pixivに投稿していた作品を投稿しました。一応全部投稿する予定ですが、私の気力が尽きる方が早いかもなので、この投稿を見て、もし面白いと思ってくれたなら、pixivの方を覗いてみてください。
一応、pixivと内容は変わっていません。
第一話
「来い、ヒナ。実験の時間だ。」
無言で男についていく。
壊理を守る為、いつかくる脱出の時まで、できる限りこの子の傷を減らして置ける様に……
私は――空崎ヒナは今日も、治崎 廻についていく。
私には、前世とも呼べる記憶がある。
物心がつくのが早かった私は、大人しく、物静かな子として両親の目に映った事だろう。
私の妹である壊理も、我儘を言わない子供だった。
だが私たちは母に捨てられた。壊理の個性の暴発で父が消えたのだ。
母の目は今でも忘れられない。私たち姉妹を得体の知れない物を見る様な目で見てくる……そう、まるでエイリアンでも見るかの様な、親が子供に向ける目ではなかった。私は、時折子どもとは思えない様な言動をとってしまった事も原因なのか、得体の知れない物から怪物を見る様な、恐怖を宿した視線が向けられる様になった。
そうして、私達は母に捨てられ、母の実家である死穢八歳會に引き取られたが、そこから地獄が始まった。
祖父であり組長でもある空崎 秋八は治崎という男を私たち姉妹の世話役として任命した。
それと並行して彼は私たち姉妹の個性を解析し、ある時から彼の目は狂気が垣間見える様になっていった。
組長に相談しようかと思ったが、私の考えすぎだったら悪戯に彼を傷つけてしまうのではと思い、何も言わなかった。この選択を私は一生後悔する事になるとも知らずに……
私はいきなり気絶させられ、目が覚めたら椅子に縄で拘束され、猿轡で口を塞がれていた。
目の前の手術台の上に壊理が拘束され、メスを入れられる様を見ていた。
麻酔もなく、痛みに泣き叫ぶ壊理の姿を見ているしか出来なかった。
治崎は振り返り、告げる。
「壊理の体に俺の個性で爆弾を埋め込んだ。お前が少しでも抵抗したらこれを起爆させる。俺の個性があれば死ぬ事は無いが、内側から爆発するのはさぞ苦しいだろうな。」
そう言われて、私は完全に動けなくなってしまった。
治崎が私たちに与えた部屋は地下にあり、いくら叫んでも声が地上に届く事は無いだろう。例え届いたとしても、私に抵抗する事は出来ないが……。
「壊理、お前が協力しないからこうなるんだぞ?」
一瞬、凄まじい痛みとともに意識が暗転した。
「はあ、はあ、はあ!」
呼吸はできる。目も見える。心臓の鼓動が嫌なほど響いてる。
私は理解した。――一回彼に殺されたのだと。
それと同時に、心の中に一瞬よぎった考えが甘かった事を理解した。
――壊理の体に爆弾はないんじゃ無いか?あったとしても起爆させたら、彼の計画は頓挫してしまうから出来ないのでは?
もし、彼が爆弾を起爆しても瞬時に直せる治崎がいる。一回殺されたとしても、彼の個性ならば、いくらでも蘇生できるだろう。
もし、彼に襲いかかって彼を倒す事に成功したとしても、壊理が殺される。時間はおそらく数秒以内でなければ蘇生はできない。その証拠に、時計を見れば暗転する前に見た状況から、進んでいない。
そして治崎は他の奴らに研究成果を横取りされるくらいならば、容赦なく壊理を殺すだろう。
おそらく、これは警告なのだろう。
壊理に対して、私を人質に取り、従わなければ私を殺すという警告。
私に対しては、個性『オーバーホール』がこういう事もできる。だから下手な事を考えるなと言う警告。
私たちが互いに互いを大事に想い合っている事を逆手に取った互いを縛る鎖が出来上がった。
「ヒナ、お前が協力してくれたら壊理の爆弾を取ると約束しよう。」
壊理の個性破壊弾の研究が進んだ頃、治崎はそんな事をいった。
「お前の個性があれば、壊理の体の傷も減らせるだろう。悪い話じゃ無いはずだ。」
私の意思がなければ、個性『再現』は効力を発揮しないと言うのは、早々に判明していた事だ。だが、私の個性のエネルギーは壊理の個性のエネルギーの代替になる事が判明していた為、私の体も治崎とは別の――黒服と呼ばれる存在が担当していた。
「クックック。なるほどこれは……」
意味深な事ばかり言う胡散臭い異形の男だ。
彼によると、個性とは別の未知のエネルギーが私の体に満ちているらしい。妙に頑丈で力があるのはその為であると言う事がわかった。そしてその事を治崎に伝える事は無いと言う事も言っていた。
「私たちの目的はあくまでもこの世界の真理――『崇高』を追い求める探究者です。それ以外に関してはあまり興味が湧かないのです。それに我々はあくまでも協力者ですので、彼と完全に手を組んだわけでは無いのですよ。」
彼はそう言っていた。どこまで信用できるかわからないが、彼は嘘をついている様には見えなかった。
「……わかった。あなたの要求に従う。」
そうして私は治崎に従った。それ以外に守る手段が思い浮かばなかった。
従順に、個性を使用して、完成品と粗悪品の両方を『再現』する。
「っ……はあ、はあ、はあ。」
「どうした、もう限界か?」
ニ、三個『再現』しただけで、エネルギーが底をついた。それどころか、呼吸もままならない程消耗してしまった。普通の物であれば数十個以上『再現』できるが、壊理の個性で出来た個性破壊弾は、彼等が壊理の体から抽出できるのと同じ――いや、それ以下しか抽出出来ていない。
「そうか――仕切り直しだ。」
「あ――。」
私は治崎に再び殺された。
その日の実験は終わった。
結局治崎の個性で蘇生しても、『再現』が発動出来なかった為だ。原因は不明だが、私は壊理の細胞が関係しているのでは無いかと睨んでいる。
部屋の扉を開く。
「壊理?」
いつも同じ部屋で、一緒に過ごしていた妹は、何処かへ消えてしまった。
読んで頂き、ありがとうございました。
次回も楽しんで下さい!