組長の途中報告は終わった。さて、まだ私の知らない衛宮士郎について情報がたくさんあるだろう。
彼はその特異性から、椅子に縄で縛っておいた。
「衛宮士郎、聞きたいことがある。」
「ああ。なんだ?」
数時間も待たされ、彼はとてもぐったりしている。でも今聞く必要がある。
「衛宮しろ、長いな。どう呼べばいい?」
「もう士郎でいい。あとこっちも聞きたいことだらけだ。」
そう。士郎自身も知らないことが多すぎるのだ。
「いや、すまない。さっきはずっと聞き込みばかりだったな。まず何から話をしようか。」
「ここ、どこなんだ?それに魔防隊ってなんだ?」
はあ、まずそこからか。どう生きたらこんな非常識になるんだか、
「まず、ここは魔都。醜鬼という化け物が居座るまさに魔境だ。魔防隊は魔都災害に巻き込まる一般人の救出、醜鬼討伐を目的とした組織だ。」
「そして魔防隊は、十組の隊とそれを率いる十人の組長がいる。その上に総組長という魔防隊の最上位の役職だ。私は魔防隊七番組組長、羽前京香、そして、」
魔防隊すら知らないのだ。説明を受けた後の表情を見ても明らかに理解してない。七番組のメンツの自己紹介でもしておく必要があるな。
「さあ入れ。」
ちょっと緊張した様子で五人が部屋に入る。
「七番組組員、東日万凜です。」
と、日万凜に続き、朱々、村寧が紹介に入る。
そして問題の奴が、おちゃらけた様子で名乗る。
「はーい♡六番組組長兼、和倉優希の正妻、出雲天花。」
やっぱり、そう来たか。
「ちょ、天花さん!」
優希が慌てふためいている。士郎の方はかなり、気まずそうだ。
「さ、天花はほっといて、優希。」
「あ、七番組寮管理人兼、組長の奴隷の和倉優希です。」
かなり、天花以外緊張している。まあ異能が使えるかもしれん男だから、仕方ないか。
「そして士郎には伝えないといけないことがある。お前の住んでいた冬木市と言ったな。日本には冬木という土地は存在しない。」
「いや、そんなはずはない。冬木は俺が住んでいた町でさっきまで柳洞寺にいたんだ!」
士郎が必死に弁明する。確かに冬木市という町が存在しない。でもこの誠実な男が初めから嘘を言っているとはとても思えない。そこから出される結論は―
「仮説だが、魔都なら、異世界から魔都災害として士郎が巻き込まれたのかもしれん。」
彼は冷や汗をかき、今にも吐きそうな顔だった。
「そんな!じゃあ冬木市にやつらにももう会えないってのか。」
それは悲しみと絶望に満ちた声だった。今、彼に声をかけるとしたら―
「それは、まだ分からない。士郎の言っている聖杯が何か関与しているかもしれん。とりあえず、解決されるまで七番組と共に行動してもらう。」
この後ずっと思い雰囲気が続くと思われたが、優希が暗さを晴らすように士郎に話しかけた。
「士郎さん、心配無用ですよ。魔防隊が絶対に解決します!」
すると、他の組員も優希に賛同した。本当に七番組になつかれたものだな。と感慨にふける。士郎も少し安堵を取り戻した。
「じゃあ、お腹も空きましたしごはんしますか。」
優希がごはんの提案をする。楽しみだ。士郎も優希の作った飯を食べれば元気になるかもしれない。
「俺も一緒に飯作ろか?ずっと助けもらうばっかりなのは、嫌だ。」
予想外の提案にみんながびっくり、男子という生き物はこんなに料理が出来るのか。
「よし優希、士郎といっしょに飯を作れ。そして七番組寮に泊まることになるからいろいろ教えてやれ。」
「はい!」
飯ができるまで仕事の報告書を作るため、自室に戻ろうとすると、天花が来た。
「七番組に男の子がまた増えたね。だから優希くんを六番組に入れていいいかな♡」
「いいわけがないだろう。男子が増えたからと言って、優希は私の奴隷だ。それは変わらない。」
天花は依然ふざけたまま、「また来るねー」と言い、ワープで六番組に帰った。
「みんな飯が出来たよ。」
テーブルにいつもより豪勢な食事が出ている。エプロンを着ているのは優希だけではなく、士郎も来ていた。これはなかなか様になっている。
「メニューは和風おろしハンバーグ、彩り野菜の温サラダ豚肉と白菜のミルフィーユ鍋風スープ、 和風卵焼きとアボカドの梅和え、そしてきのこたっぷり炊き込みご飯だ。」
出来たの飯の温かさ、旨そうな湯気が部屋を包む。これはどっちが考えたメニューなのか。日万凜、朱々、村寧はこんなにも豪華だと言葉も出そうにない。私自身もそうだ。
「士郎さんがほんと料理がうまくて、俺、士郎さんに弟子入りしたいっす。」
何、優希じゃなく士郎だと。見たところおいしそうだが、実際に口に入れてみないと分からない。そして私は、まずあっさりとした和風おろしハンバーグを一口。
「美味い。いつものハンバークと違い、あっさりと。大葉がいい香りを出し、ポン酢が肉汁のうまさを引き立てている。これはすごいぞ。」
他の奴らも「うまいうまい」と舌鼓を打っている。彩り野菜の温サラダはいっけんふつうのサラダに見えるが、野菜が蒸してあるのかと、その新しさに感激する。
「ん?このドレッシング何?」
朱々が士郎に質問する。確かに食べたことがないな、ちょっと辛いというか、独特な風味だ。
「ああ、それはバーニャカウダソースだ。イタリヤ料理で使われるソースでごはんにかけても美味いぞ。」
食べていると優希が士郎に「なんでハンバーグが得意と言っていたのか」と料理の質問を投げかけた。するとみんなが士郎のほうを見ている。
「俺は特にハンバーグが得意なんだ。俺の親父が好きだったもんで、よく作ってたかな。」
日万凜が物足りなさそうに、
「士郎、追加デザート作ってよ!」
「いいけど、東の胃袋を満たすのに何品いるんだ?」
「うーん、あと二品くらい?」
すかさず、朱々が突っ込む。
「日万凜、太るよ?」
食卓はいつも以上に盛り上がっていた。士郎ももう自然と笑っていて、さっきのような不安な表情はしていない。料理こそが彼にとって大事なことなんだろうと心に留めておく。
そうやって、士郎のおかげで飯はいつも以上においしく食べ、仲を深めることができた。
士郎の作るごはん食べてみたい。
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