腹ペコ毒蟲【新版】   作:アンディライリーのうさぎ

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46話 本当に男の子ってさ、呆れちゃう。

 最近の彼女の楽しみといえば、任務で訪れた場所で食べるご当地のグルメだった。

 

 硝子のすすめで使い始めたスマホで、周辺を検索して補助監督に連れていってもらう。カバーはこれまた硝子にすすめられた、手帳型のものを買った。カードなどをポケットに入れられるため、かなり重宝している。

 ただ、ガラケーに親しみのある彼女からすると、新しいテクノロジーはまだ不慣れだった。

 

 呪霊の発生率は、今年度は特に多い。

 

 精神的にも落ちついたと判断されたのか、単独任務が増え始めた。硝子からは「ほどほどに」と注意を受けている。

 

 

 今日の任務は海の近くだった。ならば食べるのは当然、刺身であろう。

 

 彼女は海鮮丼をたらふく食べ、土産を買って高専に帰った。

 

 夜蛾や硝子、通りすがった生徒にその土産を配ってから、閉じる前にすべり込みで食堂に入る。料理人たちの戦争が唐突に始まった。櫻が高専生だった頃はまだ、決まった時間に始まる戦争だった。しかし呪術師になった今はいつ戦争が始まるかわからない。(彼らの給料が高専に勤める従業員の中で高いのは、これが理由なのかもしれない)

 

 

 

 夜がきた。

 自室で酒を飲みながら、彼女はスマホとにらめっこをする。

 

「ジビエ料理が食べられる店は都内にもあるのか。なるべくなら、本場で食べたいけど……」

 

 北海道、北海道か……。

 カニ、ラーメン、見事に食い物ばかりが浮かぶ。

 

 脳裏のごちそうをおかずに、酒を飲み進める。途中でズズッと音がした。目を凝らすと、アルミ缶の底が見えた。

 冷蔵庫を確認するが、もうない。そもそも手に取ったのが最後の一本だった。

 

 渋々と、彼女は外に出た。晩夏の夜の空気が身を包む。ちらほらとだが、鈴虫の声が聞こえるようになってきた。

 茂みに入った彼女は一匹つまみ食いして、いつもの自販機に向かおうとしたところで肩を跳ねさせる。

 目に白い包帯を巻いている男が口を半開きにさせて、UMAにでも会ったような顔で彼女を見ていた。

 彼女の口の端から飛び出ていた虫の足が、ぼとりと落ちる。

 

「……び、ビールに合うかな、なんて出来心で」

 

「………」

 

「あっ、いります?」

 

「いらねぇよ」

 

 昆虫食をご存知ないのだろうか。彼女は口を少しだけへの字にした。そりゃあ当然、虫なんて食べたくないだろうけれども。普通は。それこそ飢え死にしそうじゃなければ。

 

「恵はな〜んでさぁ、こいつが宇宙人だって信じてくれないんだろうねぇ」

 

「日ごろの行いが悪いんじゃないんですか? 伏黒君に対する」

 

 彼女が自販機に向かうと、五条も付いてきた。恵を任務に同行させていた件で礼を言われた彼女は、「いえいえ」と返す。

 そして、彼女がビールを買うために投入した硬貨は、甘ったるそうな飲み物に変わった。

 彼女が五条を睨むと、向こうは「僕ってかわいい後輩でしょ?」と言い、プルタブを開けてズズッ飲んだ。

 

「ハァー……どこがかわいいんだか…………あれ?」

 

「ン?」

 

「………待って、私さっき五条悟にお礼を言われた…?」

 

 お礼を……言った? あの、天上天下唯我独尊の最強が? サラッと言われたので、彼女もサラッと返してしまった。余計なことを考えていたせいだろうか。おもに、チタタプの人間バージョンを考えていたせいで。

 

「あなたは本当に……五条悟…?」

 

「どっからどう見てもそうでしょ」

 

 ガタンと音がした。今度こそビールである。

 取り口からビールを取り出した彼女は、ぐいっと酒を飲む。

 隣に五条悟がいると色々と思い出す。居酒屋の飴の件も文句を言いたい。領収書は実際に、五条へ渡すよう伊地知に頼んでおいた。

 

「食べ過ぎの件を止めたいんだったら、遠まわしじゃなく、直接私に言えばよかったじゃないですか」

 

「一回止めても、一切聞く耳を持たなかっただろ」

 

「なら、何度でも止めればよかったでしょう」

 

「そうしても僕が直接諭すんじゃ、絶対に止まらなかっただろ」

 

「だからって、わざわざ伏黒君を猛獣の檻に………いや、この件はもういいか」

 

 彼女は頭を押さえる。なぜこう、すれ違うのが上手いのか。ほしかったのは直接の手だった。何がなんだろうと、離さずに引っ張ってくれる手だった。

 

 伏黒恵はまぶしかった。子どもが放つまぶしさで、同時に食指をそそられる。イヌ属性も、術式を見ていると連想して、灰原雄と結びつけてしまった。少なくとも櫻の思考回路はそうだった。

 

 それに純真な存在に、自分というバケモノが浮き彫りになった。触れたら汚してしまうんじゃないかと、傷つけてしまうんじゃないかと怯えさせた。

 

 

「ハァー……」

 

 彼女はため息をつく。

 

 

「まぁ……おかげさまで、美味しくご飯を食べられるようにはなりましたよ」

 

「一食でうん十万ってどうなってんだよ…」

 

「ゴチになりました」

 

 五条が甘ったるいジュースを買ったのは、領収書への意趣返しがあったのかもしれないし、ただその場のノリだったのかもしれない。

 

「そういやパイセン、僕この間の任務でスマホを壊しちゃってさ。番号が新しくなったんだけど」

 

「最強が誰よりも社畜になっているのは見ものですね」

 

「今から番号言うから」

 

「ちょっとお待ちを」

 

 彼女はスマホを取り出し、電話帳を開いた。言われていく番号を打ちながら、ついと言われる。

 

「プリクラ」

 

「…プリクラ?」

 

「七海とのプリクラ、貼ってないんだ」

 

「………別れてから、もう何年が経っていると思ってるんですか」

 

「別れた後も、ずっとガラケーに貼ってたじゃん」

 

「………未練たらたらで、悪うござんしたね」

 

「僕はてっきり、機種変しても貼るのかと思ったよ」

 

「さすがにもう……貼れませんよ。それに、イチイチ私のスマホを見た周囲に、気まずい空気にさせたくもないので。伊地知君とか、反応があからさまだし」

 

「だったら、見えない場所に貼ればいいでしょ」

 

「見えない場所って…」

 

「スマホの裏。半分くらいスキマができる。そこならカバーに隠れて周囲にはまず見えない。硝子はそこに貼ってるらしいよ。パイセンや歌姫と撮ったプリクラ」

 

「……そういえば、硝子ちゃんが言ってたかも」

 

「ちょっとスマホ見せてよ、パイセン」

 

 五条の口元は笑っている。ため息をついた彼女は、スッと差し出した。

 長い指が手帳型のそれを開き、右側のスマホがある部分を裏返す。確かに半分ほどスキマができたそこは、透明カバー越しにスマホ裏の黒い色がうかがえる。

 プリクラは貼られていなかった。

 

 

「パイセンはさ、自分でガラケーを壊した時も、七海とのプリクラが貼られたところだけは捨てなかったんだわ」

 

「……そうですね」

 

「それで、お前は誰だ?」

 

「安倍櫻ですけど」

 

「呪力も話し方も癖も、宇宙人なところも、全部パイセンだけどさぁ。パイセンは絶対に、プリクラを貼るよ」

 

「………困ったなぁ」

 

「答えろ」

 

 彼女は自販機の側のベンチに座り、酒を飲む。その間も包帯越しの六眼に見られていた。

 さてどうするかと、彼女は空を仰ぐ。満点の星空だった。

 

「体を返しても構わないが、あの子は今眠っているんだ」

 

「ハァ?」

 

「五条君、心中ってロマンチックだと思わない? 二人でこの世からおさらばするんだ」

 

「僕の質問に答えろ」

 

「私は私だよ。……いや、彼女が私なんだ。だからこそ、私は彼女でもある」

 

「…………呪霊の、元の自我か?」

 

「おぉ、さすがだ。正解だよ」

 

 わざとらしく彼女は拍手した。睨まれるが、それを微笑みで返す。余裕そうに──というわけではなく、ただ、自然体でそこに座り、世間話でもするかのように会話に興じている。

 

「あの子はね、生得領域でナナミンとお楽しみ中だ。今はゾンビを倒し、世界を救おうとしている」

 

「………」

 

「今度はこちらが質問してもいいかな、五条君?」

 

「……何だ」

 

「具体的にどのタイミングで私の存在に気づいた?」

 

 

 五条は少し間を置き、イマジナリーフレンドナナミンの存在を知った時だ──と語った。

 

 安倍櫻にしか見えない存在。これは呪力と関係がなく、五条でも()ることができなかった。

 このイマジナリーフレンドはしかも、櫻の意思とは別に、自分の意思で行動した(ナナミンが見えるのは櫻だけのため、これは伝聞の情報になってしまうが)。

 

 この存在が「人と呪いを混ぜ合わせて生まれたSAKURA」の、「呪い」の部分ではないかと考えるのは必然である。虫に命令して屋敷の人間を栄養にしたのも、行動的には間違いなく呪いだ。

 

 ならば、このナナミンを構成するものは何なのか。

 そのヒントを、五条はのちに夜蛾の作ったパンダから得た。

 

 突然変異で生まれたとされる、この呪骸。これには夜蛾が制作したほかの呪骸と異なり、三つの核が存在する。

 この三つの核が、「パンダ」という自我を安定させているのは確かだった。

 

 この構図は「人間と呪いの混ぜ合わせ」である、安倍櫻にも言える。

 彼女は『アオムシ様』なる黒い芋虫の形をした、呪霊の力を発揮させるための蠱毒によって生まれた。『アオムシ様』の力を引き出すは、人間と混ざり合う必要がある。

 

 そもそも、なぜ呪霊の力──術式を使うのに人間と混ざり合う必要があるのか。

 

 混ざり合う、と聞くと受肉を思い浮かべるが、この混ぜ合わせはそれと質が異なる。もっと邪悪だ。

「蠱毒」と呼ぶのだから、人間も単に一人ではなく、複数使っているはずであった。

 

 それともう一つ踏まえておきたいもの。

 それがヒトの「情報」。

 

 例えば術式を刻まれた呪具。元は普通の呪具だったが、使い込まれるうちに術者の術式が呪具に刻まれることがある。術式とは本来、脳に刻まれているものだ。それが呪具に情報として刻まれ、独立する。

 

 ほかにも肉体の「情報」。

 臓器移植を受けた人物が、知らない記憶を得たり、食事の嗜好が術前と術後でまるっきり変わるなど。

 これは臓器に刻まれていたその人間の記憶や、味覚といった肉体の「情報」が、移植を受けた人間に刻まれたと解釈できる。

 

 

 それらを踏まえて。

 

 複数の人間と呪いを混ぜ合わせて作られた、安倍櫻。

 そうするとこの呪いであろうナナミンが、彼女に移植された「情報」だと考えられる。

 その情報とは、肉体────または、魂に由来するものだろう。

 

 櫻曰く、「自分は誰だ?」な状態らしかったナナミンは、何らかの形で呪霊の自我を完全に取り戻したのだろう。

 

 

「ついでにお前へのクロ容疑が強まったのは、産土神が特級になった例の任務」

 

 

 五条は櫻とその呪霊の呪力に、()()()()()()()を見つけた。

 

 

「………フフ」

 

 彼女は思わずといったふうに笑う。困ったように、頰をかく。

 

「なるほど。私の呪物となった肉体でも見つけてきて、利用したのか」

 

「誰が裏で手を引いている」

 

「縛っているから言えないね。縛っていなくとも、言わないが」

 

「………」

 

「凄まれても怖いだけだよ。別に殺してくれても構わない。あの子もろとも」

 

「………」

 

「さぁ、どうぞ。君の親友に毒を吐──」

 

 

 彼女が状況を理解した時にはすでに、彼女は首をつかまれ、ベンチを破壊しながら地面に押しつけられていた。

 酸素を失う。いいね、と彼女は笑う。安倍櫻が浮かべるものとは違う笑みだった。

 

「私、君がかなり嫌いなんだ。ただ、その友愛は心から尊敬している」

 

「アイツに、何をした」

 

「言っただけ。私は人間が嫌いですよって。本音だよ? ああ、あの子の本音かと聞かれると、それは違」

 

「黙れ」

 

 五条は一度深呼吸して、首から手を離した。

 

「安倍先輩に……灰原を食わせたのもお前か」

 

「死んでいるんだから食べていいよ、とは言ったけれど、食欲に負けて食べたのはあの子だ。自分の意思で選んだ」

 

「呪いらしいやり方だな」

 

「呪いだからね、私は」

 

 さらにタチが悪いのは、櫻がこの呪いの存在を認識していないことだ。おそらく都合の悪い部分は記憶を改ざんされている。

 彼女にとってのこの呪いは、()()()()の、イマジナリーフレンドナナミンなのだ。

 

 

「私は拷問されようが何も吐く気はない。痛いのは嫌いだが、痛いのはお友だちだ。殺すならばセットで。あの子の願いでもある。「いっしょにしにたい」と」

 

「………っ」

 

「そうだよ。もうボロボロだ。私が出るのではなく、()()()()()ほどに」

 

「追い込んだのはお前だろ」

 

「そうだよ。しかし救ってくれなかったのは七海建人だ。話は終いでいいね? ここで殺せないなら、別の場所に移そうか」

 

 立ち上がった彼女の腕を、五条がつかんだ。彼女の目を見つめ、五条は名前を呼ぶ。

 彼女は笑った。まるで漫画のベターな展開だなと。()()()()のは結構好きだ。尊いなぁと思う。人間にしか織りなせない愛憎劇だ。

 だが、相手が五条となると熱が冷める。この、この世に愛されて生まれたような男だと。

 

 

「あの子はゾンビにされたナナミンの鉈を救いに行った」

 

「僕はさ」

 

「………何で鉈がゾンビになってるんだ?」

 

「結構、嬉しかったわけだよ」

 

 

 恵に、櫻がさらっと言ったこと。

 

 五条悟は力こそバケモノだが、五条悟は人間だ。

 

 

 

 紅い目が、五条を見つめる。何かを見定めるように。そして、少しだけ口角を上げる。

 

「簡潔に、君が私に望むものは?」

 

「パイセンを返せや虫ヤロー」

 

「なぜ返してほしい?」

 

「僕が人類初の、宇宙人のダチだからだよ」

 

「────いいよ。悪くない」

 

 

 彼女はさらに口角を引き伸ばす。目の前に彼女の好きな、「愛」というエサが転がされた。

 しかして、別の友愛に振り回されている最中でもある。

 どうしようかと彼女は迷った。

 迷った時は、より尊い方を選ぶべきだ。

 彼女はいつものようにそう考え、「じゃあ」と話す。

 

 

「絶対の味方であるナナミンから、あの子の心を離させることができたら構わないよ」

 

「……お前が領域展開を?」

 

「いや、しない。現実から君があの子にアプローチをかける」

 

「『できない』じゃないってことは、使えるわけね」

 

「…油断も隙もない。もちろん、君からすれば人の生得領域が見えないわけだから、私が嘘偽りなくあの子の様子を教えると誓った上で、勝負を行おう」

 

「お前からの条件は」

 

「ないよ、今のところ」

 

 制限時間は現実での15分。

 

 五条が生得領域でカオスを繰り広げている安倍の心を、ナナミンから引き離させる。

 それに対する呪いの彼女の条件はなし。

 それに易々と「わかった」で済ませていいはずもなく。

 何せ、相手は呪い。

 互いの利害を明確にしなければならない。

 

 五条はそこに、安倍櫻に対して、呪いの彼女が今後体を乗っ取らず、精神(生得領域含む)や記憶に干渉しないことを条件に追加した。ついでに、虫についても彼女が命令し、操作するのを禁ずる。虫に()()()行動したり、呪いの姿で外に出るのも禁止だ。無論、イマジナリーフレンドの姿でのあらゆる干渉も禁止とする。(ナナミン以外の、別の姿になるのも不可)

 

「ニートになってしまうじゃないか」

 

「改めて、お前は僕が負けた場合、何を望む」

 

 五条を見つめる彼女はなぜか顔を赤らめ、もじもじとし出し、「目玉」と言った。

 五条の顔がこれでもかと歪む。向こうの意図が丸わかりだったからだ。櫻の『食欲』を知った後の、夏油の気持ちがわかってしまった。

 

「まぁ、いいよ。どうせ僕が勝つから」

 

「………へぇ、勝算があるんだ」

 

「言っておくと、勝負時、お前から引き止めるようなアプローチをかけるのも禁止だ」

 

「わかった。いいだろう」

 

 安倍櫻にとって、イマジナリーフレンドナナミンは幼少期から長らくをともにした、自分を裏切らない絶対の味方だ。

 一緒に死のう(心中しよう)と願うほど、愛している。

 

 ロマンチックな死に方だった。その相手が自分というのも不思議な話ではある。

 

 彼女はスマホを取り出し、タイマーを15分にセットした。

 

 はたして五条悟はどのような方法を取るのか。

 先ほどのような、情に訴えるような言葉でも言うのだろうか。

 興味がある。この男の掲げる友愛が、何を紡ぎ出すのか。

 六眼の味も非常に気になる。

 

 

 そして、タイマーがスタートした。

 

 

 

 

 

「安倍パイセン」

 

 包帯を取った五条が、六眼を露わにする。闇世の中に、蒼い目はよく映える。

 黙ってその様子を見つめる彼女に、五条はスマホを取り出した。手で操作しながら、五条は続ける。

 

 

「あれは、2年の5月頃のことだった。僕と………夏油は、学校生活に馴染んできた1年と親睦を深める目的で、とあるゲームを行った」

 

 

「そのゲームの名は、『野球拳』」

 

 

「野球拳とは、簡単に言えば、ジャンケンをして負けた方が服を1枚脱ぐ遊びだ」

 

 

「じゃんけんの相手は毎回くじ引きで決め、最終的に全裸になった者を敗者とする」

 

 

「灰原は「面白そうですね!」と乗り気だったのに対し、七海は全力で逃げようとした。だが、退路は夏油の呪霊で塞がれていた」

 

 

「場には酒やお菓子も用意してあった。7時になったと同時に、僕たちの熱い野球拳(たたかい)は始まった…」

 

 

「その時、僕が面白半分で撮った動画の全貌がこのスマホに保管されている」

 

 

「先に言っておくと、敗者は七海だ」

 

 

「安倍パイセン」

 

 

「──────『見』たくないか?」

 

 

 

 

 五条は、その例の動画らしい画面を見せた。確かに男4人がいずれかの部屋であろう場所にいる。テーブルにはアルコールやジュース、菓子が無数にあり、七海は隅で体育座りをし、死んだ顔をしていた。服は半袖・長ズボンだ。

 一方で、動画の中央では夏油と灰原が今まさにじゃんけんをしている最中で、両者の手がブレている。こちらはまだ長ジャージに長ズボンのままだった。

 映像からして、最初に五条と七海がじゃんけんをし七海が負け、二戦目のところから五条が撮影し出したのだろう。

 

「………」

 

 彼女は少し口を開け、無表情で五条を見つめた。

 

 そして、やけに長いため息をついたのだった。

 


 

 ・硝子のスマホ

 歌姫と櫻、硝子の3人で撮ったプリクラ

 その下に、さしすで撮ったプリクラ

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