こんなところで、また守れないのか。目の前の少女も、そして俺自身も―

 

世界が止まったかのような斬撃音だけが鳴り響き、怪物が切り刻まれる。やはり、彼女だった。

 

「分からんな。お前ごときがなぜそこまで命を張れる?いや、それより―」

 

固唾を呑む。なにかおかしいことをしたのだろうか?

 

「その刀、どこから出した?いやそもそも、なぜその刀を持っている?」

 

「いや、それはその…魔術だ。半人前だけど。」

 

 

「男子には異能をもたらさない。どういうことだ?」

 

こんな強いに魔術を知らないのか?てっきり、強い人ほど、魔術を修めてると思っていた。それに。異能、災害だと。どういうことだ?これも聖杯戦争の一環なのか。

 

「あんた、さっき災害って言ってたよな。それって―」

 

「まあいい。とりあえず私は救助者を救わなければならない。その話はあとだ。」

 

強い眼差し。これはまたセイバーとは違うものを感じた。でも、やっぱり俺は―

 

「俺は戦う。なんと言われようとも。こんなところで守られ救われても、あの時の災害のようにはしない。」

 

そう。聖杯戦争ではすべてを変えたあの夜。俺はセイバーという一人の少女を守れなかった。だから、だからこそ、今戦わなければいけない。

 

「しつこいな。お前。ただ、面白いものを見た。」

 

雰囲気が変わった。さっきの鋭さとは裏腹に、何かをニヤッと企むような顔になった。

 

「敵に囲まれた。私が、乗っていたスレイブもやられた。私一人ではお前を守り切れない。だから―」

 

瞬間、彼女に押し倒された。―痛い。ゴツゴツとした岩に叩き付けられたのだ。

 

逃げた疲労と投影のせいか、体の痛みがピークに達している。

 

「私の異能でお前を奴隷にする。」

 

は?あんた何を言って―

 

「戦うと言ったな。なら、屈服の時間だ!」

 

彼女は俺の口先に手を差し出し、無意識にいや、ごく自然に彼女の手を舐めようとしていた。

 

そして、この日から彼女のスレイブとして、新たな戦いに身を投じることになった。

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