響音達、新人音響士の任務を終えて数カ月後、また新たな任務が始まる。
今回の任務は『夜空』のメンバーだけに通達されている。
どうやら今回の任務は、山の遭難者を探すという『ノイザー』とは関係ない任務であった。
何故『音響士』である彼らが救助隊と同じ役割をやらなければならないのか?
それは『音響士』も警察や救助隊の役割も受け入れており、人が欲しい時の増援として動いている。
救助を呼んでいる所は丁度『夜空』支部が一番近く、その為に『夜空』支部が選ばれたのだ。
そして、その山からは『ノイザー』の出現しているという噂もあり、それも選ばれた理由の一つでもあった。
今回の救援任務は、もか、リト、フィメル、白崎、響音の5人が向かう事となった。
他の人達は違う任務の方に向かわせたり、黒狼はまだ骨折から治っておらず、『夜空』支部でお留守番をお願いしていた。
ただいまもか達は山の中へ入り、深い森で迷子にならないように固まって遭難者を探していた。
まだ明るい昼の時間なのに、森は太陽の日を通さずに、森の中を暗くしている。
そんな森に『ノイザー』もいるので、もか達はかなり警戒しながら森の中を進んでいく。
「いや〜かなり深いなこの森」
とリトは植物を手で退かしながら前衛を進んでいく。
一番前にリト、次にフィメル、3番目にもか、その最後に新人音響士の白崎と響音で進んでいる。
「こんな所で『ノイザー』と戦いたくないな…」
フィメルはこの深い森での戦いに不安そうに言い、
「いや!!虫に刺されたぁ!!」
もかは森の中で虫に刺された事に嫌になっていた。
白崎はまた厳しい戦いになりそうで不安になり、少し気分を変えようと響音へ話しかけようとする。
「な、なぁ、響音、この森深いけど、カブトムシとかいそうで虫取りに丁度いい森じゃな…い…か?」
と振り返ると、そこには響音の姿は無かった!
「あ…あれ…?」
後ろにいた響音が急に居なくなった事に白崎は戸惑い、その戸惑いに気付いたリト達も振り返る。
うん、見事に響音がいなかった。
今、響音がいない状況に全員が動きを止めて固まる。
そんな静寂の中、白崎がまず口を動かす。
「…え? まさか響音はぐれた?」
響音がはぐれたのを全員が理解し、冷や汗をかき始め、全員が大声で叫んだ。
「「「響音何処行ったぁ!?!?」」」
「ヘクしゅん!!なんか鼻がムズムズするな〜」
と響音は鼻を擦っていた。
ただいま響音は崖の上にいて、その下から見える湖を覗き込んでいる。
何故ここまで響音が来たのかは、最初はしっかりと全員の後を付いてきたが、途中で響音しか聞こえない音が聴こえ、その音に釣られてここまで来てしまったからだ。
その音はハープのような優しい音で、夜に聴いていたい程の音だった為、響音は釣られてしまった。
音の発生源はこの崖の下から聴こえ、響音は崖から覗き込むと、そこには広い湖があり、今登っている太陽さえも映し出す透明度がある綺麗な湖である。
その湖からハープの音が聴こえてくるような気がした響音はどうしようかと覗き込みながら考えていると…
ガラッ
「…あ」
と響音は拍子抜けた声を発した。
自身を掴んでいた崖の一部が何故か崩れ、響音は前へ落ちていく。
そう、湖に向かって真っ逆さまへと落ちて行く。
「あああああ!!」
と落ちて行く響音の絶叫が響き、そのまま湖へとザバン!!と大きな音を立てて着水する。
真っ逆さまで落ちた為、受け身を取れずにゴボゴボと肺から酸素が抜けていく。
(や…やばい…)
と薄れていく意識の中、何かが響音へ泳いで向かってくるのが見えた。
しっかりと見えてなかったが、その泳いでいる影を響音は見えていた。
(…うさぎ?)
それが最後に響音が思った事で意識を失った。
「う…うう…」
と響音は意識を取り戻し、目を開ける。
まず目の前には天井があり、起き上がると床は畳で仕切られ、自身の身体に毛布が掛けられていた。
一体自分に何があったかと響音は思い出していると、後ろの襖からガラッと音が鳴る。
誰かが入ってきたのを感じた響音は後ろへと顔を向ける。
襖を開けたのは、同じ人間身体で眼鏡をかけた女性であるが、頭にはうさ耳が生えており、そのうさ耳にイヤリングみたいなのが付けている。
「もう大丈夫?」
とそのうさ耳の少女は声を掛けてくる。
「あ!大丈夫です!」
と響音は反射的に答える。
だがうさ耳の少女の姿を見たお陰で、自身は何があったか思い出す事が出来た。
確か自分は湖へ落ちて…そこから…
と響音は思い出し、今自分は何処にいるか確認する為、うさ耳の少女へ此処は何処か聞いてみる事にする。
「溺れていた所を助けて頂いてありがとうございます。もう身体は大丈夫なのでそろそろ出て行きますね。ここは何処ですか?」
と響音は聞くが、うさ耳の少女は驚きの事を話す。
「?ここ湖の中だよ?」
……へ?
驚くのは無理はない、なんせいきなりまだ湖の中にいるとは思えず、呼吸だって今出来てるから冗談だと響音は思っていると、うさ耳の少女はその証拠に襖を全開にして、外の景色を見せる。
なんとそこから見える景色は、空を泳いでいる魚達がいて、丸い泡もぷくぷくと自然に出来て浮かんでおり、空の上には太陽が丸くなく、ぐにゃぐにゃと動いていた。
そんなあり得ない現象が響音の前に起き、口を開けて驚いてしまった。
そして、うさ耳の少女はここは何処か語り始める。
「ここは湖の中にある音響士の一つの支部、『水面』支部だよ」
もか達は急に消えた響音を探す中、響音は『水面』支部へ搬送されていた。