退役軍人はキヴォトスに何を見る?   作:ゆんゆんマル

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駄作ですが、定期ゆっくり更新で行きます


第1話 彼女欲しい。欲しいよな?

 

 

 

 

 

「なぁ。今日新しい大人が来るってよ」

「は? またくんの?」

「らしいよ。また顔面キモオタの豚が来んのかなw

「まぁいいや、前回のはすぐ逃げたし、今回のは長く持つといいけど」

「またいじめちゃう? 大人って意外ともろいよねww」

「だらだら生きてきたんだろねww」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 退役軍人はキヴォトスに何を見る? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 退役軍人。飛び散る仲間をかいくぐり、国旗を胸に目の前の国敵を散らすためだけの戦場から帰還した、軍人にとっての最高の名誉。と、私は勝手に思っている。

 勿論、名誉勲章を頂いた軍人には頭は上がらない。彼らは帰還することに加えて戦果まで挙げてくるもんだから、私のような軟弱者とは格が違う。

 それでも、私は自分が軍に所属していたころに自分が誇らしい。あれだけの死線をかいくぐってここまで来たんだ。だから退役軍人なんてものをここまで壮大に話しているのだ。私は私が好きだからな! 

 

 

 

 さて、話は代わる。そんな私も教育される側からする側に転職することとなった。何故だろうか。人生は分からないものである。

 

「とある場所での教育者を任す。第二の人生を全うせよ」

 

 そんなことを上官から言われた気がする。反応が遅れたせいで頬にビンタを食らった。なんだかいつもより優しかったな。軍人をやめたらすぐさま教育者か。血の気を抜け切らねば。

 とにかく、言われたことは絶対。教育者として人生を全うするのだ。この任務を失敗すればあの上官から何をされるか知ったこっちゃない。とにかく、私が受けたようなスパルタ教育は表に出さないようにせねば。

 

 

 寮にある荷物を軽くまとめ、いらないものはどんどんと捨てていく。服もあちらで買えば良いだろう。ちなみに教育者を任されるとは聞いたが、その概要は教えて貰えなかった。「状況を早急に確認し適応、お前の得意分野だ」なんておだてられたもんだからニヤけて退出するしか無かった。ちゃんと聞いとけば良かったぜ。

 

 

 長ったらしく雑学を教える職に付きてえ。次はそういう場所がいいな。

 俺は学が無い。官僚エリートコースの軍人とは違って脳無し脳筋に、教育なんてできるか不安ではある。いや、なんとかなるだろwガハハ

 

 あとは、恋愛ができる場所。だって海兵時代は恋愛のレの字もなかったし……

 可愛い女の子かとナンパしようとしたら超すごいバッチ着いてたし……

 ちゃんと暴漢として捕らえられそうになったし……

 

 頼む! 俺と同年代の包容力の高い女性がいる現場へ向かわせてくれ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────ー

 

 

 

 

 軍を退職する際、他方面へ挨拶するのを忘れていた。

 お世話になった人があり得ないほどいる。18から10年間も軍に所属して入れば必然だ。

 まずは厨房のおばさん方。

 

 

「いままで、ありがとうございました……! ご飯、めっちゃうまかったです!」

「……今日の飯は?」

「飯?」

「食ったのかい? 食ってないのかい?」

「えっと……食ってないです」

「ほら、これ」

「カツカレー……!?」

「食ってから行きな」

 

 

 最初に挨拶するところから少しうるんでしまう。カレーは特別な日のメニューだ。今日は俺ともう一人の退役以外イベントはないはずだ。

 いつもはしゃもじで人殺したことがありそうな顔してるあのおばさんも、今日だけ特別ってことか。

 ありがてえ……

 

 他のお世話になった人にもあいさつに行く。上司からコーチ、後輩にも会いに行ってやった。

 唯一の女後輩は死ぬほど泣いていた。宥めるのに非常に苦労した。

 

 

「何で気づいてぐんないんずがぁあ!!」

「おうおう! おち、おちつけ! 落ち着け!」

「うわ”あ”あ”!!」

 

 

 胸で泣かれた。びっしゃびしゃである。スーツじゃなくて良かった半面、その後のあいさつ回り中も後輩の言葉に頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 今しがた、ここ(キヴォトス?)の案内を受けた。抜群の快晴と程よい都市の騒音を横目にとあるビルまで来た。心も晴れやかだ。

 

 ……あの後輩のこと以外。

 まるで首都みたいな高層ビルに囲まれて一際目立つこのビル。全面ガラス張りの威圧感は伊達じゃない。

 

 入り口辺りは制服姿の子供の行きかいが激しい。なんとも生徒会長がいなくなったとのことでどうやら辺りは忙しなかった。

 

 まぁ、とりあえずそれは私には関係ない。

 行方不明の生徒の捜索なんてそれこそ先生じゃないかw

 しかも生徒会長だろ? 学校単位の話で済むだろう。私は多分部活の顧問ぐらいの小規模な教育者でも任されるのだろう。

 

 高卒の軍人にできることなんてその位だ。

 

 

 

「……早くして下さい」

「おっと、申し訳ない」

 

 

 ここに来るまでも前を歩く白い服の美女。めっちゃ無口。すごい若いようにも見えるし、大人びているようにも見える。

 目隠しを外された瞬間少しドキッとした。てか好きになった。有り得んほど好きになった。ちょー可愛いんだもん。一瞬見えたメガネの先にはお姉さん感満載の超絶美人がいたんだもん!! 今日はこの人のケツ追いかけて終わると思ってた。

 

 

 急かされて何段か段差を昇り、威圧感満載のビルの中へと入っていく。入り口は俺五人分ぐらいの高さがあった。

 これはすごいところに来てしまったと思った。

 

 

 

 

 

 

 ……もしかしたら本当にすごいところに来てしまったのかもしれない。しかし、これは別の意味だ。

 ゴミ箱は溢れかえり、そこら中にペットボトルと‥空薬莢!?!? 

 

 

 なぜこんなところに空薬莢が!? 思わず驚いて立ちすくんでしまったが、どうやらここではこれが普通なのか!? そこら中に落ちている。

 銃撃戦でもやっているのかと怯えていると、再びあのメガネの美人さんはこちらをにらみつけてきた。すみません。早くいきます。

 

 

 かといっても、忙しいにも限度があるんじゃないか?

どっかしらの部活の顧問ぐらいになるかもしれない人を迎え入れる時ぐらい、廊下のバナナの皮ぐらい捨てたらどうなんだ? 

 危うく転ぶところだった。踏んではいる。

 

 私の上司が見たらただじゃすまないだろう。もちろんバナナを片付けていないと怒鳴られる私がだが。

 

 

 

 

 

 

 そしてもう一つ、出迎えの愛嬌と言うか、活気と言うか、そういった物がない。

「本日からここで教育者を任された。ヒイラギと言うものだ。これからよろしく頼む」

 

 

 着慣れないスーツを曲げ、いかにも自分より若いメガネ女性に挨拶する。メガネが反射して目は見えない。まるで怒っているかのようだ。丁度足を止め私の方向に半身を向けたので、とりあえず挨拶する。

 何よりもあいさつだ。これが出来なきゃ始まらない。

 

 

 

「…………」

 

「……」

 

「……」

 

「……申し訳ありません! 発声が小さかったです! 本日かr「聞こえてます!」

 

 

「……」

 

「現在、生徒会長代理を任されております。七神リンです」

「よろしく頼む……」

 

 

 

 このざまだ。何か引っかかる。挨拶が聞こえなかったのかと何度もメガネの反射が晴れることを望んだ。まったくわからん。可愛い顔も怒ってるようにしか見えん。

 

 ここ(キヴォトス?)での教育者とはそれほど各位が低いのだろうか。そうでもなければこれほど冷遇される理由が今の自分には見当たらない。

 少し態度にビビって敬語になってしまった。新兵時代を思い出したぜ。

 スーツだって新品を卸してきた。いや新品だからか? 新任だとなめられているのか? 

 

 その後リンとの会話は最低限だった。この部屋と廊下の惨状には当然触れず、私の勤務地と仕事内容か書かれた1枚の紙っぺらだけ渡し、彼女はこの部屋を後にした。

 

 目隠しを取られたときのあの浮ついた空気はいつの間にか消えていた。きれいな花にはとげがある。そういうこともある。俺は一瞬で冷めた。なんだかんだそういう人には冷めるもんだ。ハハッ。失恋1回目。

 

 

 

 

 

 私の第一声も軍で育てられたものだと自負していたが、ここはそれ以上のスパルタ環境らしいな? 

 少し不安がよぎった。海兵時代のあのスパルタさ。それと同時に期待がよぎった。骨を折るほど職とは楽しいものだ。

 それに対する報酬があってこそだが。これでも前職は高給取りだったもんでな! 

 

 

 ともあれ、これもあちら側の一時のミスであろう。そうでないと困る。ゴミ箱は溢れかえって、弁当やらバナナの皮やら飛び散りまくっているのもそのせいであれ。

 

 そしてだが、私の職場はどうにもここではないらしい。これから数十分のところに移動してから本番だ。あの薄っぺらい一枚の紙を大事に握りしめて移動する。

 

 ……こっそり床に落ちていた空薬莢もいくつか拾う。何でもないが、そういうしつけだったもんで。

 

 出来れば職場は案内を受けたここよりきれいだといいんだが。ピッカピカのフローリング望む。

 

 

 移動の最中、街中の視線はやはりどうにも慣れなかった。というか、痛かった。普通に犬やら猫やらがクソでかくて二足歩行して服を着ている。

 ここでは私が異質なのか。確かにスーツ姿の人間の方が少ないもんな! くそう。面白くなってきたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 先程のビル(さんくとぅむたわー?)から想像できた。案の定とも言うべきか、語彙力の低下を招くほど俺の勤務地(シャーレ?)の状況はさらに酷かった。そりゃあもう、言葉を失うほどに。

 

 外壁には隙間なく埋め尽くされた罵詈雑言の嵐。もともと白かっただろう壁は消え去って真っ黒だ。この掃除もやらなきゃか……。

 

「死ね」「出ていけ」「殺すぞ」「止めちまえ先生」

 これは前任に書かれたものなのだろうか。それとも私への熱い歓迎だろうか。どちらにしても良いものではない。まるでとある漫画の家みたいだ。

 

 中へ入る。まあなかなかだった。蛍光灯は落ち、当然割れている。軍式ブーツを持っていてよかった。

 スプレー缶の落書きのせいで外からの光は無い。暫くはこの生活かと気が落ちる。1階だけであれと願う。

 暗くてよくわからないが、これは商品棚か? すべて倒れてしまって足場の一部になってしまっている。

 

 

 

 

 なんだろうか。ここまでだと逆に燃えてくる。やってやろうじゃないかと。

教育者として任された分、これをやったヤツらに社会常識を額に擦り付けて貰うまで私はここに勤務しようと思う。教官に教わったのはなにせ軍の規律だけじゃない。あの背中から感じるものは多くあった。

 

 

 私が教育をする上で、学ばせたいことは3つある。

 

 1つ目はモラル。マナーと同列にされがちだが、私はこれだけは守らせたい。

 2つ目は心持ち。自分を強く持つことが人生には必要だということ。

 3つ目は忠誠心。社会のルールに従え。上司に従え。尊敬しろ。

 

 ……徹底とまでは言わない。どうせこんなことをするヤツらガキだ。少しは甘く見てやる。

 

 

「やってやろうじゃないか」

「こんなクソみたいな場所を変えてやるぜ……! へへっ、おもしれえ……」

 

 

「あいたっ!」

 

 軍式ブーツを履いた癖してガラスの上で転びやがった。せっかくのスーツがキレちまったよ……

 二つの意味でキレそうだが、今日はここの掃除をして寝よう。

 

 そして後々気づいた。俺の職場は5階だった。なんなら入り口も違かった。

 掃除、し損でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




彼女欲しいよな。
先生、動きます。
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