壊理ちゃんの姉の空崎ヒナ   作:無者

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 次回、最終回です。
 此処まで読んで頂き、ありがとうございます。
 無理やり感のある展開ですが、付き合って頂けると幸いです。


第六話 子供を助ける者

 痛い。

 

 痛い。

 

 痛い。

 

 先ほどよりも鋭く、殺意のこもった一撃。

 人よりも頑丈になった……ヘイローが顕現した今は貫かれる事は無いと油断していたらこの様だ。

「なあ、壊理! お前のせいで人が死ぬぞ! これがお前の望みか!?」

 血がドクドクと抜けていくのを感じる。致命傷だ。間違いなく、これで最期なのだろう。

 

 思えば、今世でも碌な結末にならなかった。前世の私──僕は病気がちで、やりたい事だってできた事は無い。両親に駄々をこねて、困らせてしまった。そして、両親と喧嘩別れの様な形で別れる事になる。自然災害による事故死だった。地震によって倒壊した家の中で発見された。その時すでに呼吸はなく、まもなく死亡が確認された。

 僕はショックで泣いた。泣いて泣いて泣いて、分かりやすいくらいにやつれていった。食事は喉を通らず、栄養失調で死ぬ前に、病院は僕の体に点滴を打った。その時、僕の心には両親に会えない悲しみと、深い後悔だけがあった。あの時、あんな事になるなら、なんでわがままを言ったんだろう。何故、少しでも長い間、家族と楽しく過ごす努力をしなかった。

 分かりやすい悲劇にどこからか、マスコミがこれを聞きつけ、僕の心を踏み躙っていった。

 ──嗚呼、これは罰なんだ。

 両親にわがままを言った罰。でも、これも結局僕の心が生んだ自己満足の罰なんだと思ってしまって、その事実がどうしようもなく気持ち悪かった。

 そんな時に、隣になったお兄さんから、あるゲームを見せて貰った。

『ブルーアーカイブ』

 学園都市『キヴォトス』に赴任した先生が、そこで起こる問題を生徒達と共に解決する物語だ。

 僕は、ゲームなんて興味なかったし、そもそもスマホを持っていなかった。

 その事をお兄さんに伝えると、お兄さんは家族の人に機種変更時に手元に残ったスマホとポケットWi-Fiを持ってきてくれた。

 そうして始めた『ブルーアーカイブ』の世界は、とても綺麗だった。

 先生の視点。第三者の視点。生徒の視点。あらゆる角度から物語が進んでいき、僕の心は、一瞬で虜になった。

 先生の行動。その理念。そして最後まで誰かの為に行動する心。

 生徒達の葛藤。大人に弄ばれ、傷つけられた心。失敗と挫折。切り抜けられない運命。

 その全てに全力でぶつかり、時に励ましていく。生徒達との日常は、殆どの時間を病院で過ごしていた僕にとって希望だった。中でも、ゲヘナ風紀委員会は僕の推しで、最推しは風紀委員長である空崎ヒナだ。

 お兄さんが退院しても、それは続いていた。

 ブルーアーカイブ通して、外の世界を夢想して、たまにお兄さんがお見舞いにきてくれて。

「退院したら一緒に遊ぼう。」

 そう言ってくれたお兄さんとの約束を守りたくて、必死で生きてきたけれど──

 それから間も無く、僕は病気で亡くなった。

 そして、なんの因果か赤ん坊であるヒナの意識と混ざり、(空崎ヒナ)の人格を形成した。

 そこでの人生も最初は幸せだった。けれど今度の幸せは、他人の手で壊された。

 たまに思ってしまう。私の不幸に、壊理を巻き込んでしまったのでないかと。前世の両親だって、私があんな事を言わなければ、生きていたんじゃないかって……。

 

「──違う、私はそんな事、望んで無い……!」

 ごめんね、壊理。

「ならどうすれば良いのか分かるよな!!」

 私、どこまでいっても疫病神だった。

「あなたに……着いていく。でも──」

「ダメだ! 壊理ちゃん!!」

「──みんなを、お姉ちゃんを元通りにして!」

 誰よりも優しいあなたを、私は助けられなかった。

「そうだよなぁ。自分のせいで他人が傷つくより、自分が傷ついた方が楽だもんなぁ!」

 ごめんなさい。デクさん。他のヒーローの人。

「分かっているか? 壊理やヒナにとって、最も残酷な仕打ちをしている事に──お前は求められていないんだよ。」

 私がいなければ、こんな結末には──

「それでも──余計なお世話だとしても、君は泣いてるじゃないか。」

 ──諦めないの? 

「誰も死なせない──」

 ──そんなにボロボロになってまで、私たちの事を助けようと? 

「君たちを、助ける!」

 ──先生みたいな、あったかい人。

 先生──もしかしたら出来るかもしれない。

 なんとなく、そう感じた。理由も確信もない。ただ、何かが私の中で、カチリと嵌るような音がした気がしただけだ。

「ふっ……くぅ!」

 冷や汗が止まらない。全身が、悲鳴をあげている。

 ──限界を超えた『個性』の使用。

 黒服に言われたリスク。それを無視して個性を使用する。これで永遠に目覚めなくなるかもしれない。壊理と会えなくなるかもしれない。けれど今やらなければ、どのみち治崎に全員殺され、壊理が奪われる。

 なら、少しでも可能性のある方に賭ける。

「──ヒナ。」

 ぼやけた視界に映っていたのは、白いスーツを身に纏った大人の姿だった。

 

 




 次回は治崎との最終決戦です。
 今更な話ですが、戦闘シーンの描写が難しい……
 まあ、結構前に書いた話を投稿しているだけなので、今苦労している訳ではないんですが。
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