壊理ちゃんの姉の空崎ヒナ   作:無者

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 第三話です。
 今回も楽しんでいただけると幸いです。


第三話

「壊理!」

治崎に連れられて、壊理が帰ってきた。

「大丈夫?」

壊理の存在を確かめる様に、ギュッと抱きしめる。

「おい。」

「はい、な、なんでしょ――。」

返事をした男の体が弾け、ブシャっと血が飛び散る。壊理を逃した事に対する見せしめだ。

治崎は、近くにいた組員に掃除を任せて何処かへ去っていった。

扉が閉じられ、施錠され、私は今日も、壊理と一緒にベッドに入る。

「壊理、大丈夫?」

相変わらず体には傷が絶えない。

壊理は眠そうに体を揺らしている。

「……お姉ちゃん。」

「なに?壊理。」

後ろから壊理を抱きしめ、優しく頭を撫でる。

「私が、お姉ちゃんを助けるから――。」

その言葉に私は驚いた。自分のことでも精一杯だろうに、壊理は私の心配をしてくれていたのだ。

けれど、壊理が頑張ると言う事は、それだけ傷が増えると言うことでもある。

「私なんかの為に、頑張らなくても大丈夫。」

不安げに揺れる壊理の瞳を見つめる。

「でも、気持ちは嬉しかった。ありがとう、壊理。」

その言葉に、安心した様に壊理は眠った。

「……私が、何とかしないと……。」

無意識に、そう呟いていた。

 

「なるほど……可能性として考えられるのは、壊理さんの細胞が個性消失弾に含まれている、と言うことです。」

黒服は、治崎に対してそう言った。

「何とかできるのか?」

「こればかりは実験してみない事には分かりません。」

治崎は顎に手を当て、数秒考え込む。

「……わかった。その件はお前に任せる。だが、どんな結果であれ、そいつの力は俺たちが使う。」

「クックック。勿論、分かっていますよ。それでは行きましょうか?ヒナさん。」

黒服と一緒に、彼の研究室に向かった

 

「ああああああああああああ!!!!!」

手術台の上に磔にされ、絶叫をあげる。

個性の強制発動による脳の不快感。全身を駆け回る苦痛。想像を絶する拷問の如き実験に耐えられているのは、壊理が私よりも辛い実験に耐えているからだった。

「ああああああああああ!!!はあっ、はあっ、はあっ……。」

耐え難い苦痛が漸く終わり、崩れた呼吸を整える。

「……なるほど。どうやら生物に対して個性を発動した際、貴女のエネルギーを著しく消耗――いえ、枯渇していますね。」

「はあっ、はあっ、つまり、どう言う事?」

黒服は二つのコップを持ってきた。

「右のコップは個性を使用する際に使われるエネルギーです。貴女の個性はこの蓄積されたエネルギーを放出し、世界に干渉……無から有を生み出しています。パソコンで言うならコピー&ペーストの様に見た事がある物なら構造を理解していなくても『再現』できる。」

コップの水をそのまま地面に流す黒服。

「しかし、どう言う訳か、生物は貴女の手に余る様でして、普段なら少量ですむはずのエネルギーが一気に放出されてしまうのです。」

黒服が右のコップを前に出す。

「左のエネルギーがなくなれば、このコップから注ぎ足して使えば良い……と言う訳でも無い様でしてね。こちらのコップは貴女の生命エネルギー……寿命とも言い換えても良いでしょう。つまり、生物の『再現』にこの個性を使い続ければ――」

死ぬ。

今まで壊理の為にと思って再現していたが、それを続けていれば私の寿命は縮まる。だが、壊理の地獄が少しでも減らせるのなら、迷う必要は無い。

「まあ、今回使用した個性破壊弾に使われている壊理さんの細胞は小さな物なので寿命も精々1日2日、と言ったところでしょう。 そしてそれが貴女の限界です。寿命と言う不可逆な物を消費した代償に貴女は治崎さんに蘇生されても個性にエネルギーは愚か、体力すら戻らなかったのでは?」

「うん……確かに動けなかった。」

思い出すだけでも苦痛が……いや、考えるのはやめよう。

「おそらくそれが現在での貴女の限界です。それを超えて個性を使用した際、どうなるのかは分かりません。良くて長期間動けない程度でしょうが、最悪の場合、肉体が耐えられずに死ぬでしょう。」

今日の実験はひとまず終わり、私は部屋に戻った。

 

 




 此処まで読んで頂き、ありがとうございました。
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